TOP > 国内特許検索 > 基板上でビルドアップ型コンビナトリアルライブラリーを合成する方法

基板上でビルドアップ型コンビナトリアルライブラリーを合成する方法 新技術説明会

国内特許コード P120007832
掲載日 2012年8月1日
出願番号 特願2010-269482
公開番号 特開2012-116803
登録番号 特許第5754685号
出願日 平成22年12月2日(2010.12.2)
公開日 平成24年6月21日(2012.6.21)
登録日 平成27年6月5日(2015.6.5)
発明者
  • 今場 司朗
  • 寺内 毅
  • 渡辺 悟
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 基板上でビルドアップ型コンビナトリアルライブラリーを合成する方法 新技術説明会
発明の概要 【課題】糖類をビルドアップ的に合成して糖鎖チップ等を作製する方法を提供すること。
【解決手段】選択的に脱保護可能な水酸基の保護基により保護された糖を基板に結合し、第1の所望の水酸基を選択的に脱保護した後、光切断保護基Wを該水酸基に導入する。基板の所望の領域を選択的に露光して、その領域にある保護基Wを選択的に脱保護した後、所望の糖又はキャッピング基を選択的に導入する。基板上のすべての保護基Wを変換するまで、この露光及び糖又はキャッピング基の導入を繰り返す。次に、第2の所望の水酸基を選択的に脱保護、W基の導入、露光、糖又はキャッピング基の導入を繰り返す事を特徴とする糖鎖チップの作製方法。
【選択図】図2
従来技術、競合技術の概要


病気や、各種毒素には糖鎖を認識するものがある。それらを迅速に検査する為には、各種糖鎖が基板上に結合している糖鎖チップを用いるのが迅速でかつ高感度であると考えられる。既にDNAチップは市販されており、研究・診断に用いられている。更にペプチド(プロテイン)チップも研究が盛んに行われている。しかし、その複雑な構造ゆえ現在においても満足のいく糖鎖チップは存在していない。



現存するすべての糖鎖チップは天然から単離精製した糖鎖や、それを酵素処理したものや、単純な糖の有機合成品などを基板に結合させることにより作製されている。これらの糖鎖チップ上の糖鎖は数十種類程度で、より多種類の糖鎖を基板上に結合させる事が望まれている。多種類の糖鎖構造を有する糖鎖チップを作製する為には、まずは必要な数の糖鎖を調達する必要がある。糖鎖は複雑に分岐を有する構造で、有機合成するのも容易ではなく、従来の技術により数百ないし数千種類もの糖鎖を合成することは、事実上不可能である。また、もし仮に合成できたとしても、コストが非常にかかり、実用的ではない。現在のDNAチップ作製法は基板上でのDNA合成手法であるアフィメトリクス法と、既に作製したDNAを基板に結合させるスタンフォード法に2分される。ビルドアップ的に基板上で合成するチップは低価格化・集積化等に優れており、糖鎖チップにおいても基板上での合成が期待されている。しかし、今までに、基板上でビルドアップ的に糖鎖を合成し、糖鎖チップを作製した例はない。



多数の水酸基を有する化合物(特に糖質、複合糖質、それらの誘導体又は類縁体)のコンビナトリアルライブラリー合成は未だ達成されていない未開の領域である。それはひとえに同じような反応性を持つ水酸基を選択的に脱保護させる技術、特にコンビナトリアルライブラリー合成に最適化された水酸基の保護基の技術が存在していない為である。多くの従来の技術では様々な種類の保護基を適宜用いて、その反応性の違いを利用して目的の保護基のみを選択的に脱離させていたが、この様な手法では、コンビナトリアルライブラリー合成は現実的には不可能である。



これを可能にする唯一の技術として、特定の保護基Yを用いた方法(以下「Y法」という)が挙げられる(特許文献1及び2)。Y法を用いれば、単にY基の重合度を変えるだけで無限の水酸基を選択的に脱保護させる事が出来る。
特許文献1及び2記載の方法は、重合度の異なる保護基により多くの水酸基を保護し、重合度の違いにより脱保護する順番を決定し、選択的に目的の水酸基を脱保護させることができるという手法である。それにより、樹脂ビーズ上で糖鎖ライブラリーを構築することができる。
しかし、この手法を基板上でのコンビナトリアルライブラリー合成に適応しようとすると、次のような問題があった。すなわち、基板のある部位のみに選択的に反応させる事が必要である為、当然、光による制御が必要になってくるが、光による反応を特許文献2記載の方法に組み合わせると非常に長い反応段階が必要になるということである。



特許文献2記載の方法を用いて基板上でビルドアップ的に糖鎖を合成する手法を図1に示す。
図1において、特許文献2記載の方法の典型的な構造として、糖の水酸基がA-Y、A-YY(Aは酸性、遷移金属又は遷移金属有機錯体、光分解、又は酵素により脱離可能な保護基を示す。Yは-NR1-CR23-CO-、R1は炭素数1~6のアルキル基又は水素原子、R2及びR3は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~20のアルケニル基、炭素数6~7のアリール基、又は炭素数7~20のアリールアルキル基であり、同一でも異なっていても良い。)により保護された、(1)の構造を有する糖が表面に結合したガラスを想定する。Aはここでは酸性条件で脱離可能なBoc基(ターシャリー-ブトキシカルボニル基)とし、Yを-[(CH3CH22CH]N-CH2-CO-とする。RはAの脱離する条件及び、光反応・PITC化反応・TFA処理反応・再Boc化反応・縮合反応で脱離しない保護基、例えばBz基(ベンゾイル基)またはBn基(ベンジル基)とする。



基板上のある特定の位置に存在する水酸基を選択的に脱保護させる為には、光により反応する保護基を用いるのが一般的である。そこで、酸性条件で切断できるBoc基を光により切断しようとする場合、光を当てると酸を発生する光酸発生剤が必要になる。この光酸発生剤を基板にコートしてから目的の部位に選択的に光を当て、酸を発生させ、Boc基を切断する。Boc基が切断されたら、その後はYの重合度を減少させる操作を行う。
まずはPITC(フェニルイソチオシアネート)を反応させ、次にTFA(トリフルオロ酢酸)により2重合を1重合に変換し(すなわち、YYをYに)、同時に1重合のYを除去し水酸基を脱保護する。最後に再Boc化を行い一連の反応を終了し基板(3)を得る。ここで選択的に脱保護された水酸基に次の糖を縮合させる。ここではGalを導入し、部位特異的にGalが導入された基板(4)を得る。
この操作を繰り返すことにより、基板の部位特異的に構造の異なる糖鎖を組み上げる(ビルドアップする)ことができる。しかし、1種類の糖を導入するのに、1.光によるBoc基の切断、2.PITC化、3.TFA処理、4.再Boc化、5.縮合、と5段階を必要とする。仮に異なる5種類の糖を導入しようとすると、5×5で25段階が必要であり、非常に多段階を必要とする。従って、この方法は、糖の種類を増やしていったときには実現が極めて困難となってしまう。

産業上の利用分野


本発明は、2以上の水酸基を有する化合物、典型的には糖類のコンビナトリアルライブラリーの合成方法に関し、さらに詳細には、2以上の水酸基を有する化合物の基板上でのビルドアップ型コンビナトリアルライブラリー合成方法および該ライブラリーを含む基板に関する。特に、病気や、毒素の診断薬・検査薬としてのニーズが高い糖鎖チップ等を作製するのに有用な化合物ライブラリーの合成方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
基板上に結合した、少なくとも2個の水酸基を有する化合物であって、そのすべての水酸基が、脱保護条件が相互に異なる少なくとも2種の保護基からなる群から選ばれる保護基で保護された化合物をアクセプターとして用い、該保護基を選択的に脱保護し、脱保護された水酸基に所望のドナー又はキャッピング基を選択的に導入して一枚の基板上でビルドアップ型コンビナトリアルライブラリーを合成する方法において、
前記アクセプター及びドナーは糖であり、
アクセプターの少なくとも1個の水酸基の保護基がA(Y)m基(Aは酸性、塩基性、遷移金属又は遷移金属有機錯体、光分解、又は酵素により脱離可能な保護基を示す。Yは-NR1-CR23-CO-、R1は炭素数1~6のアルキル基又は水素原子、R2及びR3は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~20のアルケニル基、炭素数6~7のアリール基、又は炭素数7~20のアリールアルキル基であり、同一でも異なっていても良く、mはYの重合度を示し、1以上の整数であり、mが2以上の整数の場合、各Y中のR1、R2、R3は、相互に同一でも異なっていても良い。)であり、
(1)第1の保護された水酸基を選択的に脱保護する工程、
(2)脱保護された水酸基に、W基もしくはW(Z)基(Wは光分解により脱離可能な保護基を示し、ZはW基が脱離する光分解の条件でW基と同時に脱保護される基、もしくはW基が脱離する事により、活性化(もしくは不安定化)され、選択的に除去可能になる基を示す)を導入する工程、
(3)基板をn個(nは1以上の整数)の部位に分割し、該基板の第1の部位を選択的に露光し、露光部のW基もしくはW(Z)基を選択的に脱保護し、選択的に脱保護された水酸基に、所望の第1のドナー又はキャッピング基を選択的に導入する工程、
(4)nが2以上の整数である場合、工程(3)を第2の部位から所望の第nの部位まで繰り返し、各部位において、選択的に脱保護された水酸基に、所望の第2のドナー又はキャッピング基ないし所望の第nのドナー又はキャッピング基を選択的に導入する工程、
(5)第2の保護された水酸基について、工程(1)から(4)を繰り返し、第2の保護された水酸基を脱保護し、脱保護された水酸基に、W基もしくはW(Z)基を導入し、基板をn個(nは1以上の整数)の部位に分割し、該基板の第1の部位を選択的に露光し、露光部のW基もしくはW(Z)基を選択的に脱保護し、選択的に脱保護された水酸基に、所望の第1のドナー又はキャッピング基を選択的に導入し、上記工程を第2の部位から所望の第nの部位まで繰り返し、各部位において、選択的に脱保護された水酸基に、所望の第2のドナー又はキャッピング基ないし所望の第nのドナー又はキャッピング基を選択的に導入する工程、
(6)必要により、工程(5)を所望の、保護された水酸基について繰り返し、各水酸基の各部位において、選択的に脱保護された水酸基に、第1ないし第nのドナー又はキャッピング基を選択的に導入する工程を含み、
工程(1)~(6)において、繰り返して使用する、W基もしくはW(Z)基、基板の分割部位の数n、ドナー又はキャッピング基は、同一でも異なっていても良い、
ことを特徴とする、ビルドアップ型コンビナトリアルライブラリー合成方法。

【請求項2】
第1の保護された水酸基を選択的に脱保護する工程が、A(Y)m基のY基中の酸アミド結合をN末端側から逐次切り離す方法により重合度の小さなY基を選択的に脱保護する工程を含む請求項1記載の方法。

【請求項3】
アクセプターの1個の水酸基の保護基がV基(Vは塩基性、酸化剤、フッ素化合物、光分解、又は酵素により脱離可能な保護基を示す。)であり、他の少なくとも1個の水酸基の保護基がA(Y)m基(Aは酸性、塩基性、遷移金属又は遷移金属有機錯体、光分解、又は酵素により脱離可能な保護基を示す。ただし、AがVと同一であることはなく、Vの脱離条件でAが脱離することはない。)であり、第1の保護された水酸基がV基で保護された水酸基である請求項記載の方法。

【請求項4】
ドナーがA(Y)m基により保護された少なくとも1個の水酸基を含み、工程(1)~(6)を繰り返すことを特徴とする請求項1~のいずれか1項記載の方法。

【請求項5】
ドナーがV基により保護された少なくとも1個の水酸基を含む請求項1~のいずれか1項記載の方法。

【請求項6】
保護基AがBoc基であり、保護基WがNPPOC基である請求項1~のいずれか1項記載の方法。

【請求項7】
アクセプターが、リンカーを介して基板に固定されている請求項1~のいずれか1項記載の方法。

【請求項8】
基板が、ガラスである請求項1~のいずれか1項記載の方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2010269482thum.jpg
出願権利状態 登録


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close