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レーザー走査型生体内特定物質量計測方法

国内特許コード P120007948
整理番号 S2012-0223-N0
掲載日 2012年9月27日
出願番号 特願2011-276295
公開番号 特開2013-126443
出願日 平成23年12月16日(2011.12.16)
公開日 平成25年6月27日(2013.6.27)
発明者
  • 和田 智之
  • 坪田 一男
  • 神成 淳司
出願人
  • 国立研究開発法人理化学研究所
  • 学校法人慶應義塾
発明の名称 レーザー走査型生体内特定物質量計測方法
発明の概要 【課題】眼底におけるルテインの濃度と分布を定量的に非侵襲で測定することが可能なレーザー走査型生体内特定物質量計測方法を提供すること。
【解決手段】本発明のレーザー走査型生体内特定物質量計測方法は、反ストークス線の波長を、特定物質の波長吸収帯より大きくし、プローブ光の波長を、反ストークス線の波長から特定物質のラマン散乱のシフト量だけシフトさせ、ストークス光の波長を、プローブ光の波長から特定物質のラマン散乱のシフト量だけシフトさせることで、反ストークス線の信号強度レベルからルテインの密度を測定することを特徴とする。
【選択図】 図1
従来技術、競合技術の概要


失明原因の上位を占め、50歳以降、加齢と共に増加する加齢黄斑変性は、現代の長寿社会においては、大きな社会問題となっている。発症の基盤に慢性炎症があるとされており、その予防にかかる時間とコストを考えると、検診によりハイリスク群を診断することが必要である。その指標となる眼底黄斑色素には、現在のところ認可された測定法が無く、発症前診断は不可能である。一般検診によるハイリスク群判定と、予防治療の効果判定ができれば、加齢黄斑変性による失明とそれに基づく行動制限を未然に防ぎ、健康的な長寿社会の形成に貢献する一端となるが、現行の検査機器を用いたのでは、それは不可能である。
現行の治療は、加齢黄斑変性のうち、滲出型に対するものだけであり、その効果は増悪を防ぐことを目的とするものに過ぎない。早期発見・早期治療が望まれると共に、できれば発症予防をしたいところである。しかし、現行の診断方法(眼底検査もしくは眼底カメラ、光干渉断層計(OCT)、血管造影など)では、既に発症した症例に対しては利用可能であるが、ハイリスク群を判定することにはならない。
最近では、マスメディア等を介した啓蒙活動により、加齢黄斑変性に対する国民の認識は非常に高まっている。高齢になっても活動的な人口は多く、外部情報の80%は視覚から入ると言われることから、高齢者自体の視機能確保の意識は高い。超早期診断を求めて来院する患者が多いが、現行の検査機器では発症していない限り診断がつかず、医師が介入できることは無い。現行の眼底の形態変化を見るための検査機器だけでは、この問題は解決し得ない。
一方、これまでの研究により、黄斑色素であるルテインの摂取量と加齢黄斑変性発症の関連が報告され、その検証のために米国NIH主導の大規模臨床試験Age-related Eye Disease Study 2 (AREDS2)が進行中である。そこで、眼底黄斑色素の測定は、そのハイリスク群検出と予防治療効果の判定に必須である。しかし、その測定法は確立していない。採血等による生体内ルテイン濃度の測定も考えられるが、これは、侵襲的である上に、必ずしも黄斑色素量を反映しているとは言えないという問題点がある。
生体内の黄斑色素量を調べるためには、非侵襲的色素測定技術が不可欠であるが、今のところ確実な方法は無い。本技術を開発して、これまで眼科として発展してきた生体内の形態を見るための眼底カメラ・光干渉断層計(OCT)などに組み合わせることは、現行の検査法では未知の生体内変化をとらえることになり切望されている。
これまで、実現されている眼底の計測装置は、眼球を通して光を照射し、その散乱光を利用して眼底の計測を行っている。従来技術の測定原理としては、共鳴ラマン散乱や単純な吸収を基にした計測法が利用されている。共鳴ラマン散乱の方法では、利用したプローブレーザーの強度に比べ6桁以上、信号強度が減衰する。眼底のダメージを考慮すると、強いレーザーが利用できないために、結果的に大きな信号強度が得られず、ルテインの濃度変化にともなう十分な信号を得ることができなかった。吸収や、蛍光に関する計測では、それぞれのスペクトルの広がりが大きく、他の生体物質との区別が十分でなく、精度のよい観測ができなかった。従って、十分な定量性のある観測がなされていなかった。また、眼底全体や比較的大きなスポットに一度にプローブ光を当る方法では、十分な空間分解能を得ることができなかった。これらの定量性、空間分解能の不十分さが、加齢黄斑変性症の早期診断において課題となっていた。
なお、眼底にレーザーを照射し、散乱光を利用して眼底上の血管を検査する眼底検査装置としては、例えば特許文献1に示すものがある。
また、コヒーレント反ストークスラマン散乱(CARS)(coherent anti-Stokes Raman scattering)を利用した、糖化ヘモグロビンの量を測定する生体内物質量測定方法が特許文献2で提案されている。
特許文献2にも記載されている通り、CARSは、ラマン散乱の一種であり、ポンプ光(プローブ光(振動数ωp))とストークス光(振動数ωs)という二つの異なる振動数の光を物質に入射したとき、2ωp-ωsという振動数の散乱光が放出される現象である。ωp-ωsが分子の固有振動数ωVと一致すると、多数の分子の振動モードが共鳴的に励振され、非常に強く、かつ指向性のよいコヒーレントな散乱光を得ることができる。
ラマン散乱とは、ω1の振動数を持つ入射光が物質に照射されたとき、ω1+ωRまたはω1-ωRの振動数を持つ微弱な散乱光が現れる現象である。ωRは分子の振動モードによる固有の振動数であり、ラマン散乱スペクトルには、分子の各振動モードに由来する多くのスペクトル線が現れる。従って、スペクトルを解析することで分子を検出できる。

産業上の利用分野


本発明は、特に眼底におけるルテインの濃度と分布を定量的に非侵襲で測定できるレーザー走査型生体内特定物質量計測方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
波長の異なるプローブ光とストークス光とを生体内の特定物質に照射することで反ストークス線を発生させ、前記反ストークス線の信号強度レベルから前記特定物質の密度を測定するレーザー走査型生体内特定物質量計測方法であって、
前記反ストークス線の波長を、前記特定物質の波長吸収帯より大きくし、
前記プローブ光の波長を、前記反ストークス線の波長から前記特定物質のラマン散乱のシフト量だけシフトさせ、
前記ストークス光の波長を、前記プローブ光の波長から前記特定物質のラマン散乱の前記シフト量だけシフトさせたことを特徴とするレーザー走査型生体内特定物質量計測方法。

【請求項2】
前記特定物質を眼底に存在するルテインとし、前記反ストークス線の波長を550nm以上としたことを特徴とする請求項1に記載のレーザー走査型生体内特定物質量計測方法。

【請求項3】
前記反ストークス線の波長を700nm以下としたことを特徴とする請求項2に記載のレーザー走査型生体内特定物質量計測方法。

【請求項4】
波長の異なるプローブ光とストークス光とを生体内の特定物質に照射することで反ストークス線を発生させ、前記反ストークス線の信号強度レベルから前記特定物質の密度を測定するレーザー走査型生体内特定物質量計測装置であって、
パルス動作による可視2波長レーザーを用いるレーザー装置と、前記プローブ光を前記生体に集光し、集光した点から発生する信号のみを検出する共焦点光学系とを備え、
前記反ストークス線の波長を、前記特定物質の波長吸収帯より大きくし、
前記プローブ光の波長を、前記反ストークス線の波長から前記特定物質のラマン散乱のシフト量だけシフトさせ、
前記ストークス光の波長を、前記プローブ光の波長から前記特定物質のラマン散乱の前記シフト量だけシフトさせて用いることを特徴とするレーザー走査型生体内特定物質量計測装置。
国際特許分類(IPC)
Fターム
  • 4C316AA09
  • 4C316AB06
  • 4C316FZ02
画像

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出願権利状態 公開
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