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分離生殖細胞の移植による生殖細胞系列への分化誘導法における生着能の向上

国内特許コード P120008007
整理番号 S2010-0636
掲載日 2012年10月11日
出願番号 特願2010-070582
公開番号 特開2011-200169
登録番号 特許第5610424号
出願日 平成22年3月25日(2010.3.25)
公開日 平成23年10月13日(2011.10.13)
登録日 平成26年9月12日(2014.9.12)
発明者
  • 吉崎 悟朗
  • 識名 信也
  • 竹内 裕
  • 矢澤 良輔
出願人
  • 国立大学法人東京海洋大学
発明の名称 分離生殖細胞の移植による生殖細胞系列への分化誘導法における生着能の向上
発明の概要 【課題】魚類の分離生殖細胞を宿主魚類に移植して生殖細胞系列への分化誘導を行う代理親魚養殖等において、移植した生殖細胞の宿主生殖腺への生着能を向上させて、分離生殖細胞の移植による生殖細胞系列への分化誘導方法における移植効率を増大する方法を提供すること。
【解決手段】魚類の分離生殖細胞を、宿主魚類個体に移植することからなる分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法において、宿主魚類の腹腔内への移植に用いる魚類由来の分離生殖細胞を、魚類の精巣をトリプシン処理により解離した後、解離した細胞を培養容器中において、生殖細胞が培養容器にゆるく接着するまでの短期間培養し、該培養した生殖細胞を分離・採取することによって調製し、該分離・採取した分離生殖細胞を孵化前後の宿主魚類の腹腔内へ移植することにより、生殖細胞の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法からなる。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要



従来より、魚類のES細胞株樹立の試みは、多くの研究者によりなされており、形態学的、生化学的特徴はマウス由来のES細胞に類似した細胞株がメダカ(蛋白質核酸酵素,40,2249-2256,1995;Fish Phys. Biochem. 22,165-170, 2000)、ゼブラフィッシュ(Methods Cell Biol. 59: 29-37, 1999)、及びヨーロッパヘダイ(Biomolecular Engineering, 15, 125-129, 1999)の胞胚細胞から樹立されている。これらの細胞を胞胚期前後の宿主胚に移植すると、移植細胞は種々の体細胞に分化することは既に確認されている。





しかし、上記のように魚類のES細胞株樹立の試みは、多くの研究者によりなされているが、魚類ES様細胞が生殖細胞系列に分化し、次世代の作出に貢献したという論文は発表されていなかった。実際にはin vitroで数日間しか培養していない細胞は生殖系列にも分化するが(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 2261-2266, 2001)、培養期間を延長すると生殖細胞への分化能力は急激に消失する。





魚類の生殖細胞がどのような機構によって他の体細胞から分化してくるかは未だ明らかではないが、近年、親の卵巣内で成熟途上の卵内に蓄積されたRNAやタンパク質等の母性因子が、生殖細胞系列の決定に重要な役割を果たしている可能性を示唆するデータが示されている(月刊海洋,31-5,266-271,1999)。そして、これらの母性因子が受精卵中に不均一に存在するため、細胞分裂により一部の割球のみがこの因子を受け取ることとなる。その結果、母性因子を受け取った一部の細胞のみが、将来生殖細胞系列へと分化していくと考えられている。一方、ES細胞が生殖細胞系列に分化することが知られているマウスでは、未分化な状態を維持している細胞集団が、周辺細胞からの刺激により生殖細胞へと分化していくと考えられている(蛋白質核酸酵素,43,405-411,1998)。





従来より、魚類のような脊椎動物においても、トランスジェニック動物やクローン動物の作製のための動物個体の改変やクローン化の試みがなされてきた。しかし、魚類のような脊椎動物の場合は、このように遺伝的に改変した、或いはクローン化を目的とした細胞を、宿主個体に移植し、これを分化誘導して、新たな個体として変換する技術が確立していなかった。したがって、魚類のような脊椎動物において、その個体を遺伝的に改変して、或いはクローン化して、その育種を行い或いはクローン動物の作製を行うためには、改変或いは分離した細胞を、宿主個体に移植し、これを分化誘導して、新たな個体として変換する技術の確立が重要な課題となっていた。





そこで、先に、本発明者らは、特に魚類のような変温脊椎動物において、遺伝的に改変した或いは分離した細胞を、宿主個体に移植し、これを生殖細胞系列へ分化誘導する方法、及び、該分化誘導法を用いて、魚類のような脊椎動物の増殖或いは育種を行う方法について、鋭意検討する中で、(1)魚類のような脊椎動物においては、親の卵巣内で成熟途上の卵内に蓄積されたRNAやタンパク質等の母性因子が、生殖細胞系列の決定に重要な役割を果たしており、そして、これらの母性因子が受精卵中に不均一に存在するため、細胞分裂により一部の割球のみがこの因子を受け取ることとなり、その結果、母性因子を受け取った一部の細胞のみが、将来生殖細胞系列へと分化していくと考えられること、(2)このような生殖細胞系列の決定機構を考慮すると、魚類のような脊椎動物の場合は“生殖細胞への分化を決定する母性因子を含むこと”であること、(3)以上のような事実を考慮すると、魚類のような脊椎動物において、遺伝的に改変した或いは分離した細胞を、宿主個体に移植し、これを生殖細胞系列へ分化誘導する際に用いるべき細胞(すなわち、宿主個体に移植後、卵子又は精子に分化し、次世代個体に改変可能な細胞)は、未分化な胚細胞ではなく、将来生殖細胞に分化することが決定付けられている生殖細胞の幹細胞、すなわち始原生殖細胞(生殖細胞)であることをつきとめた。





そして、該生殖細胞を、魚類のような脊椎動物の孵化前後の魚類個体に移植することにより、生殖細胞を、生殖細胞系列へ分化誘導することができること、即ち、魚類のような脊椎動物由来の分離生殖細胞を、宿主脊椎動物の孵化前後の魚類個体へ移植することにより、特に、孵化前後の発生段階にある魚類個体の腹腔内腸管膜裏側へ移植することにより、該生殖細胞を生殖細胞系列へ分化誘導することが可能であることを見い出し、魚類の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法の確立に成功した(特許第4300287号公報)。





そこで、上記のような魚類の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法を実施するに際しては、宿主魚類に導入する生殖細胞を調製することが必要であるが、該宿主魚類に導入する生殖細胞の調製には、生殖細胞を供給する魚類の精巣をトリプシン等のタンパク質分解酵素処理により解離(分散処理)し、精巣に含まれる体細胞を除去する等の処理を行うことが必要となる。また、上記特許第4300287号公報の方法では、導入する生殖細胞を緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein:GFP)や、EGFP(Enhanced Green Fluorescent Protein)で可視化し、蛍光を発している生殖細胞と蛍光を発していない他の体細胞とを、セルソーターにより、分離することにより、精製する方法も採られている。しかしながら、これらの処理により調製、取得した分離生殖細胞は、移植後の生殖細胞の宿主生殖腺への生着能が弱く、十分な移植効率が得られないという問題が残されている。





一方で、従来、細胞の生着を促進する方法として、いくつかの方法が開示されている。例えば、特表2000-500327号公報には、精子を含む試料をアラビノース、ガラクトース、及び/又はヘキスロン酸を含有する多糖を含む溶液と接触させて、精子回収の際の精子の受精の可能性を高める方法について開示されている。また、特開平8-27011号公報には、IgA産生促進効果を有するビフィドバクテリウム属の菌体を有効成分とする妊娠動物用の胎児定着増強剤を用いて、胎児の発育異常と脱落防止を図り、胎児の定着を安定化する方法が開示されている。更に、特表2009-517078号公報には、骨髄移植(BMT)等において、細胞生着能を高めるために、細胞集団を、所定量のニコチンアミドで処理する方法について開示されている。しかしながら、これらの方法は、いずれも、上記のような、魚類の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法における移植後の生殖細胞の宿主生殖腺への生着能の向上に適用できるものではない。

産業上の利用分野



本発明は、宿主魚類を用い、宿主魚類とは異系統又は異種の魚類の分離生殖細胞を宿主魚類に移植して生殖細胞系列への分化誘導を行う代理親魚養殖等において、移植した生殖細胞の宿主生殖腺への生着能を向上させて、分離生殖細胞の移植による生殖細胞系列への分化誘導方法における移植効率を増大する方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
魚類由来の分離生殖細胞を、孵化前後の宿主魚類の腹腔内への移植により宿主魚類個体に移植することからなる分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法において、宿主魚類の腹腔内への移植に用いる魚類由来の分離生殖細胞を、魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した後、解離した細胞を培養容器中において、生殖細胞が培養容器にゆるく接着するまでの短期間培養し、該培養した生殖細胞を分離・採取することによって調製し、該分離・採取した分離生殖細胞を孵化前後の宿主魚類の腹腔内へ移植することにより行なうことを特徴とする生殖細胞の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。

【請求項2】
魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した細胞を、培養容器中において生殖細胞が培養容器にゆるく接着までの短期間培養する期間が、培養開始後、3~6日の期間であることを特徴とする請求項1記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。

【請求項3】
魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した細胞を、培養容器中において精原細胞が培養容器にゆるく接着までの短期間培養する期間が、サケ科魚類では培養開始後、4~5日の期間であることを特徴とする請求項2記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。

【請求項4】
魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した細胞を、培養容器中において生殖細胞が培養容器にゆるく接着までの短期間培養する期間が、マグロ類では培養開始後、3~6日の期間であることを特徴とする請求項2記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。

【請求項5】
魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した細胞の培養容器中における培養を、コラーゲンコート或いはゼラチンコートを施した培養容器内で、レイボヴィッツL-15培地にウシ胎児血清、サケ血清及びアデノシンの1又は2以上を添加した培養液を用いて行なうことを特徴とする請求項1~4のいずれか記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。

【請求項6】
培養した生殖細胞を分離・採取するに際して、生殖細胞と魚類の精巣から分離した精巣体細胞の培養容器への接着力の相違により、生殖細胞を血球系の細胞、精巣体細胞から分離して採取することを特徴とする請求項1~5のいずれか記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。

【請求項7】
生殖細胞を精巣体細胞から分離して採取するに際し、接着している生殖細胞の細胞剥離を促進するためにEDTA溶液で処理することを特徴とする請求項6記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。

【請求項8】
魚類由来の分離生殖細胞が、宿主魚類とは異系統又は異種の魚類由来の生殖細胞であることを特徴とする請求項1~7のいずれか記載の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。

【請求項9】
宿主魚類が、サケ科魚類、ニベ、及びサバ科魚類から選択され、異種の魚類がマグロであることを特徴とする請求項8記載の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録


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