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個別化治療診断のためのマーカータンパク質絶対量の定量方法

国内特許コード P120008043
整理番号 S2011-0331
掲載日 2012年10月24日
出願番号 特願2011-064145
公開番号 特開2012-197258
出願日 平成23年3月23日(2011.3.23)
公開日 平成24年10月18日(2012.10.18)
発明者
  • 大槻 純男
  • 寺崎 哲也
出願人
  • 国立大学法人東北大学
発明の名称 個別化治療診断のためのマーカータンパク質絶対量の定量方法
発明の概要

【課題】疾患の診断又は治療のための指標となるタンパク質を一斉に定量することができる、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)を用いた高感度なタンパク質の定量方法を提供すること。
【解決手段】被定量タンパク質のペプチド断片を調製する工程において、試料中の被定量タンパク質を、リシルエンドペプチダーゼを用いて断片化した後に、さらに、トリプシンを用いて断片化する。また、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)の液体クロマトグラフ部において30~70分の間に溶出されるペプチドを同定し、該ペプチドを定量対象ペプチドとして用いる。
【選択図】 なし

従来技術、競合技術の概要


近年、ヒトゲノム計画の進展により、薬剤に対する感受性の個人差を遺伝子レベルで解析して医薬の開発に応用する、薬理ゲノミクスに関する研究が盛んに行われている。薬剤に対する感受性の個人差を診断できるようになれば、試行錯誤的な投薬を実施することなく、治療の初期から適切な投薬が可能な、いわゆる個別化治療が可能となる。特に、がん治療の分野においては、従来の抗がん剤と比較して副作用の少ない分子標的薬が盛んに開発されており、臨床現場においても使用されるようになってきている(例えば、特許文献1参照)。分子標的薬は標的となるタンパク質に特異的に作用する薬剤であるため、個々の患者におけるタンパク質発現量のプロファイルを解析し、どのような標的タンパク質が高発現しているかを知ることができれば、適切な個別化治療を計画/実施することが可能となると考えられている。



しかし、現在、臨床現場において主に使用されている検査法は、単一のタンパク質を検出することを目的としたものであり、多数の異なるタンパク質を同時に検出することはできない。さらに、前記検査法の多くは抗体を用いたものであるため、交差反応等のため特異的な定量検査を行うことが困難であり(例えば、非特許文献1、2参照)、また、タンパク質ごとに異なる抗体を使用しなければならないことから、多数のタンパク質を検出するためには莫大な手間と費用がかかる。このような問題を解決するために、最近、マイクロアレイ遺伝子発現分析法の開発が進み、様々な種類のRNA発現を一度に定量することが可能な遺伝子発現検査方法が確立されてきている。(例えば、非特許文献3~6参照)。しかし、分子標的薬の標的タンパク質の多くは細胞膜上に発現する膜タンパク質であり、膜タンパク質発現量とRNA発現量との相関性は極めて悪いことから、マイクロアレイ解析により得られたRNA発現プロファイルが、必ずしも患者のタンパク質発現プロファイルと一致するとは考えられていない。以上のことから、マイクロアレイ解析の結果に基づいて、分子標的薬による個別化治療を行うことは困難であり、実際に発現しているタンパク質を、網羅的に定量することが可能な検査方法を確立することが強く求められている。



近年、質量分析法(mass spectrometry)の進展がめざましく、種々の生物学材料の検出や測定にこの方法が応用されている。これまでに、エレクトロスプレー・イオン化法による質量分析計(mass spectrometer;MS)や、質量分析計の前に液体クロマトグラフ(liquid chromatograph;LC)部を連結した液体クロマトグラフ-質量分析計(LC/MS)や、直列に接続された2台の質量分析計からなるタンデム質量分析計(MS/MS)や、タンデム質量分析計の前に液体クロマトグラフ部を連結した液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)等、種々の機能をもつ質量分析計が開発されており、生物学材料の測定、定量に広く利用されている(例えば、特許文献2~4参照)。



質量分析計を用いたタンパク質の定量を正確に行うためには、被定量タンパク質を酵素処理することによって断片化し、断片化されたペプチドの中から、質量分析計による解析に適した性質を有するペプチド断片を選択して定量することが重要であると考えられている。特許文献5~7において、発明者らは、既にLC/MS/MSを用いて膜タンパク質及び代謝酵素の絶対発現量を一斉定量する方法を確立しており、その中で、LC/MS/MSによる定量に適した、イオン化効率の高い定量対象ペプチドを選択するためのクライテリアを示している。しかし、特許文献5~7には、LC/MS/MSの液体クロマトグラフ部において、確実に分離されたペプチドのみを選択するためのクライテリアは示されていない。また、非特許文献7には、LC/MS/MSの液体クロマトグラフ部における保持時間(retention times)予測モデルから、リン酸化ペプチドと非リン酸化ペプチドの保持時間を予測し、タンパク質定量の精度を高めることが可能であることが示唆されている。しかし、分子標的薬の標的タンパク質や、一般診断において診断対象となるタンパク質等の測定に、保持時間予測モデルが利用できるかどうかについては何ら示唆されていない。

産業上の利用分野


本発明は、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)よる、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質の定量に用いるペプチドや、該ペプチドを用いた定量方法等に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)によって、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を定量するために用いるペプチドであって、以下の工程[A]及び[B]により選択されることを特徴とするペプチド。
[A]以下の必須クライテリア(1)~(3)を満たすペプチドを選択する工程;
(1)前記疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質をトリプシンにより断片化することにより得られるペプチドであること;
(2)前記疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質に特異的なアミノ酸配列からなるペプチドであること;
(3)各アミノ酸における溶出時間パラメータを設定し、該溶出時間パラメータに基づいて、以下の条件(i)~(v)の液体クロマトグラフィによる予測溶出時間を算定したとき、該予測溶出時間が30~70分の範囲内であるペプチドであること;
(i)HPLC:Agilent 1200 HPLCシステム(アジレント・テクノロジー社製);
(ii)カラム:XBridge BEH130 C18、3.5μm、100x1.0mm(ウォーターズ社製);
(iii)移動相:0.1%ギ酸/ミリQ水からなる移動相A、0.1%ギ酸/アセトニトリルからなる移動相B;
(iv)流速:0~60分では50μL/min、60~90分では100μL/min;
(v)濃度勾配:0分~5分では99/1(移動相A/移動相B)、5分~55分では99/1(移動相A/移動相B)から50/50(移動相A/移動相B)、56~58分では100%移動相B、60~90分にでは99/1(移動相A/移動相B);
[B]以下の選択クライテリア(4)~(15)に基づいてスコア合計値を算定し、該スコア合計値の高いペプチドを優先的に選択する工程;
(4)トリプトファン、チロシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、及びフェニルアラニンから選択される疎水アミノ酸の含量が80%以下であり、且つ、前記疎水アミノ酸が10アミノ酸以上連続しないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(5)アミノ酸残基数が4~30のペプチドである場合、スコア3を付与する;
(6)タンパク質データベースのアノテーション情報において、糖鎖付加されないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(7)翻訳後修飾タンパク質を定量する場合を除き、翻訳後修飾部位を含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(8)1塩基多型(SNP)部位を含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(9)タンパク質分解酵素切断部がアルギニン-アルギニン、アルギニン-リジン、リジン-アルギニン、リジン-リジンではないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(10)タンパク質の構造が決定又は予測されている場合に、膜貫通領域を含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(11)メチオニン、システインを含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(12)トリプトファンを含まないペプチドである場合、スコア1を付与する;
(13)グルタミン酸を含まないペプチドである場合、スコア1を付与する;
(14)ヒスチジンを含まないペプチドである場合、スコア2を付与する;
(15)プロリンを含むペプチドである場合、スコア2を付与する;

【請求項2】
配列番号1~308のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることを特徴とする請求項1記載のペプチド。

【請求項3】
選択クライテリア(3)の予測溶出時間が40~60分であることを特徴とする請求項1又は2記載のペプチド。

【請求項4】
選択クライテリア(4)の疎水アミノ酸の含量が50%以下であり、且つ、選択クライテリア(5)のアミノ酸残基数が6~16のペプチドであることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載のペプチド。

【請求項5】
以下の工程(a)~(d)を備えた、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)によって、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を定量する方法であって、定量対象ペプチドが、請求項1~4のいずれか記載のペプチドであることを特徴とする方法。
(a)試料中の被定量タンパク質をトリプシンによって断片化し、被定量タンパク質のペプチド断片を調製する工程;
(b)前記定量対象ペプチド、及び前記定量対象ペプチドと同配列の安定同位体標識ペプチドを用いて、それぞれの所定濃度段階に対するLC/MS/MSを用いた質量分析を行い、検量線を作成する工程;
(c)前記被定量タンパク質のペプチド断片に、前記安定同位体標識ペプチドを添加してLC/MS/MSを用いた質量分析を行い、被定量タンパク質ペプチド/安定同位体標識ペプチドのマススペクトル面積比を算出する工程;
(d)該面積比から検量線を用いて定量値を算出する工程;

【請求項6】
ペプチド断片を調製する工程が、あらかじめリシルエンドペプチダーゼを用いて断片化した試料中の被定量タンパク質を、さらにトリプシンを用いて断片化する工程であることを特徴とする請求項5記載の方法。

【請求項7】
試料が、生体から採取された細胞、組織、又は血液であることを特徴とする請求項5又は6記載の方法。

【請求項8】
請求項1~4のいずれか記載のペプチドを備えることを特徴とする、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を定量するためのキット。
産業区分
  • 有機化合物
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 審査請求前
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