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植物に対する微生物の感染を防止又は抑制する方法及び微生物感染抵抗性植物

国内特許コード P120008052
掲載日 2012年10月25日
出願番号 特願2011-504902
登録番号 特許第5552649号
出願日 平成22年3月16日(2010.3.16)
登録日 平成26年6月6日(2014.6.6)
国際出願番号 JP2010054906
国際公開番号 WO2010107126
国際出願日 平成22年3月16日(2010.3.16)
国際公開日 平成22年9月23日(2010.9.23)
優先権データ
  • 特願2009-062350 (2009.3.16) JP
発明者
  • 西村 麻里江
  • 西澤 洋子
  • 藤川 貴史
  • 光原 一朗
  • 南 栄一
  • 阿部 敬悦
  • 立木 隆
  • 矢野 成和
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 植物に対する微生物の感染を防止又は抑制する方法及び微生物感染抵抗性植物
発明の概要 植物感染性微生物による感染を防止又は抑制し植物に抵抗性を付与する方法、植物病原性糸状菌等の微生物による病害に対して耐性を有する植物の作製方法、及び微生物農薬製剤を提供する。
植物感染性微生物の宿主植物に対する感染を防止又は抑制する方法であって、前記微生物の細胞壁のα-1,3-グルカンをα-1,3-グルカナーゼにより分解することを特徴とする。
従来技術、競合技術の概要



細胞壁成分は、動植物の真核微生物に対する初期免疫システムにおいて、最初に認識される物質の1つである。動植物細胞は、真核微生物の細胞壁の分解産物を微生物分子パターン(MAMPs)として認識することにより生体防御反応を引き起こし、菌の感染を阻止する。動物細胞では細胞壁のキチン、β-グルカン、マンナンが、植物細胞ではキチンやβ-グルカンが、MAMPsとして認識されることが知られている(非特許文献3:Hogan et al.,1996;非特許文献2:Brown and Gordon,2005;非特許文献7:Reese et al.,2007;非特許文献1:Altenbach and Robatzek,2007)。

植物細胞は、MAMPsを認識すると溶菌酵素(細胞壁分解酵素等)や抗菌物質の生産等の生体防御反応を引き起こし、病原菌の感染を妨害する(非特許文献1:Altenbach and Robatzek,2007)。

細胞の防御反応に対抗するために感染菌が宿主による認識を回避する方法については、一部の病原菌の場合を除き、明らかになっていない。近年、動物病原菌であるHistoplasma capsulatumでは感染時の細胞壁表面がα-1,3-グルカンで覆われていること、植物感染菌であるPuccinia graminis、Uromyces fabae、Colletotrichum graminicolaでは感染時の細胞壁表面のキチンがキトサンに変換されていることが明らかになっている。これらの菌は、自身の細胞壁表面を宿主細胞に認識されにくい成分に再構築することで宿主によるMAMPs認識を妨害していると考えられている(非特許文献6:Rappleye et al.,2007;非特許文献4:Eddine El Gueddari et al.,2002)。

いもち病菌(Magnaporthe grisea)は、主にイネ科穀類に感染する重要な植物病原性糸状菌である。イネは、レセプターを介して菌の細胞壁由来のキチンオリゴマーを認識できることが知られているが(非特許文献5:Kaku et al.,2006)、イネによる細胞壁キチン認識に対するいもち病菌側の回避機構のみならず、イネいもち病菌の感染時の細胞壁構成成分に関する知見については全く知られていない。イネゲノム情報(http://www.nias.go.jp)から、イネにはα-1,3-グルカン分解酵素(α-1,3-グルカナーゼ)やキトサン分解酵素がないが、β-1,3-グルカン分解酵素、キチン分解酵素があることが明らかである。すなわち、イネにおいては侵入菌の細胞壁由来のMAMPsとして認識されるのはキチンやβ-1,3-グルカンの分解産物であり、侵入した菌の攻撃にはβ-1,3-グルカン分解酵素、キチン分解酵素が用いられていることが強く推測される。

一方、イネいもち病菌の細胞壁には、α結合を有するヘテロ多糖類が存在することは知られていたが(非特許文献8~11)、それらが具体的にどのような糖か、どのように局在しているかについては不明であった。

特許文献1(米国特許第5,670,706号公報)には、細胞内キチナーゼを発現させることにより植物の菌類病耐性を向上させることが記載されている。また、キチナーゼ遺伝子に加えてβ-1,3-グルカナーゼ遺伝子を導入することも記載されている。しかし、β-1,3-グルカナーゼ遺伝子を単独で発現させることについては言及されていない。さらに、α-1,3-グルカナーゼの利用については全く記載されていない。

特許文献2(再公表公報WO98/58065号)及び特許文献3(再公表公報WO97/22242号)には、グルカンエリシターレセプターをコードするDNAを、単独で又はグルカナーゼ遺伝子とともに植物に導入することにより、植物をカビに対して抵抗性にすることが記載されている。しかし、ここで使用されたグルカナーゼは、単独で発現させた場合には十分な抵抗性が得られなかったとされている。

産業上の利用分野



本発明は、植物に対する植物感染性微生物の感染を防止又は抑制する方法及び微生物感染抵抗性植物の作製方法、及び微生物農薬製剤に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
α-1,3-グルカンを細胞壁の恒常的構成成分として含む植物感染性微生物及び/又は宿主植物との接触に応答してα-1,3-グルカンを含む細胞壁被覆層を形成する植物感染性微生物で、かつMagnaporthe属菌、Rhizoctonia属菌、Cochliobolus属菌、及びThanatephorus属菌らなる群から選択される植物感染性微生物の細胞壁におけるα-1,3-グルカンをα-1,3-グルカナーゼにより分解することを特徴とする植物感染性微生物の宿主植物に対する感染を防止又は抑制する方法。

【請求項2】
前記植物が、双子葉類又は単子葉類植物である、請求項1記載の方法。

【請求項3】
前記植物がイネ科植物又はナス科植物である、請求項2記載の方法。

【請求項4】
前記植物において外来遺伝子によって発現させたα-1,3-グルカナーゼにより、前記植物感染性微生物の細胞壁におけるα-1,3-グルカンを分解する、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。

【請求項5】
α-1,3-グルカナーゼを前記植物に接触させる、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。

【請求項6】
α-1,3-グルカナーゼ遺伝子を有し、α-1,3-グルカナーゼを細胞外に分泌する微生物を有効成分として含む微生物農薬製剤を前記植物に作用させる、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。

【請求項7】
前記微生物におけるα-1,3-グルカナーゼの発現量がその野生型株の通常生育時のその発現量と比較して有意に大である、請求項6記載の方法。

【請求項8】
前記微生物にα-1,3-グルカナーゼの発現誘導処理を施す、請求項7記載の方法。

【請求項9】
前記発現誘導処理がα-1,3-グルカンの添加である、請求項8記載の方法。

【請求項10】
前記α-1,3-グルカナーゼ遺伝子が内在性遺伝子である、請求項6~9のいずれか1項記載の方法。

【請求項11】
前記微生物がBacillus属菌、及び/又はPaenibacillus属菌である、請求項10記載の方法。

【請求項12】
α-1,3-グルカナーゼ遺伝子を有し、α-1,3-グルカナーゼを細胞外に分泌する微生物を有効成分として含む微生物農薬製剤。

【請求項13】
前記微生物におけるα-1,3-グルカナーゼの発現量がその野生型株の通常生育時のその発現量と比較して有意に大である、請求項12記載の微生物農薬製剤。

【請求項14】
前記微生物にα-1,3-グルカナーゼの発現誘導処理を施す、請求項13記載の微生物農薬製剤。

【請求項15】
発現誘導処理がα-1,3-グルカンの添加である、請求項14記載の微生物農薬製剤。

【請求項16】
前記α-1,3-グルカナーゼ遺伝子が内在性遺伝子である、請求項12~15のいずれか1項記載の微生物農薬製剤。

【請求項17】
前記微生物が、Bacillus属菌、及び/又はPaenibacillus属菌である、請求項16記載の微生物農薬製剤。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録


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