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T細胞の刺激方法およびその利用 コモンズ

国内特許コード P120008213
整理番号 S2012-0466-N0
掲載日 2012年11月6日
出願番号 特願2012-050018
公開番号 特開2013-183664
出願日 平成24年3月7日(2012.3.7)
公開日 平成25年9月19日(2013.9.19)
発明者
  • 岸 裕幸
  • 村口 篤
  • 浜名 洋
  • 小林 栄治
  • 小澤 龍彦
出願人
  • 国立大学法人富山大学
発明の名称 T細胞の刺激方法およびその利用 コモンズ
発明の概要

【課題】ペプチド/MHC四量体を用いずにT細胞を刺激する。
【解決手段】抗原ペプチドを、抗原ペプチドを認識可能なT細胞受容体(TCR)を細胞表面に有するT細胞に供給して、T細胞が細胞表面に有する主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子と抗原ペプチドとの複合体を形成させる工程を含み、TCRに抗原ペプチドを、同じT細胞の細胞表面のMHC/ペプチド複合体として認識させることにより、T細胞を刺激する。このような刺激・活性化方法であれば、T細胞に限られず、種々の細胞に適用可能であろう。本発明によれば、抗原特異的T細胞株を樹立することなく、またMHC/ペプチド四量体のような試薬を用いることなく、抗原特異的T細胞を特定することができる。すなわち、効率よく・簡便に、がん特異的T細胞を特定することができる。
【選択図】図2

従来技術、競合技術の概要


T細胞はT細胞受容体(T cell receptor, TCR)をその細胞表面に発現しており、TCRを用いてウイルス感染細胞やがん細胞を認識し、免疫応答を惹起する。リンパ球にはT細胞のほかにB細胞がある。B細胞もその細胞表面に発現している抗体を抗原受容体として用いることでウイルスなどの抗原を認識するが、B細胞の抗原受容体である抗体はウイルスや細菌の表面のタンパク質や糖鎖・脂質などをそのままの形で結合し、認識することができる。その一方で、T細胞の抗原受容体であるTCRはウイルスや細菌の表面のタンパク質にそのままの形で結合・認識することはできない。T細胞はウイルスが感染した細胞でウイルス由来の蛋白が産生され、その蛋白が分解されたペプチドが、その細胞のMHC(主要組織適合遺伝子複合体)分子に結合した形で細胞表面に発現したものにTCRが結合することにより抗原を認識する。すなわち、T細胞を刺激・活性化するためには、抗原提示細胞が必要であることが知られている。抗原提示細胞の主なものは、ウイルスが感染したような細胞の他にB細胞、マクロファージ、樹状細胞などがある。



MHC分子はクラスI分子とクラスII分子の二種類に大きく分けることができる。MHCクラスI分子はCD8+ T細胞(キラーT細胞)に抗原を提示し、MHCクラスII分子はCD4+ T細胞(ヘルパーT細胞)に抗原を提示する。MHCクラスI分子はすべての有核細胞(すなわち赤血球を除くすべての細胞)に発現しているが、MHCクラスII分子はB細胞、マクロファージ、樹状細胞など一部の細胞に発現している。また、ヒトのT細胞の場合、活性化されたCD4+ T細胞にMHCクラスII分子であるHLA-DR分子が発現することが知られており、HLA-DRは活性化マーカーとしても使用されている(非特許文献1)。



T細胞上には、TCR とMHC分子とが存在するが、同一細胞上でのMHC分子と様々な免疫関連分子との相互作用について述べた報告の中では、同一細胞上のTCRとMHC分子とは相互作用できないことが明確に述べられている(非特許文献2)。現在、T細胞の刺激方法としては、T細胞が認識する抗原ペプチドがわかっている場合には、樹状細胞などの抗原提示細胞を準備し、抗原提示細胞に抗原ペプチドを添加することで抗原提示細胞上のMHC分子に抗原ペプチドを結合させる方法が一般的である。最近ではMHC分子を可溶化し、そのMHC分子に抗原ペプチドを結合させた四量体(MHC/ペプチド四量体)が作製・販売されるようになり、MHC/ペプチド四量体を用いてもT細胞を刺激することが可能である。また、T細胞の刺激の方法に関するものではないが、チップ上のT細胞に抗原ペプチドが結合した組換えMHC分子を用いて、単一細胞から分泌されたサイトカインを検出したとの報告がある(非特許文献3および4)。



一方、本発明者らは、これまでに細胞が1個1個格納できる大きさ・形状の微小ウェルを規則正しく4万5千個~23万個程度配置したマイクロウェルアレイチップを開発し、そこにB細胞を1個ずつ配置し、抗原刺激し、B細胞の細胞内Ca2+濃度の変動や抗原のB細胞表面の抗体への結合を単一細胞レベルで解析することにより、抗原特異的B細胞を同定できることを示してきた。さらに、ウェル周囲のチップ表面を抗原でコートしたマイクロウェルアレイチップを用いることで、より簡便に抗原特異的抗体分泌細胞が検出できることを示してきた(特許文献1)。

産業上の利用分野


本発明は、抗原で細胞を刺激・活性化する方法に関する。本発明は、特定の方法で刺激・活性化されるT細胞および同様に刺激・活性化される種々の細胞が関連する、アッセイ、解析、疾患または状態の検査および治療、並びにそれらに用いるキット、試薬、および装置に関する。本発明は、ライフサイエンスおよび医療の分野で有用である。

特許請求の範囲 【請求項1】
抗原ペプチドにより、対象細胞を刺激する方法であって:
抗原ペプチドを、対象細胞の細胞表面のMHC分子に供給してMHC分子-抗原ペプチド複合体を形成させ;そして
MHC分子-抗原ペプチド複合体を、抗原ペプチドを認識可能なT細胞受容体(TCR)が認識することにより対象細胞が刺激されるが、このときTCRが対象細胞の細胞表面に存在するか、または対象細胞と同じ平面上に存在するものであり、他の抗原提示細胞(APC)による抗原ペプチドの提示の非存在下で、cisの位置関係にあるTCRとMHC分子-抗原ペプチド複合体との相互作用により、刺激される、方法。

【請求項2】
T細胞を刺激する方法であって:
抗原ペプチドを、抗原ペプチドを認識可能なT細胞受容体(TCR)を細胞表面に有するT細胞に供給して、T細胞が細胞表面に有する主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子と抗原ペプチドとの複合体を形成させる工程を含み、
TCRに抗原ペプチドを、同じT細胞の細胞表面のMHC分子-抗原ペプチド複合体として認識させることにより、T細胞を刺激する方法。

【請求項3】
抗原ペプチドを認識可能なTCRと、抗原ペプチドを提示しているMHC分子-抗原ペプチド複合体とを細胞表面に有し、TCRに抗原ペプチドを、その細胞表面のMHC分子-抗原ペプチド複合体として認識させることにより、刺激されている、刺激化細胞。

【請求項4】
単独の被検体細胞に、抗原ペプチドを供給し;そして
細胞が抗原を認識したときに産生される物質が被検体細胞から産生されるか否かを検出する工程を含み、
物質が検出された場合に、被検体細胞を目的細胞と特定する、細胞の特定方法。

【請求項5】
基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、ウェルが1つのT細胞のみが入る大きさであるマイクロウェルアレイを用い、被検体細胞群から抗原ペプチドに特異的なT細胞を特定するために実施される、請求項4に記載の方法。

【請求項6】
主表面の少なくとも一部に、T細胞が抗原を認識したときに産生される物質の少なくとも一部と結合性を有する物質の被覆層を有するマイクロウェルアレイを用い;
少なくとも一部のウェルに被検体細胞を培養液とともに格納し;
被覆層およびウェルを、抗原ペプチドを含む培養液に浸漬して、培養液に含まれる物質のウェルから前記被覆層への拡散が可能な状態で被検体細胞を培養し;そして
T細胞が抗原を認識したときに産生される物質に特異的に結合可能な標識物質、または被覆層に特異的に結合する標識物質を被覆層に供給して、被覆層の物質に結合したT細胞が抗原を認識したときに産生される物質が標識物質により検出された場合に、その被検体細胞を抗原特異的T細胞と特定する、請求項5に記載の方法。

【請求項7】
特定される抗原特異的T細胞が、ヒト由来である、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。

【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項に定義された工程を含み、特定された抗原特異的T細胞をウェルから回収する工程をさらに含む、抗原特異的T細胞の製造方法。

【請求項9】
請求項8に定義された工程を含み、回収されたT細胞から抗原特異的TCR遺伝子を得る工程をさらに含む、抗原特異的TCR遺伝子の製造方法。

【請求項10】
請求項9に定義された工程を含み、得られた抗原特異的TCR遺伝子を別のT細胞に導入して抗原特異的遺伝子組み換えT細胞を得る工程をさらに含む、抗原特異的遺伝子組み換えT細胞の製造方法。

【請求項11】
別のT細胞が、TCR遺伝子治療により処置可能な疾患または状態の対象由来である、請求項10に記載の製造方法。

【請求項12】
抗原ペプチドががん関連抗原であり、がん特異的T細胞が特定される、請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。

【請求項13】
抗原ペプチドががん関連抗原であり、がん特異的T細胞、がん特異的TCR遺伝子、またはがん特異的遺伝子組み換えT細胞が製造される、請求項8~10のいずれか1項に記載の製造方法。

【請求項14】
がんの治療に用いられる、がん特異的T細胞、がん特異的TCR遺伝子、またはがん特異的遺伝子組み換えT細胞を製造するための、請求項13に記載の製造方法。

【請求項15】
抗原ペプチドが、がんペプチドワクチン候補ペプチドであり、候補ペプチドの効果の判定のために行われる、請求項4~7のいずれか一に記載の方法。

【請求項16】
被検体細胞が、感染症疾患由来であり、抗原ペプチドが、感染症病原体由来の抗原ペプチドであり、T細胞を介した免疫応答の解析のために行われる、請求項4~7のいずれか一に記載の方法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 試験、検査
  • 治療衛生
  • 薬品
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2012050018thum.jpg
出願権利状態 審査請求前
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