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免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤

国内特許コード P120008371
掲載日 2012年11月29日
出願番号 特願2011-547342
公表番号 特表2012-515766
登録番号 特許第5569946号
出願日 平成22年1月26日(2010.1.26)
公表日 平成24年7月12日(2012.7.12)
登録日 平成26年7月4日(2014.7.4)
国際出願番号 JP2010051306
国際公開番号 WO2010084999
国際出願日 平成22年1月26日(2010.1.26)
国際公開日 平成22年7月29日(2010.7.29)
優先権データ
  • 特願2009-014139 (2009.1.26) JP
発明者
  • 和田 淳
  • 神崎 資子
  • 八木田 秀雄
  • 棚井 丈雄
出願人
  • 国立大学法人 岡山大学
発明の名称 免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤
発明の概要 ガレクチン-9 をリガンドとし、Tim-3を受容体とするシグナル伝達経路(ガレクチン-9 - Tim-3シグナル伝達経路)を遮断する物質(例えば、抗ガレクチン-9 抗体、抗 Tim-3 抗体、RNA およびDNAアプタマー、および低分子化合物)を有効成分として含有する免疫抑制剤および1型糖尿病をはじめとするTh1細胞が関与する自己免疫疾患の予防および治療剤、および自己免疫疾患の予防および治療剤の有効成分である低分子化合物のスクリーニング方法。
従来技術、競合技術の概要



免疫機構は先天性免疫と獲得免疫からなり、協調的、かつ効率的に病原体の侵入から生体を防御している。さまざまなレクチンファミリーがこの免疫機構に関与していることが明らかにされている。免疫に関与しているほとんどのレクチンは膜結合タンパク質であるが、ガレクチンはその例外であり、興味深い存在である。ガレクチンは、β-ガラクトシド構造を認識する糖鎖認識ドメイン(carbohydrate recognition domain, CRD)を有するレクチンファミリーとして定義されている。





ガレクチンファミリーは、現在1 ~ 14までが同定されている。ガレクチンファミリーにはその分子中に1つのCRDを持つガレクチンと2つのCRDを持つガレクチンが存在し、またそのCRD構造としてPrototype (CRDが一つのガレクチン-6, 7, 10; 2つのCRDがホモダイマーとして結合したもの ガレクチン-1, 2, 11, 13, 14)、Chimeric type(ガレクチン-3)およびTandem-repeat type (ガレクチン-4, 6, 8, 9, 12)の3つタイプがあることが知られている。ガレクチン-9はその分子中に2つのCRDが架橋ペプチドを介してタンデムに存在するTandem -repeat type に属するガレクチンである。





ヒトガレクチン-9は「ホジキンリンパ腫」患者の自己抗体を用いて脾臓cDNAライブラリーから単離された(Sahin U., et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 11810-11813, 1995.)。これとは独立してヒトガレクチン-9のマウスおよびラット相同遺伝子が腎臓のcDNAライブラリーからクローニングされた(Wada J. and Kanwar YS.: J. Biol. Chem. 272: 6078-6086, 1997)。





ガレクチンは生合成後、通常の分泌タンパク質のように古典的分泌経路に入らず、免疫反応が始動されるべき時に、細胞外に能動的又は受動的に放出されることが知られている。細胞外に分泌されたガレクチンは、オートクラインに分泌した細胞に結合するか、パラクラインに近傍の細胞に結合し、免疫系細胞上のガレクチン結合因子、あるいはガレクチン受容体と架橋することにより、種々の免疫反応を誘起する。可溶性のガレクチンは細胞表面上にあるガレクチン結合因子、あるいはガレクチン受容体を少なくとも3通りの様式で架橋することができる。すなわち、細胞接着(cell-cell interaction)、アゴニスト的なシグナル伝達(signal transduction)、そしてガレクチン-複合糖鎖の格子の形成(Formation of galectin-glycoconjugate lattice)である。ガレクチンの特徴は、他のサイトカインと異なり、白血球への作用因子として、また白血球の接着分子として機能すること、そしてガレクチン-複合糖鎖格子を形成することであり、このガレクチン格子の免疫学的な重要性が近年注目されている。





免疫反応や炎症反応の過程では、まず、白血球が炎症局所に引き寄せられる。その局所では、白血球は侵入した外来細胞又は病原体や死細胞を貪食する。さらに殺細胞性因子、あるいは殺菌性因子や免疫カスケードを活性化するサイトカインを分泌する。これらの過程で、個体保全、あるいは免疫応答を終焉させるため、損傷を受けた白血球や活性化T細胞のサブセット(Th1やTh2など)の一部にアポトーシスが誘導される。ガレクチン-9はヘルパーT細胞のサブセットであるTh1細胞に作用してアポトーシスを誘導することが明らかにされている。また、炎症局所や感染巣には、白血球、たとえば、好中球、マクロファージやリンパ球が血流から浸潤する。ガレクチン-3は単球、マクロファージに対する走化性因子であり、またガレクチン-9は好酸球特異的な走化性因子として知られている。





ガレクチン-9の生物活性としては、マウスにおいてガレクチン-9は胸腺細胞のアポトーシスを惹起することが知られている(Wada J., et al.: J. Clin. Invest. 99: 2452-2461, 1997)。また、ガレクチン-9の有用な生物活性として、悪性腫瘍細胞に対する細胞障害活性、悪性腫瘍細胞に対してアポトーシス誘導活性、活性化T細胞のアポトーシス誘導活性、特にCD4陽性T細胞のアポトーシス誘導活性、免疫抑制活性、抗炎症作用、抗アレルギー作用など多様な活性を発現することが開示されている(特開2004-244411)。さらに、ガレクチン-8, ガレクチン-9, ガレクチン-10およびガレクチン-10SVタンパク質をコードする核酸分子およびそれらのガレクチンの癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、喘息およびアレルギー性疾患などへの適用が特許出願されている(特表2001-501831)。





これらのガレクチン-9の生物活性の発現機序については、あまりよくわかっていなかった。特に、ガレクチン-9が結合し、そのシグナルを伝達する細胞膜タンパク質、すなわちガレクチン-9結合分子(ガレクチン-9受容体)は未同定であった。





ガレクチン-9の結合タンパク質(ガレクチン-9受容体)の探索・同定法には、1) ガレクチン-9タンパク質を固定化したアフィニティカラム法、2) 免疫沈降法、3) ウエスタンブロット法、4)分子間架橋法、5)ツーハイブリッド法、6) Tandem affinity purification (TAP)法 (Puig O., et al.: Methods 24: 218-229, 2001.)、表面プラズモン共鳴法などがある。





ガレクチン-9によるアポトーシス関連ガレクチン-9結合タンパク質(ガレクチン受容体も含まれる)を探索・同定するために、ガレクチン-9CT (C末端領域)を固定化したカラムにガレクチン-9によりアポトーシスを起こす癌細胞株MOLT4の細胞破砕液を通液し、回収したタンパク質をSDS-PAGEに負荷して、得られたタンパクバンドゲル片について、タンパク質の内部アミノ酸配列を解析することによりガレクチン-9結合分子が同定されている(特開2004-244411)。それによると、4F2 heavy chain antigen (177216)、ATP ase, Na+/K+ transporting, alpha 1 polypeptide (21361181)などを含めて数十種類に及ぶガレクチン-9結合タンパク質が同定されている(特開2004-244411)。このようにガレクチン-9結合タンパク質が多数存在するということは、ガレクチン-9の結合特異性が非常に低いことを示唆している。





一方、Tヘルパー細胞タイプ1(Th1)特異的細胞表面タンパク質であるTim-3 (T-cell immunoglobulin and mucin domain protein; 別名 Hepatitis A virus cellular receptor 2)はTh1の応答を制御するタンパク質であるが、そのリガンドは不明であった。2005年にTim-3のリガンドがガレクチン-9であることが同定された(Zhu C., et. al., Nature Immunology 6: 1245-1252, 2005)。それによると、Tim-3とイムノグロブリンFc (Ig)との融合タンパク質 (Tim-3-Ig)を調製し、細胞表面をビオチン化したCD8+マウスリンパ腫細胞株TK-1の破砕液に加えて、4℃でインキュベートする。ついで、Tim-3-Igとそれに特異的に結合したタンパク質との複合体をプロテインG-アガロースビーズで沈降させ、ビーズをよく洗浄後、1 x SDS-PAGEバッファーで煮沸する。その上清を遠心分離で集め、SDS-PAGEに負荷したところ特異的な単一タンパクバンドの出現がみとめられ、質量分析によりガレクチン-9と同定された。さらに、ガレクチン-9はTim-3への結合を介してシグナル伝達し、Th1細胞のアポトーシスを誘導し自己免疫抑制活性を発現することから、ガレクチン-9が受容体Tim-3のリガンドであることが実証された(Zhu C., et. al., Nature Immunology 6: 1245-1252, 2005.)。





前述の先行技術 (特開2004-244411)において同定された数十種類のガレクチン-9結合タンパク質には、Tim-3が含まれていないことから、Tim-3がガレクチン-9の受容体であることが明らかにされたのは、2005年に報告された本論文が最初である。





ガレクチン-9はin vitroで細胞表面の受容体Tim-3に結合し、Th1細胞の細胞内カルシウム流入、凝集および細胞死を誘導する。さらに、ガレクチン-9のin vivo投与はインターフェロンγ産生細胞の選択的欠損およびTh1自己免疫抑制を引き起こすことが明らかにされている(Zhu C., et. al., Nature Immunology 6: 1245-1252, 2005.)。





CD4陽性ヘルパーT細胞の亜集団には、サイトカインとしてインターフェロンγを産生するTh1細胞とIL-4やIL-5を産生するTh2細胞が存在し、Th1は細胞性免疫を惹起し、Th2は液性免疫(抗体産生)を誘導し、即時性免疫応答に関与している。アレルギー疾患などの免疫抑制剤としてステロイドホルモンが用いられているが副作用が強いことから、その使用においては、副作用への対慮が必要である。ガレクチン-9を含め、ステロイドホルモンに代わる副作用の少ない新しい免疫抑制剤の開発が望まれている。





さらに、自己免疫疾患の一つである1型糖尿病発症には、樹状細胞の活性化、その下流にあるTh1細胞の活性化およびTh1サイトカインの産生が重要であり、その結果ランゲルハンス氏島炎によりインスリン分泌低下をきたす。1型糖尿病の免疫異常を治療ターゲットとした従来の技術には「1型糖尿病の処置のための治療的ワクチン組成物 (特許公報2006-526651)や「1型糖尿病において罹患性病原性T細胞により標的とされる抗原ならびにこれの使用」(特許公表2006-525813)がある。これら従来技術では、自己免疫疾患における免疫異常の具体的なターゲットが同定されておらず、効果が乏しく実用化には至っていない。





活性化Th1細胞が関与する自己免疫疾患には全身性に自己免疫反応が起こって発症する全身性エリトマトーデスや限られた特定の臓器で自己免疫現象が惹起される1型糖尿病をはじめ関節リウマチ、シェーグレン症候群など数多くの自己免疫疾患が存在するが、有効な予防および治療法が確立されていない状況にあり、ガレクチン-9を含め、有効な新薬の開発が望まれている。

産業上の利用分野



本発明は、免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤に関する。本発明はさらに、免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤のスクリーニング方法に関する。

産業区分
  • 高分子化合物
  • 薬品
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
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技術移転に関しては岡山TLOが窓口になります。


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