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一本鎖抗体の製造方法 新技術説明会

国内特許コード P130008516
掲載日 2013年2月7日
出願番号 特願2011-113813
公開番号 特開2012-239436
登録番号 特許第5812256号
出願日 平成23年5月20日(2011.5.20)
公開日 平成24年12月10日(2012.12.10)
登録日 平成27年10月2日(2015.10.2)
発明者
  • 佐藤 充
  • 小島 桂
  • 玉田 靖
  • 木谷 裕
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 一本鎖抗体の製造方法 新技術説明会
発明の概要 【課題】 抗体をその結合性や抗原特異性を維持させたまま、非常に簡便に絹糸から調製する方法を提供すること。
【解決手段】 抗体として一本鎖抗体(scFv)を選択し、このscFvをフィブロインタンパク質と融合させて絹糸に発現させ、これにより得られた絹糸に対し精錬せずに溶解と再構成の処理を行うことにより、結合性及び抗原特異性を高く保持した一本鎖抗体を製造できることを見出した。
【選択図】 なし
従来技術、競合技術の概要


抗体は、抗原と結合するドメイン(Fab)と免疫グロブリン受容体に結合するドメイン(Fc)より構成され、Fabドメインを介して病原体の抗原に結合し、それを排除して中和する免疫調節作用を発揮する。そして、その作用の根幹は、ペプチド、核酸、糖鎖、糖脂質、低分子化合物等の種々様々な抗原に対して特異的に結合できることにある。そのため、抗体は、前記免疫調節作用を目的とした医薬品(抗体医薬)のみならず、ウェスタンブロッティング、免疫沈降(プルダウンアッセイ)、フローサイトメトリー、免疫組織染色等の各種検出・精製方法に適したツールとしても利用され、開発が進められており、これらの市場は急速に拡大している。



通常、抗体は、検出・精製の対象とする抗原をウサギやマウス等の免疫動物に接種し、該動物の免疫系を刺激した後、その動物の血清(ポリクローナル抗体)を回収することで得ることができる。また、このように免疫系を刺激した動物から脾臓細胞等の抗体産生細胞を回収し、該抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合し、得られたハイブリドーマを選択することにより所望の抗原のみを検出・精製することのできる抗体(モノクローナル抗体)を作製することもできる。しかしながら、かかる動物や動物細胞を利用した方法には、活性を有する抗体を安定的に取得できる反面、大量生産に適していない、生産コストが非常に高くなるといった欠点がある。



これに対し、所望の抗体をコードする遺伝子をクローニングすることにより、タンパク質の大量生産に適した大腸菌等で抗体を生産することも試みられている。しかし、大腸菌で生産した場合には、得られる抗体がしばしば不溶化することが知られており、その精製にあたっては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の変性剤でタンパク質を可溶化させる工程やその変性剤を取り除く透析等の工程が必要となる。さらにそのような多くの工程を経て得られた抗体は概して活性が低くなる傾向にあるため、大腸菌等を利用した方法には、活性を有する抗体を大量に生産しにくいという欠点がある。



一方、カイコは蛹化する際に自身を保護する目的で繭を作り出す。この繭はフィブロイン(Fibroin)という繊維構造とそれを取り巻くセリシンとの2種の構造からなる絹糸から作られている構造体である。絹糸は、およそ1.5kmに達する単繊維として存在するため、人類はこれをほどいて繊維とし、衣類等に利用してきた。近年では、絹糸を構成するするフィブロイン及びセリシンをそれぞれ加工することによって、パウダー(特許文献1)やフィルム(特許文献2及び3)、及びスポンジ様構造体(特許文献4)として利用することも可能となってきた。



2000年にカイコの遺伝子組換え技術が確立され(非特許文献1)、外来遺伝子を導入することによりカイコのシルクタンパク質を改変し、物性の向上や、機能性の付加を実現した新しいシルクを設計・創出することが可能となった。現在では目的のタンパク質を絹タンパク質の主成分であるフィブロイン層とセリシン層のどちらにでも発現させることが可能となり、これまでにフィブロインと蛍光タンパク質やサイトカイン等との融合タンパク質を発現する組換えカイコや(非特許文献2~4)、またセリシン層にヒト血清アルブミンや抗体分子を発現する組換えカイコの作出に成功し(非特許文献5及び6)、蛍光絹糸としての利用や発現産物を絹糸から分離・精製して利用する試みが行われており、前述の抗体のみならず、機能的なタンパク質の生産の場としてカイコは注目を集めている。



例えば、飯塚らは、マウスモノクローナル抗体のH鎖及びL鎖を中部絹糸腺細胞で発現させ、セリシン層にそれら抗体分子を分泌する組換えカイコを作製した。そして、該組換えカイコが作出した絹糸を3M 尿素(Urea)を含む50mM Tris-HCl(pH7.4)溶液で処理し、抗体分子を含んだセリシン溶液を透析後、プロテインGセファロースを用いてアフィニティー精製することにより、抗原特異的な結合活性を有する抗体分子を得ている(非特許文献6)。



また、外来タンパク質をフィブロインに発現させ、活性をもつ該タンパク質を調製するためには、一般的に絹糸を高濃度の臭化リチウム溶液やチオシアン酸リチウム溶液、又は塩化カルシウム/エタノール溶液で一度完全に溶解し、得られたシルク複合体から目的の外来タンパク質をプロテアーゼや還元剤を用いて遊離させ、再びリフォールディングすることが必要である。実際、日野らは、フィブロインL鎖にヒトbFGFを融合させた組換えタンパク質を絹糸に発現させ、絹糸を精練し、セリシン成分を除去した後、高濃度のチオシアン酸リチウムに溶解し、2-メルカプトエタノールを用いて内在性フィブロインから遊離させ、さらに透析を施し、変性剤の濃度を徐々に下げていくことで、活性のあるbFGFを獲得している(非特許文献4)。



このように、外来タンパク質を発現させた絹糸から活性を有する該タンパク質を調製するためには、アフィニティー精製、プロテアーゼ処理、還元剤の添加及び精練等を行い、外来タンパク質から内在性タンパク質を遊離・除去する工程が必要であった。また、絹糸から外来タンパク質を抽出するためには、変性剤(尿素、臭化リチウム溶液、塩化カルシウム/エタノール溶液、チオシアン酸リチウム、塩酸グアニジン、SDS等)にて該タンパク質を変性させ可溶化する工程が必要となる。さらに、変性して可溶化させたタンパク質から変性剤を取り除き、該タンパク質が活性を有するようにするために、リフォールデイング処理を施す工程を要する。しかしながら、かかる多工程を経て調製されたタンパク質、特に抗体は概してその活性が低くなる傾向にあった。



そこで、絹糸から抗体等の外来タンパク質をその活性を維持させたまま、非常に簡便に調製する方法の開発が望まれているが、未だ実用化されていないのが現状である。

産業上の利用分野


本発明は、一本鎖抗体(scFv)の製造方法に関し、より詳しくは、scFvとフィブロインタンパク質との融合タンパク質を発現させた絹糸を精せずに溶解し、再構成処理を施すことを特徴とする、scFvの製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
一本鎖抗体(scFV)とフィブロインタンパク質との融合タンパク質を発現させた絹糸を精せずに溶解する工程と、
該工程で得られた前記融合タンパク質の溶解液に再構成処理を施す工程と、
を含むことを特徴とする、前記融合タンパク質、内在性の他のフィブロインタンパク質及びセリシンを含む複合体の製造方法。

【請求項2】
分子内又は分子間の水素結合を切断する性質を有する溶液で絹糸を溶解する、請求項1に記載の製造方法。

【請求項3】
前記再構成処理を施した融合タンパク質の溶解液を凍結乾燥して粉砕する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。

【請求項4】
前記フィブロインタンパク質が、フィブロインL鎖及びフィブロインH鎖からなる群から選択される少なくとも一のタンパク質であることを特徴とする、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の製造方法。

【請求項5】
前記再構成処理が透析処理であることを特徴とする、請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の製造方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録


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