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ホスホランバン標的修飾RNAアプタマー

国内特許コード P130008719
掲載日 2013年3月19日
出願番号 特願2012-028555
公開番号 特開2013-162771
登録番号 特許第6041288号
出願日 平成24年2月13日(2012.2.13)
公開日 平成25年8月22日(2013.8.22)
登録日 平成28年11月18日(2016.11.18)
発明者
  • 乾 誠
  • 田中 貴絵
  • 酒井 大樹
  • 池田 安宏
  • 松崎 益徳
出願人
  • 国立大学法人山口大学
発明の名称 ホスホランバン標的修飾RNAアプタマー
発明の概要 【課題】遺伝子操作や遺伝子発現を伴わない心不全治療及び予防薬を提供するため、ホスホランバンに結合する物質、および当該物質が存在する心筋細胞内Ca2+動態の異常を是正する心不全治療及び予防薬を提供する。
【解決手段】ホスホランバンの細胞質ドメインを含む融合タンパク質をターゲットとして、SELEX法によりホスホランバン標的修飾mRNAアプタマーを同定した。かかるアプタマーやその欠失変異体等は、血中安定性を有し、ホスホランバンと結合しそのSERCA活性の抑制を解除し、SERCA(心筋小胞体のCa+ポンプATPase)活性を向上させ心筋細胞の収縮及び弛緩能力等を増強することを見いだした。ホスホランバン修飾mRNAアプタマーは、心不全治療及び予防薬として利用することができる。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


心臓の収縮力制御には、心筋細胞内のCa2+(カルシウムイオン)が中心的役割を果たすことが明らかになっている。心筋細胞内のCa2+量は、主として細胞内のCa2+貯蔵部位である心筋小胞体(SR)へのCa2+輸送と、心筋小胞体からのCa2+の遊離によって制御されている(図1、A)。心筋小胞体へのCa2+輸送により細胞質Ca2+濃度が低下すると心筋弛緩が起こり、心筋小胞体からのCa2+遊離によって細胞質Ca2+濃度が上昇すると収縮が起こる。



心筋細胞内のCa2+動態では、細胞内のCa2+を制御している心筋小胞体のCa2+ポンプATPase(SERCA)タンパク質と、その調節タンパク質のホスホランバン(PLN)のはたらきが重要である。ホスホランバンは、心筋小胞体のCa2+輸送を司るSERCAの抑制因子として働く。ホスホランバンはcAMP依存性リン酸化酵素(PKA)にリン酸化されることによってSERCAから解離し、Ca2+輸送が促進されることが明らかにされ、両タンパク質の結合部位も特定されている(非特許文献1、2)(図1、B)。



正常な心筋細胞内Ca2+動態は、カテコラミンからβ1受容体、アンデニル酸シクラーゼ、cAMP、PKAを介したシグナルを経て、電位依存性カルシウムチャネル(VDCC)のリン酸化、リアノジン受容体(RyR)のリン酸化、ホスホランバンのリン酸化などを介して、最終的に心筋の収縮力の増強及び弛緩の促進をもたらす。ここでホスホランバンのリン酸化はカテコラミンの心筋作用において主要な役割を果たしている(図2、I)。それに対し、不全心の心筋細胞内Ca2+動態は、Na-Ca交換(NCX)の異常による細胞外へのCa2+排出機能の低下、RyRの異常による心筋小胞体から細胞質へのCa2+漏出、SERCA-PLN系の異常によるSRへのCa2+取り込み能の低下から、細胞質のCa2+のオーバーロードが引き起こされ、さらにSERCAの発現が減少し、ホスホランバンの発現が上昇し、リン酸化ホスホランバンが減少することによりホスホランバンによるSERCA抑制が増強されている(図2、II)。



従来、強心薬を主とした心不全治療薬の開発には、動物への投与や取り出した拍動心臓への投与実験による心筋収縮力増強を指標にしたスクリーニング方法が用いられてきた。この方法で得られた強心薬は、細胞外から細胞内へのCa2+流入を増加させる作用を有するため、弛緩時の細胞質Ca2+濃度が充分に低下せず、充分な弛緩が得られないために、重症心不全をむしろ悪化させる方向に働くという問題があった。



それに対して、ホスホランバンを標的とした医薬品は、ホスホランバンが心臓特異的に発現していることから心臓特異的に作用し、さらに、心臓においてホスホランバンの発現は心房筋と比較して心室筋で多いことから、頻脈を引き起こしにくいと予想される。従来の強心薬等が細胞外から細胞内へのCa2+流入を増加させることとは異なり、ホスホランバンの阻害剤はSERCAによる心筋小胞体へのCa2+輸送を促進することから、細胞質Ca2+濃度が充分に低下して充分な弛緩が得られるだけでなく、心筋小胞体からのCa2+放出をも増加させることにより最終的に心筋収縮力が増強される。したがって、ホスホランバンを標的とした医薬品は、従来の強心薬と比べて副作用が少なく効果が高い、優れた心疾患治療薬となりうる。また、β1受容体やcAMPのシグナルと独立した作用機序であることから、これらのシグナルに作用する薬剤と併用することもできる利点がある。



上記のようなSERCA-PLN系が関与する機序に基づいた心不全治療の安全性と有効性は、遺伝子操作によりホスホランバンを欠損させたマウスの実験(非特許文献3、4)や、ウイルスを用いて不活性なホスホランバンを大量に発現させたラットの実験(非特許文献5)からも示されている。これらの心臓では心筋小胞体のSERCA活性が顕著に増強され、Ca2+動態の異常が是正されている。しかしながら、これらの遺伝子操作やウイルスによる遺伝子発現を治療方策として臨床で用いることは、安全性や技術的な観点から極めて困難である。



特許文献1では、心筋細胞内でのホスホランバンと筋小胞体SERCAの相互作用を阻害することにより、不全心臓における収縮能を高める心不全治療薬として、2つのペプチド複合体と、ホスホランバンの変異タンパク質を明らかにしている。しかしながら、ペプチド複合体や変異タンパク質などは抗原性を有するため、副作用や生体へ投与した場合に十分な効果が得られない可能性が高いという問題がある。また、ホスホランバンとの結合部位を含むCa2+ポンプ遺伝子組み換えタンパク質と、Ca2+ポンプとの結合部位を含むホスホランバン遺伝子組み換えタンパク質とを用いて、Ca2+ポンプとホスホランバンとの結合量を指標として心筋小胞体のCa2+輸送調節機構(Ca2+ポンプ-ホスホランバン系)に作用点を有する薬物のスクリーニング方法が開示されているが(特許文献2)、スクリーニング方法が開示されるにとどまり、そのような薬物は見いだされていない。



酵素や受容体に結合する短い1本鎖のDNAやRNAであるアプタマーは、医薬品としての利用可能性を有するため種々の分野で注目されている。特定のタンパク質に結合するアプタマーは、SELEX(Systematic evolution of ligands by exponential enrichment)法を用いて同定することができ、SELEX法により取得したアプタマーとして、プリオンタンパク質と特異的に結合するRNAアプタマー(特許文献3)の他、ビトロネクチンアプタマー(特許文献4)、HGF(肝細胞増殖因子)に特異的に結合するアプタマー(特許文献5)があり、それぞれ、プリオン病の診断薬、抗癌剤、癌転移抑制剤としての用途が開示されている。本願発明者らは、心臓でホスホランバンに作用し心筋小胞体のSERCA活性を促進するDNAアプタマーを同定し、開示しているが(特許文献6)、さらに安定性に優れ、SERCA活性化効果が高いアプタマーの開発が望まれていた。

産業上の利用分野


本発明は、ホスホランバンに特異的に結合してホスホランバン機能を阻害する、ホスホランバン標的修飾RNAアプタマーや、該修飾RNAアプタマーを含有する心不全治療薬等に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)~(d)のいずれかの塩基配列からなるホスホランバンに特異的な結合性を有する1本鎖RNAであって、硫黄修飾されていることを特徴とするホスホランバン標的修飾RNAアプタマー。
(a)配列番号10又は20で示される塩基配列;
(b)配列番号10又は20で示される塩基配列のN末端側あるいはC末端側の10塩基を欠失した塩基配列;
(c)前記(a)又は(b)に示される塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失・置換若しくは付加された塩基配列;
(d)前記(a)又は(b)に示される塩基配列との相同性が90%以上である塩基配列。

【請求項2】
配列番号10又は20で示される塩基配列が、配列番号20で示される塩基配列であることを特徴とする請求項1記載のホスホランバン標的修飾RNAアプタマー。

【請求項3】
1本鎖RNAが、配列番号20で示される塩基配列のC末端側の10塩基を欠失した塩基配列からなる、ホスホランバンに特異的な結合性を有する1本鎖RNAであることを特徴とする請求項1記載のホスホランバン標的修飾RNAアプタマー。

【請求項4】
血中で少なくとも24時間安定であることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載のホスホランバン標的修飾RNAアプタマー。

【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のホスホランバン標的修飾RNAアプタマーを有効成分とする、カルシウムイオンポンプATPase(SERCA)の活性増強剤。

【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のホスホランバン標的修飾RNAアプタマーを有効成分とする心筋の収縮及び弛緩機能増強剤。

【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載のホスホランバン標的修飾RNAアプタマーを有効成分とする心不全治療及び予防薬。

【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載のホスホランバン標的修飾RNAアプタマーを心不全治療及び予防薬を調製するために使用する方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
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