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温度応答性を有する生分解性グラフト共重合体 コモンズ 新技術説明会

国内特許コード P130008791
整理番号 163
掲載日 2013年3月27日
出願番号 特願2007-124753
公開番号 特開2008-280412
登録番号 特許第5264103号
出願日 平成19年5月9日(2007.5.9)
公開日 平成20年11月20日(2008.11.20)
登録日 平成25年5月10日(2013.5.10)
発明者
  • 大矢 裕一
  • 大内 辰郎
  • 長濱 宏治
出願人
  • 学校法人 関西大学
発明の名称 温度応答性を有する生分解性グラフト共重合体 コモンズ 新技術説明会
発明の概要

【課題】水溶液とした場合に温度に応答してゾル-ゲル転移型の温度応答性を示す生分解性ポリマー、及びその製造方法の提供。
【解決手段】ヒドロキシ酸ユニット及びアスパラギン酸ユニットを含む生分解性共重合体を主鎖とし、該主鎖に親水性ポリエーテルを含む側鎖を有してなる温度応答性を有する生分解性ポリマーであり、具体的には、一般式(A):

(式中、R及びRは独立して水素原子又はメチル基を示し、Rは親水性ポリエーテルを示す。)で表される温度応答性生分解性ポリマー。
【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


温度、pH、電界、及び化学物質の変化に対する刺激応答性ポリマーの物理化学的応答に焦点を合わせた多くの研究がなされてきた。特に、外部の温度変化に応じて相転移現象を示す温度応答性ポリマーは、薬物担体などの医療用材料として広く研究されてきた。



非特許文献1及び2によって開示されたN-イソプロピルアクリルアミド (NIPAAm) のホモポリマーまたはコポリマーは、1つの類である。もう1つの類は、例えば、非特許文献3によって開示されたプルロニック(ポロキサマー, Poloxamer, 商標)のような、ミドルブロックとして疎水性ポリ(プロピレンオキシド) および側面サイドブロックとして親水性ポリ(エチレンオキシド) からなるトリブロック共重合体である。このトリブロック共重合体は温度に応答して溶液状態(ゾル)から溶媒を含んだゲル状態へ転移する挙動(以下,ゾル-ゲル転移と表記)を示す。これはに、特定の分子量および組成範囲を有する共重合体水溶液が、ゾル-ゲル転移温度より低い温度では水溶液として存在するが、温度が転移温度より高いとき(例えば体温まで上昇するとき)、共重合体間の相互作用によって不溶性ゲルを形成するという現象である。外部からの添加物なしに,留置されたその場で(in situ)ゾルからゲルへの変化が可能なこれらのポリマーは,体内への注射による投与が可能な医療用材料として用いることができる。投与の際および投与後において、外科的処置の必要が無く、生体内において低侵襲的に任意の希望の形状のインプラントを形成できるという利点を有する。つまり、生理(薬理)活性物質とポリマー溶液を体内に注射することで容易に生理(薬理)活性物質を内部に取込んだゲルが調製でき,それをリザーバーとした生理(薬理)活性物質の徐放が可能である。また,適した細胞をポリマー溶液に懸濁させたものを体内に注射することで、容易に細胞を内部に取込んだゲルが調製できる。



この様に、in situでゲル化する材料は、注射によって生体内に埋植可能な埋め込み型ドラッグデリバリーシステムや生体組織工学 (tissue engineering) 用マトリックスとして注目を集めている。理想的な注射可能な系として機能するため、ポリマーの水溶液は、調製条件では注射可能な程度の低い粘性を示し、そして生理条件下(37℃付近)で迅速にゲル化する必要がある。医用材料として考慮する場合、重合体の生体適合性および安全性も重要な問題である。このため、その材料は生分解性で代謝可能あるいは毒性を発現することなく体外へ排泄される程度の分子量にまで分解される必要がある。また,その分解中、含水性に富んだヒドロゲルの性質を保持することにより、生体組織の刺激を誘起しないようでなければならない。



しかしながら、ポロキサマー型コポリマー(プルロニック)は非生分解性であり、そして動物実験で、ポロキサマーの水溶液を腹腔内に注射するとトリグリセリドとコレステロールが増加することが示されている(非特許文献4)。



最近、Jeongらは、生分解性で、in situでゲル化するポリ(エチレングリコール‐block‐(DL‐乳酸‐random‐グリコール酸)‐block‐エチレングリコ-ル); (PEG‐PLGA‐PEG)トリブロック共重合体を報告している(特許文献1参照)。



また、非特許文献5では、(PLGA‐PEG‐PLGA)トリブロック共重合体を報告している。



しかし、最初透明であったこれらのゲルは、加水分解に伴って不透明になりひいてはゲルが崩壊してしまう。また、形態構造の変化と界面または相の発生は、生体内のタンパク質を変性する可能性があり、または生体組織工学での細胞損壊の原因になる可能性が指摘されている。さらに、分子量が低いためこのヒドロゲルの力学的強度は低く、生体組織との力学的適合性に乏しいとの指摘もある。



医療分野では、通常、生体内の臓器と異なる力学的な特性を有する人工材料を埋植すると、生体内で力学的性質の違いに起因する連鎖反応が起こることが知られており、そのため、生体内の臓器と同様の力学的な特性を有する材料の開発が求められている。



しかし、今まで開発されたin situでゲル化する生分解性ポリマーのうち、生体内に埋植後十分な力学強度、生体適合性を併せ持ったものは極めて少ない。



例えば、非特許文献6~7には、8本に分岐した構造を持つポリエチレングリコール(PEG)とポリ(L‐乳酸)からなる分岐ブロック共重合体の末端に、メソゲン基(コレステロール基)を結合させたポリマーが、温度に応答してゾル-ゲル転移を示し,ゲル状態で高い力学的強度を示すことを報告されている。



しかし,このポリマーを合成するためには、8本に分岐したPEGという特殊なポリマーを調達する必要があり,またそれを用いて乳酸の環状二量体(ラクチド)を重合した後に,コレステロール誘導体を化学修飾する必要があり、原料の調達および製造方法に制約がある。



ところで、ポリ(L‐乳酸)などのポリ乳酸系高分子の優れた特性を維持あるいは向上させながら、化学修飾による用途の拡張と物性の制御を行う試みがなされている。例えば、非特許文献8~11には、官能基を有する環状コモノマーとのランダムおよびブロック共重合や、ヒドロキシル基を有する機能分子を開始種として用いた重合反応、グラフト重合といった高分子合成の手法を活用して、様々な分子形態(ランダム、ブロック、グラフト)および化学的性質(反応性官能基、親疎水性)を有する乳酸共重合体の合成が提示されている。



具体的には、1)側鎖に反応性官能基を有するデプシペプチド-乳酸・ランダム共重合体(非特許文献12~15)、2)側鎖に反応性官能基を有するデプシペプチド-乳酸・ブロック共重合体(非特許文献16~17)、3)ポリ乳酸グラフト化多糖(非特許文献18~19)、4)分岐型ポリエーテル-ポリ乳酸ブロック共重合体(非特許文献20~21)などが合成されている。



このように、様々な様態のポリ乳酸系高分子が開発されてきているが、生体適合性を有し、温度に応答したゾル-ゲル転移を示し,かつゲル状態で高い力学的強度を示し、簡便に入手可能な材料から合成できる生分解性材料はいまだ得られていないのが現状である。

【特許文献1】米国特許第6117949号明細書

【非特許文献1】Baeら Makromol. Chem. Rapid Commun., 8, 481-485 (1987)

【非特許文献2】Chenら Nature, 373, 49-52 (1995)

【非特許文献3】Malstonら Macromolecules, 25, 5440-5445 (1992)

【非特許文献4】Wout et. al, J. Parenteral Sci. & Tech., 46, 192-200 (1992)

【非特許文献5】Doo Sung Lee, Macromol. Rapid Commun. 2001, 22, 587.

【非特許文献6】第55回高分子学会年次大会 高分子学会予稿集 55巻1935頁(平成18年5月10日発行)

【非特許文献7】第35回医用高分子シンポジウム 高分子学会講演予稿集 23~24頁(2006年8月1日発行)

【非特許文献8】大矢裕一:生分解性高分子の現状と新展開.人工臓器 1999,28:582-589

【非特許文献9】大矢裕一,大内辰郎:生分解性バイオマテリアルとしての新しいポリ乳酸系高分子.高分子加工 1999,48:530

【非特許文献10】大矢裕一:ポリ乳酸をベースとした新規な生分解性高分子の合成とバイオマテリアルとしての応用.高分子論文集 2002,59:484-498

【非特許文献11】大内辰郎,大矢裕一:新規なポリ乳酸系医用材料.未来材料 2002,2:30-35.

【非特許文献12】Ouchi T,et al:Macromol Chem Rapid Commun 1993,14:825-831

【非特許文献13】Ouchi T,et al:Macromol Chem Phys 1996,197:1823-1833

【非特許文献14】Ouchi T,et al:J Polym Sci Part A:Polym Chem 1997,35:377-383

【非特許文献15】Ouchi T,et al:J Polym Sci Part A:Polym Chem 1998,36:1283-1290.

【非特許文献16】Ouchi T,et al:Designed Monom Polym 2000,3:279-287

【非特許文献17】Ouchi T,et al:J Polym Sci Part A:Polym Chem 2002,40:1218-1225.

【非特許文献18】Ohya Y,et al:Macromolecules 1998,31:4662-4665

【非特許文献19】Ohya Y,et al:Macromol Chem Phys 1998,199:2017-2022.

【非特許文献20】Nagahama K,et al:Polym J 2006,38:852-860.

【非特許文献21】Nagahama K,et al:Macromol Biosci 2006,6:412-419.

産業上の利用分野


本発明は、温度に応答してゲル化する生分解性グラフト共重合体及びその製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(A):
【化学式1】


(式中、R及びRは独立して水素原子又はメチル基を示し、Rは親水性ポリエーテルを示し、xは20~1000を示し、yは0~100を示し、zは2~1000を示し、z/(x+y+z)が0.002~0.5であり、x、y及びzの各ユニットの配列は上記配列の順に限定されない。)
で表される温度応答性を有する生分解性ポリマー。

【請求項2】
一般式(A)においてRで示される親水性ポリエーテルがポリアルキレングリコールである請求項1に記載の温度応答性を有する生分解性ポリマー。

【請求項3】
一般式(A)においてRで示される親水性ポリエーテルが一般式(B):
【化学式2】


(式中、Rはメチル基、エチル基又は水素原子を示し、nは3~500を示す。)
で表される基である請求項1に記載の温度応答性を有する生分解性ポリマー。

【請求項4】
数平均分子量(Mn)が3,000~500,000である請求項1~3のいずれかに記載の温度応答性を有する生分解性ポリマー。

【請求項5】
前記一般式(A)において、xが50~200を示し、yが0~20を示し、zが5~100を示し、x/(x+y+z)が0.6~0.95であり、z/(x+y+z)が0.05~0.4であり、nが40~200である請求項3又は4に記載の温度応答性生分解性ポリマー。

【請求項6】
数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が1.00~5.00である請求項1~5のいずれかに記載の温度応答性を有する生分解性ポリマー。

【請求項7】
濃度20wt%の水溶液としたときの、温度37℃において形成されるヒドロゲルの貯蔵弾性率が50~50000Paである請求項1~6のいずれかに記載の温度応答性を有する生分解性ポリマー。

【請求項8】
一般式(A):
【化学式3】


(式中、R及びRは独立して水素原子又はメチル基を示し、Rは親水性ポリエーテルを示し、xは20~1000を示し、yは0~100を示し、zは2~1000を示し、z/(x+y+z)が0.002~0.5であり、x、y及びzの各ユニットの配列は上記配列の順に限定されない。)
で表される温度応答性生分解性ポリマーの製造方法であって、一般式(C):
【化学式4】


(式中、R、R、x、y及びzは前記に同じ。)
で表されるカルボン酸化合物と、一般式(D):
HO-R (D)
(式中、Rは前記に同じ。)
で表されるアルコールを縮合反応させることを特徴とする製造方法。

【請求項9】
前記請求項1~7のいずれかに記載の温度応答性を有する生分解性ポリマーを含む医療用材料。
産業区分
  • 高分子化合物
  • 薬品
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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