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温度応答性を有する生分解性ポリマー及びその製造方法 コモンズ 新技術説明会

国内特許コード P130008792
整理番号 164
掲載日 2013年3月27日
出願番号 特願2007-196499
公開番号 特開2009-029967
登録番号 特許第5171146号
出願日 平成19年7月27日(2007.7.27)
公開日 平成21年2月12日(2009.2.12)
登録日 平成25年1月11日(2013.1.11)
発明者
  • 大矢 裕一
  • 大内 辰郎
  • 長濱 宏治
出願人
  • 学校法人 関西大学
発明の名称 温度応答性を有する生分解性ポリマー及びその製造方法 コモンズ 新技術説明会
発明の概要

【課題】新規な温度応答性を有する生分解性ポリマー及びその製法、温度に応答してゲル化する生分解性共ポリマーブレンド物を提供する。
【解決手段】分岐型ポリエーテルの末端及び/又は側鎖に、乳酸を含む脂肪族ポリエステルと直鎖型ポリエーテルとを含む共重合鎖が結合してなる生分解性高分子。
【選択図】図1

従来技術、競合技術の概要


温度,pH,電界,及び化学物質の変化に対する刺激応答性ポリマーの物理化学的応答に焦点を合わせた多くの研究がなされてきた。特に,外部の温度変化に応じて相転移現象を示す温度応答性ポリマーは,薬物担体などの医療用材料として広く研究されてきた。



非特許文献1及び2によって開示されたN-イソプロピルアクリルアミド (NIPAAm) のホモポリマーまたはコポリマーは,1つの類である。もう1つの類は,例えば,非特許文献3によって開示されたプルロニック(ポロキサマー, Poloxamer, 商標)のような,ミドルブロックとして疎水性ポリ(プロピレンオキシド) および側面サイドブロックとして親水性ポリ(エチレンオキシド) からなるトリブロック共重合体である。このトリブロック共重合体は温度に応答して溶液状態(ゾル)から溶媒を含んだゲル状態へ転移する挙動(以下,ゾル-ゲル転移と表記)を示す。これはに,特定の分子量および組成範囲を有する共重合体水溶液が,ゾル-ゲル転移温度より低い温度では水溶液として存在するが,温度が転移温度より高いとき(例えば体温まで上昇するとき),共重合体間の相互作用によって不溶性ゲルを形成するという現象である。外部からの添加物なしに,留置されたその場で(in situ)ゾルからゲルへの変化が可能なこれらのポリマーは,体内への注射による投与が可能な医療用材料として用いることができる。投与の際および投与後において,外科的処置の必要が無く,生体内において低侵襲的に任意の希望の形状のインプラントを形成できるという利点を有する。つまり,生理(薬理)活性物質とポリマー溶液を体内に注射することで容易に生理(薬理)活性物質を内部に取込んだゲルが調製でき,それをリザーバーとした生理(薬理)活性物質の徐放が可能である。また,適した細胞をポリマー溶液に懸濁させたものを体内に注射することで,容易に細胞を内部に取込んだゲルが調製できる。



この様に,in situでゲル化する材料は,注射によって生体内に埋植可能な埋め込み型ドラッグデリバリーシステムや組織工学 (tissue engineering) 用マトリックスとして注目を集めている。理想的な注射可能な系として機能するため,ポリマーの水溶液は,調製条件では注射可能な程度の低い粘性を示し,そして生理条件下(37℃付近)で迅速にゲル化する必要がある。医用材料として考慮する場合,重合体の生体適合性および安全性も重要な問題である。このため,その材料は生分解性で代謝可能あるいは毒性を発現することなく体外へ排泄される程度の分子量にまで分解される必要がある。また,その分解中,含水性に富んだハイドロゲルの性質を保持することにより,生体組織の刺激を誘起しないようでなければならない。



しかしながら,ポロキサマー型コポリマー(プルロニック)は非生分解性であり,そして動物実験で,ポロキサマーの水溶液を腹腔内に注射するとトリグリセリドとコレステロールが増加することが示されている(非特許文献4)。



最近,Jeongらは,生分解性で,in situで温度に応答してゲル化するポリ(エチレングリコール-block-(DL-乳酸-random-グリコール酸)-block-エチレングリコ-ル); (PEG-PLGA-PEG)トリブロック共重合体を報告している(特許文献1参照)。また,非特許文献5では,類似の性質を示す(PLGA-PEG-PLGA)トリブロック共重合体を報告している。



しかし,最初透明であったこれらのゲルは,加水分解に伴って不透明になりひいてはゲルが崩壊してしまう。また,形態構造の変化と界面または相の発生は,生体内のタンパク質を変性する可能性があり,または生体組織工学での細胞損壊の原因になる可能性が指摘されている。さらに,分子量が低いためこのハイドロゲルの力学的強度は低く,生体組織との力学的適合性に乏しいとの指摘もある。



医療分野では,通常,生体内の臓器と異なる力学的な特性を有する人工材料を埋植すると,生体内で力学的性質の違いに起因する連鎖反応が起こることが知られており,そのため,生体内の臓器と同様の力学的な特性を有する材料の開発が求められている。



しかし,今まで開発されたin situでゲル化する生分解性ポリマーのうち,生体内に埋植後十分な力学強度,生体適合性を併せ持ったものは極めて少ない。



例えば,非特許文献6~7には,8本に分岐した構造を持つポリエチレングリコール(PEG)とポリ(L-乳酸)からなる分岐ブロック共重合体の末端に,メソゲン基(コレステロール基)を結合させたポリマーが,温度に応答してゾル-ゲル転移を示し,ゲル状態で高い力学的強度を示すことを報告されている。



ところで,ポリ(L-乳酸)などのポリ乳酸系高分子の優れた特性を維持あるいは向上させながら,化学修飾による用途の拡張と物性の制御を行う試みがなされている。例えば,非特許文献8~11には,官能基を有する環状コモノマーとのランダムおよびブロック共重合や,ヒドロキシル基を有する機能分子を開始種として用いた重合反応,グラフト重合といった高分子合成の手法を活用して,様々な分子形態(ランダム,ブロック,グラフト)および化学的性質(反応性官能基,親疎水性)を有する乳酸共重合体の合成が提示されている。



具体的には,1)側鎖に反応性官能基を有するデプシペプチド-乳酸・ランダム共重合体(非特許文献12~15),2)側鎖に反応性官能基を有するデプシペプチド-乳酸・ブロック共重合体(非特許文献16~17),3)ポリ乳酸グラフト化多糖(非特許文献18~19),4)分岐型ポリエーテル-ポリ乳酸ブロック共重合体(非特許文献20~21)などが合成されている。



このように,様々な様態のポリ乳酸系高分子が開発されてきているが,生体適合性を有し,温度に応答したゾル-ゲル転移を示し,かつゲル状態で高い力学的強度を示し,簡便に入手可能な材料から合成できる生分解性材料はいまだ得られていないのが現状である。



ところで,ポリ乳酸には光学異性体であるポリ(L-乳酸)とポリ(D-乳酸)があり,それらは適当な条件で混合すると1:1の安定なステレオコンプレックスを形成し,融点が約50℃上昇することが知られている。これをポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体に適応し,ポリ(L-乳酸)-PEG共重合体とポリ(D-乳酸)-PEG共重合体水溶液を混合することにより,ステレオコンプレックスによりハイドロゲルを形成した研究例として,木村らの報告(非特許文献22~23),Feijenらの報告(非特許文献24)があるが,これらはいずれも,L体ポリマーとD体ポリマーの混合によりゲル化が誘発されるものであり,昇温によりゾル‐ゲル転移を示すものではない。

【特許文献1】米国特許第6117949号明細書

【非特許文献1】Baeら Makromol. Chem. Rapid Commun., 8, 481-485 (1987)

【非特許文献2】Chenら Nature, 373, 49-52 (1995)

【非特許文献3】Malstonら Macromolecules, 25, 5440-5445 (1992)

【非特許文献4】Wout et. al, J. Parenteral Sci. & Tech., 46, 192-200 (1992)

【非特許文献5】Doo Sung Lee, Macromol. Rapid Commun. 2001, 22, 587.

【非特許文献6】第55回高分子学会年次大会 高分子学会予稿集 55巻1935頁(平成18年5月10日発行)

【非特許文献7】第35回医用高分子シンポジウム 高分子学会講演予稿集 23-24頁(2006年8月1日発行)

【非特許文献8】大矢裕一:生分解性高分子の現状と新展開.人工臓器 1999,28:582-589

【非特許文献9】大矢裕一,大内辰郎:生分解性バイオマテリアルとしての新しいポリ乳酸系高分子.高分子加工 1999,48:530

【非特許文献10】大矢裕一:ポリ乳酸をベースとした新規な生分解性高分子の合成とバイオマテリアルとしての応用.高分子論文集 2002,59:484-498

【非特許文献11】大内辰郎,大矢裕一:新規なポリ乳酸系医用材料.未来材料 2002,2:30-35

【非特許文献12】Ouchi T., et al.: Macromol. Chem. Rapid Commun. 1993, 14: 825-831

【非特許文献13】Ouchi T., et al.: Macromol. Chem. Phys. 1996, 197: 1823-1833

【非特許文献14】Ouchi T., et al.: J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem., 1997, 35: 377-383

【非特許文献15】Ouchi T., et al.: J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem., 1998, 36: 1283-1290

【非特許文献16】Ouchi T., et al.: Designed Monom. Polym. 2000, 3: 279-287

【非特許文献17】Ouchi T., et al.: J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem., 2002, 40: 1218-1225

【非特許文献18】Ohya, Y., et al.: Macromolecules 1998, 31: 4662-4665

【非特許文献19】Ohya, Y., et al.: Macromol. Chem. Phys. 1998, 199: 2017-2022

【非特許文献20】Nagahama, K., et al.: Polym. J., 2006, 38: 852-860

【非特許文献21】Nagahama, K., et al.: Macromol. Bioscie., 2006, 6: 412-419

【非特許文献22】Kimura, Y., et al.: Macromol. Biosci., 1, 5 (2001).

【非特許文献23】Kimura, Y., et al.: Macromol. Biosci., 4, 361 (2004)

【非特許文献24】Feijen, J., et al.: Biomacromolecules 7, 2790 (2006)

産業上の利用分野


本発明は,温度に応答してゲル化する生分解性ポリマー及びその製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
分岐型ポリエーテル(B鎖)の末端及び/又は側鎖に、乳酸を含む脂肪族ポリエステル(A鎖)と直鎖型ポリエーテル(C鎖)とを含む共重合鎖が結合してなる生分解性ポリマーであって、
B鎖がポリグリセリンとポリアルキレングリコールとを縮合して得られるポリエーテルであり、
C鎖がポリエチレングリコールであり、
B鎖の末端及び/又は側鎖の水酸基を介してA鎖が結合し、当該A鎖がC鎖と結合してなり、かつ、
(B鎖の末端及び/又は側鎖)-(A鎖-C鎖)で表される、
前記生分解性ポリマー。

【請求項2】
一般式(C):
【化学式1】


(式中,Rは水素原子又はアルキル基を示す。mは同一又は異なって5-120の数を示し,nは同一又は異なって14-120の数を示し,pは同一又は異なって2-120の数を示し、qは0-28の数を示す。*は不斉炭素を示す。)
で表される化合物である請求項1に記載の生分解性ポリマー。

【請求項3】
一般式(C)において、不斉炭素*が同一又は異なってR配置又はS配置である請求項2に記載の生分解性ポリマー。

【請求項4】
一般式(A):
【化学式2】


(式中,Rは水素原子又はアルキル基を示す。mは同一又は異なって5-120の数を示し,nは同一又は異なって14-120の数を示し,pは同一又は異なって2-120の数を示し、qは0-28の数を示す。)
で表される化合物、及び一般式(B):
【化学式3】


(式中,R’は水素原子又はアルキル基を示す。m’は同一又は異なって5-120の数を示し,n’は同一又は異なって14-120の数を示し,p’は同一又は異なって2-120の数を示し、q’は0-28の数を示す。)
で表される化合物を含む生分解性ポリマー混合物。

【請求項5】
前記一般式(A)で表される化合物と一般式(B)で表される化合物の重量比が、1:4~4:1である請求項4に記載の生分解性ポリマー混合物。

【請求項6】
前記一般式(A)及び(B)で表される化合物の数平均分子量(Mn)が、同一又は異なって10,000~200,000である請求項4又は5に記載の生分解性ポリマー混合物。

【請求項7】
前記一般式(A)及び(B)で表される化合物の数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が、同一又は異なって1.05~2.50である請求項4~6のいずれかに記載の生分解性ポリマー混合物。

【請求項8】
前記請求項1~3のいずれかに記載の生分解性ポリマーを含む医療用材料。

【請求項9】
前記請求項4~7のいずれかに記載の生分解性ポリマー混合物を含む医療用材料。

【請求項10】
一般式(C):
【化学式4】


(式中,Rは水素原子又はアルキル基を示す。mは同一又は異なって5-120の数を示し,nは同一又は異なって14-120の数を示し,pは同一又は異なって2-120の数を示し、qは0-28の数を示す。*は不斉炭素を示す。)
で表される化合物の製造方法であって,一般式(D):
【化学式5】


(式中,m,n,q及び*は前記に同じ。)
で表される化合物体と,一般式(E):
【化学式6】


(式中,R及びpは前記に同じ。)
で表される化合物を縮合反応させることを特徴とする製造方法。
産業区分
  • 高分子化合物
  • 薬品
  • 治療衛生
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中
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