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誘電泳動を利用する細胞識別方法 コモンズ

国内特許コード P130009029
整理番号 KT12-02
掲載日 2013年4月10日
出願番号 特願2012-111134
公開番号 特開2013-238463
出願日 平成24年5月15日(2012.5.15)
公開日 平成25年11月28日(2013.11.28)
発明者
  • 安川 智之
  • 水谷 文雄
  • 畠中 啓伸
出願人
  • 兵庫県
発明の名称 誘電泳動を利用する細胞識別方法 コモンズ
発明の概要

【課題】誘電泳動を利用する従来の細胞識別方法よりも、表面抗原を発現している細胞のマイクロバンドアレイ電極上への捕捉率が高い、新規な細胞識別方法を提供すること。
【解決手段】細胞懸濁液の導電率を200mS/m~500mS/mとし、交互くし型マイクロバンドアレイ電極のすべてのバンド電極と対向する導電性基板との間に50kHz以上500kHz以下の周波数と15Vpp以上20Vpp以下の振幅(印加電圧強度)とを有する交流電圧を印加する。その後、片側の電極への交流電圧印加を停止する。それにより、マイクロバンドアレイ電極表面に固定された抗体と反応せずに捕捉されなかった細胞だけを、片側のバンドアレイ電極上へと効率よく移動及び集積させることが可能となる。
【選択図】図8

従来技術、競合技術の概要


白血球細胞の表面抗原は、細胞表膜表面に存在するタンパク質であり、それぞれが固有の機能を有する。表面抗原の発現パターンは、細胞の種類、状態、成熟度又は分化度によって異なり、発現パターンを知ることは医学的及び生物学的に極めて重要な知見となる。細胞の表面抗原発現パターンを解析するイムノフェノタイピングには、抗体を使用した手法が有効である。



イムノフェノタイピングに利用されるモノクローナル抗体は、CD分類(cluster of differentiation)されている。測定対象とする表面抗原に対する抗体を細胞に捕捉させれば、細胞群の中から抗体が反応した細胞を識別することが可能となる。例えば、イムノフェノタイピングにより細胞の成熟度又は分化度を知ることができ、細胞分化の基礎研究においては重要な指標となる。このように、臨床診断、特に白血病診断においては、CD抗体を用いたイムノフェノタイピングが不可欠となっている。



これまでに、白血病の分類、進行度、又は白血病細胞の帰属を決定する際に指標となるCD抗原については、多くの知見が蓄積されている。CD33抗原もそのうちの1つである。CD33は、細胞間接着因子の一種であると推測されている67kDaの膜貫通型糖タンパク質であり、骨髄球性の細胞に発現するために骨髄性白血病の陽性マーカーとして用いられている。具体的には、イムノフェノタイピングを行い、CD33又はCD13が陽性でCD19及びCD20が陰性であれば、骨髄性白血病と診断される。



イムノフェノタイピングの従来法としては、フローサイトメトリー(FCM)を利用する方法、磁気細胞分離装置(MACS)を利用する方法、抗体アレイを利用する方法が挙げられる(非特許文献1~6)。FCMを利用する方法は、免疫蛍光染色法に基づいた識別方法であり、細胞表面抗原を蛍光分子で標識した抗体によってラベルし、溶液中を流れる細胞にレーザー光を照射し、蛍光を発する細胞が光学的に計測される。表面抗原を異なる種類の蛍光分子でラベルすることにより、複数種の表面抗原を対象に同時計測が可能となる。FCMは、精密な分析結果が得られるために、イムノフェノタイピング手法の基準となっているが、免疫蛍光染色操作には1時間以上を要する。また、それぞれの抗体について濃度及び反応時間の最適化を行う必要があり、操作が煩雑である。さらに、フローサイトメーターは、大型の自動化機器であるため非常に高価な装置であり、熟練した技術者が操作する必要もある。



MACSを利用する方法は、細胞表面抗原を磁性微粒子で標識し、強力な磁場のカラムに導入することにより、磁性微粒子で修飾された細胞の溶出を遅らせることにより、目的とする表面抗原を発現せず、磁気微粒子によって標識されていない細胞画分は、カラムを素通り早く溶出され、磁性微粒子で修飾された細胞は遅く溶出されるため、両者を分離することが可能となる。しかし、この方法では、発現細胞の存在比を知るためには、それぞれの画分の細胞濃度を計測する必要がある。また、分離の状況をリアルタイムで観測することはできず、複数種類の表面抗原への適用も困難である。



抗体アレイを利用する方法では、ガラス上の金薄膜又はニトロセルロース膜のような基板に数十種類の抗体をそれぞれスポット状に固定化し、抗体アレイを作製する。その抗体アレイ上に細胞を播種し、30分程度のインキュベーションを行うことにより。細胞が基板表面にスポット固定された抗体と接触し、その場所に固定化された抗体に対応する表面抗原を発現している細胞は、免疫反応により基板表面に捕捉される。一方、対応する表面抗原を発現していない細胞は捕捉されず、後続する洗浄行程で基板表面から除去される。細胞の捕捉された位置情報及びスポット固定化された抗体の種類から、細胞群において、どのような表面抗原を発現している細胞がどのくらいの比率で存在しているかを知ることができる。



抗体アレイを用いる方法は、簡便かつ安価で、パラレル化が容易な優れた方法である。しかし、抗体アレイ上に添加した細胞懸濁液中の細胞を積極的に移動させていないため、沈降した細胞の表面濃度とスポットの大きさとを最適化する必要がある。また、細胞が沈降し、細胞表面の抗原と基板表面の抗体とが免疫反応を起こすためには、30分程度のインキュベーション時間を要する。さらに、非捕捉細胞の除去は、手作業による洗浄操作によって行う必要があるために、操作に時間がかかるだけでなく、熟練した技術者が操作する場合でなければ、論文で発表されている70%~90%という高い細胞捕捉率を達成することは極めて困難である。



そこで、本発明者等は、誘電泳動による細胞操作を用いることにより、細胞を迅速に識別できる方法を開発した(非特許文献7)。非特許文献7に開示されている細胞識別方法では、表面抗原としてCD33を発現しているHL60細胞を対象として、抗CD33抗体を固定化した交互くし型マイクロバンドアレイ電極を組み込んだマイクロ流路デバイスを用い、HL60細胞を正の誘電泳動による引力を利用して迅速にマイクロバンドアレイ電極表面に移動させる。これにより、細胞と抗体を強制的に接触させて、免疫反応による結合を促し、HL60細胞をマイクロバンドアレイ電極表面に不可逆的に捕捉する。



次に、マイクロバンドアレイ電極に印加している交流電圧の周波数を切り替え、負の誘電泳動による電極からの斥力を利用して、免疫反応を起こさずにマイクロバンドアレイ電極表面に捕捉されなかったHL60細胞を、バンド電極間へと除去する。それによって、CD33を発現しているHL60細胞のみがバンド電極間の表面に保持される。このようにして、表面抗原発現細胞の識別と空間的な分離とが行われる。



非特許文献7に開示される細胞識別方法は、わずか数分で表面抗原発現細胞を識別可能であり、均一な力で非捕捉細胞を除去できるために再現性にも優れる。また、蛍光ラベルが不要であり、操作が簡便で、所要時間も短いという特徴がある。

産業上の利用分野


本発明は、誘電泳動による細胞操作技術を利用し、特定の抗原を表面に発現している細胞を、細胞群の中から簡便かつ迅速に識別する、細胞識別方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
マイクロ流路型デバイスを利用し、表面に特定抗原を発現している細胞を誘電泳動によって識別する細胞識別方法であって、
前記マイクロ流路型デバイスは、
基板と、
基板上に配置される交互くし型マイクロバンドアレイ電極と、
前記交互くし型マイクロバンドアレイ電極のバンド電極が露出するように前記交互くし型マイクロバンドアレイ電極上に配置される絶縁性薄膜と、
前記絶縁性薄膜上に配置されるスペーサーと、
前記交互くし型マイクロバンドアレイ電極に対向するように前記スペーサー上に配置される導電性基板とを備え、
前記基板表面の少なくともバンド電極間には細胞表面に発現する抗原に対する抗体が固定化されており、
前記方法は、
細胞を含有する導電率200mS/m以上500mS/m以下の試料液を調製する工程Aと、
前記試料液を前記マイクロ流路型デバイスのバンド電極上に導入する工程Bと、
前記交互くし型マイクロバンドアレイ電極のすべてのバンド電極と前記導電性基板との間に50kHz以上500kHz以下の周波数と15Vpp以上25Vpp以下の振幅とを有する交流電圧を印加する工程Cと、
前記工程C後、交互くし型マイクロバンドアレイ電極を観察し、電極間ギャップに存在する細胞数を測定する工程E0と、
前記工程E0後、前記交互くし型マイクロバンドアレイ電極のバンド電極のうち、一つおきとなる半数のバンド電極と前記導電性基板との間の交流電圧の印加を停止する工程Dと、
前記工程D後、交互くし型マイクロバンドアレイ電極を観察し、電極間ギャップに存在する細胞数を測定する工程Eと、
を順に有する方法。

【請求項2】
前記工程Dの前に、前記交互くし型マイクロバンドアレイ電極のバンド電極のうち、一つおきとなる半数のバンド電極と前記導電性基板との間の交流電圧の振幅を、工程Cの振幅の85%~100%の間で周期的に変動させる工程D0をさらに有する、請求項1に記載の細胞識別方法。

【請求項3】
前記表面に特定抗原を発現している細胞が白血球であり、前記基板表面に固定される抗体が抗CD33抗体である、請求項1又は2に記載の細胞識別方法。

【請求項4】
前記導電性基板がインジウムスズ酸化物から構成される基板である、請求項1乃至3に記載の細胞識別方法。

【請求項5】
前記工程D0の実行時間が1秒以上30秒以下である、請求項2に記載の細胞識別方法。
産業区分
  • 治療衛生
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2012111134thum.jpg
出願権利状態 審査請求前
FAX又はEメールでお問い合わせください。


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