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防護服着用作業員の熱中症発症リスク管理システムの作動方法

国内特許コード P130009088
整理番号 13673
掲載日 2013年4月17日
出願番号 特願2011-189457
公開番号 特開2013-048812
登録番号 特許第5842237号
出願日 平成23年8月31日(2011.8.31)
公開日 平成25年3月14日(2013.3.14)
登録日 平成27年11月27日(2015.11.27)
発明者
  • 高橋 直樹
出願人
  • 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
発明の名称 防護服着用作業員の熱中症発症リスク管理システムの作動方法
発明の概要 【課題】作業員にかかる負担を最小限に抑えつつ、熱中症に対する防護服着用作業員の安全と作業効率の向上という相反する要求を同時に満たすことができるようにする。
【解決手段】防護服着用作業員の鼓膜温を赤外線方式による耳栓型鼓膜温測定センサで検出し、実測した鼓膜温を、着用防護服の被服条件、作業環境の温湿度条件、及び作業時の運動強度に応じて予め求めておいた予測式に入力して直腸温を予測し、予測した直腸温に基づいて直腸温基準の熱中症の発症リスク管理を行う方法である。予測式は、例えば、直腸温を目的変数とし、鼓膜温を説明変数として回帰分析を行うことで得られる、定数項有りの一次式とする。予測した直腸温の直近の時間的な変化傾向から、防護服の脱装に要する時間経過後の直腸温を推測し、その推測した直腸温が警報設定値を超える時に作業中断・防護服脱装を指示し退域行動に移るようにリスク管理を行う。
【選択図】図3
従来技術、競合技術の概要


原子力施設では、事故等の非常事態の発生時に限らず、設備機器等の健全性を維持するために定期的に実施される点検や保守作業、更には施設の解体・撤去などに際して、作業員の放射性物質による身体汚染を防止するために、防護服や呼吸防護具(マスク)が着用される。また、一般産業界等においても、人体に対して有害な化学物質等から身体を保護することを目的とした防護服(アスベスト防護服、農薬散布揚防護服、消防服など)の着用が行われている。



一般に防護服は、通常の作業服(綿服等)に比べて通気性、透湿性が悪く、作業に伴う筋労作によって発生した熱や汗は防護服内に留まるため、防護服内の空気は飽和状態となり、体温を下げるために分泌された汗の蒸発は著しく妨げられる。その結果、汗は蒸発することなく体表面を流れ落ち、体温低下には殆ど寄与しない無効発汗状態となり、体温は下がることなく上昇し続ける。加えて、体内からは汗として水分及び塩(ミネラル)が一方的に失われていき、防護服を着用する作業員に大きな生理的負担を与える。更に呼吸防護具の着用は、呼吸抵抗を大きくし、活動に必要な酸素摂取を妨げると共に、作業中は常時呼吸防護具を着用し続けなければならず、汗として失われた水分や塩の補給を行うことがができない。



周知のように、体液調節機能と体温調節機能は密接に関連しており、体液の状態変化は体温調節反応に大きな影響を及ぼす。とりわけ防護服を着用する作業では、作業に伴う肉体的な負荷に加えて、作業環境や衣服環境からの暑熱負荷も加わるため、作業員の熱中症の発症リスクは、通常作業に比べて著しく高まる問題がある。



熱中症は、一般に、その兆候が見られてから短時間で重篤化し易いと言われている。通常の作業環境であれば、その兆候が見られた場合、速やかに水分等の補給や扇風機等を用いた積極的な体温冷却等の処置を講じることが可能であるが、とりわけ原子力施設においては、作業環境中に存在する放射性物質を所定の汚染コントロールエリアから外へと持ち出すことなく、且つ作業員の身体への汚染移行がないように入念な汚染確認を行いつつ、何重にも重ね着した防護服を1枚ずつ脱装することによって、徐々に汚染レベルを下げながら、汚染レベルの高い作業エリアから低い作業エリアへと移動し退域しなければならない。そのため、仮に身体的な不調を感じてから作業エリアからの退域行動を起こしても、基本的には直ぐには防護服を脱ぐことができず、所定の手順に従い作業エリアから退域したときには、既に熱中症が重篤化してしまう恐れがあった。



従来、作業員の体調管理(熱中症管理)は、専ら作業員の自己申告(主観的な情報)と時間管理を併用することによって行われてきたが、そのような本人の自己申告のみに頼った作業管理では、作業員が暑熱環境から受ける負荷等に起因する体調の変化を見逃す恐れがあった。



ところで通気性・透湿性が悪い衣服を着用して作業を行う場合、暑熱負担の生理学的モニタリングとして、米国ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists )では、深部体温等の測定が提唱されている。ここで言う深部体温とは直腸温のことである。作業員の熱中症発症リスクをモニタリングする上での指標として、直腸温が暑熱順応者で38.5℃以上、非順応者で38℃以上である時、過剰な暑熱負担の下にあると判断するとの基準がある。



このような基準に基づき、防護服を着用する作業員を熱中症の危険から守るための警告を発する装置として、防護服着用作業員のための熱中症警告装置が提案されている(特許文献1参照)。ここでは深部体温を測定するセンサの具体的な型式は特に規定されていないが、正確に深部体温を測定しようとすると、直腸温測定用プローブを直腸内へ挿入・留置しておかねばならない。しかし、直腸温を定常的に測定することは、実験室レベルでは可能であっても、実際の作業現場では、作業員への精神的・肉体的な負担が大きく、作業員の同意を得ることが難しいこともあって、極めて困難である。



他方、防護服着用を前提としない建設現場などのような一般的な作業環境での使用を想定したものとして、耳栓型の個人熱中症警報装置が開発されている(特許文献2参照)。ここでは、深部体温の測定に鼓膜温センサを用いている。鼓膜温は、体温調節中枢である視床下部へと灌流する血流温を反映すると言われており、外耳道内に向けたサーモパイルで測定することができる。



このような耳栓型の鼓膜温センサであれば、実際の作業現場でも、作業員への精神的・肉体的な負担は小さく、測定に際して作業員の同意を得ることも容易である。しかし、鼓膜温は環境温度に左右されやすいなどの問題があり、鼓膜温を正確に計測しても、その値をもって直ちに深部体温(直腸温)とすることはできない。特に、防護服着用作業員の熱中症の発症リスク管理では、経時的に深部体温(直腸温)を正確に求め続けることができなければ、作業員の安全と作業効率の向上は望めない。

産業上の利用分野


本発明は、防護服を着用して作業に従事する作業員の熱中症の発症リスクを管理する方法に関し、更に詳しく述べると、作業者の鼓膜温から直腸温を予測し、また予測した直腸温の変化傾向から防護服の脱装に要する時間経過後の直腸温を推定して防護服着用作業員の熱中症発症リスクを管理するシステムの作動方法に関するものである。この技術は、特に原子力施設において防護服等を着用して作業する作業員の熱中症発症リスク管理に有用である。

特許請求の範囲 【請求項1】
防護服を着用して作業する作業員の鼓膜温を赤外線方式により検出する耳栓型鼓膜温測定センサ、実測した鼓膜温を、着用する防護服の被服条件、作業環境の温湿度条件、及び作業時の運動強度に応じて予め求めておいた予測式に入力して直腸温を予測する直腸温予測部とを具備し、その予測した直腸温に基づいて直腸温基準の熱中症の発症リスク管理を行うシステムの作動方法であって、前記予測式は、直腸温を目的変数とし、鼓膜温を説明変数として回帰分析を行うことで得られる、定数項有りの一次式であることを特徴とする防護服着用作業員の熱中症発症リスク管理システムの作動方法。

【請求項2】
防護服を着用して作業する作業員の鼓膜温を赤外線方式により検出する耳栓型鼓膜温測定センサと、心拍数を検出する心拍数センサ、実測した鼓膜温と心拍数を、着用する防護服の被服条件、作業環境の温湿度条件、及び作業時の運動強度に応じて予め求めておいた予測式に入力して直腸温を予測する直腸温予測部とを具備し、その予測した直腸温に基づいて直腸温基準の熱中症の発症リスク管理を行うシステムの作動方法であって、前記予測式は、直腸温を目的変数とし、鼓膜温及び心拍数を説明変数として重回帰分析を行うことで得られる、定数項有りまたは無しの一次式であることを特徴とする防護服着用作業員の熱中症発症リスク管理システムの作動方法。

【請求項3】
前記の予測した直腸温の直近の時間的な変化傾向から、防護服の脱装に要する時間経過後の直腸温を推測し、その推測した直腸温が警報設定値を超える時に作業中断・防護服脱装を指示し退域行動に移るように警報する請求項1又は2記載の防護服着用作業員の熱中症発症リスク管理システムの作動方法。
産業区分
  • 治療衛生
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録
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