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スピン偏極電子発生素子及びその製造方法 コモンズ

国内特許コード P130009211
整理番号 NU-0495
掲載日 2013年4月26日
出願番号 特願2012-108186
公開番号 特開2013-235750
登録番号 特許第6001319号
出願日 平成24年5月10日(2012.5.10)
公開日 平成25年11月21日(2013.11.21)
登録日 平成28年9月9日(2016.9.9)
発明者
  • 金 秀光
  • 竹田 美和
  • 渕 真悟
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 スピン偏極電子発生素子及びその製造方法 コモンズ
発明の概要 【課題】スピン偏極度と外部量子効率の高いスピン偏極電子発生素子を実現すること。
【解決手段】基板をGaPとし、バッファ層をAly Ga1-y As1-x x とし、バッファ層の組成比x、yを、バッファ層の格子定数が、GaPの格子定数よりも大きく、バッファ層に面方向に圧縮歪みが発生し、バッファ層の結晶成長の初期において、分離した島状の結晶核が形成される範囲の値とした。これにより、バッファ層は平坦に結晶成長し、バッファ層上の歪み超格子層の各層の膜厚が面上、均一一様となり、表面は平坦となる。これにより、歪み超格子層の井戸層には、面内においきて、均一一様に圧縮応力が印加されるので、重い正孔バンドと軽い正孔バンドとが適正に分離する。したがって、スピン偏極度が向上すると共に、歪み超格子層の結晶性も良くなるので、偏極電子の外部量子効率が向上する。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


スピン偏極電子源は、磁区構造を観測するスピン低速電子顕微鏡や、陽子とスピン偏極電子とを衝突させて素粒子を生成する場合の素粒子研究に用いられることが期待されている。これらの分野では、特に、高偏極度と高外部量子効率が必要である。現在、スピン偏極電子源には、主に、スピン偏極電子発生素子である半導体フォトカソードが用いられている。半導体フォトカソードは、光を照射することで電子を励起し、その電子を表面から取り出すことで、電子ビームを得る素子である。スピン偏極電子源として用いる場合は、励起光に円偏光を用いることで、励起される電子のスピンに偏りが生じ、スピン偏極電子源として機能する。



GaAs系半導体フォトカソードにおけるスピン偏極の原理を説明する。半導体フォトカソードに照射された円偏光により、重い正孔バンドと軽い正孔バンドから、伝導帯へ電子が励起される。そのとき、それぞれのバンドからは、異なるスピンを持った電子が3対1の割合で励起される。その結果、カソードの外部に出力される電子ビームのスピンに偏りが生じ、スピン偏極電子ビームが得られる。



下記特許文献1では、歪み超格子構造を用いて、スピン偏極度を向上させる技術が開示されている。超格子構造とは、一層が1ML~数nmの厚さの、2種類以上の異なるバンドギャップを持つ半導体を繰り返し積層したものである。電子の場合は、伝導帯の底のエネルギーが低い層、また正孔の場合は、価電子帯の頂上のエネルギーが高い層は、井戸層とよばれ、それを挟む層は障壁層と呼ばれている。電子や正孔はこの井戸層に閉じ込められることで、量子準位が形成される。また、その準位は、重い正孔と軽い正孔では異なるエネルギー領域に形成されるため、これによってもバンドの分離が生じる。



さらに、超格子層に歪みを付与したものは、歪み超格子構造といい、歪みと量子閉じ込めによる効果を相加的に利用することで、更なるバンド分離が実現される。特許文献1ではGaAs基板上に形成したGaAs-GaAsP歪み超格子構造によるスピン偏極電子源に関するもので、90%以上の偏極度が実現されている。



上記特許文献1の技術は、歪み超格子層を用いることで、価電子帯の縮退を解き、重い正孔バンドと軽い正孔バンドとにスプリットさせて、吸収波長が長波長側となる重い正孔バンドと伝導帯との間の電子の遷移を、片方向円偏光を用いて実現するものである。この技術は、原理的には、理想状態で100%のスピン偏極度を得ることができる。



しかしながら、実際には偏極度は100%に達しない。結晶中に多くの転位が導入されるからである。転位によりスピン反転散乱が生じるため偏極度は低下し、転位は生成された電子を捕獲するため量子効率も低下する。バッファ層の格子定数は、歪み超格子層に印加させる歪み量に応じて決定され、基板は結晶成長の容易性から、歪み超格子層と比較的組成が共通し、格子定数の近いものが選択される。また、スピン偏極電子発生素子を基板の裏面から励起光を入射させる励起光透過型にする場合は、基板において光吸収が起こらないような、バンドギャップの広い材料を選択する必要がある。この結果、バッファ層と基板の格子定数は、ほとんどの場合、一致しない。そのため、バッファ層には必ず格子不整合に起因する転位が発生することになる。また、バッファ層の転位は、その上にエピタキシャル成長する超格子構造へも伝播し、超格子構造の結晶性も劣化させる。



特許文献2は、スピン偏極度と外部量子効率を高くするために、基板、バッファ層、歪み超格子層の材料選択の自由度を持たせるために、基板とバッファ層との間に、バッファ層を構成する結晶の格子定数よりも大きな格子定数を有する結晶から成る中間層を介在させている。この中間層により、バッファ層には引張歪みが印加される。バッファ層は、その歪みを緩和させるために垂直方向に部分的に低密度でクラックを発生し、平面において、クラックによりモザイク状となる。この結果、バッファ層には、斜め方向の滑り転位の発生がなく、バッファ層上の歪み超格子層には、この斜め方向の転位が継承されないために、歪み超格子層の結晶性が良くなる。このようにして、引例2は、歪み超格子層における転位密度を低減させることにより、スピン偏極度、偏極した電子の外部量子効率を向上させている。

産業上の利用分野


本発明は、歪み超格子層を用いたスピン偏極電子発生素子及びその製造方法に関する。特に、歪み超格子層の結晶性を改善し、スピン偏極度と外部量子効率の向上を実現するための構造に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
基板と、前記基板上に形成されたバッファ層と、バッファ層上に形成された歪み超格子層とを有するスピン偏極電子発生素子において、
前記バッファ層は、格子定数が前記基板の格子定数よりも大きく、面方向に圧縮歪みが発生する格子定数を有し、
前記バッファ層は、前記バッファ層の組成比に対する面状成長における臨界膜厚の変化特性と、前記バッファ層の組成比に対する、バッファ層が2次元成長から3次元成長に転位する膜厚である転位膜厚の変化特性とにおいて、前記転位膜厚が前記臨界膜厚よりも小さくなる範囲の組成比であって、結晶成長の初期において、分離した島状の結晶核が形成される組成比の化合物半導体としたことを特徴とするスピン偏極電子発生素子。

【請求項2】
基板と、前記基板上に形成されたバッファ層と、バッファ層上に形成された歪み超格子層とを有するスピン偏極電子発生素子において、
前記基板をGaPとし、
前記バッファ層をAly Ga1-y As1-x x とし、
前記バッファ層の組成比x、yを、前記バッファ層の格子定数が、前記GaPの格子定数よりも大きく、前記バッファ層に面方向に圧縮歪みが発生し、前記バッファ層の結晶成長の初期において、分離した島状の結晶核が形成される範囲の値としたことを特徴とするスピン偏極電子発生素子。

【請求項3】
前記基板をGaPとし、
前記バッファ層をAly Ga1-y As1-x x とし、
前記バッファ層の組成比x、yを、前記バッファ層の格子定数が、前記GaPの格子定数よりも大きく、前記バッファ層に面方向に圧縮歪みが発生し、前記バッファ層の結晶成長の初期において、分離した島状の結晶核が形成される範囲の値としたことを特徴とする請求項1に記載のスピン偏極電子発生素子。

【請求項4】
前記バッファ層は、GaAs1-x x 、ただし、0≦x≦0.3から成ることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のスピン偏極電子発生素子。

【請求項5】
前記バッファ層は、Aly Ga1-y As1-x x 、ただし、0≦x≦0.3、0.1≦y≦1から成ることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のスピン偏極電子発生素子。

【請求項6】
前記歪み超格子層は、GaAsとGaAsPとを交互に積層した層であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のスピン偏極電子発生素子。

【請求項7】
基板と、バッファ層と、バッファ層上に形成された歪み超格子層とを有するスピン偏極電子発生素子の製造方法において、
前記基板上に、成長初期において、格子定数が前記基板の格子定数よりも大きく、前記基板から面方向に圧縮歪みを受ける化合物半導体から成る分散した多数の島状の結晶核を成長させ、
その後に、前記化合物半導体を前記基板の面に平行な方向に成長させることにより、前記バッファ層を前記基板上に成長させ、
前記バッファ層上に、前記歪み超格子層を成長させることを特徴とするスピン偏極電子発生素子の製造方法。

【請求項8】
前記基板をGaPとし、
前記バッファ層をAl1-y Gay As1-x x とし、
前記バッファ層の組成比x、yを、前記バッファ層の格子定数が、前記GaPの格子定数よりも大きく、前記バッファ層に面方向に圧縮歪みが発生し、前記バッファ層の結晶成長の初期において、分離した島状の結晶核が形成される範囲の値としたことを特徴とする請求項7に記載のスピン偏極電子発生素子の製造方法。

【請求項9】
前記バッファ層は、GaAs1-x x 、ただし、0≦x≦0.3から成ることを特徴とする請求項8に記載のスピン偏極電子発生素子の製造方法。

【請求項10】
前記バッファ層は、Aly Ga1-y As1-x x 、ただし、0≦x≦0.3、0.1≦y≦1から成ることを特徴とする請求項8に記載のスピン偏極電子発生素子の製造方法。

【請求項11】
前記歪み超格子層は、GaAsとGaAsPとを交互に積層した層であることを特徴とする請求項7乃至請求項10の何れか1項に記載のスピン偏極電子発生素子。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 登録
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