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脳機能障害予防・改善用の薬剤及び飲食物 新技術説明会

国内特許コード P130009236
掲載日 2013年5月9日
出願番号 特願2012-511566
登録番号 特許第5066756号
出願日 平成23年4月22日(2011.4.22)
登録日 平成24年8月24日(2012.8.24)
国際出願番号 JP2011002393
国際公開番号 WO2011132435
国際出願日 平成23年4月22日(2011.4.22)
国際公開日 平成23年10月27日(2011.10.27)
優先権データ
  • 特願2010-098602 (2010.4.22) JP
発明者
  • 長谷川 宏幸
  • 相澤 信
出願人
  • 学校法人日本大学
発明の名称 脳機能障害予防・改善用の薬剤及び飲食物 新技術説明会
発明の概要 【課題】脳機能障害の症状を改善する手段の提供。
【解決手段】本発明者は、セピアプテリンを末梢から投与した場合に、脳内芳香族モノアミンの活量が増大することを新規に見出した。そこで、セピアプテリン又はその塩を少なくとも含有する脳機能障害の予防用又は改善用の薬剤、及び、セピアプテリン又はその塩を少なくとも含有させた脳機能障害の予防用又は改善用の飲食物を提供する。セピアプテリンは、テトラヒドロビオプテリンなどと異なり、末梢から投与しても、脳内芳香族モノアミン(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなど)の脳神経細胞内レベル低下を抑制し、その活量を増大することができる。従って、脳内芳香族モノアミンの脳神経細胞内レベル低下による脳機能障害、例えば、うつ、過食症、自閉症、意識集中障害、認知障害などの中枢性精神障害、及び、筋緊張、硬直、振戦などの中枢性運動障害などに有効である可能性がある。
従来技術、競合技術の概要


脳は、運動・知覚など神経を介する情報伝達の最上位中枢であり、感情・情緒・理性などヒトの精神活動、運動の随意コントロールなどにおいても重要な役割を果たしている。脳は多数の神経細胞で構成されており、神経細胞間の情報伝達は、脳内の神経伝達物質が行っている。



モノアミン神経伝達物質は、アミノ基を一個含む非アミノ酸神経伝達物質の総称である。その中で、天然のL-アミノ酸のチロシン又はトリプトファンを前駆体として体内で生合成されるモノアミン神経伝達物質を芳香族モノアミンという。代表的な芳香族モノアミンとして、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン、アドレナリンなどが挙げられる。芳香族モノアミンは、脳内と末梢の両方に存在するが、脳内に存在する芳香族モノアミンは、脳内の情報伝達において重要な役割を果たしており、また、精神活動・情動、運動の制御などにも深く関与していることが知られている。



セロトニンは、ヒトを含む動植物に一般的に含まれる芳香族モノアミンで、その多くは、小腸の粘膜にあるクロム親和性細胞内、血小板などに存在し、また、一部が中枢神経系にも存在する。セロトニンは、中枢神経系において、神経伝達物質として機能する。セロトニン神経は、延髄の縫線核から、視床下部、大脳基底核、線条体をはじめ、脳・脊髄に向けて広く神経線維を張り巡らしており、人間の情動、疲労、痛み、食欲などの精神活動などに大きく影響を与える。



近年、うつ病、過食症、自閉症、意識集中障害、認知障害などの脳機能障害とセロトニンとの関係が明らかになってきており、セロトニン系に作用する薬物を用いることによって、これらの症状をある程度改善できるようになった。例えば、SSRI(セロトニン選択的再取り込み阻害薬;Serotonin Selective Reuptake Inhibitor)は、シナプスにおいて放出されたセロトニンの再吸収を阻害することでうつ症状などを改善する薬剤として、実用化されている。但し、SSRIは神経細胞内におけるセロトニンの総量を減少させるため、長期間利用すると却ってうつ症状が増悪する可能性も指摘されている。



ノルアドレナリンは、交感神経末端・中枢神経系などに広く存在する芳香族モノアミンで、アドレナリンの前駆体でもある。末梢では、副腎皮質ホルモン及び神経伝達物質として働く。一方、脳内では、青斑核のノルアドレナリン神経が脳の全域に投射しており、注意・衝動性などに関与すると考えられている。また、ノルアドレナリン系の変化とうつとの関連性が明らかになってきている。



SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬;Serotonin and Norepinephrine reuptake Inhibitor)は、シナプスにおけるセロトニンとノルアドレナリンの再吸収を阻害することで、神経細胞周囲腔におけるこれらの神経伝達物質の濃度を増加させ、うつ症状を改善する薬剤である。この薬剤は、セロトニンの濃度を高めることによってうつ状態を改善させるのに加え、ノルアドレナリンの再吸収を阻害することによって、興奮神経を刺激し、やる気や気分を向上させる効果を発揮すると考えられている。但し、SNRIも、SSRIと同様、神経細胞内におけるセロトニンの総量を減少させるため、長期間利用すると却ってうつ症状が増悪する可能性も指摘されている。



ドーパミンは、中枢神経系に存在する芳香族モノアミンで、アドレナリン、ノルアドレナリンの前駆体でもある。脳内では、脳幹腹側被蓋野と黒質のドーパミン神経が、大脳前頭葉、線条体などに投射しており、運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習などに関わる。



パーキンソン病では黒質線条体のドーパミン神経が減少し、筋固縮、振戦、無動などの運動症状が起こる。また、一部の統合失調症や一部のうつ病に、ドーパミンが関係しているという仮説がある。



芳香族モノアミンには、末梢の細胞内に存在するものと中枢神経系の神経細胞内に存在するものとがあるが、脳内芳香族モノアミンは、原則として、血液脳関門を通過せず、それぞれ独立に合成・代謝される。即ち、末梢の細胞内に存在する芳香族モノアミンと中枢神経系の神経細胞内に存在する芳香族モノアミンとの間で、相互に行き来したり、補完したりすることはない。



脳内芳香族モノアミン神経は、細胞内の放出顆粒に蓄えた芳香族モノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)を放出する。芳香族モノアミンは、放出された後、それぞれの神経細胞によって再取り込みされ、新規に生合成された芳香族モノアミンと混合され、再度放出顆粒に取り込まれる。この機構が循環して繰り返され、また、一部分は、細胞内で、放出顆粒に取り込まれる前に代謝され、不活性な代謝産物が生成される。芳香族モノアミンは血液脳関門の機能により脳へ流入したり、脳から流出したりしないが、その代謝産物は、脳から末梢へ排出される。また、芳香族モノアミン生合成の直接の素材である芳香族アミノ酸(トリプトファン、チロシンなど)は、血液脳関門を通過する。



テトラヒドロビオプテリン(BH4)は、フェニルアラニン水酸化酵素、チロシン水酸化酵素、トリプトファン水酸化酵素、一酸化窒素合成酵素などの補酵素である。フェニルアラニンからチロシンを合成する反応、トリプトファンからセロトニンを合成する反応、チロシンからドーパを合成する反応、アルギニンから一酸化窒素とシトルリンを合成する反応などにおいて、補酵素として酵素反応に必須である。



細胞内テトラヒドロビオプテリン量の欠乏が起こると,これらの酵素は充分な触媒作用を発揮できず、高フェニルアラニン血症や、ドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニンなどのモノアミン神経伝達物質の活量低下を引き起こす。



テトラヒドロビオプテリン生成の異常で生じる疾患には、悪性高フェニルアラニン血症、瀬川病(ドーパ反応性ジストニア)などがある。また、うつ病、過食症、パーキンソン病、自閉症、精神分裂病などにおいても、テトラヒドロビオプテリンの代謝異常が原因・増悪因子になっている可能性が示唆されている。



なお、末梢から脳へテトラヒドロビオプテリンを送る場合、その一部はわずかに脳組織に捕捉されるが、芳香族モノアミン神経細胞に到達しない段階で速やかに脳組織の外に排出される。即ち、テトラヒドロビオプテリンは、血液脳関門を通過するのが著しく困難である。



「7,8-ジヒドロ-6-[(S)-2-ヒドロキシ-1-オキソプロピル]-プテリン(慣用名「セピアプテリン(Sepiapterin)」、以下、「セピアプテリン」と記載する。)」は、動物色素などとして、ヒトを含む各種動物に広く存在する内因性化合物であり、日常的な食品にも微量に含まれている。1960年、Nawaは、ショウジョウバエの目の色素の一つとして、セピアプテリンの化学構造を決定した。



ヒト体内におけるセピアプテリンの生物活性は、現在のところ知られていない。セピアプテリンは、ヒト体内では、テトラヒドロ-6-ラクトイル-テトラヒドロプテリン(GTPからテトラヒドロビオプテリンが合成される際の中間産物)の自動酸化により必ず生成されるが、ごく微量であり、血中・尿中ではほとんど検出されない。



セピアプテリンは、動物細胞に容易に取り込まれ、SPR(セピアプテリン還元酵素)及びDHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)による2段階の酵素反応により、テトラヒドロビオプテリンへ転換されることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。



テトラヒドロビオプテリン、その代謝産物、プロドラッグ(セピアプテリン、ジヒドロビオプテリン)などの細胞膜通過特性が、近年、明らかにされつつある。例えば、非特許文献2には、プテリン化合物の細胞膜通過に関する知見が示されている。



なお、テトラヒドロビオプテリンなどを含有する各疾患の治療剤などが種々提案されている。例えば、特許文献1には、プテリン誘導体からなるうつ病・パーキンソン病治療剤が、特許文献2には、注意欠陥多動性障害及び高フェニルアラニン血症の治療のためのテトラヒドロビオプテリンを含む組成物が、特許文献3には、テトラヒドロビオプテリンを有効成分とする脊髄小脳変性症治療剤が、特許文献4には、プテリン誘導体を有効成分とする癌転移抑制剤が、それぞれ記載されている。また、非特許文献3には、ビオプテリン代謝欠損性フェニルケトン尿症患者に対するテトラヒドロビオプテリン又はセピアプテリンによる単独治療が、非特許文献4には、ラット脳におけるビオプテリン生合成が、それぞれ検討されている。非特許文献5では、末梢からテトラヒドロビオプテリンを投与する場合、致死量に近い量を投与しないと脳内芳香族モノアミンの濃度は増大しないことが実証された。その他、非特許文献6は後述するプロドラッグ化に関する文献、非特許文献7は後述するセピアプテリンの合成に関する文献、非特許文献8は後述するFukushima-Nixon法に関する文献、非特許文献9は後述するセロトニン、5-ヒドロキシトリプトファン、5-ヒドロキシインドール酢酸量の測定法に関する文献である。
【特許文献1】
特開昭59-25323号公報
【特許文献2】
特表2008-504295号公報
【特許文献3】
国際公開WO96/03989号公報
【特許文献4】
特開平6-192100号公報
【非特許文献1】
K. Sawabe, K. Yamamoto, Y. Harada, A. Ohashi, Y. Sugawara, H.Matsuoka, and H. Hasegawa, “Cellular uptake of sepiapterin and push-pullaccumulation of tetrahydrobiopterin.” Mol Genet Metab 94 (2008) 410-416.
【非特許文献2】
H. Hasegawa, K. Sawabe, N. Nakanishi, and O.K. Wakasugi, “Deliveryof exogenous tetrahydrobiopterin (BH4) to cells of target organs: role ofsalvage pathway and uptake of its precursor in effective elevation of tissueBH4.” Mol Genet Metab 86 Suppl 1 (2005) S2-10.
【非特許文献3】
A. Niederwieser, H.-Ch. Curtius, M. Wang and D. Leupold,"Atypical phenylketonuria with defective biopterin metabolism. Monotherapywith tetrahydrobiopterin or sepiapterin, screening und study of biosynthesis inman.": Eur J Pediatr (1982) 138: 110-112.
【非特許文献4】
G. Kapatos, S. Katoh and S. Kaufman, "Biosynthesis of biopterinby rat brain.": Journal of Neurochem. 39, 1152-1162 (1982).
【非特許文献5】
M. P. Brand, K. Hyland, T. Engle, I. Smith and S. J. R. Heales,"Neurochemical effects following peripheral administration oftetrahydropterin derivatives to the hph-1 mouse.": Journal of Neurochem.66, 1150-1156 (1996).
【非特許文献6】
K. Beaumont, R. Webster, I. Gardner, K. Dack, “Designof ester prodrugs to enhance oral absorption of poorly permeable compounds:challenges to the discovery scientist.”: Current Drug Metabolism (2003), 4(6),461-485
【非特許文献7】
W. Pfleiderer, “Pteridine, LXVIII. Uberfuhrung von Biopterin inSepiapterin und absolute Konfiguration des Sepiapterins (Konfiguration DesSepiapterins).”: Chemische Berichte 112 (1979) 2750-2755.
【非特許文献8】
T. Fukushima and J.C. Nixon, “Analysis of reduced forms of biopterinin biological tissues and fluids”: Analytical Biochemistry 102, 176-188 (1980)
【非特許文献9】
F. Inoue, H.Hasegawa, M.Nishimura, M. Yanagisawa and A.Ichiyama, “Distributionof 5-hydroxytryptamine(5HT) in tissue of a mutant mouse deficient in mastcell(W/Wv). Demonstration of the contribution of mast cells to the 5HT contentin various organs”: Agents Actions 16, 2950301(1985)

産業上の利用分野


本発明は、セピアプテリンを含有する脳機能障害の予防・改善・治療用の薬剤及び飲食物などに関する。より詳細には、脳内神経伝達物質の関わる疾病、例えば、中枢性精神障害(うつ、過食症、自閉症、意識集中障害、認知障害など)、若しくは中枢性運動障害(筋緊張、硬直、振戦など)などに対する予防・改善・治療用の薬剤及び飲食物などに関連する。

特許請求の範囲 【請求項1】
セピアプテリンを少なくとも含有し、1日当たり0.1~100mg/kgを末梢から投与する、脳機能障害(胎児又は新生児におけるものを除く)の予防用又は改善用の薬剤。

【請求項2】
脳神経細胞の細胞内におけるテトラヒドロビオプテリンのレベルを向上させる請求項1記載の薬剤。

【請求項3】
脳内芳香族モノアミンの低下を抑制する請求項1記載の薬剤。

【請求項4】
前記脳機能障害が中枢性精神障害又は中枢性運動障害である請求項1記載の薬剤。

【請求項5】
前記脳機能障害がうつ、過食症、自閉症、意識集中障害、認知障害のいずれかの中枢性精神障害、若しくは筋緊張、硬直、振戦のいずれかの中枢性運動障害である請求項1記載の薬剤。

【請求項6】
セピアプテリンを有効成分として含有させ、1日当たりの経口摂取量が0.1~100mg/kgである脳機能障害(胎児又は新生児におけるものを除く)の予防用又は改善用の飲食物。

【請求項7】
1日当たり0.1~100mg/kgを末梢から投与する、脳機能障害(胎児又は新生児におけるものを除く)の予防用又は改善用の薬剤の製造のためのセピアプテリンの使用。
産業区分
  • 高分子化合物
  • 薬品
  • 食品
  • 微生物工業
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録
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