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インドールキノリン誘導体、該誘導体の製造方法、ならびに該誘導体を含有する抗マラリア剤および抗がん剤

国内特許コード P130009342
整理番号 S2012-0073-N0
掲載日 2013年6月12日
出願番号 特願2012-136013
公開番号 特開2013-107869
出願日 平成24年6月15日(2012.6.15)
公開日 平成25年6月6日(2013.6.6)
優先権データ
  • 特願2011-237348 (2011.10.28) JP
発明者
  • 井口 勉
  • イブラヒム エルタンタウイ エルサイエド
  • 佐々木 健二
  • 梅 振武
  • 王 力
  • 陸 文傑
出願人
  • 国立大学法人 岡山大学
発明の名称 インドールキノリン誘導体、該誘導体の製造方法、ならびに該誘導体を含有する抗マラリア剤および抗がん剤
発明の概要

【課題】抗マラリア活性が高く(特にクロロキン抵抗性のマラリア原虫にも有効であり)かつ安全性の高い抗マラリア剤の有効成分となり得る化合物、および抗腫瘍活性が高くかつ正常細胞に対する毒性の低い抗がん剤の有効成分となり得る化合物を提供する。
【解決手段】下記式(A)で表わされることを特徴とするインドールキノリン誘導体(A)またはその製薬学的に許容される塩。

【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


マラリアは、プラスモジウム(Plasmodium)属に属する原虫の感染によって起こる伝染性疾患で、ハマダラ蚊を媒介として感染し、間欠的な熱発作、貧血、脾腫等の症状を示す。マラリアは、近年、自然や環境の変化に伴い猛威を振るい始めており、その推定感染患者数は年間3億~5億人、年間死亡者数は、150~300万人という世界的にも重要な疾病である。ヒトに感染するマラリア原虫の中で、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの熱帯地域全体に分布する熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)が重篤な症状を示し、発症後1~2週間で脳症、腎症、溶血性貧血、肺水腫、心臓障害、重症腸炎などを伴って容易に重症マラリアに進展し、短期間内に多臓器不全を示し宿主を死に至らしめることが多い。



マラリア治療にはメフロキン、クロロキン、およびキニンが用いられるが、いずれも強い副作用が現れることがあり注意が必要である。また、これまで特効薬とされていたクロロキンやその他の汎用薬に対して抵抗性を有するマラリア原虫の出現は、熱帯性マラリア原虫感染の拡大の大きな理由となっており、マラリア撲滅は不可能になりつつある。例えば、クロロキン抵抗性の熱帯熱マラリア原虫は最初コロンビアとタイで出現し、拡大している。1984年には東アジアとオセアニア15カ国、南アメリカ15カ国、アフリカサハラ以南15カ国に拡大している。メフロキンは、マラリアの予防およびクロロキン耐性熱帯熱マラリアの治療に用いられるが、メフロキン耐性のマラリア原虫の拡大にともない、メフロキンの効果は減少していった(そのため、次に述べるアルテミシニンなどのほかの抗マラリア剤と併用することもある)。



【化学式1】


アルテミシニン等のペルオキシ環状化合物もマラリアに有効であり、特に、キク科植物から単離されるトリオキサン構造を持つアルテミシニンが治療薬として使われていた。しかしながら、アルテミシニン等に対しても耐性を示すマラリア原虫がすでに現れており、新規なマラリア剤に対して次々に耐性を有するマラリア原虫が出現し、薬剤耐性マラリア原虫の拡散が化学療法の問題となっている。薬剤耐性マラリアに唯一有効な薬剤としてキニーネが存在するが、腎不全を引き起こす可能性が極めて高く、現在の医療水準から見てリスクの高い治療薬である。



【化学式2】


その他、マラリア剤としては、例えば特許文献1に記載されたアニリン化合物、特許文献2に記載されたには置換ナフトキノン化合物や、特許文献3に記載されたクロロキンに金属錯体であるメタロセン、グルコース等の糖を共役させた化合物、特許文献4に記載された有機ペルオキシド化合物が知られている。



【化学式3】


特許文献5には、癌症状を下げる効果のある医薬品とクロロキン、キニン、メフロキンとを併用すると、これらの抗マラリア剤に対するマラリア菌の抵抗性が低下することが記載されている。



さらに、西および中央アフリカに自生する植物Cryptolepis sanguinolenta (Lindl.)に含まれるアルカロイド(インドールキノリン)である、5-メチル-5H-インドロ[2,3-b]キノリン(neocryptolepine)は、5-メチル-5H-インドロ[3,2-b]キノリン(cryptolepine)とともに、比較的単純な構造にもかかわらず、抗原虫活性、抗菌・抗真菌活性、抗マラリア活性などを示すことが知られている。



【化学式4】


一方、癌も全世界的な疾患である。世界における癌による死亡割合は、2008年で循環器病、感染・寄生性疾患に次いで3位であるが、2015年には感染・寄生性疾患を抜いて2位になると予測されている。日本においても、癌は1981年に死因の1位になって以来、粗死亡率は更に増加しており、近年では全死亡数の3割を超えている。がんの主な種類は、肺、胃、肝臓、大腸、乳、子宮頚がんである。



癌の治療法としては化学療法、手術(外科的治療)、放射線治療、その他の癌治療等がある(これらを複合化した集合的治療もある)。癌治療のための新規医薬分子の開発は世界中で行われているが、集中的な開発努力にも拘らず悪性腫瘍の脅威は続き、いつまでも完治療法が出来ない病気として存在している。ある種類の癌に対しては現代の治療法でもその効果は驚くほど貧弱である。つまり、新規で選択的な抗がん剤を用いる新治療法が強く望まれる。我々の目指す抗がん治療法は増殖性を阻害し、正常細胞を傷つけることなく、がん細胞だけを死に導くことである。



抗がん剤としての用途を有する化合物は多数提案されているが、分子構造中に縮合環を有する化合物としては、たとえば以下のものが提案されている。
特許文献6には、下記式で表される縮合環式ヘテロ環誘導体(カルバゾール環を基本骨格とする誘導体)が抗腫瘍活性を有することが記載されている。



【化学式5】


特許文献7には、下記式で表される化合物(インドリル-3-グリオキシル酸誘導体)、たとえばN-(ピリジン-4-イル)-[1-(4-フルオロベンジル)-インドールー3-イル]グリオキシルアミド(D24241)が抗腫瘍活性を有することが記載されている。



【化学式6】


特許文献8では、下記式(R1またはR2 = -O-(CH2)n-O-Su, H or alkyl; Su = carbohydrate group; n = 2-6)で表される構造を有する、5,11-ジメチル-5H-インドロ[2,3-b]キノリンおよび医薬品として許容できるその塩の抗がん活性が検討されている。たとえば、R1 = O-(CH2)5-O-2-deoxy-α-L-daunosaminyl, R2 = Hの化合物は、子宮頸癌細胞株に対してID50 = 1.46μg/mLの細胞毒性を示す。



【化学式7】


また、非特許文献1では、6,11-ジメチル-6H-インドロ[2,3-b]キノリン骨格上の2、9位にN,N-ジアルキルアミノアルキルアミノ基を導入した化合物VIIと置換基を導入していないDiMIQ(VIII)とのヒト頸癌細胞株(KB cell)に対する抗腫瘍活性の比較が検討されている。



【化学式8】


さらに、非特許文献2には、5-メチル-5H-インドロ[2,3-b]キノリン構造に関して、適当な位置にアミノ基またはアミノアルキルアミノ基を導入すると、もとのneocryptolepine自体よりも、抗マラリア活性が約1,500倍活性化できることが示されている。



しかしながら、この5-メチル-5H-インドロ[2,3-b]キノリン母核について、がん治療のための新規医薬分子の開発において、置換基-活性-相関の系統的なアッセイは検討された例は殆どない。そこで、抗ガン活性剤となる新規なインドールキノリン誘導体の合成に着手した。

産業上の利用分野


本発明は、インドールキノリン誘導体、該誘導体の製造方法および該誘導体を含有する抗マラリア剤および抗がん剤に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(A)で表わされることを特徴とするインドールキノリン誘導体(A)またはその製薬学的に許容される塩。
【化学式1】


(式(A)中、
1はハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基またはニトロ基であり、nは0~4の整数であり、
2は下記式(R2)で表される基であり:
【化学式2】


式(R2)中、xは1または0であり、Z1、Z2、およびZ1とZ2の間の結合に係る一点鎖線は下記[R2-I]または[R2-II]の通りである。
[R2-I]Z1およびZ2の一点鎖線による結合は存在せず、Z1は水素原子であり、Z2は下記式(Z2)で表される基、あるいは置換基を有していてもよいアリール基、アルケニル基またはアルキニル基である。
【化学式3】


式(Z2)中、Z3は炭素原子数が1~12の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であり、Z4は置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい含窒素ヘテロアリール基、またはヒドロキシ基である。
[R2-II]Z1およびZ2は一点鎖線によって結合しており、それらが結合している窒素原子と一体となって、置換されていてもよい3~8員環構造を形成する原子群を表す。
3はハロゲン原子、カルボキシ基、またはアルコキシカルボニル基であり、mは0~4の整数であり、
4、R5、破線(i)および破線(ii)は下記[R4-I]または[R4-II]の通りである。
[R4-I]R4は存在せず、R5はアルキル基であり、破線(i)は二重結合であり、破線(ii)は単結合である。
[R4-II]R4はアルキル基であり、R5は存在せず、破線(i)は単結合であり、破線(ii)は二重結合である。

【請求項2】
前記式(R2)の定義が前記[R2-I]の通りである場合において、前記式(Z2)中のZ4が下記式(Z4)で表される基である、請求項1に記載のインドールキノリン誘導体(A)またはその製薬学的に許容される塩。
【化学式4】


式(Z4)中、Z5、Z6、およびZ5とZ6の間の結合に係る一点鎖線は下記[Z4-I]、[Z4-II]または[Z4-III]の通りである。
[Z4-I]Z5およびZ6の一点鎖線による結合は存在せず、Z5は水素原子であり、Z6は置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基またはアルキル基を含む基である。
[Z4-II]Z5およびZ6は一点鎖線によって結合しており、それらが結合している窒素原子と一体となって、置換基を有していてもよいアリール基を置換基として有する、5員環構造または6員環構造を形成する原子群を表す。
[Z4-III]Z5およびZ6の一点鎖線による結合は存在せず、Z5およびZ6は互いに独立したアルキル基である。

【請求項3】
前記式(Z4)の定義が前記[Z4-I]の通りである場合において、前記Z6が下記式(Z6)で表される基である、請求項1に記載のインドールキノリン誘導体(A)またはその製薬学的に許容される塩。
【化学式5】


式(Z6)中、Z7は下記式(Z71)、(Z72)、(Z73)または(Z74)で表される二価の基であり、Z8は置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、またはアルキル基である。)
【化学式6】



【請求項4】
前記Z8が置換基を有していてもよいフェニル基、または置換基を有していてもよいピリジル基、チエニル基もしくはインドリル基である、請求項3に記載のインドールキノリン誘導体(A)またはその製薬学的に許容される塩。

【請求項5】
前記式(Z4)の定義が前記[Z4-II]の通りである場合において、前記5員環構造または6員環構造が下記式(Z42)で表される基である、請求項1に記載のインドールキノリン誘導体(A)またはその製薬学的に許容される塩。
【化学式7】


式(Z42)中、Z9は下記式(Z91)または(Z92)で表わされる二価の基であり、Z10は置換基を有していてもよいアリール基である。
【化学式8】


式(Z91)中、R91はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシ基、またはアルコキシカルボニル基であり、pは1または2である。
式(Z92)中、R92はハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、またはニトロ基であり、qは0~4の整数である。

【請求項6】
前記Z10が置換基を有していてもよいフェニル基である、請求項5に記載のインドールキノリン誘導体(A)またはその製薬学的に許容される塩。

【請求項7】
前記式(A)で表わされるインドールキノリン誘導体(A)またはその製薬学的に許容される塩の製造方法であって、下記工程[1]を含むことを特徴とする製造方法。
工程[1]
下記式(A0)で表されるインドールキノリン母核構造を有する化合物と、下記式(r2)で表されるアミン化合物とを反応させて、下記式(A1)で表される化合物を得る工程。
【化学式9】


式(A0)中、R1、n、R3、m、R4、R5、iおよびiiは前記式(A)と同義であり、Xはハロゲン原子または低級アシロキシ基である。
【化学式10】


式(r2)中、Z1およびZ2は前記式(R2)と同義である。
【化学式11】


式(A1)中、R1、n、R3、m、R4、R5、iおよびiiは前記式(A0)と同義であり、Z1およびZ2は前記式(r2)と同義である。

【請求項8】
前記式(A)で表わされるインドールキノリン誘導体(A)またはその製薬学的に許容される塩の製造方法であって、下記工程[1’]を含むことを特徴とする製造方法。
工程[1’]
下記式(A0)で表されるインドールキノリン母核構造を有する化合物に、ニトロメタンを付加して、下記式(A0’)で表される化合物を得るステップ、
下記式(A0’)で表される化合物から、Nef反応を酸化的条件で行って、下記式(A0’’)で表される化合物を得るステップ、および
下記式(A0’’)で表される化合物から、下記式(r2)で表されるアミン化合物を用いた還元的アミノ化により、下記式(A1’)で表される化合物を得るステップ
を含む工程。
【化学式12】


式(A0)中、R1、n、R3、m、R4、R5、iおよびiiは前記式(A)と同義であり、Xはハロゲン原子または低級アシロキシ基である。
式(A0’)および(A0’’)中、R1、n、R3、m、R4、R5、iおよびiiは前記式(A)と同義である。
式(r2)中、Z1およびZ2は前記式(R2)と同義である。
式(A1’)中、R1、n、R3、m、R4、R5、iおよびiiは前記式(A0)と同義であり、Z1およびZ2は前記式(r2)と同義である。

【請求項9】
前記インドールキノリン誘導体(A)として下記式(A11)で表される化合物を製造する場合の製造方法であって、
前記工程[1]または[1’]が、前記アミン化合物(r2)として下記式(r21)で表される化合物を用いることにより、下記式(A10)で表される化合物を得る工程であり、
当該工程[1]の後に下記工程[2]を含む、請求項7または8に記載の製造方法。
【化学式13】


式(A11)中、R1、n、x、R3、m、R4、R5、iおよびiiは前記式(A)と同義であり、Z3は前記式(Z2)と同義であり、Z5およびZ6は、前記[Z4-III]をとらないことを除き、前記式(Z4)と同義である。
【化学式14】


式(r21)中、Z3は前記式(Z2)と同義である。
【化学式15】


式(A10)中、R1、n、x、R3、m、R4、R5、iおよびiiは前記式(A)と同義であり、Z3は前記式(Z2)と同義である。
工程[2]
前記工程[1]で得られた化合物(A10)と、当該化合物(A10)の末端のアミノ基と反応しうる化合物(z4)とを反応させて、前記化合物(A11)を得る工程。

【請求項10】
前記インドールキノリン誘導体(A11)として下記式(A111)で表される化合物を製造する場合の製造方法であって、
前記工程[2]が、前記化合物(z4)として下記式(z611)~(z614)のいずれかで表される化合物を用いることにより、前記化合物(A111)を得る工程である、請求項9に記載の製造方法。
【化学式16】


式(A112)中、R1、x、n、R3、m、R4、R5、iおよびiiは前記式(A)と同義であり、Z3は前記式(Z2)と同義であり、Z7およびZ8は前記式(Z6)と同義である。
【化学式17】


式(z611)~(z614)中、Z8は前記式(Z6)と同義であり、Xはハロゲン原子である。

【請求項11】
前記Z8が置換基を有していてもよいフェニル基、または置換基を有していてもよいピリジル基、チエニル基もしくはインドリル基である、請求項10に記載の製造方法。

【請求項12】
前記インドールキノリン誘導体(A11)として下記式(A112)で表される化合物を製造する場合の方法であって、
前記工程[2]が、前記化合物(z4)として、下記式(z91)または(z92)のいずれかで表される化合物と、下記式(z10)で表される化合物とを用いることにより、前記化合物(A112)を得る工程である、請求項9に記載の製造方法。
【化学式18】


式(A112)中、R1、n、x、R3、m、R4、R5、iおよびiiは前記式(A)と同義であり、Z3は前記式(Z2)と同義であり、Z9およびZ10は前記式(Z42)と同義である。
【化学式19】


式(z91)中、R91およびpは前記式(Z91)と同義である。
式(z92)中、R92およびqは前記式(Z92)と同義である。
【化学式20】


式(z10)中、Z10は前記式(Z42)と同義である。

【請求項13】
前記Z10が置換基を有していてもよいフェニル基である、請求項12に記載の製造方法。

【請求項14】
請求項1~6のいずれかに記載のインドールキノリン誘導体(A)またはその製薬学的に許容される塩を有効成分として含むことを特徴とする抗マラリア剤。

【請求項15】
請求項1~6のいずれかに記載のインドールキノリン誘導体(A)またはその製薬学的に許容される塩を有効成分として含むことを特徴とする抗がん剤。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 審査請求前
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