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原子核共鳴蛍光散乱を用いた非破壊検査システム UPDATE 外国出願あり

国内特許コード P130009547
整理番号 2415
掲載日 2013年7月10日
出願番号 特願2011-502802
登録番号 特許第5403767号
出願日 平成22年3月4日(2010.3.4)
登録日 平成25年11月8日(2013.11.8)
国際出願番号 JP2010053560
国際公開番号 WO2010101221
国際出願日 平成22年3月4日(2010.3.4)
国際公開日 平成22年9月10日(2010.9.10)
優先権データ
  • 特願2009-051497 (2009.3.5) JP
発明者
  • 豊川 弘之
  • 羽島 良一
  • 早川 岳人
  • 静間 俊行
  • 菊澤 信宏
  • 大垣 英明
出願人
  • 国立大学法人京都大学
発明の名称 原子核共鳴蛍光散乱を用いた非破壊検査システム UPDATE 外国出願あり
発明の概要 原子炉燃料や放射性廃棄物が封入されたドラム缶、又はコンテナ中に隠匿された核燃料物質や爆発物の同位体識別イメージングを高精度、かつ高い信頼性と安全性を確保しながら実現する。
電子線12と偏光したレーザー光16,20との衝突によって発生するレーザーコンプトン光子ビーム21,22をサンプル31に照射し、原子核共鳴蛍光散乱を用いて、サンプル中の同位体を識別し、その空間分布を画像化する。このとき、原子核共鳴蛍光散乱の放出方向が照射LCS光子ビームの偏光面に依存する同位体の原子核準位を用いる。
従来技術、競合技術の概要



原子力発電の核燃料サイクルで取り扱う燃料棒や放射性廃棄物には核分裂物質を含めて様々な同位体が含まれている。これらを非破壊で検査し、その空間分布を可視化することは安全かつ高効率な核燃料サイクルの実現にとって重要である。たとえばセシウムは安定同位体である質量数133のCs-133と放射性核種である質量数137のCs-137があるが、後者はその取り扱いが法令で厳しく管理されている。放射性廃棄物処理において、これらを迅速に識別することで、地層処分にかかるコストを著しく低減させることができるため、同位体の識別とその空間分布の可視化技術の実現が切望されている。





また核燃料物質の輸送において、コンテナ内部に隠蔽されたウランなどの核分裂性物質や核燃料物質、爆発物及びその原料となる物質をコンテナ外部から非破壊で測定することは、核物質の輸送を厳しく制限・管理する目的や、爆発物を用いたテロ等を未然に防ぎ、安全・安心な社会を実現するために非常に重要である。





現在、一部の核燃料サイクル施設や港湾、空港などにおいて、燃料棒やコンテナを丸ごと検査する大型X線検査機器や中性子発生器を用いた即発ガンマ線分析装置などを用いて、X線透過像による内部形状測定、及び核分裂性物質や核燃料物質、爆発物等の非破壊検査が行われている。X線検査では透過力の高い高エネルギー制動放射X線を用いており、透過像が鮮明に得られるという利点があるが物質の識別はできない。中性子照射による即発ガンマ線分析では物質識別や同位体識別が可能であるが、空間分解能が悪く、内部を可視化するのには空間分解能が不十分である。ここで言う物質識別とは元素識別、すなわち原子を識別することである。これは原子核の周りの電子状態を観測することで可能であり、X線などで比較的容易に観測可能である。同位体識別とは同位体、すなわち原子核に含まれる陽子と中性子のうち、中性子数が異なる原子核を識別することであり、ガンマ線の検出によって観測可能である。





輸入コンテナ貨物やスーツケース内の物質検査に、制動放射X線を用いた原子核共鳴蛍光(Nuclear Resonance Fluorescence:NRF)散乱による同位体識別手法が提案されている(特許文献1)。同位体の原子核は、その構成要素である陽子と中性子の数により、固有の振動数(励起準位)をもつ。この振動数に一致したエネルギーを持つ光子が同位体に照射された際に、同位体が光子を吸収した後、脱励起する際に蛍光光子が発生するが、これをNRFと言う。NRFガンマ線を放射線検出器で観測することで、同位体識別ができる。NRFガンマ線は数MeVのエネルギーを有し10mm程度の鉄板を通り抜けることができるため、コンテナなどに封入された物質の同位体識別と空間分布を非破壊で測定できる。図1に、手法の概念を示す。





X線や光子等の光子ビーム1をサンプル2へ照射する。サンプル2には注目している同位体3が含まれている。なおサンプル2は遮蔽されている場合があるが、ここでは遮蔽体の記載を省略している。同位体3は光子1を吸収し、NRFガンマ線4を放出し、放射線検出器6によって検出される。その他の光子はサンプル中の他の原子によって散乱され、散乱X線5となって系外へ逸脱するか、あるいは放射線検出器6によって検出される。透過した光子ビーム1の一部は光子強度モニター7で計測される。ビーム1をスキャンあるいはサンプル2を移動させることで、同位体の空間分布を測定する。





上記の検査や分析、あるいは処理プロセスにおいて、制動放射X線の代わりにレーザーコンプトン散乱(Laser-Compton Scattering;LCS、後述)によって準単色光子束を発生し、これを用いて同位体検出を行う手法が提案されている。電子加速器などによって発生させた高エネルギー電子ビームに高強度のレーザーを照射して数MeVの光子領域のLCS光子を発生することが可能である。





LCSは通常のコンプトン散乱と同様に電子と光子の相互作用であるが、電子のエネルギーが高いこと、光子としてレーザーを用いることが特徴である。この方法により発生した光子は、光子束が極めて狭い立体角内に放出され、シンクロトロン放射光と同程度の高い指向性を有すること、光子の散乱角とエネルギーに相関があることから、コリメータによって光子を準単色化できると同時にエネルギー広がりを小さく(準単色化)できること(式(1))、散乱光子にレーザーの偏光がそのまま保存されるため、偏光度の高いLCS光子が得られること(式(6)後述)などが特徴である。





LCSの原理を図2に、LCS光子のエネルギーEγと電子及びレーザー光のエネルギーの関係を式(1)に示す。式(1)において、Eeは電子のエネルギー、ELはレーザー光のエネルギーである。

【数1】








エネルギー641MeVの電子に対して波長1064nmと1550nmのレーザーを照射した場合のLCS光子の散乱角とエネルギーの関係を図3に示す。散乱角度θ2を制限することによって、所望するエネルギーとエネルギー幅の光子を得ることができる。具体的には鉛などに細い孔を開けたコリメータをビーム軸上に配置することで散乱角度の制限を行う。通常、エネルギー幅は数%程度であり、これを準単色光子と呼ぶ。





原子核同位体の反応断面積σD(E)は式(2)で表される。共鳴幅Γは、式(3)で表わされるドップラー広がりによって広がるが、Δの幅も非常に狭く、通常数100meV程度である。

【数2】








そのためNRFを効率よく発生させるには、励起光子が同位体原子核の固有振動に同調した狭いエネルギースペクトルを持っていることが望ましい。上式においてhバーはプランク定数、cは光速、Eは光子エネルギー、I0とI1はそれぞれ基底状態と励起状態の全角運動量、Eresは共鳴エネルギー、Γは共鳴のエネルギー幅、kはボルツマン定数、Teffは原子核の実効温度、mは電子の静止質量エネルギーを表す。





LCS光子束はエネルギー幅を数%以下に狭めることができるため、制動放射X線と比較して、背景雑音(ノイズ)を低減させて信号対雑音比(S/N)を大きくすることが可能である。そのため、LCS光子ビームを用いた測定方法は、精度、時間、信頼性、安全性など多くの面で制動放射X線を用いた場合より優れている。





非特許文献1には、NRFを用いた同位体識別法に、LCS光子を用いる方法が提案されている。非特許文献2には、次世代の電子加速器として建設が進められているエネルギー回収型リニアック(ERL)と最先端の高出力モードロックファイバーレーザー、それにパルスレーザーを蓄積するスーパーキャビティを組み合わせ、既存のLCS光子束より遥かに高い強度(およそ108倍)のLCS光子束を発生させる手法が報告され、これによって放射性廃棄物中の長寿命核種の存在を数秒で検知できることが示されている。非特許文献3,4には、鉛の同位体である鉛208から発生するエネルギー5512keVのNRFガンマ線の検出とそれを用いたイメージング、及び炭素12からの4439keVのNRFガンマ線の検出とそれを用いた物質同定に関しての報告がある。鉛208サンプルは厚さ1.5cmの鉄箱内部に厳重に隠匿した状態であった。





炭素12及び鉛208の原子核励起準位を図4に示す。原子核の励起にはエネルギー幅の狭いLCS光子ビームを用いる。水素を除く原子核には、原子核固有の励起状態が存在する。測定したい核種(例えば、鉛208)の準位(例えば、5512keV)に光子束を照射した場合、鉛208によって5512keVの光子が吸収される。鉛208は励起状態から冷却する過程で、励起エネルギーに等しいNRFガンマ線を放出する。これを検出することで鉛208を検知できる。鉛208に対しては560MeVの電子に、炭素12に対しては510MeVの電子に、それぞれ波長1064nmのレーザーを照射することで所望するエネルギーのLCS光子ビームを発生する。





物質に含まれる元素を精度よく分析する手法として蛍光X線分析がある。蛍光X線はエネルギーが低いため、コンテナ内部に隠匿された物質の測定はできない。また、原子の構造、すなわち電子遷移によって発生したX線(特性X線)が原子に固有の状態を表すことを利用して元素分析を行うので、元素を識別できるが、同位体を識別できない。





サンプルへ高エネルギーガンマ線を照射し、注目する同位体において(γ,n)反応を誘起し、これによって核異性体を作り、その脱励起ガンマ線を用いて同位体識別を行う手法が提案されている(特許文献2)。

産業上の利用分野



本発明は、原子核共鳴蛍光散乱を用いた非破壊検査システムに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
サンプルを保持するプレートと、
前記プレートに保持されるサンプルに対して所定の方向に配置された複数の放射線検出器と、
異なるエネルギーを有し偏光面がそれぞれ制御された複数種類の準単色光子ビームを同軸にして前記プレートに保持されたサンプルに照射する光子ビーム照射部と、
前記プレートと前記光子ビーム照射部を相対移動させる駆動部と、
前記駆動部を制御するとともに前記複数の放射線検出器からの検出信号が入力される制御演算部と、
表示部とを有し、
前記放射線検出器は、サンプルに照射される前記準単色光子ビームの偏光面に依存する方向にサンプル中の同位体から放出されるNRFガンマ線を検出できる方向に配置され、
前記制御演算部は、前記放射線検出器の検出信号に基づいてサンプル中の光子ビーム照射領域に存在する注目する原子核同位体を同定し、前記表示部にその空間分布を可視化して表示することを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項2】
請求項1記載の非破壊検査システムにおいて、前記光子ビーム照射部は、所定エネルギーの電子ビームを発生する電子線加速器と、第1の偏光を有する第1の波長のレーザー光を発生する第1のレーザー光源と、第2の偏光を有する第2の波長のレーザー光を発生する第2のレーザー光源と、前記第1の波長のレーザー光と前記第2の波長のレーザー光を同軸光として前記電子ビームに対して第1の角度で衝突させる光学系と、前記電子ビームと前記第1のレーザー光との衝突によって前記電子ビームに対して第2の角度方向に発生した第1の偏光光子ビーム、及び前記電子ビームと前記第2のレーザー光との衝突によって前記第2の角度方向に発生した第2の偏光光子ビームを通過させるコリメータを備えることを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項3】
請求項2記載の非破壊検査システムにおいて、前記制御演算部は、前記第1のレーザー光源及び第2のレーザー光源を制御し、前記第1のレーザー光及び前記第2のレーザー光として、それぞれ時間構造が異なるパルス光を発生させることを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の非破壊検査システムにおいて、前記光子ビームは、当該光子ビームの照射により前記サンプル中の単一又は複数の同位体の単一又は複数の原子核準位から別々の方向に複数のNRFガンマ線が放出されるようにエネルギーと偏光面が設定されていることを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の非破壊検査システムにおいて、前記複数の放射線検出器は、サンプルに対して当該サンプルに照射される前記光子ビームの偏光面に平行な方向及び/又は垂直な方向、あるいは任意の角度に配置されていることを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載の非破壊検査システムにおいて、サンプルに照射される光子ビーム強度を検出する光子強度モニターを有することを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項記載の非破壊検査システムにおいて、前記注目する原子核同位体は炭素12、窒素14及び酸素16など爆発物を構成する元素の同位体であるであることを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載の非破壊検査システムにおいて、前記光子ビーム照射部から照射される光子ビームのエネルギーは中性子放出エネルギー以下であることを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項記載の非破壊検査システムにおいて、前記駆動部は、前記プレートに保持されたサンプルが前記光子ビーム照射部から照射される光子ビームによって走査されるように前記プレートを駆動することを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項10】
請求項1記載の非破壊検査システムにおいて、前記準単色光子ビームはLCS光子ビームであり、当該LCS光子ビームを発生するために偏光したレーザー光を用い、その偏光面を検査する物体の構成元素や検査したい同位体の種類に応じて選択することを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項11】
請求項1記載の非破壊検査システムにおいて、前記サンプル中の同位体の原子核構造によって決まる遷移形式に従って所望の方向に前記NRFガンマ線が放出されるように前記光子ビームの偏光面やエネルギーを制御することを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項12】
請求項1記載の非破壊検査システムにおいて、前記NRFガンマ線の放出方向の異方性を利用して、あらかじめ設定された方向に配置された放射線検出器によって当該NRFガンマ線を検出することを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項13】
請求項1記載の非破壊検査システムにおいて、前記サンプル中の同位体の原子核準位から放出されるNRFガンマ線の放出方向を前記サンプルに照射される前記光子ビームの偏光面に依存させて分散させることにより前記放射線検出器一個当たりの計数率を下げたことを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項14】
請求項1記載の非破壊検査システムにおいて、エネルギーが近接した前記同位体の原子核準位から放出された複数の前記NRFガンマ線を前記サンプルに対して異なる方向に配置された放射線検出器でそれぞれ検出することを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項15】
請求項1記載の非破壊検査システムにおいて、前記放射線検出器はシンチレータ検出器であることを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項16】
請求項1記載の非破壊検査システムにおいて、前記NRFガンマ線が放出される原子核準位は中性子発生しきい値以下のエネルギーであることを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項17】
請求項1記載の非破壊検査システムにおいて、前記光子ビーム照射部は、所定エネルギーの電子ビームを発生する電子線加速器と、複数のレーザー光源を備え、前記複数のレーザー光源から発生された2種類以上の異なる波長の偏光したレーザー光を同軸光として前記電子ビームに対して第1の角度で衝突させ、前記衝突によって第2の角度方向に発生した複数の偏光LCS光子ビームをコリメータを通して取り出すことを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項18】
請求項17記載の非破壊検査システムにおいて、前記偏光LCS光子のエネルギーの調整を前記レーザー光源のみによって行うことを特徴とする非破壊検査システム。

【請求項19】
請求項17記載の非破壊検査システムにおいて、前記コリメータの位置調整を測定開始前に一度だけ行うことを特徴とする非破壊検査システム。
国際特許分類(IPC)
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