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リビングラジカル重合の重合開始剤 外国出願あり

国内特許コード P130009555
整理番号 2522
掲載日 2013年7月10日
出願番号 特願2011-518278
登録番号 特許第5645165号
出願日 平成22年6月3日(2010.6.3)
登録日 平成26年11月14日(2014.11.14)
国際出願番号 JP2010003722
国際公開番号 WO2010140372
国際出願日 平成22年6月3日(2010.6.3)
国際公開日 平成22年12月9日(2010.12.9)
優先権データ
  • 特願2009-134541 (2009.6.3) JP
発明者
  • 後藤 淳
  • 金 正植
  • 辻井 敬亘
  • 福田 猛
出願人
  • 国立大学法人京都大学
発明の名称 リビングラジカル重合の重合開始剤 外国出願あり
発明の概要 複雑で煩雑なドーマント種の合成を必要としない高い効率のリビングラジカル重合方法を提供すること。
アルコールまたはアミンをハロゲン化することが可能なハロゲン化剤により、非共役構造を有するアルコール化合物または非共役構造を有するアミン化合物をハロゲン化して得られるハロゲン化誘導体化合物をリビングラジカル重合の開始ドーマント種として用いて、該ハロゲン化誘導体化合物からハロゲンが脱離して生成するラジカルを該モノマーの不飽和結合と反応させて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーのリビングラジカル重合を行う。好ましくは、ハロゲン化剤として、触媒としての機能をも有する化合物(NISなど)を用いる。
従来技術、競合技術の概要


従来から、ビニルモノマーを重合してビニルポリマーを得る方法として、ラジカル重合法が周知であったが、ラジカル重合法は一般に、得られるビニルポリマーの分子量を制御することが困難であるという欠点があった。また、得られるビニルポリマーが、様々な分子量を有する化合物の混合物になってしまい、分子量分布の狭いビニルポリマーを得ることが困難であるという欠点があった。具体的には、反応を制御しても、重量分子平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)として、2~3程度にまでしか減少させることができなかった。



このような欠点を解消する方法として、1990年頃から、リビングラジカル重合法が開発されている。すなわち、リビングラジカル重合法によれば、分子量を制御することが可能であり、かつ分子量分布の狭いポリマーを得ることが可能である。具体的には、Mw/Mnが2以下のものを容易に得ることが可能であることから、ナノテクノロジーなどの最先端分野に用いられるポリマーを製造する方法として脚光を浴びている。



リビングラジカル重合方法は、例えば、後述する特許文献1~4および非特許文献1~6に開示されている。



リビングラジカル重合を効率よく行うために、従来、ハロゲン化炭化水素などがいわゆるドーマント種として使用されていた。しかし、ハロゲン化炭化水素などをドーマント種として使用する場合、予め当該ハロゲン化炭化水素などを合成もしくは入手しておく必要がある。従って、ドーマント種の合成などの必要がないプロセスが望まれていた。



また、リビングラジカル重合方法は、いわゆる星型ポリマー(図3)、櫛型ポリマー(図4)、表面グラフトポリマー(図5)などと呼ばれる、複雑な構造のポリマー製品を製造するために使用できることが知られている。具体的には、例えば、所望の製品のポリマー鎖配列に対応するように配列された複数の開始基を有する化合物を使用する方法がある。このような場合には、特に、その複数の開始基を有する化合物を調製することが必要であり、全体としてのプロセスが複雑になるという欠点があった。



他方、リビングラジカル重合においては、高価な触媒を大量に必要とするという欠点もあった。



このような遷移金属錯体触媒を用いる場合には、使用量として多量の遷移金属錯体触媒が必要であり、反応後に使用された大量の触媒を製品から完全に除去することが容易でないという欠点があった。また不要となった触媒を廃棄する際に環境上の問題が発生し得るという欠点があった。さらに、遷移金属には毒性の高いものが多く、製品中に残存する触媒の毒性が環境上問題となる場合があり、遷移金属を食品包装材、生体・医療材料などに使用することは困難であった。また、反応後に製品から除去された触媒の毒性が環境上問題となる場合もあった。さらに、導電性の遷移金属がポリマーに残存するとそのポリマーに導電性が付与されてしまって、レジストや有機ELなどの電子材料に使用することが困難であるという問題もあった。また、錯体を形成させないと反応液に溶解しないため、配位子となる化合物を用いなければならず、このために、コストが高くなり、かつ、使用される触媒の総重量がさらに多くなってしまうという問題もあった。さらに、配位子は、通常、高価であり、あるいは煩雑な合成を要するという問題もあった。また、重合反応に高温(例えば、110℃以上)が必要であるという欠点があった(例えば、上記非特許文献1では、110℃において重合を行っている)。



このように、従来、効率良くリビングラジカル重合を行うために、触媒とドーマント種とを組み合わせて使用することが一般的に行われていた。



例えば、特許文献1(特開2002-249505号公報)は、Cu、Ru、Fe、Niなどを中心金属とする錯体を触媒として使用し、請求項1において、重合開始剤となるドーマント種として有機ハロゲン化物を用いることを記載している。



また、特許文献2(特開平11-322822号公報)は、ヒドリドレニウム錯体を触媒として使用し、ハロゲン化炭化水素をドーマント種として使用することを記載している。



非特許文献1(Journal of The American Chemical Society 119,674-680(1997))は、4,4’-ジ-(5-ノニル)-2,2’-ビピリジンを臭化銅に配位させた化合物を触媒として使用し、1-フェニルエチルブロミドをドーマント種として使用することを記載している。非特許文献1に記載されていた銅錯体触媒では、ポリマー1kgを重合する際に必要とされる触媒の費用がおよそ数千円になっていた。



なお、触媒を用いる必要がないリビングラジカル重合方法も公知である。例えば、ニトロキシル系、およびジチオエステル系の方法が知られている。しかし、これらの方法においては、特殊な保護基をポリマー成長鎖に導入する必要があり、この保護基が非常に高価であるという欠点がある。また、重合反応に高温(例えば、110℃以上)が必要であるという欠点がある。さらに、生成するポリマーが好ましくない性能を有しやすいという欠点がある。すなわち、生成するポリマーがその高分子本来の色と異なる色に着色されたものになりやすく、また、生成するポリマーが臭気を有するものになりやすいという欠点がある。



他方、非特許文献2(Polymer Preprints 2005, 46(2), 245-246)および特許文献3(特開2007-92014号公報)は、Ge、Snなどを中心金属とする化合物を触媒として使用し、有機ハロゲン化物をドーマント種として使用することを開示する。また、特許文献4(国際公開WO2008/139980号公報)は、窒素またはリンを中心金属とする化合物を触媒として使用することを開示する。



また、非特許文献3はリン化合物を触媒として使用し、有機ハロゲン化物をドーマント種として使用することを開示する。



このように、従来、リビングラジカル重合を効率良く行うためには、触媒とドーマント種とを組み合わせて用いることが当業者の技術常識であった。



そして、ドーマント種としては、ハロゲン化アルキルなどが好ましいと考えられており、アルコール化合物をドーマント種として使用できるとは考えられていなかった。



他方、ポリマーを合成する反応とは関係のない低分子化合物の研究においては、アルコールなど様々な化合物とハロゲンとの反応が研究されている。



例えば、非特許文献4は、モノ-t-ブチルジメチルシリル化ジオールの酸化環状化方法を記載している。非特許文献4は、その途中の反応においてN-ヨウ化こはく酸イミド(NIS)がモノ-t-ブチルジメチルシリル化ジオールの水酸基をヨウ素化する反応が開示されているが、その反応をモノ-t-ブチルジメチルシリル化ジオールの酸化環状化方法以外の方法に用いることについての記載はない。すなわち、ポリマーの合成に用いることについての記載はない。



また、非特許文献5は、環状エーテルを良好な収率で合成するために、分子内水素引き抜き反応(intramolecular hydrogen abstraction)のためにジアセトキシヨードベンゼン((AcO)IPh)およびIの混合物を用いることを記載している。非特許文献5には(AcO)IPhおよびIの混合物がアルコールをヨウ素化する反応が開示されているが、環状エーテルの合成以外の目的にその反応を使用することの記載はない。その反応をポリマーの合成に用いることについての記載はない。



また、非特許文献6は、ベンズイソチアゾリン化合物を合成する方法を記載している。非特許文献6は、その中間体を合成する際に、(AcO)IPhおよびIの混合物がアミンをヨウ素化する反応が生じることを記載している(Scheme 1)が、その反応をベンズイソチアゾリン化合物合成方法以外の方法に用いることについての記載はない。すなわち、ポリマーの合成に用いることについての記載はない。



さらに、非特許文献7は、芳香族カルボン酸からγ-ラクトンまたはδ-ラクトンを合成する方法を記載している。非特許文献7は、ラクトン環を合成する際に、水素引抜反応およびハロゲン化反応を用いて環を形成できることを記載し(7089頁のPath A)、PhI(OCOCFおよびIの混合物、Hg(OAc)およびIの混合物、Pb(OAc)およびIの混合物がその試薬として使用できることを記載している(Table 3)が、その反応をラクトンの合成方法以外の方法に用いることについての記載はない。すなわち、ポリマーの合成に用いることについての記載はない。

産業上の利用分野


本発明は、リビングラジカル重合に用いられる重合開始剤およびそれを用いた重合方法に関する。より具体的には、本発明は、水酸基またはアミノ基を有する化合物とハロゲン化剤を反応させて得られる化合物をリビングラジカル重合の開始ドーマント種として用いる方法に関する。



詳細には、本発明の方法は、ハロゲン化剤を用いて、非共役構造を有するアルコール化合物または非共役構造を有するアミン化合物などをハロゲン化して、ハロゲン化誘導体化合物を生成する工程と、
該ハロゲン化誘導体化合物をリビングラジカル重合のドーマント種として用いて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーのリビングラジカル重合を行う工程であって、該ハロゲン化誘導体化合物からハロゲンが脱離して生成するラジカルを該モノマーの不飽和結合と反応させることを含む、工程、
を包含する。

特許請求の範囲 【請求項1】
リビングラジカル重合方法であって、以下の工程:
アルコールの水酸基の水素をハロゲン化することが可能なハロゲン化剤により、アルコール化合物をハロゲン化して、該水酸基中の水素がハロゲンに置換されたハロゲン化誘導体化合物を生成する工程であって、ここで、該アルコール化合物の水酸基が結合している原子が非共役構造を有している、工程、および
該ハロゲン化誘導体化合物をリビングラジカル重合のドーマント種として用いて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーのリビングラジカル重合を行う工程であって、該ハロゲン化誘導体化合物からハロゲンが脱離して生成するラジカルを該モノマーの不飽和結合と反応させることを含む、工程、
を包含
ここで、該アルコール化合物中の水酸基が結合している原子が炭素またはケイ素である、
方法。

【請求項2】
前記アルコール化合物中の水酸基が結合している原子がSp混成軌道を有する炭素である、請求項1に記載の方法。

【請求項3】
前記ハロゲン化剤が、アルコールをヨウ素化することが可能なヨウ化剤であるか、またはアルコールを臭素化することが可能な臭素化剤である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。

【請求項4】
前記ハロゲン化剤が、以下の式4の構造を有し、
式4 R-C(=O)-NX-C(=O)-R
ここで、Xはハロゲンであり、
およびRはそれぞれ独立して任意の置換基であり、RおよびRは互いに連結されて環構造を形成してもよく、
該ハロゲン化剤は、リビングラジカル重合の触媒としても作用する、
請求項1~のいずれか1項に記載の方法

【請求項5】
前記ハロゲン化剤において、RおよびRは互いに連結されてアルキレンまたは置換アルキレンとなって、前記式4の構造が環構造となり、
ここで、該アルキレンの炭素数は1~10であり、
該置換アルキレンにおけるアルキレンの炭素数は1~10であり、
該置換アルキレンにおける置換基がハロゲンまたは水酸基から選択される、
請求項に記載の方法。

【請求項6】
前記式4の構造が5員環構造または6員環構造であり、Xがヨウ素である、請求項に記載の方法。

【請求項7】
前記ハロゲン化剤がN-ヨウ化コハク酸イミドである、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。

【請求項8】
前記アルコール化合物が、固体である、請求項1に記載の方法。

【請求項9】
前記アルコール化合物が、シリコン基板表面の水酸基を有する化合物である、請求項1に記載の方法。

【請求項10】
前記ハロゲン化剤がジアセトキシヨードベンゼン((AcO)IPh)およびIの混合物である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。

【請求項11】
請求項1に記載のハロゲン化誘導体化合物をドーマント種として用いて、反応性不飽和結合を有するモノマーをリビングラジカル重合して得られるポリマー鎖の末端にポリオール化合物の残基が結合しているポリマーであって、
該ポリオール化合物の水酸基に由来する酸素原子が、該ポリマー鎖の末端のモノマー残基中の反応性不飽和結合を構成していた2つの炭素原子のうちのいずれか一方に直接結合している、ポリマー。

【請求項12】
請求項1に記載のハロゲン化誘導体化合物をドーマント種として用いて、反応性不飽和結合を有するモノマーをリビングラジカル重合して得られるポリマー鎖の末端が結合した基板であって、
該ポリマー鎖の末端のモノマー残基中の、反応性不飽和結合を構成していた2つの炭素原子のうちのいずれか一方に、基板表面の酸素原子が直接結合している、基板。

【請求項13】
請求項1に記載のハロゲン化誘導体化合物をドーマント種として用いて、反応性不飽和結合を有するモノマーをリビングラジカル重合して得られるポリマー鎖の末端にシラノール化合物の残基が結合しているポリマーであって、
該シラノール化合物の水酸基に由来する酸素原子が、該ポリマー鎖の末端のモノマー残基中の反応性不飽和結合を構成していた2つの炭素原子のうちのいずれか一方に直接結合している、ポリマー。

【請求項14】
リビングラジカル重合方法であって、以下の工程:
アミノ基の窒素に結合している水素をハロゲン化することが可能なハロゲン化剤により、1級または2級のアミン化合物のアミノ基の窒素に結合している水素をハロゲン化して、該アミン化合物の水素がハロゲンに置換されたハロゲン化誘導体化合物を生成する工程であって、ここで、該アミン化合物の該アミノ基が結合している原子が非共役構造を有している、工程、および
ハロゲン化誘導体化合物をリビングラジカル重合のドーマント種として用いて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーのリビングラジカル重合を行う工程であって、該ハロゲン化誘導体化合物からハロゲンが脱離して生成するラジカルを該モノマーの不飽和結合と反応させることを含む、工程、
を包含する、方法。

【請求項15】
前記リビングラジカル重合を行う工程が、前記ハロゲン化誘導体化合物以外の低分子ドーマント種を用いずに行われる、請求項14に記載の方法。
産業区分
  • その他無機化学
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
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