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人工関節 新技術説明会

国内特許コード P130009587
掲載日 2013年7月12日
出願番号 特願2011-537307
登録番号 特許第5742031号
出願日 平成22年10月21日(2010.10.21)
登録日 平成27年5月15日(2015.5.15)
国際出願番号 JP2010068616
国際公開番号 WO2011049176
国際出願日 平成22年10月21日(2010.10.21)
国際公開日 平成23年4月28日(2011.4.28)
優先権データ
  • 特願2009-244082 (2009.10.23) JP
  • 特願2010-060129 (2010.3.17) JP
発明者
  • 中西 義孝
  • 峠 睦
出願人
  • 国立大学法人 熊本大学
発明の名称 人工関節 新技術説明会
発明の概要 摩擦材料の摩耗を抑制するとともに、摩擦面から生じる摩耗粉による生体活性を抑制する。関節を構成する一対の関節部材であるボール20及びカップ30を有し、これら一対の関節部材間に、潤滑液40を介して互いに接触した状態で相対的に摺動する一対の摩擦面である凸曲面21および凹曲面31を形成する人工股関節10であって、凸曲面21および凹曲面31のうち少なくとも一方の摩擦面である凸曲面21は、凸曲面21の表面側から内側にかけて徐々に幅が狭くなる溝状および穴状の少なくともいずれかの凹部23と、凹部23を形成する斜面部23aと凸曲面21の表面部を形成する面とを滑らかに繋ぐ曲面部24と、を有する。また、好ましくは、凹部23の深さは、大きくてもサブミクロンサイズである。
従来技術、競合技術の概要


人工関節は、互いに接触した状態で相対的に摺動する摩擦面(摺動面)を有する。具体的には、人工関節は、互いに連結されることで関節を構成する一対の関節部材を有し、関節部材同士の連結部分における接触面が、関節の動きにともなって潤滑液を介して摺動する摩擦面となる。人工関節における摩擦面を形成する摩擦材料の組み合わせとしては、ポリエチレン等の樹脂材料と、金属やセラミックス等の硬質材料との組み合わせが選択されることが多い。



このため、人工関節の摩擦面においては、硬質材料に対して軟質な樹脂側の摩擦材料の摩耗が問題となる。そこで、従来、硬質材料の表面粗さを低下させることや、摩擦面における親水・疎水特性の改善等が行われている。また、硬質材料については、アルミナおよびジルコニア系セラミックスの優位性が例証されている一方で、これらの材料が有する低靭性という特性ゆえの破壊問題が現実問題として起きている。かかる観点から、硬質材料としては、高靭性・延性能力を有する金属材料のフェイルセイフ的特徴を見逃すことはできない。



特に、人工関節の一種である人工股関節においては、凹曲面を形成するカップ状の部分に凸曲面を形成するボール状の部分が嵌り込むという連結構造が一般的であることから、摩擦面の形状が単純である。このため、人工股関節においては、摩擦面となる凹曲面と凸曲面との間における径方向の隙間の寸法や摩擦面の表面粗さ等の最適調整によって、摩耗を抑制することが試みられている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、人工股関節においては、現実問題として、人工股関節の使用者の長期立脚時等、摩擦面間において潤滑液により形成される流体膜が破断する機会が多々あるため、摩擦面における潤滑特性の改善や流体膜の速やかな再形成が必要である。



また、人工関節において摩擦材料の摩耗を抑制するための技術として、摩擦面に溝状の凹部を形成する技術がある(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2の技術では、摩擦面に形成される凹部は、硬質材料側の摩擦面に固体潤滑膜としての薄膜を形成する合成樹脂を埋設するためや、樹脂の摩耗粉を潤滑液によって流し込むための部分として用いられている。



このように、人工関節においては、摩擦材料、特にポリエチレン等の樹脂材料の摩耗を抑制することが課題として存在している。そして、従来は、摩擦材料の摩耗による擦り減りが、人工関節の寿命を決定づける主な要因であった。



人工関節における摩擦材料の摩耗に対する対策としては、摩擦材料であるポリエチレン等の樹脂材料の特性の改善や、摩擦面において局部的に接触圧力が高い箇所が発生することを防止する観点からの摩擦材料の形状デザインの改善等が行われた。樹脂材料の特性の改善としては、具体的には、樹脂材料の高分子化や、ガンマ線を照射すること等による樹脂材料の架橋化を図ること等が行われた。また、摩擦材料の形状デザインについては、摩擦面における接触圧力が均一的にかつ低くなるような形状デザインが採用された。このような摩擦材料の摩耗に対する対策により、人工関節における摩擦材料の摩耗が抑制され、摩擦材料の摩耗による擦り減りを原因とする人工関節の寿命の低下の問題は、現状ほぼ解消されている。



しかしながら、上記のような摩耗に対する対策、主に樹脂材料の特性の改善にともない、人工関節の摩擦面から摩耗により生じる摩耗粉のサイズが小さくなるという現象が生じた。実際、人工関節の摩擦面からは、数μmからサブミクロンサイズ程度の摩耗粉が生じることがわかっている。このように摩耗粉のサイズが小さくなることは、人工関節を保有する体内において好ましくない生体反応(生体活性)を誘発する。



具体的には、人工関節の摩擦面からポリエチレン等の微少な摩耗粉が生じると、その摩耗粉がマクロファージによる貪食の対象となる。摩耗粉を貪食したマクロファージは、細胞内シグナル伝達を経てTNF-α、IL-6等の炎症性サイトカインを放出する。マクロファージから放出される炎症性サイトカインは、破骨細胞を活性化し、人工関節の周囲で炎症をともなう骨融解を生じさせる。人工関節周囲で生じる骨融解は、人工関節再置換術の原因となる人工関節の緩み(ルースニング)を生じさせる。人工関節再置換術は、患者にとって大きな負担となり、その負担は、高齢者の患者にとっては特に大きい。



このような摩耗粉による生体活性に関しては、摩耗粉のサイズが生体活性の程度に大きく影響することが判明している(例えば、非特許文献1参照。)。過去の研究等によれば、摩耗粉のサイズが1μm程度よりも小さくなると、マクロファージによる生体活性が顕著となる。



そこで、摩耗粉による生体活性を抑制するための方法として、摩擦面から生じる摩耗粉のサイズを大きくすること、および、個々の摩耗粉の重量は維持しつつ、摩耗粉の形態を生体活性が起こらないような形態にすることが考えられる。前者の方法としては、例えば、複数の摩耗粉を凝集させ、あるいは一体化させることにより、摩耗粉を大きな塊となるようにする。また、後者の方法としては、例えば、摩耗粉の形状を、マクロファージに貪食されない程度の長さを有する細長い形状にしたり、摩耗粉を綿埃のような形状にすることで摩耗粉の密度を下げ、摩耗粉の見かけのサイズをマクロファージに貪食されない程度のサイズにしたりする。



これらの方法を実施するためには、前述したように樹脂材料の特性を変えたり、摩擦材料の形状を変えたりすることは有効ではない。実際、ポリエチレンと架橋ポリエチレンとを同じ摩擦条件のもとで分析すると、摩耗粉のサイズについては、架橋ポリエチレンの方が小さめではあるものの、摩耗粉のアスペクト比や真円度等、摩耗粉の形態に関する値は、ポリエチレンと架橋ポリエチレンとで同程度である。また、摩擦材料の形状の面から摩擦の状態が異なる人工股関節と人工膝関節との関係においても、ポリエチレンと架橋ポリエチレンとの関係と同様に、摩耗粉のサイズについては差があるものの、摩耗粉の形態に関する値は同程度である。



また、摩擦面から生じる摩耗粉のサイズを大きくする方法としては、ポリエチレン等の樹脂材料の相手方の摩擦材料である金属等の硬質材料側の摩擦面を、傷を付けること等によって粗くすることで、樹脂材料の摩耗粉が大きくなるようにする方法がある。このように硬質材料側の摩擦面を粗くする方法によれば、マクロファージの貪食の対象になりやすい0.1-1.0μmのサイズの摩耗粉の数・量は減り、個々の摩耗粉による生体活性は減るものの、摩耗粉の総数・総量は数倍程度に増加し、結果的に全体的な生体活性は増大するという研究結果が得られている。



ここで、人工関節における摩擦面の表面粗さと摩耗量との関連性についての考察を加える。人工関節の摩擦面の環境は、摩擦面間を湿潤状態とする体液・二次関節液の粘度が低いこと、摩擦面間の荷重が大きい(例えば体重の3.5倍程度)ことから、ウエットというよりもドライに近い環境であるといえる。このため、摩擦面の表面粗さが大きくなると、切削性の摩耗が支配的となることで、摩耗量が増加し、摩擦面の表面粗さが小さくなると、凝着性の摩耗が支配的となることで、摩耗量が増加する。つまり、ドライに近い摩擦面環境においては、摩擦面の表面が滑らかなほど摩耗量が減少するということではなく、摩擦面の表面粗さについて摩耗量が少なくなる最適な値の範囲が存在する。現在、多くの人工関節は、硬質材料側の摩擦面の表面粗さがRaの値で0.02~0.2μmの範囲となるように製造されている。



以上のように、現在では、摩耗粉の微細化にともなうマクロファージによる生体反応の発生が、従来における摩擦材料の摩耗による擦り減りに代わり、人工関節の寿命を決定づける主な要因となっている。そして、摩耗粉による生体活性を抑制するためには、樹脂材料の特性や摩擦材料の形状の改善、あるいはRaの値等で表記できる摩擦面の表面粗さの調整によっては限界がある。とりわけ、摩擦面の表面粗さについては、摩擦面の環境が完全なウエットの状態であれば、摩耗粉を発生させる摩擦材料の摩耗を抑制する観点からは、Raの値は小さければ小さいほど好ましいが、人工関節では、上記のとおり摩擦面間に存在する体液等の粘度が低いこと等の理由から、摩擦面において完全にウエットの環境を実現することは困難である。

産業上の利用分野


本発明は、人工関節に関し、詳細には、人工関節が有する摩擦面(摺動面)の形状に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
関節を構成する一対の関節部材を有し、該一対の関節部材間に、潤滑液を介して互いに接触した状態で相対的に摺動する一対の摩擦面を形成する人工関節であって、
前記一対の摩擦面のうち少なくとも一方の前記摩擦面は、
前記摩擦面の深さ方向に沿う断面視で前記摩擦面の表面側から前記深さ方向の奥側にかけて徐々に幅が狭くなるように鋭角状をなす斜面部を有する溝状および穴状の少なくともいずれかの凹部と、
該凹部を形成する前記斜面部と前記摩擦面の表面部を形成する面とを連続させる凸状の曲面として形成される曲面部と、
を有することを特徴とする人工関節。

【請求項2】
前記凹部の深さは、大きくてもサブミクロンサイズであることを特徴とする請求項1に記載の人工関節。

【請求項3】
前記一対の摩擦面のうち、一方の前記関節部材により形成される前記摩擦面は、金属材料により形成され、他方の前記関節部材により形成される前記摩擦面は、樹脂材料により形成されるものであり、
金属材料により形成される前記摩擦面に、前記凹部と前記曲面部とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の人工関節。

【請求項4】
前記凹部は、サイズ、形状、および前記摩擦面における分布密度の少なくともいずれかの調整により、前記摩擦面から生じる摩耗粉の量、サイズ、および形状の少なくともいずれかをコントロールするための形状部分として用いられることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の人工関節。

【請求項5】
前記凹部は、前記摩擦面から生じる摩耗粉がマクロファージによる貪食の対象から除外されるサイズ・形状となるように形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の人工関節。
産業区分
  • 治療衛生
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録
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