TOP > 国内特許検索 > タンパク質とリン酸化ペプチドのペプチド主鎖のN-Cα結合又はCα-C結合の特異的切断方法

タンパク質とリン酸化ペプチドのペプチド主鎖のN-Cα結合又はCα-C結合の特異的切断方法 UPDATE

国内特許コード P130009609
整理番号 S2012-0070-N0
掲載日 2013年7月16日
出願番号 特願2012-254843
公開番号 特開2013-130570
登録番号 特許第6083595号
出願日 平成24年11月21日(2012.11.21)
公開日 平成25年7月4日(2013.7.4)
登録日 平成29年2月3日(2017.2.3)
優先権データ
  • 特願2011-253766 (2011.11.21) JP
発明者
  • 高山 光男
  • 大坂 一生
出願人
  • 公立大学法人横浜市立大学
発明の名称 タンパク質とリン酸化ペプチドのペプチド主鎖のN-Cα結合又はCα-C結合の特異的切断方法 UPDATE
発明の概要 【課題】タンパク質とペプチドのアミノ酸配列解析に適したマトリックス材を提供する。
【解決手段】下記一般式で表される化合物の存在下、タンパク質又はペプチドにレーザー光を照射することを含む、ペプチド主鎖のN-Cα結合又はCα-C結合を特異的に切断する方法。



特異的切断試薬、水素ラジカル放出試薬、MALDI-ISD用マトリックス試薬、MALDI-ISD用マトリックス、MALDI-ISD用ペプチドイオン化試薬及びMALDI-ISD用キットも提供される。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


タンパク質やポリペプチドなどのペプチド主鎖はアミノ酸残基R (-NH-CαH-CO-)を単位とし,α位の炭素 -Cα- にアミノ酸側鎖が結合したポリマーである。アミノ酸のナンバリングはアミノ (N)-末端側から始まり,カルボキシ (C)-末端を最終とする。一文字表記法でn個のアミノ酸残基から成るペプチドまたはタンパク質を表すと,NH2-R1-R2-R3-----Rn-1-Rn-COOH のように書くことができる。タンパク質を同定する際に最も役に立つ情報はこのアミノ酸配列であり,N-末端側でもC-末端側でも,あるいは内部配列でもその部分配列の10残基程度の情報があれば,データベースを使って簡単に同定することができる。各種アミノ酸配列解析法が開発されているが,質量分析法 (mass spectrometry, MS) もその一つに数えられている。質量分析法では、試料をイオン化し、このイオンを真空中で質量/電荷数比(m/z)に従って分離し、各イオンの相対強度を測定する。イオン化の方法としては、電子イオン化法(EI, electron ionization)、化学イオン化法(CI, chemical ionization)、電界脱離法(FD, field desorption)、高速原子衝突法(FAB, fast atom bombardment)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI, matrix associated laser desorption ionization)、エレクトロスプレーイオン化法(ESI, electrospray ionization)など様々な手法が開発されている。イオン化された試料を分離する分析部では、磁場偏向型、四重極型、イオントラップ型、飛行時間型(TOF, time-of-flight)、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型などの質量分析計が用いられる。MALDI-TOFの組合せは、高分子量まで適用できるイオン源と高分子量まで適用できる分析計の組合せであるため、ポリマーやタンパク質などの高分子の分析によく用いられている。



マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)を使うタンパク質の直接シーケンシングを最初に報告したのは,R.S.BrownとJ.J.Lennonである(非特許文献1)。その後,種々のタンパク質の直接シーケンシングに応用されたが(非特許文献2~6),なぜレーザー照射によってタンパク質のアミノ酸配列解析を可能にするような特異的な開裂反応が起こるのか,その機構はまったく理解されていなかった。本発明者らもBrown等の最初の報告とは独立にこの現象に遭遇し,この現象がイオン化とは独立に起こることを示した(非特許文献7)。すなわち,N-Cα結合の開裂は,MALDI条件下でペプチドやタンパク質がプロトンを受け取り生成したプロトン化分子 [M+H]+ が開裂するのではなく,レーザー光照射によってマトリックスから水素ラジカルが発生し、中性試料分子 M に結合することにより開裂が起こる。開裂はイオン化室 (ion source) の内部で起こるため,この現象を in-source decay (ISD) と呼ぶ。



MALDIにおけるイオン化は,マトリックスと試料を混合し形成した結晶系にレーザー光を照射したとき,大過剰のマトリックスが光子を吸収し爆発的に気化する際のイオン分子反応によって起こる。マトリックスは,プロトンの供給源であるとともにプロトン受容体にもなるイオン化試薬である。ペプチドやタンパク質のN-Cα結合を特異的に開裂させるマトリックスには2,5-dihydroxybenzoic acid(2,5-DHB)が適していることが報告されていた(非特許文献8)。同時に、N-Cα結合の開裂は、マトリックスから発生する水素ラジカルがペプチドやタンパク質のラジカル種を生成させる原理が報告された(非特許文献9)。その後、島津製作所の田中耕一氏のグループより優れた試薬1,5-diaminonaphthalene (1,5-DAN) が発表され(非特許文献10)、海外グループによって確認された (非特許文献11)。しかし、2,5-DHBは過度に分解を促すホットな性質を持ち、1,5-DANは昇華性と発がん性があるとして、別のさらにすぐれたマトリックスが要望されていた。



5-アミノサリチル酸(5-ASA, 5-amino salicylic acid)は、発がん性などの著しい毒性がなく、准安定ピークも多価イオンのピークも与えず、さらに、アミノ酸配列解析にとって重要なピークのシャープネスを確保するイオン化試薬である(非特許文献12、特許文献1)。しかし、この試薬を用いた場合、最適な結晶の作製が必要で、レーザー光照射位置の選択にも熟練が必要であった。



ところで、タンパク質,特にリン酸化タンパク質のリン酸化位置を微量で迅速,かつ精密に決定することは困難とされている。特にリン酸化位置の決定には,多量のリン酸化タンパク質が必要であることと同時に、複数の消化酵素を組み合わせてペプチド断片を作成し、その質量を比較しながら決定する必要がある。また、質量分析による衝突誘起解離(CID)法を使ってリン酸化ペプチドのアミノ酸配列解析を行う場合、リン酸基の脱離が優先し、リン酸化位置を決定するのは困難である。



さらに、タンパク質のアミノ酸配列情報を数十残基単位で誰でも容易に決定できる迅速な方法はない。



上記の状況に対して、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)と組み合わせてペプチド主鎖のN-Cα結合のみを特異的に切断し、その際、リン酸基の脱離を伴わないソフトな切断手法を提供することが求められる。従来報告されていた技術では,リン酸化ペプチドのアミノ酸配列解析に使用可能な試薬(非特許文献8、10、11及び12)は,高度の技術と豊富な経験を要した。従って、より取扱いが容易な試薬が求められている。

産業上の利用分野


本発明は、タンパク質とリン酸化ペプチドのペプチド主鎖のN-Cα結合又はCα-C結合の特異的切断方法、より詳細には、ナフトール系化合物とレーザー光を利用したタンパク質とリン酸化ペプチド主鎖のN-Cα結合又はCα-C結合の特異的切断方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
5-アミノ-1-ナフトールの存在下で、タンパク質又はペプチドにレーザー光を照射することを含む、ペプチド主鎖のN-Cα結合を特異的に切断する方法。

【請求項2】
5-アミノ-1-ナフトールの存在下で、タンパク質又はペプチドにレーザー光を照射して、ペプチド主鎖のN-Cα結合を特異的に切断することを含む、タンパク質又はペプチドのアミノ酸配列決定方法。

【請求項3】
5-アミノ-1-ナフトールがマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析のマトリックスとして使用される請求項2記載の方法。

【請求項4】
5-アミノ-1-ナフトールを含む、ペプチド主鎖のN-Cα結合の特異的切断試薬。

【請求項5】
5-アミノ-1-ナフトールを含む、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析用マトリックス試薬。

【請求項6】
5-アミノ-1-ナフトールを含む、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析用マトリックス。

【請求項7】
5-アミノ-1-ナフトールを含む、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析用タンパク質又はペプチドイオン化試薬。

【請求項8】
5-アミノ-1-ナフトールを含む、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析用キット。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
※ ライセンスをご希望の方、特許の内容に興味を持たれた方は、問合せボタンを押してください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close