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マラリア原虫人工染色体を用いた薬剤耐性遺伝子の迅速同定法および組換えマラリア原虫作製法

国内特許コード P130009713
掲載日 2013年7月26日
出願番号 特願2012-506864
登録番号 特許第5773447号
出願日 平成23年3月25日(2011.3.25)
登録日 平成27年7月10日(2015.7.10)
国際出願番号 JP2011001781
国際公開番号 WO2011118231
国際出願日 平成23年3月25日(2011.3.25)
国際公開日 平成23年9月29日(2011.9.29)
優先権データ
  • 特願2010-071688 (2010.3.26) JP
発明者
  • 岩永 史朗
  • 油田 正夫
  • 金子 伊澄
出願人
  • 国立大学法人三重大学
発明の名称 マラリア原虫人工染色体を用いた薬剤耐性遺伝子の迅速同定法および組換えマラリア原虫作製法
発明の概要 本発明は、原虫人工染色体を用いた、薬剤耐性遺伝子の迅速同定法に関する。詳しくは、マラリア原虫人工染色体を利用して組換えマラリア原虫を作製して、非ヒト哺乳動物に接種もしくは赤血球を用いた血液ステージ原虫のin vitro培養系を用い、薬剤存在下での該組換えマラリア原虫の生存を指標として、薬剤耐性遺伝子をスクリーニングする方法に関する。また、本発明は、マラリア原虫に高効率で外来遺伝子を直接導入することによって、組換えマラリア原虫を作製する方法に関する。
従来技術、競合技術の概要


マラリアは、ハマダラカ属の蚊によって媒介され、プラスモジウム属に属するマラリア原虫が赤血球に感染することによって起こる、原虫性の熱性疾患である。ヒトに感染するマラリア原虫としては、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、卵形マラリア原虫(P. ovale)の4種が知られている。このうち、熱帯熱マラリア原虫により引き起こされる熱帯熱マラリアは、患者数、重篤性、薬剤耐性の広がりから、最も重要なものと考えられている。なお、ヒト以外の哺乳類、主として霊長類とげっ歯類にも、マラリア原虫はハマダラカ属の蚊を媒介として感染する。サルに感染するマラリア原虫として、プラスモディウム・ノウレシ(P. knowlesi)、サル三日熱マラリア原虫(P. cynomolgi)の2種が知られており、ネズミに感染するネズミマラリア原虫として、プラスモディウム・ベルゲイ(Plasmodium berghei)、プラスモディウム・シャバウディ(Plasmodium chabaudi)、プラスモディウム・ヨエリ(Plasmodium yoelii)の3種が知られている。



マラリアのワクチンは、原虫の抗原が変化することなどから、その開発は困難であるといわれている。近年、原虫の抗原を遺伝子工学的に生産することにより、マラリアに対するワクチンを開発する試みなども行われているが、実用化されたものは未だない。よって、現在、マラリアの治療は、クロロキン、キニーネ、ピリメサミン、メフロキン、プリマキン、アルテミシニンなどの抗マラリア薬を投与することにより実施されている。しかし、薬剤耐性原虫の出現及びその分布の拡大により、抗マラリア薬を用いた治療は困難となってきており、そのため、薬剤耐性遺伝子の同定、耐性機構の解明、及び耐性原虫の分布の把握は急務の課題である。



従来、マラリア原虫が有する薬剤耐性遺伝子の同定は、薬剤耐性原虫と野生型原虫を掛け合わせ、その子孫原虫の染色体マーカーを用いた多型解析(RFLP等)を行うことによりなされてきたが、子孫原虫の掛け合わせに媒介蚊が必要であること、および解析には多数の子孫原虫が必要であることから、該方法は多大な労力と時間を要する。実際、この20年間で2~3種類の薬剤耐性遺伝子しか同定されていない。また、上記方法を用いて、仮に薬剤耐性遺伝子の候補が同定された場合においても、遺伝子組換え原虫を作製し、耐性能を確認する必要がある。



遺伝子組換え熱帯熱マラリア原虫を作製するための遺伝子導入は、非感染赤血球へDNAを導入し、その後原虫を感染させ、原虫の自然な取り込みによって行う手法(間接導入法)、または原虫の同調培養を行い、リング期原虫が多いタイミングで、原虫を精製回収することなくDNAを直接導入する方法(直接導入法)を用いて行われている。これらの方法は、遺伝子導入効率が非常に低く、組換え原虫を得るまでに少なくとも1ヶ月以上、長期の場合には半年以上かかることもあり、時間・コスト・労力の面から改良する必要がある。そのような必要性に鑑み、従来よりシゾント期原虫は、遺伝子導入後に直ちに赤血球に感染できること、並びに感染赤血球内に多数の原虫が存在することから、該ステージの原虫を使用すれば遺伝子導入効率が改善されるのではないかと考えられていた。しかしながらエレクトロポレーションにより死滅するため、実際に遺伝子導入に使用することはできなかった。



以上の通り、マラリア原虫の薬剤耐性遺伝子の同定、耐性機構の解明、及び耐性原虫の分布の把握は急務の課題であるにもかかわらず、迅速かつ正確な薬剤耐性遺伝子を同定する方法は確立されていなかった。また、薬剤耐性遺伝子の同定にも使用し得る、従来技術よりも迅速で効率がよい熱帯熱マラリア原虫への遺伝子導入法の開発が望まれていた。

産業上の利用分野


本出願は、日本特許出願2010-071688(2010年3月26日出願)に基づく優先権を主張しており、この内容は本明細書に参照として取り込まれる。



本発明は、原虫人工染色体を用いた、薬剤耐性遺伝子の迅速同定法に関する。詳しくは、マラリア原虫人工染色体を利用して組換えマラリア原虫を作製して、非ヒト哺乳動物に接種もしくは赤血球を用いた血液ステージ原虫のin vitro培養系を用い、薬剤存在下での該組換えマラリア原虫の生存を指標として、薬剤耐性遺伝子をスクリーニングする方法に関する。また、本発明は、マラリア原虫に高効率で外来遺伝子を直接導入することによって、組換えマラリア原虫を作製する方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
薬剤耐性遺伝子をスクリーニングする方法であって、
(a)薬剤耐性を示す原虫から抽出した染色体DNAを制限酵素で消化して複数の候補遺伝子断片を調製し、前記候補遺伝子断片を人工染色体に組み込む工程、
(b)前記候補遺伝子断片を含む人工染色体を導入した組換え原虫を作製する工程、
(c)前記組換え原虫を非ヒト哺乳動物に接種した後、薬剤を投与する工程、または前記組換え原虫をin vitro培養し、培養系に薬剤を添加する工程、および
(d)前記非ヒト哺乳動物または前記培養系から薬剤耐性組換え原虫を回収し、前記原虫に含まれる候補遺伝子断片を薬剤耐性遺伝子として同定する工程を含み、
前記人工染色体が原虫由来のセントロメア領域を含む原虫人工染色体である方法。

【請求項2】
薬剤耐性遺伝子をスクリーニングする方法であって、
(a)薬剤耐性を示すマラリア原虫から抽出した染色体DNAを制限酵素で消化して複数の候補遺伝子断片を調製し、前記候補遺伝子断片を人工染色体に組み込む工程、
(b)前記候補遺伝子断片を含む人工染色体を導入した組換えマラリア原虫を作製する工程、
(c)前記組換えマラリア原虫を非ヒト哺乳動物に接種した後、薬剤を投与する工程、および
(d)前記非ヒト哺乳動物から薬剤耐性組換えマラリア原虫を回収し、前記マラリア原虫に含まれる候補遺伝子断片を薬剤耐性遺伝子として同定する工程を含み、
人工染色体がマラリア原虫由来のセントロメア領域を含むマラリア原虫人工染色体である、請求項1に記載の方法。

【請求項3】
薬剤耐性遺伝子をスクリーニングする方法であって、
(a)薬剤耐性を示すマラリア原虫から抽出した染色体DNAを制限酵素で消化して複数の候補遺伝子断片を調製し、前記候補遺伝子断片を人工染色体に組み込む工程、
(b)前記候補遺伝子断片を含む人工染色体を導入した組換えマラリア原虫を作製する工程、
(c)赤血球を用いて前記組換えマラリア原虫をin vitro培養することで赤血球に感染させた後、薬剤を培養系に添加する工程、および
(d)前記培養系から薬剤耐性組換えマラリア原虫を回収し、前記マラリア原虫に含まれる候補遺伝子断片を薬剤耐性遺伝子として同定する工程を含み、
前記人工染色体がマラリア原虫由来のセントロメア領域を含むマラリア原虫人工染色体である、請求項1に記載の方法。

【請求項4】
非ヒト哺乳動物が、げっ歯類または霊長類である、請求項1または2に記載の方法。

【請求項5】
マラリア原虫人工染色体が、ネズミマラリア原虫、熱帯熱マラリア原虫、または三日熱マラリア原虫由来のセントロメア領域を含むものである、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。

【請求項6】
マラリア原虫人工染色体が、環状人工染色体である、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。

【請求項7】
マラリア原虫人工染色体が、直鎖状人工染色体である、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。

【請求項8】
候補遺伝子断片が、薬剤耐性マラリア原虫由来の遺伝子断片である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。

【請求項9】
候補遺伝子断片が、2.5~4.0kbの平均長を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。

【請求項10】
候補遺伝子断片が、4.0~10kbの平均長を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。

【請求項11】
候補遺伝子断片が、10~50kbの平均長を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。

【請求項12】
薬剤がマラリア治療薬である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。

【請求項13】
マラリア治療薬が、クロロキン、キニーネ、ピリメサミン、メフロキン、プリマキン、およびアルテミシニンからなる群から選択される薬剤である、請求項12記載の方法。

【請求項14】
組換えマラリア原虫を作製する方法であって、
(a)赤血球侵入直前期のシゾント期マラリア原虫を調製する工程、および
(b)エレクトロポレーションにより、赤血球侵入直前期のシゾント期マラリア原虫に人工染色体を直接導入する工程を含み、
前記人工染色体がマラリア原虫由来のセントロメア領域を含むマラリア原虫人工染色体であり、前記マラリア原虫が、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、およびサルマラリア原虫(P.cynomolgiおよびP.knowlesi)からなる群から選択される方法。

【請求項16】
請求項14記載の方法を用いて組換えマラリア原虫を作製することを特徴とする、請求項3記載の方法。
産業区分
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
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