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ミトコンドリア機能回復促進剤

国内特許コード P130009898
整理番号 S2013-0629-N0
掲載日 2013年9月11日
出願番号 特願2013-038404
公開番号 特開2014-162792
出願日 平成25年2月28日(2013.2.28)
公開日 平成26年9月8日(2014.9.8)
発明者
  • 三宅 正治
  • 金澤 美知子
  • 楢原 正則
出願人
  • 学校法人神戸学院
発明の名称 ミトコンドリア機能回復促進剤
発明の概要 【課題】虚血が発症又は進行,増悪の原因になっている疾患及び障害に対する予防及び治療剤,並びに治療方法を提供すること。
【解決手段】β-シトリル-L-グルタミン酸又はその薬剤学的に許容し得る塩を含んでなる,ミトコンドリア機能回復促進剤。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要



一酸化窒素(NO)は,生体内でいわゆる「善玉」としての役割と「悪玉」としての役割の2面性を有する。すなわち,NOは,血管系では内皮細胞から遊離される血管弛緩物質としての,また中枢神経系ではシナプス間隙における神経伝達物質としての役割を有する。NOはまた,ストレスや炎症等により大量に誘導され,種々の慢性疾患,癌,老化等の原因物質の一つと考えられている。NOは脂溶性であり,且つ鉄イオンに対する親和性が著しく強く,NO-鉄複合体を形成することが知られている。





近年,メタボリックシンドロームと強く関連する糖尿病,心筋梗塞や脳梗塞等の心血管系疾患,アルツハイマー病,パーキンソン病やハンチントン病をはじめとする神経変性疾患,更に癌等は,酸化ストレスによるミトコンドリアの機能低下とそれに伴う細胞死が原因ではないかと注目されている。また心筋虚血,脳虚血,移植臓器,長時間圧迫を受けた組織等,虚血による酸素欠乏状態に置かれていた組織に新鮮な血流を再開させた際,酸素の再供給により生じる種々のフリーラジカルによる強度の酸化ストレスを,ミトコンドリアは受ける。これによりミトコンドリア機能,特にクエン酸回路の働きが障害されNADH生成が停止すると,電子伝達系が働かず,過剰の酸素を消費できないまま,ミトコンドリアの主たる機能である酸化的リン酸化によるATPの高率産生が不能となる。これはオキシダントによる障害作用と相俟って,そのミトコンドリアを含んだ細胞の死に直結し,組織の急速な破壊を引き起こす(虚血再灌流障害)。虚血再灌流障害を予防又は治療する(増悪の抑制を含む)する目的で,血流の再開に際しラジカルスカベンジャーの投与等の処置がなされてはいるものの,これまでのところ効果が十分に確立された方法はない。





ミトコンドリア内のアコニターゼ(aconitase)は,クエン酸回路(TCAサイクル)の主要酵素の一つであり,ミトコンドリア内の酸化還元状態によって調節される活性型と不活性型との相互変換により,エネルギー代謝におけるサーキットブレーカーとして働いている。





アコニターゼは,クエン酸からイソクエン酸への立体特異的相互変換を,中間体であるcis-アコニット酸を介して触媒する。アコニターゼの触媒活性は,活性中心に存在する無傷の[4Fe-4S]2+クラスターに依存している(非特許文献1)。この酵素は,独特な[4Fe-4S]2+キュバン・クラスターを活性部位に含み,このクラスターは,1個の,特別に変化を受けやすいFe原子(所謂,Fe)を有している。この[4Fe-4S]2+キュバン・クラスターの酸化的崩壊に対する感受性が高いために,細胞の酸化障害のバイオマーカーとして,アコニターゼ活性の喪失が広く用いられている(非特許文献2)。酸化により不活性化されたアコニターゼは,in vitro及びin vivoで,クラスターの還元及びFe(II)の再挿入により速やかに再活性化される(非特許文献3)。しかしながら,[3Fe-4S]の還元及び,[3Fe-4S]中心へのFe(II)の再挿入の生理学的メカニズムは,今のところ知られていない(非特許文献2)。細胞内では,アコニターゼは不活性化と再活性化の動的状態にあり,他方Fe-S中心は,スーパーオキサイドアニオン,過酸化水素,分子状酸素,一酸化窒素(NO),そしておそらくは,ペルオキシナイトライト(ONOO)さえも含む,種々の生理学的オキシダントによる攻撃の脅威に絶えず曝されている。そのようなオキシダントに曝された後にアコニターゼの不活性化が起こることが,報告されている(非特許文献2)。





一酸化窒素(NO)は,種々の細胞タイプにより産生されるフリーラジカルであり,主として,ヘムタンパク質及びFe-S中心のFe(III)又はFe(II)イオンと,また分子状酸素やスーパーオキサイドアニオンとも,反応する(非特許文献4,5)。更には,NOは,その分子半径の小ささ及び疎水性のため,細胞質や細胞外の発生源からミトコンドリアへと容易に到達する。NO合成の誘導やNO供与体への種々のタイプの細胞の曝露が,ミトコンドリアのアコニターゼ(m-アコニターゼ。以下,特に断らない限り,本明細書において,「アコニターゼ」は,「m-アコニターゼ」を指す。)活性の早期損失をもたらすことも,報告されている(非特許文献1)。





NO仲介型のアコニターゼの不活性化が,マクロファージ(非特許文献7),繊維芽細胞(非特許文献8),腫瘍細胞(非特許文献9~10),及び大腸菌(非特許文献11)を含む種々の細胞において,報告されているが,in vitro研究の結果に幾分議論の余地がある。実際,ブタの心臓のアコニターゼを用いたin

vitro研究で,低濃度のNOがアコニターゼを不活性化しない一方,高濃度では中等度の阻害をもたらすことが見出されている(非特許文献12)。精製された大腸菌アコニターゼ及びヒト組換え細胞質アコニターゼ(c-アコニターゼ)の,NO依存性不活性化に対する抵抗性も,報告されている(非特許文献13)。反対に,NO又はNO供与体による不活性化が,基質の存在下及び非存在下において,m-アコニターゼとc-アコニターゼの両方について報告された(非特許文献14)。これらの知見に合致して,m-アコニターゼの活性型である[4Fe-4S]2+がONOOにより急速且つ直接に酸化されて[3Fe-4S]となり,その結果触媒活性の喪失を引き起こすことが見出された(非特許文献12)。別の報告の1つ(非特許文献11)も,大腸菌アコニターゼが,ONOO生成と一見無関係にNO仲介型の不活性化に対し,非常に感受性が高いことも報告された。最近になって,NOが,組換えブタm-アコニターゼ中の[4Fe-4S]2+クラスターのFeに結合して,クラスターの完全な崩壊をゆっくりと促すことも報告された(非特許文献6)。





他方,NOは,神経系の細胞において,それらの酸化還元状態に依存して顕著に異なる生物学的効果を有することが示されている。NOは,スーパーオキシドアニオンと反応してペルオキシナイトライト(ONOO)を生成することにより神経毒効果を有する。対照的に,ニトロソニウムイオン(NO)は,N-メチル-D-アスパラギン酸受容体表面のチオール基のS-ニトロシル化を介して,神経保護効果を有することが知られている(非特許文献18,19)。また,NO及び関連するニトロソ化合物の効果が,混合ニューロン・グリア培養を用いて調べられ,NOの神経の保護効果及び破壊効果に関して酸化還元に基づくメカニズムが報告されている(非特許文献18)。更に,SNPが,高濃度において,C6グリオーマ細胞において化学的低酸素状態誘発による細胞死を防止すること,及びまたm-アコニターゼ活性及びその遺伝子発現を,前立腺癌細胞において低濃度でアップレギュレートすることが知られている(非特許文献20)。最近,Kim等(非特許文献21)は,肝細胞の非ヘムFeの含量が,種々の細胞毒性レベルのNOがアポトーシスをもたらすか壊死をもたらすかを決定していることを示唆している。また,NOが,マクロファージ内(非特許文献21)で,及び腫瘍細胞内(非特許文献22)で,ジニトロシル鉄複合体を形成することも知られている。





次式1で示されるβ-シトリル-L-グルタミン酸(以下,「β-CG」ともいう。)は,最初に新生ラット脳から単離された化合物であり,その後精巣(主に精子)及び眼(水晶体,網膜)にも高濃度に存在することが知られている。しかしながら,この化合物については,化学合成方法は古くから確立されているものの(非特許文献15),生理学的にどのような機能を果たしているのかは,これまでのところ十分解明されていない。





【化1】










我々は最近,β-CGが内因性の低分子量Fe(II)キレート剤であることを見出している(非特許文献16)。我々は更に,in vitroの実験系において,[Fe(II)(β-CG)]複合体が,還元剤の存在下にアコニターゼのためのFe運搬体としての役割を果たしこれを活性化させる(非特許文献17)。またペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)により損傷されたミトコンドリアのアコニターゼを再活性化させることを見出したが,β-CGやクエン酸,[Fe(II)(クエン酸)]にはそのような効果は認められなかった(非特許文献17)。

産業上の利用分野



本発明は,ミトコンドリア機能回復促進剤に関し,詳しくは,アコニターゼの活性回復に基づくミトコンドリア機能回復促進剤に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
β-シトリル-L-グルタミン酸又はその薬剤学的に許容し得る塩を含んでなる,ミトコンドリア機能回復促進剤。

【請求項2】
NO供与体の投与と併用されるものである,請求項1のミトコンドリア機能回復促進剤。

【請求項3】
酸化ストレス関連疾患の治療用である,請求項1又は2のミトコンドリア機能回復促進剤。

【請求項4】
酸化ストレス関連疾患が,糖尿病合併症,心筋梗塞,脳梗塞,アルツハイマー,パーキンソン,ハンチントン病,癌,又は虚血再灌流障害である,請求項3のミトコンドリア機能回復促進剤。

【請求項5】
虚血再灌流障害が,心筋虚血,脳虚血,又は臓器移植後の虚血再灌流障害である,請求項4のミトコンドリア機能回復剤。

【請求項6】
ミトコンドリア・アコニターゼの再活性化促進剤である,請求項1~5の何れかのミトコンドリア機能回復剤。

【請求項7】
非経口投与用剤である,請求項1~6の何れかのミトコンドリア機能回復促進剤。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開


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