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薄膜作製用スパッタ装置 実績あり 外国出願あり

国内特許コード P130010043
整理番号 H20-097
掲載日 2013年11月12日
出願番号 特願2009-517758
登録番号 特許第5300084号
出願日 平成20年5月9日(2008.5.9)
登録日 平成25年6月28日(2013.6.28)
国際出願番号 JP2008058621
国際公開番号 WO2008149635
国際出願日 平成20年5月9日(2008.5.9)
国際公開日 平成20年12月11日(2008.12.11)
優先権データ
  • 特願2007-146575 (2007.6.1) JP
  • 特願2007-182014 (2007.7.11) JP
発明者
  • 諸橋 信一
出願人
  • 国立大学法人山口大学
発明の名称 薄膜作製用スパッタ装置 実績あり 外国出願あり
発明の概要

ターゲットホルダー外側の漏洩磁束を低減できるとともに、対向ターゲット間の磁束線パターンを容易に変化させることができ、多種な磁束線パターンを選択可能なボックス回転型多元対向スパッタを提供する。
回転できる多角柱体の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置した薄膜作製用スパッタ装置であって、ターゲットの裏面には、複数の磁石、または、磁石及びヨークからなる一連の磁極群が配置され、磁極群は、異なる磁極方向の磁石またはヨークを含んでいることを特徴とする。ヨークの少なくとも一部を移動可能にしても良い。また、ターゲット裏面と磁石との間に磁束密度の均一性を高める磁極片や、磁極群のターゲットの反対側に背面ヨークを設けても良い。

従来技術、競合技術の概要


薄膜単層及び多層構造からなる電子材料とその応用である電子デバイス作製において、真空状態下での薄膜作製用スパッタ装置は重要である。薄膜作製方法は大別して、蒸着、スパッタ、CVD(Chemical Vapor Deposition)がある。なかでもスパッタは、基板材料の種類を問わずどんな材質の膜でも有毒なガスを使用しないで安全に比較的簡単な装置で薄膜を堆積できることから、各方面において広く使用されている。



スパッタの原理を以下、概略説明する。真空装置内でプラズマを発生させ、そのプラズマ中のイオンをターゲットに衝突させてターゲット表面の構成原子・分子をはじき飛ばして、基板上に堆積させて薄膜を作製する。スパッタ装置は、衝撃イオン源であるイオン化ガスまたは放電プラズマの発生方法、印加電源の種類、電極の構造から図1~5のような各種の方法がある。



図1に示すイオンビームスパッタはイオン室で形成した照射イオンをスパッタ室へ導出してターゲットをスパッタして薄膜を堆積する。イオンを形成する方法の違いで熱陰極型のカウフマンイオン源、電子サイクロトロン共鳴(electron cyclotron resonance: ECR)型のECRイオン源がある。いずれもAr等のイオンビームを引きだしてターゲットに照射してスパッタする方法である。放電圧力が10-4Torr以下と低くてもスパッタが可能であり、薄膜への放電ガスの混入が少なくスパッタ粒子のもつ運動エネルギーが大きいために表面平滑性の優れた緻密な薄膜形成が可能となるが、薄膜堆積速度が小さいことが欠点である。



図2に示す2極スパッタは、プラズマ内のイオンが陰極降下内で加速されてターゲットを衝撃してスパッタをおこし、対向した基板上にスパッタされた粒子が飛来して薄膜が形成される。印加電源の違いにより直流(DC)、交流(RF)スパッタがある。装置構成は簡単なものの、1)プラズマ効率が悪くプラズマを起こすために導入するガス圧力を高くしなければならず、薄膜へのガス混入が大きい、2)プラズマ効率が悪く、結果的に薄膜堆積速度が小さい、3)ターゲットをイオンガスが衝撃するときに生成される高エネルギーのγ電子(2次電子)が正対している基板を直撃するために、基板温度が堆積中に数百度にも上昇してしまう、4)ターゲットと基板が正対しているために、ターゲットを衝撃したイオンの一部が基板を直撃する(反跳イオン)ために基板へのダメージ及び多成分の薄膜での組成ずれが起こる、等の欠点がある。



2極スパッタの欠点を解決するために、マグネトロンスパッタが考案された。図3はその代表的なプレナーマグネトロンスパッタの原理図を示す。印加電源の違いにより直流(DC)、交流(RF)スパッタがある。2極スパッタで述べた、ターゲットをイオンガスが衝撃するときに生成される高エネルギーのγ電子は基板直撃による基板温度上昇の大きな原因ではあるが、高エネルギーのためにガスをイオン化してプラズマ放電を維持するため上で重要な役割をしている。そこで、ターゲット裏面に図のようにマグネトロンを配置してターゲット表面に平行な磁界を作り、ターゲット表面から放出されたγ電子をターゲット表面近くに閉じこめるようにして雰囲気ガスとの衝突回数の増加を図ることによって、1)雰囲気ガスのイオン化を促進してプラズマ効率を高めること(高速スパッタ)、2)図のような閉じた移動経路により高エネルギーのγ電子の基板衝撃による基板温度上昇を抑制できること(低温スパッタ)、が特徴である。マグネトロン配置により2極スパッタの欠点は大幅に改善されたが、基板とターゲットが正対しているために、1)γ電子及び反跳イオンの基板への入射を完全には抑制することはできない、2)強磁性体をターゲットにした場合、マグネトロンの磁束が強磁性体の部分を通りγ電子を閉じこめるのに十分な大きさの磁界がターゲット表面に印加できないため、強磁性体の低温・高速スパッタが困難、であることが欠点である。しかしながら、構造が比較的簡単で高堆積速度で薄膜形成可能なために、プレナーマグネトロンスパッタは広く使用されている。



図4に示す対向ターゲット式スパッタはマグネトロンスパッタのもつ欠点を、改善するために考案された。2つのターゲットが対向する位置にあり、それぞれのターゲット裏面には互いに反対磁極をもつようにマグネトロンが配置されている。雰囲気ガスのイオン化ガスのターゲット衝撃によりターゲット表面から放出された高エネルギーのγ電子は対向するターゲット間に閉じこめられ高密度プラズマを発生する。基板は対向するターゲットの横のプラズマ外に置かれているために、γ電子及び反跳イオンの基板への入射を完全に抑制することができ、低温・高速スパッタが可能となる。γ電子を閉じこめることによる高密度プラズマにより、雰囲気ガス圧力を低くしても放電が可能で(~10-4Torr台)、薄膜への雰囲気ガス混入も小さく、強磁性体の低温・高速スパッタも可能であるという特徴を持つ。印加電源の違いにより直流(DC)、交流(RF)スパッタがある。



しかしながら、図4の原理図と図3の原理図を比較して判るように、プレナーマグネトロンスパッタではターゲット裏面に配置された磁石の発生する磁束は閉じているのに対して、従来型の対向ターゲット式スパッタの場合のターゲット及びターゲット裏面の磁石と発生する磁束線の振舞いから判るように、従来型では対向するターゲット間の向き合う面の磁石の磁極は反対であるために、そこに発生する磁束線は閉じている。しかしながら図から明らかなように磁石のターゲット反対面は閉じた磁束線を形成できず、磁束線の漏洩が生じる。裏面に磁束が漏洩するということはその分だけ対向するターゲット面間に磁束が廻らないことを意味し、磁石から発生する磁束を有効に対向するターゲット面に導いていないことになり効率のよい磁石の使い方になっていない。この影響を小さくするために、ターゲットと反対側の磁極後ろには漏れ磁束を小さくするために厚い鉄ヨークを設置する必要があり、構造が大きくならざるを得ない欠点がある。対向するターゲット間の磁束はおよそ150~250 Oe(エルステッド)が必要である。対向するターゲット間に大きな磁束を発生させるためにネオジム磁石を用いるが、先に述べたようにターゲットと反対側の磁極での漏れ磁束の発生から、有効に磁束を導かないために磁石の厚さを厚くしなければならない。しかも鉄ヨークの飽和磁化は有限なので、鉄ヨークをあまり薄くすると磁気的に飽和してしまい、鉄ヨークの裏面に磁束を漏洩させてしまう。漏洩磁束を小さくするための鉄ヨークの厚みも厚く設計しなければならない。図3で示したマグネトロンスパッタでは磁束は磁石の表及び裏面両方とも閉じているために磁石+鉄ヨークの厚みは30~50ミリ程度で済むのに対して、従来型の対向ターゲット式スパッタでは結果的に、磁石+鉄ヨークの厚みは100ミリ程度になってしまうことが、欠点である。



近年の電子素子あるいは光学薄膜は多層薄膜構造をとる場合が殆どであり、真空を破らずに多層薄膜構造を作製することが必要である。図4に示す対向ターゲット式スパッタで多層薄膜構造作製を行うには、図5に示すように対向ターゲットカソードを並列に配置しなければならず、対向ターゲット式スパッタを治める真空装置が大きくなるという問題が生じる。真空装置が大型になると同じ到達真空度を作るためにはより排気速度の大きな真空ポンプを装置に設置しなければならず、コスト面からも問題となる。



従来型対向ターゲット式スパッタでは、スパッタ時に発生するγ電子がターゲット間を往復運動することで雰囲気ガスとの衝突確率が高くなり、結果的に高密度プラズマ化により雰囲気ガス圧力を低くしても放電が可能で(~10-4Torr台)、薄膜への雰囲気ガス混入も小さくできるという優れた特徴をもっている対向ターゲット式スパッタの特徴をもちながら、問題となる磁束漏洩の防止のために大型にならざるを得ない構造上の欠点を解消して、構造の小型化、多元化及びそれに伴う真空装置の小型化による、スループット向上も含めたコスト的に有利な多層薄膜構造を作製できる薄膜作製用スパッタ装置として、図6に示すボックス回転式対向ターゲット式スパッタが考案されている。
その特徴は以下の通りである。
・回転できる多角柱型の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱型ターゲットホルダー一対を対向するように配置する。
・多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれのターゲット裏面に配置されている磁石の作る磁束線が、多角柱型ターゲットホルダー内側において完全に閉じるように、磁石の極性が交互に変わるように配置する。
・一対の多角柱型ターゲットホルダーにおいて、対向するターゲットの裏面に配置されている磁石の極性が反対のために対向するターゲット間で磁束線が閉じている。
・別の種類の薄膜を堆積するために、対向する多角柱型ターゲットホルダーをそれぞれ逆回転して別なターゲット面を対向させて堆積する。対向するターゲットの裏面に配置されているそれぞれの磁石の極性が回転前と反対で、磁束線の向きが回転前と反対になる。
・一対の多角柱型ターゲットホルダーをそれぞれ次々に回転することで多角柱型についているターゲット数だけの多層薄膜がIn-situで作製が可能になる。



従来技術としては、特許文献1及び2が挙げられる。特許文献1及び2は、本発明の発明者による従来技術である。特許文献1及び2には、多角柱型ターゲットホルダーを対向配置させる点、及び、ターゲットの裏面に磁石を配置する点が記載されているが、各ターゲットの裏面に配置される磁石の磁極方向は一方向のみである。また、ヨークをターゲット裏面の磁極の一部として用いる点は記載されていない。

【特許文献1】特開2003-183827号公報

【特許文献2】特開2004-52005号公報

産業上の利用分野


本発明は、薄膜単層及び多層構造からなるエレクトロニクス、電子工業、時計工業、機械工業、光学工業において、欠くことのできない重要な薄膜作製用スパッタ装置に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
回転できる多角柱体の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置した薄膜作製用スパッタ装置であって、
前記ターゲットの裏面には、複数の磁石、または、磁石及びヨークからなる磁極群が配置され、
前記磁極群は、異なる磁極方向の磁石またはヨークを含んでいることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項2】
前記磁極群の各々の磁石またはヨークは、隣り合う磁石またはヨーク同士で磁極方向が交互に異なるように配置されていることを特徴とする請求項1記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項3】
前記多角柱型ターゲットホルダー一対の対向するそれぞれのターゲットの裏面に配置された磁極群は、それぞれ極性が反対であることを特徴とする請求項1または2記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項4】
前記多角柱型ターゲットホルダー一対の対向するそれぞれのターゲットの裏面に配置された磁極群は、それぞれ極性が同じであることを特徴とする請求項1または2記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項5】
前記磁極群は、異なる磁極方向の磁石またはヨークが同心円状に配置されていることを特徴とする請求項1~4いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項6】
前記磁極群は、異なる磁極方向の磁石またはヨークが市松模様状に配置されていることを特徴とする請求項1~4いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項7】
前記多角柱型ターゲットホルダーの各ターゲットの裏面に配置された磁極群は、異なる磁極パターンのものを含んでおり、
前記多角柱型ターゲットホルダーを回転させることで、対向するターゲット間の磁場特性を変えられることを特徴とする請求項1~6いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項8】
前記多角柱型ターゲットホルダーの各ターゲットは異なる材料により構成されていることを特徴とする請求項1~7いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項9】
前記多角柱型ターゲットホルダーの各ターゲットは同じ材料により構成されており、前記多角柱型ターゲットホルダーを回転させることにより長時間スパッタが可能であることを特徴とする請求項1~7いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項10】
前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれ隣接するターゲット間に、薄膜作製時の前記ターゲットの表面汚染を防ぐための着脱可能な防御板を設けたことを特徴とする請求項1~9いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項11】
前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれ隣接するターゲット間に磁気シールド板を設けたことを特徴とする請求項1~10いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項12】
前記多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置する機構を1つのモジュールとして、真空チャンバー内に1つ以上の前記モジュールを配設したことを特徴とする、請求項1~11いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項13】
1つ以上の前記モジュールを設置した真空チャンバーを、単独あるいは1つ以上連結したことを特徴とする、請求項12記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項14】
前記ヨークは、
一端が、前記ターゲット裏面に接触または近接しており、
他端が、前記磁石のターゲットとは反対側の磁極に接続されていることを特徴とする請求項1~13いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項15】
前記ヨークの少なくとも一部は移動可能であり、
前記ヨークの少なくとも一部を移動させることにより、前記ターゲット裏面と前記磁石の少なくとも一方から前記ヨークを離間させることが可能であることを特徴とする請求項1~14いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項16】
前記ターゲット裏面と前記磁石との間に、前記磁石が作る磁束密度の均一性を高める磁極片を配置することを特徴とする請求項1~15いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項17】
前記ヨークのターゲット裏面側の端部は前記磁極片と近接しており、前記ヨークの少なくとも一部を移動させることで前記ヨークと前記磁極片とを離間させることが可能であることを特徴とする請求項16記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項18】
前記磁極群中のヨークの一部又は全部を移動させることで、対向するターゲット間の磁束線のパターンを変えることができることを特徴とする請求項1~17いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項19】
前記磁極群の前記ターゲットとは反対側に、背面ヨークが設けられていることを特徴とする請求項1~18いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。
産業区分
  • 表面処理
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中
山口TLOは平成11年11月に山口大学の教官50名の出資により設立された、リエゾン一体型のTLO活動会社です。山口大学を主とし、山口県内の大学・高専の研究成果をご紹介致します。特許の内容に興味を持たれた方は、下記までご連絡ください。


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