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水不溶性シルクタンパク質 コモンズ

国内特許コード P140010396
整理番号 N13048
掲載日 2014年3月25日
出願番号 特願2013-234529
公開番号 特開2015-093857
出願日 平成25年11月13日(2013.11.13)
公開日 平成27年5月18日(2015.5.18)
発明者
  • 塚田 益裕
  • 森川 英明
  • 山中 茂
  • 岸本 祐輝
出願人
  • 国立大学法人信州大学
発明の名称 水不溶性シルクタンパク質 コモンズ
発明の概要 【課題】フィブロイン膜あるいはフィブロインナノファイバーを、水に不溶化させ、試料が脆くならず、透明性かつ柔軟性を付与できるシルクタンパク質の提供。
【解決手段】本発明に係るシルクタンパク質は、水不溶性とともに柔軟性及び透明性を有することを特徴とし、シルクタンパク質水溶液あるいはシルクタンパク質を含む有機溶媒を乾燥固化させてなるシルクタンパク質膜、または、シルクタンパク質水溶液あるいはシルクタンパク質を含む有機溶媒をエレクトロスピニングしてなるシルクタンパク質ナノファイバーを、グリセリン/アルコール混合溶液で浸漬処理した後、グリセリン/アルコール混合溶液から取り出して標準状態で乾燥させてなることを特徴とする。
【選択図】図3
従来技術、競合技術の概要



カイコ由来のシルクタンパク質(フィブロインあるいは単にシルクということもある)は、生体に対して安全性の高い材料であるため、我が国では生体に埋め込んで使用する外科用の縫合糸として利用されてきた。また、フィブロインを酵素や医薬品の固定化材料などとして用いることも可能である。カイコが作った繭糸あるいは絹糸状繊維を精練してセリシンを取り除いてできるフィブロイン繊維を中性塩の濃厚水溶液に溶解させ、それをセルロースの透析膜に入れて水と置換すると純粋なフィブロイン水溶液ができる。このフィブロイン水溶液を高分子膜表面に拡げて乾燥固化すると透明なフィブロイン膜が製造でき、フィブロイン膜を溶解した有機溶媒をエレクトロスピニングするとフィブロインのナノファイバーを製造することができる。





フィブロイン繊維は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、臭化リチウム、チオシアン酸リチウムなどの加熱した中性塩水溶液に溶解することができる。すなわち、加熱した濃厚な中性塩水溶液中にフィブロイン繊維を入れて溶解させてなるフィブロイン水溶液をセルロース透析膜に入れて、両端を縫糸でくくり、4-5日間、水道水または純水で置換し、中性塩に基づくイオンを除くことで純粋なフィブロイン水溶液が得られる。このフィブロイン水溶液を例えばポリエチレン膜の基質表面に拡げ、送風乾燥して、水分を蒸発せしめることにより、透明なフィブロイン膜を製造することができ、フィブロイン水溶液にアルコールを加えた後、凍結乾燥するとフィブロインスポンジが製造できる。また下記記載のとおり、フィブロインスポンジ、フィブロイン膜、あるいはフィブロイン繊維をトリフルオロ酢酸(TFA)で溶解してエレクトロスピニングするとフィブロインナノファイバー(シルクナノファイバーともいう)が製造できる。





上記記載の方法で作製したフィブロイン膜、フィブロインスポンジ、あるいはフィブロインナノファイバーは水に溶解するため、これらのフィブロインの用途は限られている。各種産業資材として利用価値を高めるためにはフィブロイン素材を水に溶解しない水不溶化試料とするための処理が必要である。

フィブロイン素材を水不溶性にするには、フィブロイン素材をアルコール等の有機溶媒中に所定時間浸漬した後、室温で軽く乾燥する方法が採られる。この方法によれば、アルコール処理に伴いフィブロイン分子間の凝集性が高まり、その結果、フィブロイン素材は水に不溶性となる。しかし、アルコール処理では、フィブロイン素材にアルコールが浸入しフィブロイン分子間の凝集性が高まり、フィブロインが結晶化すると、後述する実験例3で述べるように、フィブロイン素材が堅くなり試料の柔軟性が失われ、少し引っ張っただけで試料膜が切断してしまう等の問題があるため各種用途でフィブロインを応用する上での問題であった。なお、アルコール処理で素材が脆くなる程度が特に顕著なのは、フィブロイン膜とフィブロインナノファイバーである。





フィブロインナノファイバーはエレクトロスピニングにより製造できる。まず始めにエレクトロスピニングの原理を説明する。所定濃度のフィブロイン溶液を入れた貯蔵タンクに陽極電極を取り付けこの陽極電極から一定の距離を隔てて陰極板(コレクター)を設置する。陰極と陽極との間に高電圧を印加して両電極間に電気引力を生じさせる。この電気引力がポリマー溶液の表面張力以上になると、静電力により紡糸口のノズルから陰極板に向かって霧状態のポリマージェットが噴射され、陰極板上にナノファイバーが積層される。その結果、繊維径がナノ~マイクロメートルのオーダーの微細なフィブロインナノファイバーが製造できる。ナノファイバーの比表面積は極めて大きく、かくして製造できるフィブロインナノファイバーは、再生医療工学、創傷材料等のヘルスケアー分野、バイオテクノロジー分野、エネルギー分野で広範囲に利活用できる。





エレクトロスピニングで製造した直後のフィブロインナノファイバーは空気中の水分を吸収しただけで溶解してしまう程、水に対する溶解性が高いため、各種用途で広く応用するにはナノファイバーを不溶化することが必要不可欠である。シルクを水に不溶化する最も単純で効果的な従来法は、シルクの貧溶媒であるエタノールまたはメタノール溶液に試料を浸漬し、アルコール溶液から試料を引き上げて室温で乾燥するとよい。実験例3で述べるように、アルコール溶液による浸漬処理により水不溶化するため、シルクナノファイバーをメタノール、エタノール浸漬処理すると、試料は脆くなるため、このことがシルクを応用する上で最も考慮すべき点であった。





フィブロイン膜を水不溶化させる他の手法としては、フィブロイン水溶液にグリセリン

を加えることで試料膜を水に不溶化する技術が開示された(非特許文献1)。フィブロイン繊維を加熱した中性塩水溶液で溶解し、透析処理して製造したフィブロイン水溶液にグリセリン/エタノール混合溶液を所定量直接添加してなるフィブロイン混合溶液を乾燥固化する方法で水不溶化し、かつ柔軟度に富むシルク膜を製造する技術が開示されている(非特許文献2)。また、天然のタンパク質の吸水性を改変するため、ビーナッツタンパク質膜を可塑剤として作用し、pHの異なるグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングルコール水溶液に浸漬する方法で調製した試料膜の吸湿性の変化が検討されている(非特許文献4)。さらに、フィブロイン水溶液にグリセリンを所定量加えて乾燥固化してなる絹フィブロイン膜の強度・伸度測定により、フィブロイン膜が柔軟性となることを明らかにした(非特許文献5)。





シルクフィルムを水不溶化する従来技術は、シルク水溶液に所定量のグリセリンを直接添加した後、試料を乾燥固化することで水不溶化したシルクフィルムを製造する点では共通した処理法であった(非特許文献1~5)。従来法によると、シルク水溶液に加えるグリセリン量が少ないと水不溶化の効果が無く、グリセリン量が多いと試料が水不溶化するものの、試料内外部に余分のグリセリンが付着してしまうことが問題であった。さらにシルク水溶液にグルセリンを直接添加すると、シルクとグリセリンとの相互作用が強いため、分子レベルでシルクが急激に凝固し、あるいはシルクが急激に変性してしまうため、その結果、フィブロインの成形性が劣悪となるという問題があった。シルクに加えるグリセリンを最小量にして、かつシルクを水不溶化するうえで最大効果を生むような適切なグリセリン量を添加することが必要であった。

産業上の利用分野



本発明は、水不溶化及び柔軟化処理したシルクタンパク質に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
水不溶性とともに柔軟性及び透明性を有するシルクタンパク質

【請求項2】
家蚕あるいは野蚕に由来することを特徴とする請求1記載のシルクタンパク質

【請求項3】
膜状あるいはナノファイバー状の形態であることを特徴とする請求1または2記載のシルクタンパク質

【請求項4】
シルクタンパク質水溶液あるいはシルクタンパク質を含む有機溶媒を乾燥固化させてなるシルクタンパク質膜、または、シルクタンパク質水溶液あるいはシルクタンパク質を含む有機溶媒をエレクトロスピニングしてなるシルクタンパク質ナノファイバーを、
グリセリン/アルコール混合溶液で浸漬処理した後、グリセリン/アルコール混合溶液から取り出して標準状態で乾燥させてなることを特徴とする請求項1記載のシルクタンパク質。

【請求項5】
グリセリン/アルコール混合溶液から、シルクタンパク質膜またはシルクタンパク質ナノファイバーを取り出して標準状態で乾燥させた後、アルコール溶液に浸漬し、素材に含有されたグリセリンを除去してなることを特徴とする請求項4記載のシルクタンパク質。

【請求項6】
前記シルクタンパク質ナノファイバーを、組成比50/50~90/10のグリセリン/アルコール混合溶液で2~10分間浸漬処理した後、グリセリン/アルコール混合溶液から取り出して標準状態で乾燥させてなることを特徴とする請求項4または5記載のシルクタンパク質。

【請求項7】
前記シルクタンパク質膜を、組成比75/25~100/0のグリセリン/アルコール混合溶液で2~10分間浸漬処理した後、グリセリン/アルコール混合溶液から取り出して標準状態で乾燥させてなることを特徴とする請求項4または5記載のシルクタンパク質。

【請求項8】
シルクタンパク質水溶液あるいはシルクタンパク質を含む有機溶媒を乾燥固化させてなるシルクタンパク質膜、または、シルクタンパク質水溶液あるいはシルクタンパク質を含む有機溶媒をエレクトロスピニングしてなるシルクタンパク質ナノファイバーを、
ポリエチレングリコール/アルコール混合溶液、あるいはポリプロビレングリコール/アルコール混合溶液で浸漬処理した後、該混合溶液から取り出して標準状態で乾燥させてなることを特徴とする請求項1記載のシルクタンパク質。

国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 公開
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