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赤外光検出器、赤外顕微鏡、および、赤外分光器 新技術説明会

国内特許コード P140010425
整理番号 ST01P001
掲載日 2014年4月3日
出願番号 特願2014-037150
公開番号 特開2015-162589
出願日 平成26年2月27日(2014.2.27)
公開日 平成27年9月7日(2015.9.7)
発明者
  • 梶原 優介
  • 小宮山 進
  • 金 鮮美
  • 上田 剛慈
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 赤外光検出器、赤外顕微鏡、および、赤外分光器 新技術説明会
発明の概要 【課題】1つの検出器で複数の波長の光を高感度で検知可能なCSIPを実現すること。
【解決手段】単一の検知器でn色(nは2以上の整数)の光(波長:λ1、λ2、・・・λn)を検知するために、基底サブバンド(ε0)と第1励起サブバンドのエネルギー準位(ε1)の差Δεが異なる上部量子井戸をn層重ねる。つまり、第1電子層を多重量子井戸層とする。n=2の場合、入射赤外光の入射面側の第1の量子井戸とその下方の第2の量子井戸を設け、第1の量子井戸の基底サブバンドと励起サブバンドのエネルギー準位の差Δε1と、第2の量子井戸の基底サブバンドと励起サブバンドのエネルギー準位の差Δε2を、Δε1>Δε2となるように設計する。このような構成とすることで、例えば、第1の量子井戸により9μmの波長の光が、第2の量子井戸により15μmの波長の光が検出され、1つの検出器で複数の波長の光が高感度で検知できる。
【選択図】図3
従来技術、競合技術の概要


生体活動や分子運動などの観察等において非常に重要となるスペクトル領域を多く含む中赤外~遠赤外波長帯(5μm~100μm)は、可視領域や近赤外領域と比べて光子エネルギーが極端に小さく、また、膨大な背景輻射に晒される領域でもあるため、微弱光を検出することが非常に困難である。



従来から赤外検出器として使われているものとしては、光伝導型または光起電力型のMCT(Mercury Cadmium Telluride)や量子井戸型のQWIP(Quantum Well Infrared Photodetector)などがある。しかし、それらの検出器では、1光子(単一光子)により励起される電子が最大で1つであるために増幅効果がなく、その結果、検出感度には限界がある。



このような問題に鑑み、本発明者らは、GaAs/AlGaAs二重量子井戸構造による超高感度のテラヘルツ(THz)検出器(CSIP:Charge-Sensitive Infrared Phototransistor)の研究開発を行ってきている。



本願発明者により次に説明する現象を利用した赤外光検出器が提案されている(たとえば、特許文献1を参照)。すなわち、赤外光がマイクロストリップ・アンテナ等によって量子ドット等、周囲から電気的に孤立した2次元電子層に集中される。これにより孤立2次元電子層に垂直な振動電場が生成される。そして、孤立2次元電子層における電子がこの振動電場により励起されて基底サブバンドから励起サブバンドに遷移し、さらに孤立2次元電子層からその直下に配置された電荷敏感トランジスタのソース電極等に脱出する。これにより孤立2次元電子層が正に帯電する。そして、孤立2次元電子層から脱出する電子数が徐々に増加することにより孤立2次元電子層の帯電量も徐々に増加し、さらには電荷敏感トランジスタの電気伝導度も増加する。



当該現象を利用した赤外光検出器によれば、単一の赤外光子がアンテナに入射されたことが電荷敏感トランジスタの電流変化に基づいて検知されうるので、赤外光が高感度で検出されうる。



つまり、本発明者らの開発によるCSIPは、ゲート電圧によって電気的に孤立した量子井戸(Isolated QW)である上部量子井戸(U-QW)と、伝導層としての下部量子井戸(L-QW)を備えている。



ゲート電圧によって電気的に孤立した上部量子井戸(U-QW)に光子が入射すると、サブバンド間遷移によって電子が励起される。この励起された電子は、上部量子井戸(U-QW)から下部量子井戸(L-QW)へと傾斜するエネルギーバンドに従って下部量子井戸(L-QW)へと移動する。



このとき、上部量子井戸(U-QW)は電子を失った状態にあるため、正に帯電する。換言すれば、上部量子井戸(U-QW)は正孔が蓄積された状態となる。下部量子井戸(L-QW)はその帯電状態を感じ取り、ゲート電圧によって電気的に孤立した上部量子井戸(U-QW)が正に帯電している間は、下部量子井戸(L-QW)へと電流が流れ続けることとなる。



上部量子井戸(U-QW)の正孔のライフタイムは1時間を超えるため、その間は下部量子井戸(L-QW)へと電流が流れ続けることとなり、CSIPに入射した光子1個により、上部量子井戸(U-QW)から下部量子井戸(L-QW)へと流れる電子は1億個を超え、莫大な増幅率が得られる。



なお、光子が入射し続けると、通常、数10msで上部量子井戸(U-QW)の正孔が飽和してしまうが、リセットゲートに周期的に正のパルス(0.1Hz~10KHz)を加えて孤立量子井戸(Isolated QW)を中和させることとすれば、半永久的な検知が可能である。



このようなCSIPの検出感度を、雑音等価パワー(NEP: Noise Equivalent Power)で評価すると、検出波長14.5μm、動作温度4.2Kにおいて、7×10-20W/Hz1/2であり、MCTやQWIPと比較して、2~4桁も高い感度を示す。このような高感度性のため、本発明者らの実験によれば、CSIPにより単一光子検出が可能であることが確認されている。



なお、CSIPの構造の詳細については、本発明者らによる既に出願済みの特許明細書(特許文献2~5)も参照されたい。

産業上の利用分野


本発明は赤外光計測技術に係り、特に、赤外領域の複数の波長の光を高感度で検知することを可能とする赤外光検出器、並びに、それを用いた赤外顕微鏡および赤外分光器に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
2次元電子層としての第1電子層と、
入射赤外光に応じて前記第1電子層に垂直な振動電場成分を生成することにより、前記第1電子層における電気的な孤立領域の電子を励起し、前記孤立領域に形成されている量子井戸のサブバンドの間で遷移させる光結合機構と、
前記光結合機構により励起された電子が前記孤立領域から流出した結果として前記孤立領域の帯電量が変化することによって電気伝導度が変化する、前記第1電子層の下方に中間絶縁層を介して配置された第2電子層と、
前記孤立領域が外部電子系から電気的に遮断されている遮断状態と、前記外部電子系と電気的に接続されている接続状態とを切り替える状態制御機構とを備え、
前記第1電子層には、少なくとも、前記入射赤外光の入射面側に設けられた第1の量子井戸と、前記第2電子層側に設けられた第2の量子井戸の2つの量子井戸が設けられており、
前記第1の量子井戸の基底サブバンドと励起サブバンドのエネルギー準位の差Δε1と、前記第2の量子井戸の基底サブバンドと励起サブバンドのエネルギー準位の差Δε2は、Δε1>Δε2となるように設計されており、
前記第2電子層の電気伝導度の変化を検出することにより、前記入射赤外光を検出することを特徴とする、赤外光検出器。

【請求項2】
前記第1の量子井戸と前記第2の量子井戸の間に設けられるポテンシャル障壁層の幅WBは、m*を電子の有効質量、UBを該ポテンシャル障壁層のポテンシャル・エネルギー、ε0を前記第1の量子井戸の基底サブバンド、hをプランク定数としたときに、λp=(h/2π)/[2m*(UB-ε0)]1/2で表される電子の侵入長λpの4乃至6倍(WB=k・λp、k=4~6)に設計されている、請求項1に記載の赤外光検出器。

【請求項3】
前記状態制御機構が、
前記第1電子層の上方において前記孤立領域と、前記第1電子層における前記外部電子系との接続領域とを区分するように形成された第1のゲート電極と、
前記第1のゲート電極に印加されるバイアス電圧を制御することにより、前記第1電子層において前記孤立領域と前記接続領域との間に形成される電位障壁の高低を調節する第1の電圧制御装置とを備えている、請求項1又は2に記載の赤外光検出器。

【請求項4】
前記状態制御機構が、
前記中間絶縁層とともに前記第1電子層を挟む上部絶縁層の上面において、前記電気的な孤立領域を横断するように設けられた複数の第2のゲート電極と、
前記第2のゲート電極に印加されるバイアス電圧を制御する第2の電圧制御装置を備え、
それぞれの前記第2のゲート電極にバイアス電圧が印加されて前記第1電子層に電位障壁が形成されることにより、前記電気的な孤立領域が相互に電気的に独立している複数の孤立領域に分割される、請求項1~3の何れか1項に記載の赤外光検出器。

【請求項5】
前記状態制御機構が、前記第2電子層または前記第2電子層に接続されているオーミックコンタクトを前記外部電子系として、前記遮断状態と前記接続状態とを赤外光検出時に切り替える、請求項1~4の何れか1項に記載の赤外光検出器。

【請求項6】
前記状態制御機構が、前記遮断状態における前記第2電子層の電気伝導度の変化態様に基づいて前記遮断状態を前記接続状態に切り替える、請求項1~5の何れか1項に記載の赤外光検出器。

【請求項7】
前記状態制御機構が、
前記孤立領域の真上に設けられた第3のゲート電極であって、前記孤立領域が上方に投影された形状の第3のゲート電極と、
前記第3のゲート電極に印加されるバイアス電圧を制御することにより、前記第1電子層に設けられた前記第1の量子井戸を孤立化させる第3の電圧制御装置とを備えている、請求項1~6の何れか1項に記載の赤外光検出器。

【請求項8】
前記第3のゲート電極は、10nm以下の厚みのNiCr膜からなる、請求項7に記載の赤外光検出器。

【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の赤外光検出器を備えている、赤外顕微鏡。

【請求項10】
請求項1~8の何れか1項に記載の赤外光検出器を備えている、赤外分光器。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 公開
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