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[NiFe]-ヒドロゲナーゼの発現系 コモンズ 新技術説明会

国内特許コード P140010509
整理番号 L12005
掲載日 2014年4月30日
出願番号 特願2013-249437
公開番号 特開2015-104373
出願日 平成25年12月2日(2013.12.2)
公開日 平成27年6月8日(2015.6.8)
発明者
  • 伊原 正喜
  • 河野 祐介
出願人
  • 国立大学法人信州大学
発明の名称 [NiFe]-ヒドロゲナーゼの発現系 コモンズ 新技術説明会
発明の概要 【課題】 本発明の課題は、[NiFe]-ヒドロゲナーゼを十分な活性を有する形態で、簡易で大量に製造でき、さらには多数のアミノ酸置換体のライブラリを構築することが容易な発現システムを提供することである。
【解決手段】 本発明は、ゲノム中もしくは天然株が有するプラスミド中の[NiFe]-ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群において、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ遺伝子が欠損している宿主菌、および、前記ヒドロゲナーゼ遺伝子を有するベクターを含む、[NiFe]-ヒドロゲナーゼの発現システムおよび該発現システムを用いた[NiFe]-ヒドロゲナーゼの製造方法などに関する。
【選択図】 図3
従来技術、競合技術の概要



水素分子は化石燃料に代わるクリーンな次世代のエネルギーキャリアとして注目されていることから、水素分子の生成能と分解能を有するヒドロゲナーゼもまた大きな注目を集めている。特に、ヒドロゲナーゼの水素分子分解能は、燃料電池の白金電極の代替や、燃料電池の安全性を確保するための水素センサーにも応用できる。このような応用例の1つとして、遺伝子操作によりギ酸デヒドロゲナーゼおよびヒドロゲナーゼの酵素群を高発現させた微生物を用いて水素を供給する燃料電池などが検討されている(特許文献1:特許第3764862号公報)。





ヒドロゲナーゼは、フェレドキシンなどの電子伝達蛋白質やNADHなどの電子供与分子から電子を受け取り、プロトンを還元して水素分子を生成する反応(2H+2e→H)と、水素分子をプロトンと電子に分解し(H→2H+e)、電子(還元力)を電子伝達蛋白質やNADに渡す反応を触媒する酵素である。ヒドロゲナーゼは、触媒中心である金属イオン錯体の違いによって、概ね、(1)2つの鉄イオンからなる二核錯体を有する[FeFe]-ヒドロゲナーゼ、(2)ニッケルと鉄イオンのヘテロ二核錯体を有する[NiFe]-ヒドロゲナーゼ、(3)鉄含有補助因子を含む[Fe]-ヒドロゲナーゼの3つに分類することができる。





[FeFe]-ヒドロゲナーゼの主な生理的役割は、生体内の余剰電子を水素分子として放出することであり、触媒中心である鉄硫黄クラスター[4Fe-4S]は電子伝達蛋白質から鉄二核錯体への電子伝達を仲介する役割を担っている。これまで、[FeFe]-ヒドロゲナーゼを藍藻類(特許文献2:特開平11-253166号公報)や緑藻(特許文献3:特表2008-531055号公報)において発現させる試みがなされてきたが、[FeFe]-ヒドロゲナーゼは酸素分子と直ちに反応し、不可逆的に不活化されるため、実用性に乏しいものであった。





[NiFe]-ヒドロゲナーゼは、生理的役割として、主に水素分子の取り込みを行っており、4次構造としては、触媒中心であるニッケル-鉄錯体を有するラージサブユニットと、電子伝達ユニットである3つの鉄硫黄クラスター([4Fe-4S]もしくは[3Fe-4S])を持つスモールサブユニットからなるヘテロダイマーを基本構造とする。また一方で、膜結合ドメインやNAD還元機能を有するジアホラーゼドメインなどを有するマルチドメインを形成しているヒドロゲナーゼも知られている。一般に[NiFe]-ヒドロゲナーゼは、[FeFe]-ヒドロゲナーゼと比較して酸素分子に対する耐性は高いとされ、酸素分子と反応して活性を失っても、還元的雰囲気下で再活化される例が報告されている。





[NiFe]-ヒドロゲナーゼを発現させる試みも数多く報告されている。

特許文献4(特表2010-535471号公報)および非特許文献1(Roussetら(1998))は、硫酸還元菌由来の[NiFe]-ヒドロゲナーゼの宿主ベクター系に関する文献であるが、これらの文献においては、硫酸還元菌由来の[NiFe]ヒドロゲナーゼ遺伝子をベクターに挿入し、硫酸還元菌のヒドロゲナーゼ欠失株に導入することで、組換え[NiFe]ヒドロゲナーゼ遺伝子を発現させたとされている。これらの発現系において、宿主として用いられる硫酸還元菌は嫌気性細菌であるため培養が容易ではなく、増殖が遅いため、実用化することは相当困難である。





非特許文献2(Kimら(2010))および非特許文献3(Kimら(2011))は、リコンビナント蛋白質の発現にもっともよく使用されている大腸菌(Escherichia coli)BL21株を宿主とした[NiFe]-ヒドロゲナーゼ発現系を報告している。大腸菌由来の[NiFe]-ヒドロゲナーゼ(hydrogenase-1)遺伝子を用いた場合(非特許文献2)およびHydrogenovibrio marinus由来の[NiFe]-ヒドロゲナーゼ遺伝子を用いた場合(非特許文献3)のいずれもリコンビナント[NiFe]-ヒドロゲナーゼの精製を行うことができたが、その水素発生における比活性は極めて低いものであった。





非特許文献4(Yonemotoら(2013))は、Alteromonas macleodii由来[NiFe]-ヒドロゲナーゼ遺伝子や翻訳後修飾関連遺伝子を有するプラスミド(~20kbp)を大腸菌内に導入し、活性型ヒドロゲナーゼを発現させることを報告している。同文献の発現系においては、導入するプラスミドのサイズが大きく、形質転換効率が低いなどの問題が生じる虞があり、簡易に用い得る発現システムとはいえない。





非特許文献5(Sunら(2010))は、大腸菌MW1001株を宿主として、高熱菌であるPyrococcus furiosus由来NAD還元[NiFe]-ヒドロゲナーゼの異種発現について報告している。同報告では、ヒドロゲナーゼ遺伝子と翻訳後修飾に必要な多数の遺伝子を5つのプラスミドに分乗させて、それぞれ大腸菌に導入している。また、非特許文献6(Schiffelsら(2013))は、大腸菌BL21(DE3)株を宿主として、Ralstonia eutropha(R. eutropha)由来NAD還元[NiFe]-ヒドロゲナーゼの異種発現について報告している。同報告では、NADP依存型[NiFe]-ヒドロゲナーゼを構成する5つのサブユニットをコードする遺伝子を挿入したプラスミドと、翻訳後修飾に必要な多数の遺伝子を挿入したプラスミドを、一つの細胞に導入している。これらの非特許文献において構築された共発現系は、構築した複数のプラスミドを菌体に導入する必要性や、プラスミドの脱落の問題などがあり、必ずしも簡便な安定的手段とはいえない。





非特許文献7(Schubertら(2007))は、Ralstonia eutropha由来の膜結合型[NiFe]ヒドロゲナーゼ遺伝子群を組み込んだベクターをRalstonia eutrophaのヒドロゲナーゼ遺伝子欠失株に導入することで、組換え[NiFe]ヒドロゲナーゼ遺伝子を発現させたことが報告されている。同文献の発現システムにおいて導入するプラスミドのサイズは、極めて大きく、形質転換効率が低いなどの問題が生じる虞があり、簡易に用い得る発現システムとはいえない。





近年、最も精力的に研究されている水素細菌は、前記非特許文献6および7においても用いられているRalstonia eutrophaである。Ralstonia eutrophaは、それぞれ生理学的役割も4次元構造も異なる3種類の[NiFe]-ヒドロゲナーゼ((1)NAD還元ヒドロゲナーゼ(SH)、(2)膜結合型ヒドロゲナーゼ(MBH)、(3)水素センサーヒドロゲナーゼ(RH))が存在している。これらのヒドロゲナーゼは、450kbpのメガプラスミドpHG1にコードされている。

NAD還元ヒドロゲナーゼ(SH)は細胞質に局在し、ヒドロゲナーゼサブユニットであるHoxYおよびHoxHと、NAD還元(ジアフォラーゼ活性)サブユニットであるHoxF、HoxUおよびHoxIから形成されている。SHは、NADHを必要とするバイオプロセスにおいて、水素分子によるNADH再生系触媒や、水素センサーへの応用が期待されている。





膜結合型ヒドロゲナーゼ(MBH)は、ヒドロゲナーゼサブユニットであるHoxKおよびHoxGと、キノン還元能を有する膜結合サブユニットであるHoxZから成る。HoxZを除いた可溶性MBHは、PSIや光触媒、電極と組み合わせた水素生産や、燃料電池への応用が期待されている。

水素分子センシングを担う水素センサーヒドロゲナーゼ(RH)は、ヒドロゲナーゼサブユニットであるHoxBおよびHoxCと、キナーゼサブユニットであるHoxJから成る。RHは、水素センサーへの応用が期待されている。それぞれ、比較的高い酸素耐性(高い再活性化速度)を有しているものの、酸素分子存在下では活性が大きく低下することが知られている。

産業上の利用分野



本発明は、[NiFe]-ヒドロゲナーゼの発現システムに関し、特に、活性を有する[NiFe]-ヒドロゲナーゼを大量に製造するための発現システムに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
ゲノム中もしくは天然株が有するプラスミド中の[NiFe]-ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群において、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ遺伝子の全部または一部が欠損している宿主菌、および、前記欠損した[NiFe]-ヒドロゲナーゼ遺伝子を有するベクターを含む、[NiFe]-ヒドロゲナーゼの発現システム。

【請求項2】
[NiFe]-ヒドロゲナーゼが、膜結合型ヒドロゲナーゼ(MBH)である、請求項1に記載の発現システム。

【請求項3】
[NiFe]-ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群が、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来である、請求項1または2に記載の発現システム。

【請求項4】
宿主菌が、ラルストニア・ユートロファである、請求項1~3のいずれか一項に記載の発現システム。

【請求項5】
宿主菌の、hoxK、hoxGおよびhoxZからなる[NiFe]-ヒドロゲナーゼ遺伝子の全部または一部が欠損している、請求項1~4のいずれか一項に記載の発現システム。

【請求項6】
宿主菌のhoxKおよびhoxGが欠損している、請求項5に記載の発現システム。

【請求項7】
宿主菌が、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターを2つ有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の発現システム。

【請求項8】
[NiFe]-ヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターが、R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)(配列番号1に記載の塩基配列の195番目~262目番)である、請求項7に記載の発現システム。

【請求項9】
ベクターのプロモーターが、R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)(配列番号1に記載の塩基配列の195番目~262目番)、改変SHプロモーター1(配列番号10に記載の塩基配列の4897番目~4964番目)、改変SHプロモーター7(配列番号11に記載の塩基配列の4897番目~4964番目)、改変SHプロモーター8(配列番号12に記載の塩基配列の4897番目~4964番目)または改変SHプロモーター9(配列番号13に記載の塩基配列の4897番目~4964番目)である、請求項8に記載の発現システム。

【請求項10】
ベクターの[NiFe]-ヒドロゲナーゼ遺伝子のmRNAの転写量と宿主菌の[NiFe]-ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群のmRNAの転写量との比が、4:1~1:15である、請求項1~9のいずれか一項に記載の発現システム。

【請求項11】
ベクターの[NiFe]-ヒドロゲナーゼ遺伝子のmRNAの転写量と宿主菌の[NiFe]-ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群のmRNAの転写量との比が、1:2~1:3である、請求項1~9のいずれか一項に記載の発現システム。

【請求項12】
宿主菌の16srRNAの転写量を100としたときに、ベクターの[NiFe]-ヒドロゲナーゼ遺伝子のmRNAの転写量、および宿主菌の[NiFe]-ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群のmRNAの転写量がともに0.5以上である、請求項10または11に記載の発現システム。

【請求項13】
ベクターが、pBHR-MBHst(配列番号6)、プラスミドpBHR-MBHst-1(配列番号10)、pBHR-MBHst-7(配列番号11)、pBHR-MBHst-8(配列番号12)またはpBHR-MBHst-9(配列番号13)である、請求項1~12のいずれか一項に記載の発現システム。

【請求項14】
ゲノム中の[NiFe]-ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群において、hoxKおよびhoxGが欠損しているラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)。

【請求項15】
pBHR-MBHst(配列番号6)、プラスミドpBHR-MBHst-1(配列番号10)、pBHR-MBHst-7(配列番号11)、pBHR-MBHst-8(配列番号12)またはpBHR-MBHst-9(配列番号13)である発現ベクター。

【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の発現システムを用いた、[NiFe]-ヒドロゲナーゼの製造方法。

【請求項17】
[NiFe]-ヒドロゲナーゼの製造方法であって、
(1)ゲノム中の[NiFe]-ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群において、hoxK、hoxGおよびhoxZからなる[NiFe]-ヒドロゲナーゼ遺伝子の全部または一部が欠損しているラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)を調製する工程、
(2)前記欠損した[NiFe]-ヒドロゲナーゼ遺伝子を有するベクターを調製する工程、
を含み、前記(1)で調製したラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)に、前記(2)で調製したベクターを導入した場合に、ベクターのmRNAの転写量と宿主菌の遺伝子群のmRNAの転写量との比が、4:1~1:15となるように、宿主菌のプロモーターおよび/またはベクターのプロモーターを改変されていることを特徴とする、前記製造方法。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 公開
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