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含エチレングリコール流体用流れ促進剤、及びこの促進剤を含む含エチレングリコール循環水 コモンズ 新技術説明会

国内特許コード P140011127
掲載日 2014年12月1日
出願番号 特願2014-209342
公開番号 特開2016-079222
出願日 平成26年10月10日(2014.10.10)
公開日 平成28年5月16日(2016.5.16)
発明者
  • 多賀 圭次郎
  • 山本 靖
  • 小松 亘
出願人
  • 国立大学法人 名古屋工業大学
発明の名称 含エチレングリコール流体用流れ促進剤、及びこの促進剤を含む含エチレングリコール循環水 コモンズ 新技術説明会
発明の概要 【課題】地域冷暖房などに用いられる温水あるいは冷水の循環水中に添加することにより、循環水の流れを促進して省エネルギーを図るエチレングリコール流体用流れ促進剤の提供。
【解決手段】オルト-トルイル酸20及び非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド22からなる含エチレングリコール流体用流れ促進剤、及び当該流れ促進剤を含む含エチレングリコール循環水。また、非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド22のアルキル鎖炭素原子数を、14又は16或いは18にすることで様々な温度帯で流れを促進する効果のある含エチレングリコール循環水。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


これまでに使用されている循環水の流れ促進剤は、主として循環水の溶液として水を対象としたものである。一般にセチルトリメチルアンモニウムブロミド(以下、CTAB)に代表される陽イオン性(カチオン性)界面活性剤及びその類似化合物が使用されており、添加剤としてサリチル酸ナトリウム(以下、SalNa)等を加えることにより流れ促進の効果が発現することが知られている(特許文献1、2)。これらを水に溶解させると、CTABはCTAカチオンとBrアニオンに、SalNaはサリチル酸アニオンとNaカチオンに分かれて水溶液中に存在する。しかしながら、主剤CTAカチオンはトリメチルアンモニウム基(N+(CH3)3)を有するので、殺菌作用や抗菌作用があり、漏出すると環境に対して影響を与えるために、欧米では使用禁止となっている。



また、日本においてもPRTR法の対象化合物である。一方、低温循環水中での流れ促進剤も望まれている。しかしながら、上に述べたCTAB及びその類似化合物を主剤とする流れ促進剤は、含エチレングリコール(不凍液)循環水中では流れ促進効果がないという問題点がある。



一般に流れ促進剤を用いての流れ促進効果の測定は、循環水の配管中におけるレイノルズ数(以下、Re数)の測定および流れ抵抗の低減(Drag Reduction)効果(以下、DR効果)の測定が行わる。しかし、Re数の測定およびDR効果の測定は、大量の溶液が必要であるので、新規の流れ促進剤(抵抗低減剤)のスクリーニングは非常に困難である。



ところで、スターラーの上に乗せたビーカー中で撹拌子を用いて撹拌すると、純水では撹拌子の回転によって渦が発生する。しかしながら、流れ促進剤として知られているCTABとSalNaの混合物は、渦の発生が起こらず(渦抑制効果)、またスターラーの回転を止めると、水溶液の流れが次第に遅くなって停止し、それから逆方向への回転が始まる現象がみられる(跳ね戻り現象)。渦抑制と跳ね戻り現象が生じるのは溶液に粘弾性があることを示しており、溶液の粘度増加と溶液の流れ促進効果は相反する現象である。この渦抑制を発現する流れ促進剤が流れ促進効果を有するのは、循環水中で流れ促進剤がひも状ミセルを構成しており、そのひも状ミセルが配管中で乱流が発生するのを防いで、層流状態を維持するためと理解されている。高分子化合物を循環水中に添加することにより循環水の流れが促進されることが知られているが、界面活性剤を循環水に添加することにより流れが促進されるのは、ひも状ミセルという高分子化合物類似の構造ができるためと考えられている。



以下、背景技術を図により詳細に説明する。
図4は、渦高さによるスクリーニング装置の全体構成を示す。これは、渦抑制と跳ね戻り現象をスクリーニングとする方法である。即ち、スターラーに乗せた200mlのトールビーカーに200mlのスクリーニング溶液と長さ35mmの撹拌子を入れる。スクリーニング溶液の主剤濃度は1000ppmで、添加剤は主剤の化学量論比とする。スターラー700ppmで撹拌する。
図4(a)は、スターラーで撹拌子を回転させると渦が発生していることを示す。
図4(b)は、流れ促進剤を添加すると渦抑制効果が発生していることを示す。
図4(c)は、回転を停止すると、気泡が逆回転する跳ね戻り現象が発生していることを示す。



図5は、流れ促進剤を含む循環水の渦抑制効果の測定と温度依存性を示す。温度制御可能な恒温槽中に浸したスクリーニング溶液を撹拌回転しながら、その渦高さを測定する。温度上昇とともに渦高さが変化するので、温度と渦高さの依存性を測定する。恒温槽中に浸し、700rpmで回転させながら渦の平均高さを測定した結果を示す。
図5(a)は、25℃を示す。図5(b)は、35℃を示す。温度により渦高さが変化することを示す。



この渦抑制効果をスクリーニング法として新規の流れ促進剤を探した。
しかしながら、なぜCTAカチオンとSalアニオンの複合体のみが、流れ促進剤としての機能発現を引き起こすかという理由はわかっていない。そこで、まず溶液中でこの複合体がどのような構造をしているのかという知見を得る目的で、密度汎関数法(B3LYP法、6-31G(d)基底関数)を用いてGaussianソースプログラムにて構造最適化を行った。
その結果を図6に示したが、図6は、セチルトリメチルアンモニウム(CTA)カチオン/サリチル酸(Sal)アニオン複合体(CTA-Sal)、即ちCTAカチオンとSalアニオンが静電気的に結合しているような構造が得られている。



ところで、主剤のCTAカチオンはトリメチル基を有しているが、そのメチル基の一つを酸素原子に置き換えると非イオン性のアルキルジメチルアミンオキシド(ADMAO:(CH3(CH2)n-1N(CH3)2(=O), n=14,16,18)になる。このADMAO(以下、アルキル鎖長のn=14の化合物をC14DMAO、n=16の化合物をC16DMAO、n=18の化合物をC18DMAO)は界面活性剤補助剤としてよく使用されているが、非イオン性であるので環境低負荷型の流れ促進剤となりうる(特許文献3、4)。



よって、炭素鎖がC16のC16DMAOを主剤として、添加剤にSalNaを使用したところ、渦抑制効果は見られなかった。そこで、図6の複合体の分子構造を参考に、SalNaの親分子化合物のサリチル酸(以下、SalOH)を添加したところ白色沈殿を生じた。しかしながら、SalOHのOH基の位置異性体の4-ヒドロキシ安息香酸(以下、4-OHBz)を加えたところ、渦抑制効果が観測された。また、そのほかにも渦抑制効果を示す多くの添加剤を見出すことができた。密度汎関数法を用いて、C16DMAOと4-OHBzの構造最適化から得られた構造を図7に示す。アミンオキシドのN=Oの酸素原子と、安息香酸のカルボキシル基の水素原子の間で水素結合を生成して安定な構造を取っていることがわかる。これは環境低負荷型の流れ促進剤となる。



種々の添加剤について渦抑制効果の有無を調べ、いくつかの添加剤について渦高さの温度依存性を測定した結果を図8に示す。図8は、種々の非イオン性のアルキルジメチルアミンオキシドと添加剤の渦高さの温度依存性を示し、4-ヒドロキシ安息香酸(4-OHBz)、安息香酸(0-OHBz)、クミン酸(CumA)、主剤濃度1000ppm、添加剤当量量論比、回転数700rpmである。実用化されているCTAB/SalNaの結果ともあわせて示している。図8では、縦軸が渦の高さ、横軸が温度を示しており、渦高さが低いほど流れ促進剤として有効である可能性があることを示している。また、アルキル鎖長によって、渦抑制の温度領域が異なることがわかる。



この結果を名古屋工業大学機械工学教育類の玉野真司准教授に提案したところ、アルキル鎖長C14のC14DMAO/4-OHBzと、比較実験として市販の流れ促進剤であるオレイルジメチルアミンオキシド(以下、ODMAO)についての流れ促進効果の実験が行われた(非特許文献1)。
図9は、C14DMAO/4-OHBz混合物とODMAO単体のDR実験(25℃)である。図9(a)は、管摩擦係数(λ)とRe数の測定結果を示す。図9(b)は、流れ促進の効果即ちDR効果を示す。
図9(a)は、横軸がRe数、縦軸が管内摩擦係数(以下、λ)である。Tap waterで示される水は、低いRe数3000で層流から乱流に移行することがわかる。
黒丸は、C14DMAO/4-OHBz(1000ppm)の1回目の測定結果である。白丸は、C14DMAO/4-OHBz(1000ppm)の2回目の測定結果である。再現性のある結果が得られた。黒三角は、ODMAO(1000ppm)の測定結果である。白三角は、ODMAO(500ppm)の測定結果である。
4つの実験結果は、レイノズル数(流速)の増加と共にλが減少する。ここでは層流である。レイノズル数が10000から30000になると、乱流に変化しλは変曲点を持ち増加する。
よってλは、乱流のTap waterが上側の曲線になり、層流の4つの測定結果が下側の曲線になる。即ち、水は低いRe数で層流から乱流に移行するが、流れ促進剤を添加すると、層流の領域がかなり広がっていることがわかる。
図9(b)は、流れ促進効果(抵抗低減効果(Drag Reduction効果)、以下、DR効果)がほぼ70%程であることを示している。
ここで、DR効果は次式による。
DR効果=(通常水の配管内摩擦損失-DR溶液の配管内摩擦損失)/通常水の配管内摩擦損失×100



ひも状ミセルは界面活性剤の集合体の一つであり、高分子化合物類似の構造を取っている。高分子化合物を循環水中に添加することにより循環水の流れが促進されることが知られているが、界面活性剤を循環水に添加することにより、流れが促進されるのは、この高分子化合物類似の構造ができるためと考えられている。



以上の分子構造から設計した主剤と添加剤の組み合わせおよびそのスクリーニングの結果については、日本化学会コロイドおよび界面化学部会のニュースレターに報告している(非特許文献1)。
また、主剤のADMAOと白色沈殿を生じた添加剤のSalOHの量論比を1:0.3~1:0.2に調整すると、渦抑制と跳ね戻り現象が生じることを確認している。

産業上の利用分野


本発明は、地域冷暖房などに用いられる温水あるいは冷水の循環水中に添加することにより、循環水の流れを促進して省エネルギー効果を有する流れ促進剤と、その流れ促進剤を含むエチレングリコール循環水に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
オルト-トルイル酸および非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドからなることを特徴とす
る含エチレングリコール流体用流れ促進剤。

【請求項2】
前記非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドは、アルキル鎖炭素原子数が、14または16または18であることを特徴とする請求項1に記載する含エチレングリコール流体用流れ促進剤。

【請求項3】
前記オルト-トルイル酸および前記アルキル鎖炭素原子数14の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドおよび前記アルキル鎖炭素原子数16の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドからなることを特徴とする含エチレングリコール流体用流れ促進剤。

【請求項4】
前記オルト-トルイル酸および前記アルキル鎖炭素原子数16の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドおよび前記アルキル鎖炭素原子数18の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドからなることを特徴とする含エチレングリコール流体用流れ促進剤。

【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載のいずれか1つの含エチレングリコール流体用流れ促進剤を含むことを特徴とする含エチレングリコール循環水である。






国際特許分類(IPC)
画像

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出願権利状態 公開
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