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抑制性神経前駆細胞の増殖、分離、移植、およびこの細胞の増殖促進物質

国内特許コード P150011179
掲載日 2015年1月26日
出願番号 特願2012-535097
登録番号 特許第5970721号
出願日 平成23年9月22日(2011.9.22)
登録日 平成28年7月22日(2016.7.22)
国際出願番号 JP2011072490
国際公開番号 WO2012039513
国際出願日 平成23年9月22日(2011.9.22)
国際公開日 平成24年3月29日(2012.3.29)
優先権データ
  • 特願2010-212133 (2010.9.22) JP
発明者
  • 玉巻 伸章
  • 武 勝昔
  • 二宮 省悟
出願人
  • 国立大学法人 熊本大学
発明の名称 抑制性神経前駆細胞の増殖、分離、移植、およびこの細胞の増殖促進物質
発明の概要 Activin Aを含有する抑制性神経前駆細増殖溶液と、この溶液を用いた抑制性神経前駆細胞の培養方法、Activin A受容体Acvr1の発現を指標とした抑制性神経前駆細胞および抑制性神経細胞の分離方法、分離したこれらの細胞を脳表面に移植する方法、ならびに抑制性神経前駆細胞の増殖因子スクリーニング方法を提供する。
従来技術、競合技術の概要


高等脊椎動物の中枢神経は、多くの場合、一旦損傷を受けると再生することなく、機能障害も治癒することなく慢性化する。このような損傷を治療する目的で、embryonic stem(ES)細胞やinduced pluripotency stem(iPS)細胞から神経細胞を分化させて、移植する試みがなされようとしている(非特許文献1、2)。しかし、ES細胞やiPS細胞から神経細胞を分化させることができてもその数は少なく、またES細胞やiPS細胞と様々な神経系の細胞の混合物となる。移植のためには、特定の種の神経前駆細胞と神経細胞のみを準備することが重要であるが、抑制性神経細胞の場合においても難しく、これまでのところ純度の高い抑制性神経前駆細胞と発生中の抑制性神経細胞を得ることはできていない。
中枢神経系の神経細胞には興奮性の神経細胞と抑制性の神経細胞がある。両者が中枢神経の領域により異なる様々な比率で分布して情報処理が行われている。大脳皮質では抑制性神経細胞は神経伝達物質としてγ-aminobutyric acid(GABA)を使い、興奮性神経細胞はGlutamateを使う。大脳皮質の抑制性神経細胞は神経細胞の20%程度の比率で存在することにより、神経回路全体としては適度な活動度を維持することができ、スムーズな情報処理を営むことができる。しかしながら時として、全ての神経細胞が興奮し始め、結果として意識を失う癲癇発作が起きる。このような発作が起きる原因には、子供の間は脳の神経回路発達が未熟なために、発熱により神経細胞が興奮しやすくなって生じる熱性痙攣もあるが、多くは遺伝的背景があり、癲癇症患者の多くは神経細胞の興奮に関わるチャンネル分子にポイント変異があり、興奮しやすくなっていると考えられている。また細胞移動の分子メカニズムに異常がある場合には大脳皮質の灰白質部が二分してしまい、入出力関係がアンバランスになり癲癇様発作を繰り返す場合もある。いずれの場合も神経回路に生じたショート様の異常状態であり、過発火により多量のカルシウムが細胞体に流入することにより細胞死に至ることが考えられる。このようなショートの状態が起こるのを止める役目にある抑制性神経細胞が特に過大な入力を受け、他の興奮性神経細胞よりも先に死滅して行く。このような状態になると難治性の癲癇発作のフォーカスと呼ばれ、フォーカスにある抑制性神経細胞は激減し、繰り返し癲癇発作の発生元となる。このような状態にある難治性の癲癇症では治療薬では追いつかず、フォーカス領域を切除して癲癇発作の発生を抑える根治療法が行われる。しかし脳の一部を切除するため切除される脳が持っていた機能は失われる。このような癲癇発作フォーカスに抑制性神経前駆細胞と発生中の抑制性神経細胞を移植により供給して生着させることができたならば癲癇発作を抑えることが期待できる。
この出願の発明者はこれまでに、げっ歯類の大脳皮質抑制性神経細胞の起源は大脳基底核原基に起源を持つことを発見し、1997年11月1日に報告している(非特許文献3)。またこれとは別に、米国のAnderson S.も、1997年10月27日に同様の報告している(非特許文献4)。しかし大脳基底核原基以外に起源が無いのかの点は確認されていなかった。そのような中、人間では抑制性神経細胞の起源が大脳皮質にもあり、65%は大脳皮質で、35%は大脳基底核原基で作られるとする報告がある(非特許文献5)。この報告にある65%の大脳皮質由来のGABA作動性神経細胞前駆細胞は、脳室帯ないし脳室下帯にある神経幹細胞の分裂により供給され、Mash1陽性で特徴付けられると考えた。このような観察結果は、この出願の発明者が、げっ歯類での抑制性神経細胞の起源を調べた最新の研究での個々の観察結果と一部一致するものであるが(非特許文献6)、起源に関する解釈は発明者の解釈と大きく異なるものである。この出願の発明者のげっ歯類での研究によれば、大脳皮質に移動してくる細胞には、抑制性神経前駆細胞と発生中の抑制性神経細胞が含まれていて、前者が大脳皮質で新たに抑制性神経細胞を供給して、結果、抑制性神経細胞の起源は大脳基底核原基にあると言える。人間の場合も、大脳皮質の抑制性神経前駆細胞と抑制性神経細胞は、大脳基底核原基に由来する可能性が高い。
このように、人抑制性神経前駆細胞と抑制性神経細胞の由来も明らかになりつつあるが、未だ治療目的で移植するのに十分な量の抑制性神経前駆細胞と発生中の抑制性神経細胞を準備できる状況ではない。
Activin Aは、胚盤胞のころに背腹軸や腎臓の形成に関わる物質としてよく知られ、腎臓形成のための分子(特許文献1)、抑制性神経細胞の保護作用(特許文献2)、あるいはシナプス結合の可塑性の調節(特許文献3)についてそれぞれ特許出願されている。しかしながらActivin Aのこれらの作用はそれぞれ独立事象であり、Activin Aがそれぞれの細胞に作用するために結合する受容体分子は異なる。また、Activin Aが抑制性神経前駆細胞を選択的かつ高効率に増殖させることは知られていない。
【特許文献1】
特表2008-505643
【特許文献2】
特表2002-524402
【特許文献3】
特開2003-130869
【特許文献4】
特開2004-229523
【非特許文献1】
Gaspard N,Bouschet T,Hourez R,Dimidschstein J,Naeije G,van den Ameele J,Espuny-Camacho I,Herpoel A,Passante L,Schiffmann SN,Gaillard A,Vanderhaeghen P.(2008)An intrinsic mechanism of corticogenesis from embryonic stem cells.Nature 455:351-357.
【非特許文献2】
Takahashi K,Tanabe K,Ohnuki M,Narita M,Ichisaka T,Tomoda K,Yamanaka S.(2007)Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors.Cell 131,861-872.
【非特許文献3】
Tamamaki N,Fnjimori K,Takauji R.(1997)Origin and route of tangentially migrating neurons in the developing neocortical intermediate zone.J Neurosci 17:8313-8323.
【非特許文献4】
Anderson SA,Eisenstat DD,Shi L,Rubenstein JLR.(1997)Interneuron migration from the basal forebrain to the neocortex:dependence on Dlx genes.Science 278:474-476.
【非特許文献5】
Letinic K,Zoncu R,Rakic P.(2002)Origin of GABAergic neurons in the human neocortex.Nature 417:645-649.
【非特許文献6】
Wu S,Esumi S,Watanabe K,Chen J,Nakamura KC,Nakamura K,Kometani K,Minato N,Yanagawa Y,Akashi K,Sakimura K,Kaneko T,Tamamaki N.(2011)Tangential migration and proliferation of intermediate progenitors of GABAergic neurons in the mouse telencephalon.Development 138,2499-2509.
【非特許文献7】
Esumi S,Wu SX,Yanagawa Y,Obata K,Sugimoto Y,Tamamaki N.(2008)Method for single-cell microarray analysis and application to gene-expression profiling of GABAergic neuron progenitors.Neurosci Res.60,439-451.
【非特許文献8】
Tamamaki N,Yanagawa Y,Tomioka R,Miyazaki J,Obata K,Kaneko T.(2003)Green fluorescent protein expression and colocalization with calretinin,parvalbumin,and somatostatin in the GAD67-GFP knock-in mouse.J Comp Neurol.467,60-79.
【非特許文献9】
Kaartinen V,Dudas M,Nagy A,Sridurongrit S,Lu MM,Epstein JA,(2004)Cardiac outflow tract defects in mice lacking ALK2 in neural crest cells.Development 131,3481-3490.
【非特許文献10】
Ohira K,Furuta T,Hioki H,Nakamura KC,Kuramoto E,Tanaka Y,Funatsu N,Shimizu K,Oishi T,Hayashi M,Miyakawa T,Kaneko T,Nakamura S.Ischemia-induced neurogenesis of neocortical layer 1 progenitor cells.Nat Neurosci.2010 Feb;13(2):173-9.Epub 2009 Dec 27.
【非特許文献11】
Imayoshi I,Sakamoto M,Ohtsuka T,Takao K,Miyakawa T,Yamaguchi M,Mori K,Ikeda T,Itohara S,Kageyama R.(2008)Roles of continuous neurogenesis in the structural and functional integrity of the adult forebrain.Nat Neurosci.11,1153-1161.
【非特許文献12】
Yu PB,Hong CC,Sachidanandan C,Babitt JL,Deng DY,Hoyng SA,Lin HY,Bloch KD,Peterson RT.(2008)Dorsomorphin inhibits BMP signals required for embryogenesis and iron metabolism.Nat Chem Biol.4,33-41.

産業上の利用分野



この出願の発明は、抑制性神経前駆細胞をin vivoおよびin vitroで増殖させるための溶液、抑制性神経前駆細胞および抑制神経細胞を細胞集団から分離する方法、分離した細胞の移植法、および抑制性神経前駆細胞を選択的に増殖させる物質をスクリーニングする方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
大脳皮質から単離した抑制性神経前駆細胞、もしくはES細胞またはiPS細胞から分化させた抑制性神経前駆細胞を増殖させる方法であって、Activin Aを含有する抑制性神経前駆細増殖溶液中で抑制性神経前駆細胞を培養し、当該細胞を2から4倍に増殖させることを特徴とする抑制性神経前駆細胞のin vitro増殖方法。

【請求項2】
培養条件下で増殖した神経細胞の集団からActivin A受容体Acvr1のみを発現している細胞を単離することを特徴とする抑制性神経前駆細胞および抑制性神経細胞の分離方法。

【請求項3】
神経細胞の集団が、大脳皮質から単離培養した細胞集団である請求項の分離方法。

【請求項4】
神経細胞の集団が、ES細胞またはiPS細胞から分化させた細胞集団である請求項の分離方法。

【請求項5】
抑制性神経前駆細胞に対する選択的増殖促進物質のin vitroスクリーニング方法であって、
(a)分離した抑制性神経前駆細胞に被験物質を接触させて細胞の増殖の程度を測定する工程、
(b)Activin A受容体Acvr1に対する抗体、またはAcvr1の細胞内領域の活性を阻害する物質を予め接触させた抑制性神経前駆細胞に被験物質を接触させて細胞の増殖の程度を測定する工程、および
(c)工程(a)の細胞増殖が、工程(b)において消滅または有意に低下した被験物質を目的物質として選択する工程、
を含むことを特徴とする方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
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出願権利状態 登録
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