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質量分析法における質量変化を検出する方法及び安定同位体標識タンパク質の絶対量の定量方法 実績あり

国内特許コード P150011207
掲載日 2015年1月28日
出願番号 特願2012-557804
出願日 平成24年1月17日(2012.1.17)
国際出願番号 JP2012000227
国際公開番号 WO2012111249
国際出願日 平成24年1月17日(2012.1.17)
国際公開日 平成24年8月23日(2012.8.23)
優先権データ
  • 特願2011-029205 (2011.2.14) JP
発明者
  • 上家 潤一
  • 川上 裕貴
  • 坂上 元栄
  • 代田 欣二
出願人
  • 学校法人麻布獣医学園
発明の名称 質量分析法における質量変化を検出する方法及び安定同位体標識タンパク質の絶対量の定量方法 実績あり
発明の概要 従来の質量分析計を用いた高感度のタンパク質定量方法では、標的タンパク質の断片化処理の過程に生ずる試料損失や未断片化率が、内部標準ペプチド断片によって補正されない問題があった。また、質量分析計を用いてタンパク質の翻訳後修飾などを同定及び/又は定量することは非常に困難であった。そこで、質量分析計を用いて高精度にタンパク質を定量し、タンパク質における翻訳後修飾や遺伝子変異の同定及び/又は定量を行う方法を開発することを課題とした。
本発明者らは、安定同位体標識内部標準タンパク質を用いることで、一度に複数の標的タンパク質由来のペプチド断片を質量分析計で検出し、高感度かつ高精度にタンパク質を定量できるとの知見を得た。さらに、検出された標的タンパク質由来のペプチド断片の平均定量値を用いて、各ペプチド断片の翻訳後修飾や遺伝子変異を同定及び/又は定量することができることを見いだした。
従来技術、競合技術の概要

ヒトゲノムプロジェクトによってヒトの遺伝子配列が網羅的に解析され、疾患の原因となる遺伝子が次々に同定された。しかしながら、いまだ多くの原因不明の疾患が解明されずに残されており、今後はタンパク質の翻訳後修飾や一塩基多型(SNPs)などの詳細な解析が期待されている。また、オーダーメイド医療などが現実となりつつある昨今では、人種の違いや個人の違いを生み、個人の疾患や薬剤への耐性などの体質などを決定すると考えられているタンパク質の翻訳後修飾や一塩基多型(SNPs)などの解析はさらに重要となっており、これらを同定及び/又は定量する方法が求められている。



タンパク質や翻訳後修飾を検出する方法としては、従来は抗体を用いた方法が主に用いられてきた。抗体を用いてタンパク質を検出するためには、標的タンパク質に特異的な抗体を入手する必要がある。しかしながら、抗体の作製や精製には時間と技術の熟練が必要であり、標的タンパク質の種類によっては、様々な工夫を凝らし、努力を重ねても、標的タンパク質に特異的な抗体を得ることができない例も数多くある。さらに翻訳後修飾を検出する抗体としては、タイロシンやセリン、スレオニンのリン酸化を検出できる抗体もあるものの、検出感度が十分でない例や、これらの各アミノ酸残基のリン酸化を区別できない例や、タンパク質の立体構造などによっては必ずしもこれらのリン酸化を検出できない例が数多くあることなどの問題がある。また、特定のタンパク質の特定のアミノ酸残基に対するリン酸化を検出する抗体の作製はさらに困難である。さらに、抗体を用いたタンパク質や翻訳後修飾の検出は、抗体がしばしば標的タンパク質以外のタンパク質などにも反応してしまうことが大きな問題となる。この抗体の非特異性は、ELISAなどの抗体を用いたタンパク質の定量において、タンパク質の定量の精度の上昇を阻害する大きな原因の一つである。そこで、これらの抗体を用いた方法に代わって、質量分析法を用いて高精度でタンパク質や翻訳後修飾を定量する技術が開発されつつある。



質量分析法(mass spectrometry)とは、試料をイオン化し、イオン化した分子を質量/電荷(m/z)に従って分離し検出する方法であり、種々の生物学材料の検出や測定にこの方法が検討、利用されてきた。近年の質量分析法の進展により、エレクトロスプレー・イオン化法(ESI:electrosprayionization)やマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI:Matrix assisted laser desorptionionization)など様々なイオン化法を用いることが可能となり、またイオントラップ法、飛行時間法(TOF:Timeof Flight)、四重極法、フーリエ変換法などによるイオン化された試料を解析する様々なアナライザーを用いた様々な質量分析計が開発されている。また、液体クロマトグラフィーを接続した液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)や、質量分析計を2台結合した、タンデム質量分析計(MS/MS spectrum)等、種々の機能をもつ質量分析計が開発されており、これらの機能を組み合わせたものが、生物学材料の検出や測定や定量に利用されている(特許文献1~3)。



従来の質量分析法を用いたタンパク質の定量方法は、標的タンパク質における定量対象のペプチド断片を選択し、かかるペプチド断片の量を定量する方法であった。すなわち、図1に示すような(1)標的タンパク質における定量対象の任意のペプチド断片を選択する工程;(2)所定濃度段階の各ペプチド断片と、特定量の前記ペプチド断片に相当するアミノ酸配列である安定同位体標識内部標準ペプチド断片の混合物に対して質量分析を行い、非標識ペプチド断片/安定同位体標識内部標準ペプチド断片のマススペクトル面積比をそれぞれ算出して検量線を作成する工程;(3)断片化処理を施された標的タンパク質を含む試料及び、前記特定量の安定同位体標識ペプチド断片を含むサンプルに対し質量分析を行い、非標識ペプチド断片/安定同位体標識内部標準ペプチド断片のシグナル面積比やシグナル強度比をそれぞれ算出する工程;(4)工程(3)で算出した比から、工程(2)で作成した検量線を用いて、試料中の各標的タンパク質由来ペプチド断片をそれぞれ定量する工程;の工程(1)~(4)を備えた、質量分析装置を用いた、試料中の標的タンパク質の定量する方法であった。



しかし、従来の質量分析法を用いたタンパク質の定量方法では、定量対象のペプチド断片を選択しなければならないという問題があった。ペプチド断片のイオン化されやすさは各ペプチド断片によって異なり、質量分析法によってタンパク質を定量するためには、どの配列のペプチド断片を標的とするかが非常で重要であるとともに、様々な選択のためのクライテリアが研究されつつあるものの、定量対象のペプチド断片の選択は困難が伴う工程であることが現状である。また、従来の方法では、試料中の標的タンパク質を断片化した後に、安定同位体標識内部標準ペプチド断片を添加して質量分析へ供するため、試料中の標的タンパク質を断片化する過程における誤差、すなわち断片化の未処理効率や標的タンパク質のチューブへの吸着等による試料損失が補正されない、などの問題があった。そのため、これまで十分に高感度で高精度の質量分析法を用いたタンパク質の定量方法はなかった。



従来の質量分析法を用いた翻訳後修飾の定量方法としては、安定同位体を含む培地又は安定同位体を含まない培地でそれぞれ別に培養した細胞を回収、又は合わせて培養した後に回収して質量分析に供することによりタンパク質のリン酸化部位などを同定する方法(特許文献4、5)などが開発されているが、これらはいずれも特定のペプチド断片の翻訳後修飾を検出するものであり、タンパク質における翻訳後修飾部位の同定や、翻訳後修飾の定量はできないという問題があった。

産業上の利用分野

本発明は、質量分析装置を用いた分析において安定同位体標識タンパク質を内部標準として使用する方法に関し、より詳細には、標的タンパク質由来の複数のペプチド断片を一度に解析することにより、生体試料中のタンパク質を高感度に検出する方法や、標的タンパク質由来の複数のペプチド断片を一度に定量することから、試料中の標的タンパク質の質量分析法における質量変化を検出し、未知の翻訳後修飾を定量及び/又は同定する方法や、遺伝子変異による標的タンパク質の配列異常を定量及び/又は同定する方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の工程(a)~(c)を備えた、試料中の標的タンパク質の質量分析法における質量変化を検出する方法。
(a)所定濃度段階又は試料中の各標的タンパク質と、特定量の前記標的タンパク質に相当する安定同位体標識タンパク質との混合物にペプチド断片化処理を施し、得られるペプチド断片群に対して、質量分析を行い、標的タンパク質由来ペプチド断片/安定同位体標識タンパク質由来ペプチド断片のシグナル面積比やシグナル強度比から各ペプチド断片をそれぞれ定量する工程;
(b)全ての各標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値の平均値を平均定量値として求める工程;
(c)平均定量値に対する、各標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値の割合x(%)をそれぞれ算出し、ペプチド断片の質量変化を受けた割合(100-x)(%)をそれぞれ算出する工程;

【請求項2】
標的タンパク質の質量分析法における質量変化の検出が、標的タンパク質の翻訳後修飾の定量であることを特徴とする請求項1記載の方法。

【請求項3】
標的タンパク質の質量分析法における質量変化の検出が、標的タンパク質の翻訳後修飾部位の同定であることを特徴とする請求項1記載の方法。

【請求項4】
翻訳後修飾が、リン酸化又は糖化であることを特徴とする請求項2又は3記載の方法。

【請求項5】
標的タンパク質の質量分析法における質量変化の検出が、遺伝子変異による標的タンパク質の配列異常の定量であることを特徴とする請求項1記載の方法。

【請求項6】
標的タンパク質の質量分析法における質量変化の検出が、遺伝子変異による標的タンパク質の配列異常部位の同定であることを特徴とする請求項1記載の方法。

【請求項7】
遺伝子変異による標的タンパク質の配列異常が、一塩基多型(SNPs)によるものであることを特徴とする請求項5又は6記載の方法。

【請求項8】
安定同位体標識タンパク質として、翻訳後修飾又は遺伝子変異がない安定同位体標識タンパク質を用いることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の方法。

【請求項9】
翻訳後修飾部位又は遺伝子変異部位が、次の(1)~(8)のいずれかの条件から設定されていることを特徴とする請求項2~8のいずれかに記載の方法。
(1)公共のデータベースで翻訳後修飾又は遺伝子変異によるアミノ酸配列変化が公開されている部位であること;
(2)セリンもしくはスレオニン、タイロシンを含む配列部位であること;
(3)膜タンパク質の細胞外部位もしくは分泌タンパク質でアスパラギンを含む配列部位であること;
(4)リジンを含む配列部位であること;
(5)システインを含む配列部位であること;
(6)グルタミン酸を含む配列部位であること;
(7)プロリンを含む配列部位であること;
(8)請求項1記載の方法で求めた定量値が統計学的手法により平均定量値から外れ値を示す配列部位であること;

【請求項10】
対象部位が、配列番号1~6に示される翻訳後修飾及び遺伝子変異によるアミノ酸配列変化を受ける部位であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の方法。

【請求項11】
安定同位体標識タンパク質が、15N,13C,18O,Hのいずれかを含むアミノ酸によって標識されるタンパク質であることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の方法。

【請求項12】
ペプチド断片化が、トリプシン、グルタミルペプチダーゼ、アスパラギンペプチダーゼ、キモトリプシンから選ばれるいずれかのタンパク質消化酵素を用いた断片化であることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の方法。

【請求項13】
ペプチド断片化が、化学物質を用いた断片化であることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の方法。

【請求項14】
標的タンパク質が、ヒトEGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)であることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の方法。

【請求項15】
以下の工程(i)~(iii)を備えた、質量分析法で内部標準として使用する安定同位体標識タンパク質の絶対量の定量方法。
(i)安定同位体標識アミノ酸を用いて、安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質を合成する工程;
(ii)前記安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質と、特定量の非安定同位体標識前記タグタンパク質との混合物にペプチド断片化処理を施し、得られるペプチド断片群に対して質量分析を行い、安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質のタグタンパク質部分由来ペプチド断片/非安定同位体標識タグタンパク質由来ペプチド断片のシグナル面積比やシグナル強度比からタグ由来の各ペプチド断片をそれぞれ定量する工程;
(iii)安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質のタグタンパク質由来の各ペプチド断片の定量値の平均値を、合成した安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質の絶対量として求める工程;

【請求項16】
タグタンパク質が、GSTタグタンパク質であることを特徴とする請求項15に記載の定量方法。

【請求項17】
タグタンパク質が、Hisタグタンパク質であることを特徴とする請求項15に記載の定量方法。

【請求項18】
タグタンパク質が、次の(I)~(VI)のいずれかの条件から設定されるアミノ酸の配列であることを特徴とする請求項15~17いずれかに記載の絶対値の定量方法。
(I)アミノ酸残基数が、3から500残基であること;
(II)アミノ酸残基数が、500残基数であること;
(III)アルギニンを含む配列であること;
(IV)リジンを含む配列であること;
(V)トリプシン、グルタミルペプチダーゼ、アスパラギンペプチダーゼ、キモトリプシンから選ばれるいずれかのタンパク質消化酵素を用いて断片化される配列であること;
(VI)化学物質を用いて、ペプチドに断片化される配列であること;

【請求項19】
非安定同位体標識タグタンパク質の量が、アミノ酸分析法により決定されることを特徴とする請求項15~18のいずれかに記載の定量方法。

【請求項20】
非安定同位体標識タグタンパク質の量が、生化学的比色法によって決定されることを特徴とする請求項15~19のいずれかに記載の定量方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
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出願権利状態 公開
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