TOP > 国内特許検索 > 蛍光標識されたL-グルコース誘導体を用いたがん細胞を検出するための方法及び該誘導体を含むがん細胞のイメージング剤

蛍光標識されたL-グルコース誘導体を用いたがん細胞を検出するための方法及び該誘導体を含むがん細胞のイメージング剤 新技術説明会

国内特許コード P150011243
掲載日 2015年1月30日
出願番号 特願2013-507740
登録番号 特許第6019500号
出願日 平成24年3月29日(2012.3.29)
登録日 平成28年10月14日(2016.10.14)
国際出願番号 JP2012058439
国際公開番号 WO2012133688
国際出願日 平成24年3月29日(2012.3.29)
国際公開日 平成24年10月4日(2012.10.4)
優先権データ
  • 特願2011-079418 (2011.3.31) JP
発明者
  • 山田 勝也
  • 尾上 浩隆
  • 豊島 正
  • 山本 敏弘
出願人
  • 国立大学法人弘前大学
  • 国立研究開発法人理化学研究所
  • 株式会社ペプチド研究所
発明の名称 蛍光標識されたL-グルコース誘導体を用いたがん細胞を検出するための方法及び該誘導体を含むがん細胞のイメージング剤 新技術説明会
発明の概要 本発明の目的はがん細胞を精度よく検出するための方法を提供することである。本発明は、蛍光標識されたL-グルコース誘導体を用いてイメージングを行うことを特徴とする。本発明の方法及びイメージング剤を用いることにより、蛍光標識されたD-グルコース誘導体を用いてイメージングを行う場合に比較して、がん細胞と正常細胞との間で高いコントラストを得ることができる。また、判定に際して絶食を行う必要がないので、患者に負担を強いることなく、迅速に実施することができる。
従来技術、競合技術の概要



がんを精度よく検出することは、その発見や治療のために重要である。通例、がん組織は一様な性質を示す細胞の集合ではなく、様々な形態的あるいは機能的な特徴、分化の程度を示す細胞の集合である。また正常細胞の中に混在して存在する場合もある。そこで、がん診断では、診断を確定するために生検標本の病理診断を行い、細胞レベルで異常細胞の評価を行うことが必要となる。しかし、生検標本の病理診断においては、特に早期がんであるほど、がん細胞もしくは前がん状態にある細胞が見落とされる可能性、すなわち誤って陰性(False Negative、偽陰性)と診断される可能性が存在する。特に、内科診断時に組織のごく一部のみを取り出す生検を行なう場合、このような偽陰性の診断がなされてしまい、その後に病状が進行してしまってから初めて気づく危険性をいかに小さくするかが課題となっている。同様の問題は、手術後の再発の有無の評価においても大きな課題となっており、増える一方のがん患者に対応する多くの臨床科では、担当医の経験や習熟度に大きく依存せずに、的確に診断可能な方法が求められている。





生検は外科手術時に確認の目的で行われる場合、内視鏡、気管支鏡、拡大鏡、鼻鏡、耳鏡などを用いた内科検査時に消化管や気管、膀胱、膣、その他各種管腔の内側から行なわれる場合、あるいは観察部位付近の身体に小さな穴を開け、開口部に腹腔鏡や胸腔鏡などを挿入して組織の外側から行われる場合などがあるが、侵襲的な操作であることから、いずれの場合にも的確な生検部位の選定が極めて重要な課題である。内視鏡検査などでは、発赤やびらん、白色隆起、微細血管構築の異常を示す領域を認めた場合、拡大内視鏡を併用した異型血管像の精査などにより生検部位の選定が行なわれる。しかし、生検に伴う出血により、微小ながんではもし生検部位を誤れば病変を認識できなくなることも多い。一方、正常と区別のつかない組織を広範に摘出すれば侵襲度が高くなる。がんの手術においても、再発や再手術を避けようと正常部分を不必要に大きく切除すれば、QOL(Quality of Life)改善との兼ね合いにおいてはマイナス要因として働く。このため外科手術では、摘出範囲が適切であるか否かを調べるため、確実にがんが含まれていると思われる部分から一定距離離れた部分まで切除を行っては切断端の迅速病理診断を行う、というプロセスを、手術中に何度か繰り返している。しかし、切断端を迅速病理診断に出し、その結果が得られるまでには一回につき数十分から1時間といった時間が必要であることから、手術時間短縮の阻害要因の一つとなっている。手術時に限らず、内視鏡などの検査時に生検が行われる場合も、診断中、患者には非常に大きな負担がかかっている。従って検査を少しでも早く終わらせるため、どこを精査し、生検すべきかを示すイメージング法への医療現場のニーズは切実である。また、胆道がんや、バレット食道がんなどのように、検査で発見した時点では既に手遅れとなっている場合が多いがんでは、早期発見により生存率の改善が期待され、小さながんを的確、簡便に発見できるイメージング法が求められている。更に、ひとたびがんが発見された場合、内腔表層に薄く存在するがんがどこまで拡がって存在するか(側方進展あるいは水平進展などと称する)を的確に判定し、治療に生かす必要があるが、内視鏡でこれを細胞単位で行うことは熟練した専門家でも困難である(非特許文献1)。





現在、内視鏡は、がんの特徴を、より明瞭に捉えて観察できるように、高解像度のものや、光の散乱・吸収変化を利用するNarrow Band Imaging (NBI)、細胞の自家蛍光(Autofluorescence)をイメージングするもの(AFI)、Optical Coherence Tomography (OCT)といった新しい原理を用いるものなど各種の開発が進められている。中でもNBIの有用性が認識され、急速に普及している。しかしNBIは、主として血管パターンを可視化することでがんの進行度を間接的に判断しようとする方法で、上記で例示した他の方法と同様、個々の細胞を直接観察するには不向きである。一方、共焦点内視鏡 Confocal Laser Endomicroscopy(非特許文献2)は、フルオレセインなどの蛍光分子を静脈注射し、組織の発する蛍光を用いた断層像の取得により個々の細胞の形態的特徴を観察できるため、感度が向上すれば異形成や悪性度の違いの細胞単位での判定が期待される。手術時への応用も可能である。しかし、フルオレセインなどの細胞内取り込みはがん細胞特異的でないため、顕微鏡の視野範囲からみれば広大とも言える組織領域に含まれるほぼ全ての細胞が蛍光を発する中で、内視鏡やその他の検査時に異常を示すがん細胞の蛍光で精密に観察しようとすれば膨大な時間を要する。そこで、がん細胞や前がん状態にあるような細胞を迅速に発見し、炎症など、がん以外の原因に起因する細胞異常との識別をも可能にする適切なコントラスト剤が求められている(非特許文献3及び非特許文献4)。





がん診断イメージングを可能にするコントラスト剤として今日最も使用されているものの一つに、18Fで放射性標識された2-デオキシ-D-グルコースの誘導体[18F]2-fluoro-2-deoxy-D-glucose (FDG)があり、これを陽電子断層法(PET)と組み合わせた臨床画像診断が広く行われている(非特許文献5) 。FDG法は、がん細胞が正常細胞よりD-グルコースを細胞内に多く取り込む性質を利用してがんを可視化するものであるが、測定手法上、生きた単一の細胞がD-グルコースを取り込む様子をリアルタイムで連続的に観察することができないという欠点を有する(非特許文献6)。これは、一様でない形態や機能、分化程度を示しながら正常細胞の中に混在して存在するがんの正確な診断において不利な点で、例えばごく小さながん細胞が散在する場合や消化器粘膜に薄く発生するがんの早期発見を困難にしている要因の一つである。また、D-グルコースは正常細胞にも取り込まれるが故に、がん組織の周辺や、場合によってはがん組織内に存在する正常細胞へのFDGの取り込みによるバックグラウンド信号がSN比を低下させるという原理的な問題がある。さらに、炎症を起こしている細胞にはFDGが集まりやすいため、がんとの判別が難しくなる。





一方本発明者らは、蛍光基である7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール基(NBD)で標識した2-アミノ-2-デオキシ-D-グルコース(2-NBDG)が、哺乳動物細胞のグルコーストランスポーターを通過して、放射性標識D-グルコース誘導体に匹敵するキネティクスをもって細胞内に取り込まれることを示した(非特許文献6)。これらを背景に、2-NBDGのような蛍光標識されたD-グルコース誘導体をFDGの代わりに用いて、がんを細胞レベルでイメージングすることが提案されている(非特許文献7及び特許文献1)。また、がん組織の生検もしくは手術時摘出標本に2-NBDGを用いたイメージングとして、口腔がん(非特許文献8)、乳がん(非特許文献9)およびパレット食道がん(非特許文献1)に適用した例が報告されている。





しかしながら、2-NBDGをがん診断イメージングに用いる場合、2-NBDGがD-グルコースの誘導体であるために、FDGと同様、正常細胞への取り込みに起因するバックグラウンド信号がSN比を低下させ、微小ながんの早期発見を困難にする。実際、D-グルコースは血糖上昇により脂肪細胞や筋肉に強く取り込まれる性質を示し(非特許文献10)、FDGも同様の性質を示す。そこでFDGを用いたPET検査では、SN比を高めるため検査前に長時間の絶食が不可欠で、また事前のFDG取り込み時間中(約30分~1時間程度)および測定時間中(20~30分程度)、筋肉を動かさずにじっとしている必要がある(会話も制限される)。同様に、2-NBDGによるがんのイメージングでも絶食などが必要となる(非特許文献11)。しかし、絶食を行っても、蛍光標識されたD-グルコース誘導体が正常細胞に取り込まれることを完全に抑制することはできず、より精度の高い検出法が求められている。最近、ヒト組織の生検標本において比較的弱い2-NBDGの取り込みを示す軽度異形成細胞と、2-NBDGを強く取り込む高度異形成細胞のあることが報告されたが(非特許文献1)、いずれにも2-NBDGは取り込まれるため、両者の区別は連続的なものとならざるを得ない。また2-NBDGの強い取り込みは炎症組織にも認められ、がんとの識別がFDG-PET法と同様に課題となっている(非特許文献1)。従って、蛍光標識されたD-グルコース誘導体を用いる限り、腫瘍細胞であるか否かの判定を精度よく行うには限界があると言わざるを得ない。さらに、FDG法は糖尿病患者では診断が困難であるが、がん好発年齢は糖尿病発症年齢と重なるという問題があり、2-NBDGによるイメージングにも同様の制約がおきる可能性がある。





また最近、蛍光分子団をD型もしくはL型グルコースの一位にリンカーを介して結合した誘導体を合成する方法が提案され、正常細胞及び特定の腫瘍細胞に適用して蛍光による検出をおこなっている(特許文献3)。しかし、特許文献3の実施例においては、正常細胞及び腫瘍細胞のいずれにおいても、L型グルコース誘導体による十分な蛍光強度の増加が検出されることが示されている。

産業上の利用分野



本発明は、蛍光標識されたL-グルコース誘導体を用いてがん細胞又はそのおそれがある細胞を検出するための方法に関する。本発明はまた、蛍光標識されたL-グルコース誘導体を含むがん細胞又はそのおそれがある細胞のイメージング剤に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
がん細胞又はそのおそれがある細胞を検出するための方法であって、以下の工程、
a.生体外の標的細胞に、蛍光分子団として7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール基又はその誘導体を分子内に有するL-グルコース誘導体を含有する組成物を接触させる工程、及び
b.該標的細胞内に存在する該L-グルコース誘導体を検出する工程、
を含み、
該方法が、蛍光分子団を分子内に有するD-グルコース誘導体を標的細胞に接触させる工程を含まないことを特徴とする検出方法。

【請求項2】
前記L-グルコース誘導体が、7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール基又はその誘導体を、L-グルコース又はアミノ基及び/又はフッ素原子により水酸基が置換されたL-グルコースに結合したものである、請求項1に記載の検出方法。

【請求項3】
前記L-グルコース誘導体が、7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール基又はその誘導体を、L-グルコース又はアミノ基及び/又はフッ素原子により水酸基が置換されたL-グルコースの2位、4位又は6位に結合したものである、請求項2に記載のがん細胞の検出方法。

【請求項4】
前記L-グルコース誘導体が、2-[N-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)アミノ]-2-デオキシ-L-グルコースである請求項3に記載のがん細胞の検出方法。

【請求項5】
前記工程aにおける検出が標的細胞をイメージングすることにより行う請求項1~4のいずれか一つに記載の検出方法。

【請求項6】
前記工程aにおける組成物が、スルホローダミンを分子内に有するL-グルコース誘導体をさらに含み、かつ、前記工程bが、標的細胞中に存在する蛍光分子団である7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール基又はその誘導体を分子内に有するL-グルコース誘導体を検出する工程である、請求項1に記載の検出方法。

【請求項7】
前記組成物が、2-[N-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)アミノ]-2-デオキシ-L-グルコース及び2位にスルホローダミン101又はスルホローダミンBをスルホンアミド結合せしめた2-アミノ-2-デオキシ-L-グルコースを含む、請求項6に記載の検出方法。

【請求項8】
前記工程bにおける検出がイメージングされた細胞の蛍光色調の時間経過による変化を指標にして行う、請求項6又は7に記載の検出方法。

【請求項9】
さらに以下の工程、
c.前記蛍光色調の変化をもとに標的細胞ががん細胞であるか損傷細胞であるかを判定する工程、
を含む、請求項5~8のいずれか一つに記載の検出方法。

【請求項10】
前記全ての工程を30分以内に行う請求項1~9のいずれか一つに記載の検出方法。

【請求項11】
標的細胞内への標識されたL-グルコース誘導体の取り込みによって標的細胞をイメージングするためのイメージング剤であって、蛍光分子団である7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール基又はその誘導体を分子内に有するL-グルコース誘導体を含み、蛍光分子団を分子内に有するD-グルコース誘導体を含まないことを特徴とする標的細胞のイメージング剤。

【請求項12】
がん細胞を検出するための請求項11に記載のイメージング剤。

【請求項13】
前記L-グルコース誘導体が、7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール基又はその誘導体を、L-グルコース又はアミノ基及び/又はフッ素原子により水酸基が置換されたL-グルコースに結合したものである、請求項12に記載のイメージング剤。

【請求項14】
前記L-グルコース誘導体が、7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール基又はその誘導体を、L-グルコース又はアミノ基及び/又はフッ素原子により水酸基が置換されたL-グルコースの2位、4位又は6位に結合したものである、請求項13に記載のイメージング剤。

【請求項15】
前記L-グルコース誘導体が2-[N-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)アミノ]-2-デオキシ-L-グルコースである請求項14に記載のイメージング剤。

【請求項16】
前記イメージング剤がさらに、スルホローダミンを分子内に有するL-グルコース誘導体を含む請求項12~15のいずれか一つに記載のイメージング剤。

【請求項17】
前記イメージング剤がさらに、2位にスルホローダミン101又はスルホローダミンBをスルホンアミド結合せしめた2-アミノ-2-デオキシ-L-グルコースを含む請求項16に記載のイメージング剤。

【請求項18】
前記L-グルコース誘導体が、放射性標識されたL-グルコース誘導体である請求項11~15のいずれか一つに記載のPET用イメージング剤。

【請求項19】
請求項12~18のいずれか一つに記載のイメージング剤を含むがん細胞を検出するためのキット。

【請求項20】
前記工程bが、該標的細胞に該L-グルコース誘導体を接触させる前の標的細胞の蛍光強度に対する蛍光強度の増加をもって評価を行うことを含む、請求項1に記載のがん細胞の検出方法。

【請求項21】
前記工程aが、該標的細胞に該L-グルコース誘導体を一定時間接触させ、しかる後にこれを洗い流す工程をさらに含み、
前記工程bが、接触前の標的細胞の蛍光強度に対する蛍光強度の増加をもって評価を行うことを含む、請求項1に記載のがん細胞の検出方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2013507740thum.jpg
出願権利状態 登録
ライセンスをご希望の方、特許の内容に興味を持たれた方は、下記「問合せ先」まで直接お問い合わせください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close