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PET用ホウ素化合物

国内特許コード P150011282
整理番号 S2014-1174-N0
掲載日 2015年2月6日
出願番号 特願2014-144412
公開番号 特開2016-020316
出願日 平成26年7月14日(2014.7.14)
公開日 平成28年2月4日(2016.2.4)
発明者
  • 道上 宏之
  • 井口 佳哉
  • 松井 秀樹
  • 富澤 一仁
  • 北松 瑞生
出願人
  • 国立大学法人 岡山大学
  • 学校法人近畿大学
発明の名称 PET用ホウ素化合物
発明の概要 【課題】安価で簡便な方法で合成することができるBSHを基本とした構造のPET対応のホウ素化合物を提供する。
【解決手段】メルカプトウンデカハイドロドデカボレート(BSH)に、0~3個のアルギニンが連続したアミノ酸配列を付加し、さらに金属配位子を結合させたホウ素化合物、およびそのホウ素化合物に放射性核種を配位させたPET用プローブ。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、悪性腫瘍細胞を選択的に破壊し、腫瘍周囲の正常細胞に影響を与えないがん放射線治療法として注目されている。BNCTは、がん細胞にホウ素(10B)原子を含む化合物を取り込ませ、人体に無害な低エネルギーの熱/熱外中性子線を体外から照射し、ホウ素(10B)原子の中性子捕獲および核分裂反応を利用してがん細胞を選択的に破壊する治療方法である。核分裂反応によって高線エネルギー付与のα粒子と、反跳するリチウム(7Li)核を産生する(10B+1n → 7Li+4He+2.4MeV)。このα粒子t7Li核の飛程は、それぞれ細胞直径より短い10μm以下であるため、放射線の効果は10Bを含有する細胞に限定される。それゆえ、10Bをあらかじめ腫瘍細胞に選択的に取り込ませ、そこに中性子線照射を行えば、細胞レベルでのガン選択的な治療法となる。



現在のがん治療では、外科手術、放射線療法、化学療法の3つが主に行われており、疾患のレベルにより、これらの手法を組み合わせた集学的治療が行われている。近年、放射線療法におけるサイバーナイフなどの定位放射線治療では、医療機器の発達に伴い、ミリ単位で照射野を制御できるようになっている。しかし、悪性脳腫瘍を例にみると、最も悪性度の高い膠芽腫では、前述のような放射線治療技術の発達にもかかわらず、平均生存期間約1年、5年生存率5%未満と極めて予後が不良である。その理由として、腫瘍が脳内へ浸潤性発育をするという特性が挙げられる。このような高浸潤能をもつ腫瘍は、MRI(核磁気共鳴画像法)等の画像上描出される腫瘍領域の外側の正常能に、細胞レベルで多くの腫瘍細胞が散在している。そのため、正常組織に浸潤している腫瘍細胞を正確にイメージングすることが困難であり、細胞レベルでの治療に至っておらず、予後不良の原因となっている。



BNCTは前述したように、低毒性のホウ素化合物を用いるため、化学療法のような重篤な副作用はない。また、他の放射線療法のような照射線による正常組織へのダメージも極めて少ない治療法である。これまで中性子源として、原子炉を必要としていたが、加速器を使用した中性子源の開発により、原子炉と同等以上の中性子照射線量が得られており、病院併設型加速器中性子捕捉療法の実現に近づいている。



現在、BNCTは、悪性脳腫瘍や悪性黒色腫、頭頸部がん、悪性中皮腫などの治療で臨床研究が盛んにおこなわれている。



安全な中性子源の開発が進んでいる現在において、BNCTで最も重要視されているのが、ホウ素製剤の開発である。現在までに臨床応用されている薬剤は、ホウ素フェニルアラニン(BPA)と、メルカプトウンデカハイドロドデカボレート(BSH)の2種類である(非特許文献1および2)(下記構造式参照)。
【化1】




BPAは、必須アミノ酸であるフェニルアラニンに10B原子を1つ結合させた化合物である。BPAは血液脳関門を通過して脳全体に広がり、特にアミノ酸代謝の高い脳腫瘍に能動的に取り込まれる。また、BPAについては、18Fを結合させた18F-BPAを用いて、陽電子放出断層画像法(PET)でのBNCT治療前の薬物動態評価が行われている(非特許文献3および4)(下記構造式参照)。しかし、BPAは化合物1分子あたりに占める10Bの割合が4.7%と低く、治療効果を得るには大量のホウ素製剤が必要となる。加えて少量ではあるが正常組織にも取り込まれるため、腫瘍部の10Bの取り込みと正常部の取り込みの比を考えた中性子線照射を実施しなければならないという制約がある。
【化2】




BSHは、分子内に10B原子を12個含む20面体の化学構造を有し、化合物1分子あたりに占める10Bの割合は57.4%と高い。BSH自身には、腫瘍選択的送達能はないが、高水溶性・低毒性であり、血液脳関門が壊れている脳腫瘍組織においてEPR(enhanced permeability and retention)効果により蓄積する。しかし、細胞内への取り込み能がないことや、PETなどの薬物動態をイメージングする手法が無いため、脳腫瘍以外では用いられていない。



近年これらBPAやBSHの弱点を補う10Bキャリアとして、アミノ酸や糖類、リポソーム、高分子ミセルといったキャリアの研究・開発が報告されている。本発明者らも、これまでに、抗体結合型・発光イメージングリポソームや細胞膜通過ペプチド(cell-penetrating peptides:CPP)を使用したマルチBSH-ペプチドを開発している(特許文献1、非特許文献5)。しかしながら、PET用に使用できるBSH製剤の開発はまだ行われていない。



PETは、放射性同位体(RI)を含む薬剤を用いる核医学検査の一種である。対象薬剤にRIを標識し、投与後に体内で放出される放射線を特殊なカメラでとらえて画像化する。放出した陽電子が近くの電子と結合して消滅する代わりに透過力の強い放射線を2個生み出し、その場所から互いに180℃反対方向へ飛び去る。この一対の放射線をとらえることで、放射線源の存在する部位が計算可能となる。PET検査は全身を一度に調べることができ、悪性腫瘍画像診断や生体内薬剤動態検査に使用されている。PET用のプローブとしては、前述した18Fのみならず、11CなどのRIを結合させたり、金属キレーターに64Cu、68Gaといった核種を標識したペプチドや抗体が利用されている。



また、医薬品開発における新薬開発期間の短縮と開発コストの削減には、医薬品候補からの脱落要因の多くを占める薬物のヒトにおける体内動態を早期に調べることが重要である。日本においても、低用量の被験物質(新薬候補化合物)を健常人へ投与する「マイクロドーズ臨床試験」のガイドラインが作成され、開発早期での低用量(薬効発現量の1/100以下)の臨床試験の実施が可能となっている。その際、有効なのが、PETを中心とした分子イメージングである。

産業上の利用分野


本発明は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のための陽電子放出断層画像法(PET:positron emission tomography)用ホウ素化合物に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
メルカプトウンデカハイドロドデカボレート(BSH)に、0~3個のアルギニンが連続したアミノ酸配列を付加し、さらに金属配位子を結合させたホウ素化合物。

【請求項2】
金属配位子が、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、2-ナフチルエチルトリメチルアンモニウム(NETA(α-NETA))、1,4,7,10-テトラアザシクロテトラドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンホスホン酸)(DOTP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、(α,α’,α’’,α’’’)-テトラメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTMA)およびフタル酸ジオクチル(DOP3)からなる群より選択される少なくとも1つである請求項1記載のホウ素化合物。

【請求項3】
アミノ酸配列が、2または3個の連続したアルギニンからなる請求項1または2記載のホウ素化合物。

【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のホウ素化合物に放射性金属核種を配位させたPET用プローブ。

【請求項5】
放射性金属核種が、64Cu、68Ga、85Sr、76Br、137Cs、52Mn、54Mn、63Zn、65Zn、59Fe、60Co、88Yおよび89Zrから選択される少なくとも1種の放射性金属核種である請求項4記載のPET用プローブ。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開
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