TOP > 国内特許検索 > 分光特性測定装置

分光特性測定装置

国内特許コード P150011317
整理番号 S2014-1299-N0
掲載日 2015年2月17日
出願番号 特願2015-015733
公開番号 特開2016-142522
出願日 平成27年1月29日(2015.1.29)
公開日 平成28年8月8日(2016.8.8)
発明者
  • 石丸 伊知郎
出願人
  • 国立大学法人 香川大学
発明の名称 分光特性測定装置
発明の概要 【課題】鮮明なインターフェログラムを取得可能な分光特性測定装置を提供する。
【解決手段】分光特性測定装置は、被測定物の複数の測定点からそれぞれ発せられた測定光を第1の測定光及び第2の測定光に分割する分割光学系、第1及び第2の測定光の干渉光を結像面上に形成する結像光学系、第1及び第2の測定光の間に連続的な光路長差分布を与える光路長差付与手段、複数の画素を有する干渉光検出部、干渉光検出部で検出された干渉光の光強度に基づき測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部、被測定物と分割光学系の間に配置された該分割光学系と共通の共役面を有する共役面結像光学系、共役面に配置された複数の長方形状の開口部を有する振幅型回折格子を備える。
【選択図】図12
従来技術、競合技術の概要


分光特性の測定技術として、波長分散型分光法、或いはフーリエ分光法と呼ばれる分光技術を用いた手法が知られている(非特許文献1参照)。波長分散型分光法は、測定試料を透過した光、或いは測定試料面で反射した光(以下「物体光」ともいう。)を回折格子や音響光学可変波長フィルタ(AOTF;Acousto-Optic Tunable Filter)に照射したときに得られる回折光の回折角が、当該物体光の波長に応じて異なる原理を利用した分光法である。



一方、フーリエ分光法(FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計:Fourier Transform Infrared Spectroscopy))は、マイケルソン型の2光束干渉光学系を用いた位相シフト干渉を利用した分光測定技術である。この方法では物体光をハーフミラーなどのビームスプリッタにより2つに分岐し、それぞれの光束をミラーにより反射させて再度ハーフミラーに到達させ、これら2つの光束を合流させて干渉現象を観察する。2つに分岐した光束のうちの一方(参照光)を反射するミラーは参照ミラーと呼ばれる。フーリエ分光法では、参照ミラーを光の波長よりも短い分解能で高精度に移動させて干渉光強度を変化させ、いわゆるインターフェログラムを得る。そして、このインターフェログラムを数学的にフーリエ変換することにより分光特性を取得する。



測定試料から射出される物体光は散乱光線、屈折光線、反射光線等の様々な光線からなり、これら光線の方向も様々である。このように多様な方向の光線成分が回折格子や参照ミラーに照射されると、分光精度が低下する。そのため、いずれの分光法においても物体光の空間的コヒーレンシー(可干渉性)を高めるために、微小開口を有するピンホールやスリットを用いて物体光のうち特定方向の光線成分のみを回折格子や参照ミラーに照射させている。しかしながら、ピンホールやスリットを用いると、大半の物体光がピンホールやスリットを通過せず測定に供しないことから、光の利用効率が低い。



これに対して、特許文献1には、測定試料から発せられる無指向の光線を対物レンズにより平行光束にした上で、結像レンズにより結像面上に集光させて測定試料の2次元の共役像を形成する手法が開示されている。この手法では、多波長光源からの光を測定試料に照射し、その透過光又は反射光を対物レンズに入射させ、平行光束にする。また、図1に示すように、環状の固定ミラーと、該固定ミラーの内側に配置された円板状の可動ミラーから成る位相可変フィルターにより平行光束の一部と残りの平行光束との間に任意の位相差を与える。そして、結像面上に配置されたCCDカメラなどの2次元アレイデバイスの各画素において多波長の干渉強度を検出することにより、干渉強度変化であるインターフェログラムを取得する。



上記可動ミラーはピエゾ素子などにより高精度に機械的に移動される。これにより、物体光間の位相シフト干渉による結像強度変化(インターフェログラム)を全ての画素で同時に観察できる。そして、これらのインターフェログラムを数学的にフーリエ変換することにより2次元の分光特性分布を取得することができる。



また、特許文献2には、空間的位相シフト法と呼ばれる手法が開示されている。さらに、マイケルソン干渉計を用いた位相シフト干渉による分光測定技術として、例えば、アルゴ社のFTIR方式の赤外線中長波長域用スペクトルイメージ分光システム、Zygo社の垂直走査型低コヒーレンス干渉法(Coherence Scanning Interferometry)による立体形状計測装置、フルフィールドOCT(Optical Coherence Tomography)と呼ばれる断層計測方式などが知られている。



ところが、上記した従来の分光測定技術には次のような問題があった。
まず、物体面上の各輝点を面積の無い理想的な点光源として光学的にモデル化して考える。これらの理想的な輝点は、レンズによるフラウンフォーファ回折により像面上にエアリー(Airy)の回折像と呼ばれる同心円状の明暗縞から成る共役な輝点像を形成する(図2参照)。エアリーの回折像の中心の円形の明るい領域はエアリーディスクと呼ばれ、エアリーディスクの中心から回折像の最初の暗環(第1暗輪体)の幅方向中心までの距離の2倍、すなわち第1暗輪体の直径Rは下記式(1)で得られることが知られている。
R=1.22λ/N.A. (1)
ここでλは光の波長、N.A.(Numerical Aperture)はレンズの数値開口数(N.A.=n×sinθ)である。また、nは屈折率であり、θはレンズ中心から有効径の角度である。



エアリーの回折像は、1つの輝点から発せられた多光線の干渉縞として物理的に理解される。すなわち、エアリーディスクの中心では多光線全ての位相が揃っており、光線同士が強め合うため明るい領域となる。また、暗環は、エアリーディスクの中心からの各光線の角度に応じて幾何的に決定される光路長差に応じた位相差により、光線同士が弱め合うため暗い領域となる。



1つの輝点から発せられた多光線(物体光束)の半分に位相差π[rad.]を与えると、初期状態(位相差0[rad.])では明るかったエアリーディスクの中心が暗く変化し、暗かった暗環部分は明るく変化する。物体光束に与える位相差を変化させること(以下「位相シフト操作」ともいう。)に伴うエアリーディスクの中心での明暗の変化(干渉光強度変化)をフォトダイオードアレイ検出器等の光検出器で検出するのが、従来の手法によるインターフェログラムの取得原理である。



ところが、上述したように、物体面は無数の輝点の集まりからなるため、位相シフト操作を行っても明暗の変化を検出できない場合がある。それは、物体面を構成する無数の輝点を、レーリー基準と呼ばれる距離をおいて存在する2つの輝点からなるペア(以下「輝点ペア」という)の群として考えることにより説明がつく。



図3に示すように、レーリー基準とは、2つのエアリーの回折像の、エアリーディスクの中心間の距離が第1暗輪体の半径(r=0.61λ/N.A.)に相当する条件をいう。この条件では、輝点ペアから形成される2つのエアリーの回折像は、暗環とエアリーディスクの中心が重なり合っており、互いに打ち消し合う関係にある。この関係は位相シフト操作を行っても変化しないため、位相シフト操作に伴うエアリーディスクの中心位置での干渉強度変化を検出することができない。すなわち、輝点ペアから形成される2つのエアリーの回折像のうちの一方のエアリーディスクの中心領域の輝度を検出する画素を注目画素とすると(図3参照)、該注目画素においては、一方のエアリーディスクの中心が明るい初期状態(位相差0[rad.])では、他方のエアリーディスクの暗環が一方のエアリーディスクの中心に重なる。また、位相差π[rad.]与えた場合は、一方のエアリーディスクの中心が暗くなり、これに、明るい領域に変化した他方のエアリーディスクの暗環領域が重なる。このため、いずれの状態でも当該画素で検出される輝度値はほとんど変化しない。



上記現象はいずれの輝点ペアから形成される2つのエアリーの回折像においても生じるため、上記のような輝点ペアが物体面上に無数に存在していると考えると、位相シフト操作に伴う干渉強度変化を検出することができないことになり、インターフェログラムの鮮明度が劣化する。



そこで、本発明者は、中赤外光領域(波長:8μm~14μm)の光を照射したときにほぼ全ての光を吸収する物体(以下「黒体」という。)の表面に金網を配置し、分光特性を測定する実験を行った。図4(a)はデジタルカメラによる金網の撮影画像(光学倍率:1倍)を示し、図4(b)は金網を配置した黒体表面に中赤外領域の光を照射したときの赤外線カメラによる撮影画像(中赤外画像)を示す。また、図4(c)は金網が存在しない黒体表面(図4(b)において(b-1)で示す領域)のインターフェログラムおよびこれをフーリエ変換して得られたスペクトル、図4(d)は金網のエッジ部分の領域(図4(b)において(b-2)で示す領域)のインターフェログラムおよびこれをフーリエ変換して得られたスペクトルを示す。



図4(b)から分かるように、黒体の表面は一様な光強度分布を有するため、中赤外画像では模様がほとんど無く(低空間周波数)、全面が光った状態にある。このような低空間周波数領域は多数の輝点ペアから成るとみなされ、インターフェログラムの鮮明度が極めて低くなる(図4(c))。これに対して、金網のエッジ部分では光強度を打ち消し合う輝点ペアが存在しないため、高い鮮明度でインターフェログラムが取得される(図4(d))。つまり、黒体であってもその表面に金網を配置することで、一様な光強度分布にバラツキが生じ、光強度を打ち消し合う輝点ペアをなくすことができる。

産業上の利用分野


本発明は、分光特性測定装置に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
a) 被測定物の測定領域内に位置する複数の測定点からそれぞれ発せられた測定光を第1の測定光及び第2の測定光に分割する分割光学系と、
b) 前記第1の測定光及び前記第2の測定光の間に連続的な光路長差分布を付与する光路長差付与手段と、
c) 連続的な光路長差分布が付与された前記第1の測定光及び前記第2の測定光を結像面上で干渉させて干渉光を形成する結像光学系と、
d) 前記結像面に配置された前記干渉光の光強度を検出する検出部であって、直線上に等間隔で配置された複数の画素を有する干渉光検出部と、
e) 前記干渉光検出部で検出された前記干渉光の光強度に基づき、前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と、
f) 前記被測定物の測定領域と前記分割光学系の間に配置された、該分割光学系と共通の共役面を有するとともに、該共役面に前記測定点からの測定光を結像する共役面結像光学系と、
g) 前記共役面に配置された、周期的に並ぶ透光部と遮光部とを有する振幅型回折格子と
を備え、
前記干渉光検出部の複数の画素の間隔をp、光学倍率をm、前記振幅型回折格子の透光部の幅をW、隣り合う2つの透光部の中心間距離をDとすると、WおよびDが以下の式(1)および式(2)
W=(p×2)/(m+1) ・・・ (1)
D=(p×2)/ m ・・・ (2)
によりそれぞれ定義されることを特徴とする分光特性測定装置。

【請求項2】
a) 被測定物の測定領域内に位置する複数の測定点からそれぞれ発せられた測定光を第1の像面上に収束させる共役面結像光学系と、
b) 前記第1の像面上に配置された、周期的に並ぶ透光部と遮光部とを有する振幅型回折格子と、
c) 前記振幅型回折格子の透光部を通過した前記測定光を第1の測定光及び第2の測定光に分割する分割光学系と、
d) 前記第1の測定光及び前記第2の測定光の間に連続的な光路長差分布を付与する光路長差付与手段と、
e) 連続的な光路長差分布が付与された前記第1の測定光及び前記第2の測定光を結像面上で干渉させて干渉光を形成する結像光学系と、
f) 前記結像面に配置された前記干渉光の光強度を検出する検出部であって、等間隔で配置された複数の画素を有する干渉光検出部と、
g) 前記干渉光検出部で検出された前記干渉光の光強度に基づき、前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部とを備え、
前記干渉光検出部の複数の画素の間隔をp、光学倍率をm、前記振幅型回折格子の透光部の幅をW、隣り合う2つの透光部の中心間距離をDとすると、WおよびDが以下の式(1)および式(2)
W=(p×2)/(m+1) ・・・ (1)
D=(p×2)/ m ・・・ (2)
によりそれぞれ定義されることを特徴とする分光特性測定装置。

【請求項3】
a) 被測定物の測定領域内に位置する複数の測定点からそれぞれ発せられた測定光を第1の測定光及び第2の測定光に分割する分割光学系と、
b) 前記第1の測定光及び前記第2の測定光の間に連続的な光路長差分布を付与する光路長差付与手段と、
c) 連続的な光路長差分布が付与された前記第1の測定光及び前記第2の測定光を結像面上で干渉させて干渉光を形成する結像光学系と、
d) 前記結像面に配置された前記干渉光の光強度を検出する検出部であって、直線上に等間隔で配置された複数の画素を有する干渉光検出部と、
e) 前記干渉光検出部で検出された前記干渉光の光強度に基づき、前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と、
f) 前記被測定物の測定領域と前記分割光学系の間に配置された、該分割光学系と共通の共役面を有するとともに、該共役面に前記測定点からの測定光を結像する共役面結像光学系と、
g) 前記共役面に配置された、周期的に並ぶ透光部と遮光部とを有する振幅型回折格子と
を備え、
前記分割光学系を構成する対物レンズの開口数N.A.が実効的な開口数N.A.よりも小さいとき、
前記干渉光検出部の複数の画素の間隔をp、光学倍率をm、前記振幅型回折格子の透光部の幅をW、隣り合う2つの透光部の中心間距離をDとすると、WおよびDが以下の式(3)および式(4)
W=(p×4)/(m+1) ・・・ (3)
D=(p×3)/ m ・・・ (4)
によりそれぞれ定義されることを特徴とする分光特性測定装置。

【請求項4】
a) 被測定物の測定領域内に位置する複数の測定点からそれぞれ発せられた測定光を第1の像面上に収束させる共役面結像光学系と、
b) 前記第1の像面上に配置された、周期的に並ぶ透光部と遮光部とを有する振幅型回折格子と、
c) 前記振幅型回折格子の透光部を通過した前記測定光を第1の測定光及び第2の測定光に分割する分割光学系と、
d) 前記第1の測定光及び前記第2の測定光の間に連続的な光路長差分布を付与する光路長差付与手段と、
e) 連続的な光路長差分布が付与された前記第1の測定光及び前記第2の測定光を結像面上で干渉させて干渉光を形成する結像光学系と、
f) 前記結像面に配置された前記干渉光の光強度を検出する検出部であって、等間隔で配置された複数の画素を有する干渉光検出部と、
g) 前記干渉光検出部で検出された前記干渉光の光強度に基づき、前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部とを備え、
前記分割光学系を構成する対物レンズの開口数N.A.が実効的な開口数N.A.よりも小さいとき、
前記干渉光検出部の複数の画素の間隔をp、光学倍率をm、前記振幅型回折格子の透光部の幅をW、隣り合う2つの透光部の中心間距離をDとすると、WおよびDが以下の式(3)および式(4)
W=(p×4)/(m+1) ・・・ (3)
D=(p×3)/ m ・・・ (4)
によりそれぞれ定義されることを特徴とする分光特性測定装置。

【請求項5】
前記光路長差付与手段が、入射面と出射面が平行な第1透過部と、入射面及び出射面のいずれか一方が前記第1透過部の入射面又は出射面と同一面上にあり、入射面及び出射面のうちの一方に対して他方が傾斜するくさび形の第2透過部から成る透過型の光学部材を有し、
前記分割光学系が、前記測定光を平行光線化して前記第1透過部及び前記第2透過部に入射させる対物レンズを有し、
前記結像光学系が、前記測定光のうち前記第1透過部を透過した第1測定光と前記第2透過部を透過した第2測定光が入射する、前記第1透過部と前記第2透過部の境界面と前記第1透過部の入射面との交線に平行な軸を有する、シリンドリカルレンズを有し、
前記干渉光検出部が、前記シリンドリカルレンズに入射した前記第1測定光と前記第2測定光の干渉光の強度分布を検出し、
前記処理部が、前記干渉光検出部で検出される前記干渉光の強度分布に基づき前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の分光特性測定装置。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2015015733thum.jpg
出願権利状態 公開


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close