TOP > 国内特許検索 > 散乱強度分布の測定方法及び測定装置

散乱強度分布の測定方法及び測定装置

国内特許コード P150011329
整理番号 S2013-0150-N0
掲載日 2015年2月18日
出願番号 特願2012-273064
公開番号 特開2014-119294
出願日 平成24年12月14日(2012.12.14)
公開日 平成26年6月30日(2014.6.30)
発明者
  • 松下 正
  • フォグリ ヴォルフガング
  • 白澤 徹郎
  • ▲高▼橋 敏男
  • 荒川 悦雄
出願人
  • 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
発明の名称 散乱強度分布の測定方法及び測定装置
発明の概要 【課題】逆格子空間での散乱強度分布を短時間に測定可能な散乱強度分布の測定方法及び測定装置を提供すること。
【解決手段】X線源(101)から放射されるX線を、試料(SA)の表面近傍において集束させるようにX線光学素子(102)で反射させ、複数の光路を経て集束される単色化されたX線の各光路と基準面とがなす角と、基準面の垂線と各光路の中心に位置する光路を含む面とがなす角との間に相関のある状態で、単色化されたX線を試料に対して各光路に応じて異なる視射角(ω)で一度に入射させ、試料で散乱される単色化されたX線の散乱強度を2次元検出器(103)で検出し、2次元検出器で検出される散乱強度分布及び相関に基づいて、逆格子空間での散乱強度分布を算出することを特徴とする。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要



近年、一般的な結晶材料とは異なる物性を示す量子井戸構造の研究が盛んに行われている。例えば、半導体薄膜が積層された超格子半導体は、層の周期(厚さ)や原子の種類などに応じて異なるバンド構造を示すので、様々なデバイスへの応用が期待されている。また、3次元的な量子閉じ込め構造である量子ドットは、状態密度(Density of states)が離散化されて特定の状態に集中されるので、理論的には極めて高効率なレーザー媒質を実現可能である。このような量子井戸構造の物性は、結晶格子の周期や乱れ具合などに応じて大きく変動されるので、その評価の際には、結晶格子に関する精度の高い情報を取得する必要がある。





結晶格子の規則性を評価するために、試料にX線(エックス線)を照射して逆格子空間での散乱強度分布を測定する方法が用いられている。逆格子マッピング(reciprocal space mapping)、又は逆格子マップ(reciprocal space map)と呼ばれるこの方法では、逆格子点近傍におけるX線の散乱強度をマッピングして散乱能の分布を得る。理想的な結晶構造では、逆格子点においてのみX線の回折強度は強くなるが、結晶格子に乱れがある場合には、逆格子点から離れた位置にも有意の散乱能が現れる。





逆格子マッピングの基本的な考え方について説明する。まず、実空間と逆格子空間との関係について簡単に説明する。図6は、2次元結晶における実空間と逆格子空間との関係を示す模式図である。図6Aでは、原子A1~A4による結晶格子が示されている。この結晶格子において、例えば、100面の面間隔はd100であり、010面の面間隔はd010であり、110面の面間隔はd110である。





図6Aの結晶格子を逆格子空間に変換すると、図6Bのようになる。逆格子空間は、実空間のフーリエ変換に対応しており、逆格子点は実空間における結晶格子の情報を含んでいる。例えば、図6Bに示すように、逆格子空間の原点Oと、ある逆格子点との距離は、対応する結晶面の面間隔の逆数に相当する。具体的には、逆格子空間の原点Oと、100点との距離は、100面の面間隔d100の逆数1/d100に相当し、逆格子空間の原点Oと、010点との距離は、010面の面間隔d010の逆数1/d010に相当する。





図7は、逆格子点とエヴァルト球との関係を示す模式図である。図7では、3次元結晶に対応する逆格子空間を、qx軸及びqz軸を含む平面に垂直なqy軸(不図示)方向から見た様子を示している。図7において、Kベクトルは結晶構造に入射された入射X線の波数ベクトルを示し、Kベクトルは結晶構造で散乱された散乱X線の波数ベクトルを示す。また、図7において、規則的に配列された複数の白抜きの丸印は逆格子点を示している。





結晶格子に乱れのない理想的な結晶構造によるX線の散乱強度は、X線の波長(λ)の逆数の2π倍の半径(2π/λ)を有するエヴァルト球Eの球面上に逆格子点が存在する条件で強くなる。この場合、X線は、エヴァルト球Eの中心からエヴァルト球Eの球面上に位置する逆格子点を投影して得られる投影パターンで散乱される。結晶格子に乱れがある場合、その乱れの程度に応じて、逆格子点以外でも散乱強度は強くなる。このため、逆格子マッピングにより散乱強度の分布を得ることで、結晶格子の規則性を評価できる。





具体的には、例えば、試料内に間隔の異なる複数の結晶格子が混在し、qz軸上の逆格子点がエヴァルト球上にある場合には、原点と逆格子点とを結ぶ直線(図7のqz軸方向)に沿って散乱能が現れる。また、試料内において傾きの異なる複数の結晶面(格子面)が混在する場合には、逆格子空間において原点と逆格子点とを結ぶ直線と直交する方向(図7のq´x軸方向)に散乱能が現れる。このように、散乱能の分布を確認することで、結晶格子の規則性を評価できる。





逆格子マッピングでは、通常、対象となる逆格子点の近傍におけるX線の散乱強度分布が測定される。図8は、逆格子マッピングに用いられる測定装置の例を示す模式図である。図8に示す測定装置2において、X線源201から放射されてモノクロメータ202を通過した単色(単一波長)のX線は、視射角(入射角の補角)ωで試料203に入射される。試料203において散乱されたX線は、コリメータ204を通じて検出器205に入射する。コリメータ204は、試料から2θ方向に散乱されるX線のみを選択的に検出器205へと導く。





測定装置2を用いる逆格子マッピングの測定モードの一例としてωスキャンがある。ωスキャンでは、2θを所定の値に固定した状態でωを変化させ、ω方向の散乱強度分布をスキャンする。このω方向のスキャンにより、逆格子空間において原点と逆格子点とを結ぶ直線と略直交する方向(図7のq´x軸方向)の散乱能の分布が検出される。ある2θについてのω方向のスキャンが終了すると、2θの値を僅かに変えて再びω方向のスキャンを行う。異なる2θの値を選ぶことは、逆格子空間のqz軸に沿って異なるqzの位置を選択することと同等の意味を持つ。このように、2θの値を異ならせてはω方向のスキャンを繰り返すことにより、qx-qz面内の領域RSM内の散乱能分布、すなわち逆格子マップに相当する2次元散乱強度分布が得られる。





測定モードの他の例としては、ω-2θスキャンがある。この測定モードでは、ωの変化量Δωと2θの変化量Δ(2θ)とが、常にΔω:Δ(2θ)=1:2の関係を満たすように散乱強度分布をスキャンする。また、ωの初期値ωを異ならせては上記スキャンを繰り返す。Δω:Δ(2θ)=1:2を満たすスキャンは、逆格子空間の任意の点と原点とを通る直線方向の散乱能分布を測定することに相当する。ωを異ならせることは、q´x軸上の異なる位置を指定することに相当する。このため、ωを異ならせてはω-2θのスキャンを繰り返すことで、図7の領域RSM内での散乱能分布を測定できる。





図9は、逆格子マッピングに用いられる測定装置の別の例を示す模式図である。図9に示す測定装置3においても、X線源301から放射されてモノクロメータ302を通過した単色のX線は、視射角ωで試料303に入射される。試料303において散乱されたX線は、1次元検出器305に入射する。1次元検出器305は、広い散乱角(2θ方向)を一度に測定できるように構成されている。このため、この測定装置3を用いる逆格子マッピングでは、2θ方向のスキャンは不要となる。

産業上の利用分野



本発明は、試料にX線を照射して逆格子空間での散乱強度分布を測定する散乱強度分布の測定方法及び測定装置に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
X線源から放射されるX線を、試料の表面近傍において集束させるようにX線光学素子で反射させ、複数の光路を経て集束される単色化されたX線の各光路が、基準面に対してなす角度と、前記各光路が、前記各光路の中央に位置する光路と前記基準面の垂線とを含む面に対してなす角度との間に相関のある状態で、前記単色化されたX線を前記試料に対して前記各光路に応じて異なる視射角で一度に入射させ、
前記試料で散乱される前記単色化されたX線の散乱強度を2次元検出器で検出し、
前記2次元検出器で検出される散乱強度分布及び前記相関に基づいて、逆格子空間での散乱強度分布を算出することを特徴とする散乱強度分布の測定方法。

【請求項2】
前記相関のある状態とは、前記X線の伝播される面が、前記基準面、及び前記各光路の中央に位置する光路と前記基準面の垂線とを含む面に対して任意の角度で傾斜された状態であることを特徴とする請求項1に記載の散乱強度分布の測定方法。

【請求項3】
前記X線源、前記X線光学素子、及び前記試料を、同一の円周に沿って配置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の散乱強度分布の測定方法。

【請求項4】
前記基準面は、前記円周を含む平面であることを特徴とする請求項3に記載の散乱強度分布の測定方法。

【請求項5】
前記基準面は、前記試料の表面であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の散乱強度分布の測定方法。

【請求項6】
前記X線として特性X線を用いることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の散乱強度分布の測定方法。

【請求項7】
前記X線光学素子として2重湾曲結晶を用いることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の散乱強度分布の測定方法。

【請求項8】
前記2次元検出器で検出された散乱強度分布を前記相関に基づいて座標変換することにより、前記逆格子空間での散乱強度分布を算出することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の散乱強度分布の測定方法。

【請求項9】
X線源と、
前記X線源から放射されるX線を、試料の表面近傍において集束させるように反射させ、前記試料に対して異なる視射角で単色化されたX線を一度に入射させるX線光学素子と、
前記試料で散乱される前記単色化されたX線の散乱強度を検出する2次元検出器と、
前記2次元検出器で検出される散乱強度分布に基づいて、逆格子空間での散乱強度分布を算出する演算部と、を備え、
複数の光路を経て集束される前記単色化されたX線の各光路が、基準面に対してなす角度と、前記各光路が、前記各光路の中央に位置する光路と前記基準面の垂線とを含む面に対してなす角度との間に相関のある状態で、前記単色化されたX線を前記試料に入射させ、前記散乱強度分布及び前記相関に基づいて、逆格子空間での散乱強度分布を算出することを特徴とする測定装置。

【請求項10】
前記相関のある状態とは、前記X線束の伝播される面が、前記基準面、及び前記各光路の中央に位置する光路と前記基準面の垂線とを含む面に対して任意の角度で傾斜された状態であることを特徴とする請求項9に記載の測定装置。

【請求項11】
前記X線源、前記X線光学素子、及び前記試料は、同一の円周に沿って配置されることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の測定装置。

【請求項12】
前記基準面は、前記円周を含む平面であることを特徴とする請求項11に記載の散乱強度分布の測定方法。

【請求項13】
前記基準面は、前記試料の表面であることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載の散乱強度分布の測定方法。

【請求項14】
前記X線源は、前記X線として用いられる特性X線を発生可能に構成されたことを特徴とする請求項9から請求項13のいずれかに記載の測定装置。

【請求項15】
前記X線光学素子は、2重湾曲結晶であることを特徴とする請求項9から請求項14のいずれかに記載の測定装置。

【請求項16】
前記演算部は、前記2次元検出器で検出された散乱強度分布を前記相関に基づいて座標変換することにより、前記逆格子空間での散乱強度分布を算出することを特徴とする請求項9から請求項15のいずれかに記載の測定装置。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2012273064thum.jpg
出願権利状態 公開
ライセンスをご希望の方、特許の内容に興味を持たれた方は、下記「問合せ先」まで直接お問い合わせください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close