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ネットワークエントロピーに基づく生体の状態遷移の予兆の検出を支援する検出装置、検出方法及び検出プログラム

国内特許コード P150011397
整理番号 EF001
掲載日 2015年2月24日
出願番号 特願2012-233886
公開番号 特開2014-083194
出願日 平成24年10月23日(2012.10.23)
公開日 平成26年5月12日(2014.5.12)
発明者
  • 合原 一幸
  • 陳 洛南
  • 劉 鋭
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 ネットワークエントロピーに基づく生体の状態遷移の予兆の検出を支援する検出装置、検出方法及び検出プログラム
発明の概要 【課題】健康状態から疾病状態への状態遷移の予兆を示す疾病前状態を高精度に検出することが可能な検出装置、検出方法及び検出プログラムを提供する。
【解決手段】生体に関する遺伝子、タンパク質等の測定データをハイスループットデータとして取得する取得処理(s1)と、差次的生体分子の選出処理(s2)と、ローカルネットワークのSNEの計算(s3)と、バイオマーカーの候補の選択(s4)と、ネットワーク全体の平均SNEの計算(s5)と、疾病前状態であるか否かを判定し、検出する検出処理(s6)とを実行する。
【選択図】図4
従来技術、競合技術の概要



様々な研究結果によると、多くの疾病、特に複雑な疾病の悪化進行のプロセスは、気候システム、生態システム、経済システム等のシステムと同様に、ある臨界閾値を超えた時点、いわゆる分岐点に達すると、状態遷移が突然発生し、健康な安定状態から急激に疾病状態に変化する(例えば、非特許文献1~5参照)。このような複雑疾病の動的メカニズムに関する研究において、疾病悪化(例えば、喘息発作、癌の発病)の進行プロセスを、時間に依存した非線形動力学システムとしてモデル化し、モデル化したシステムの動態を解析することによって、分岐点での状態遷移で病気が急激に悪化することが既に判明している(非特許文献1、6参照)。





図1は、疾病の進行プロセスを概念的に示す説明図である。図1のaは、疾病の進行プロセスを模式的に示している。図1のb、cおよびdは、進行プロセスの過程において、前述のシステムの安定性をポテンシャル関数として示し、横軸にシステムの状態変数をとり、縦軸にポテンシャル関数の値をとって概念的に示した模式図である。図1のaに示すように、疾病悪化の進行プロセスは、正常状態(健康状態)、疾病前状態、疾病状態として表すことができる。正常状態において、システムは安定して、図1のbに示すように、ポテンシャル関数の値が最小値になる。疾病前状態において、システムは、図1のcに示すように、ポテンシャル関数の値が高くなる。したがって、外乱の影響を受けやすい状態であり、小さな外乱を受けるだけで状態遷移してしまう分岐点の付近、即ち、正常状態の限界に位置している。但し、当該疾病前状態は、適切な処置によって、しばしば正常状態に回復することができる。一方、疾病状態において、システムは再び安定化して、図1のdに示すように、ポテンシャル関数の値が大局的最小値になる。そのため、正常状態からの分岐による状態遷移で生じたこの疾病状態が、正常状態へ回復することは困難である。





したがって、もし疾病前状態を検知して、疾病状態に遷移する前に、疾病状態に遷移しつつあることを患者に告知することができれば、適切な措置を取ることによって、患者を疾病前状態から正常状態へ回復させることができる可能性が高い。





即ち、分岐点(臨界閾値)を検出することができれば、状態遷移の予測が可能であり、病気の早期診断を実現することができる。しかしながら、複雑疾病の場合、状態遷移の予測は極めて困難である。その理由は以下の通りである。





・第一に、疾病前状態は、正常状態の限界であり、分岐点に達する前に、著しい変化は検出し難い。そのため、従来のバイオマーカー、スナップショット測定等の手法による診断では、正常状態と疾病前状態とを区別することが難しい。

・第二に、様々な研究がなされている中で、分岐点を予測するための早期診断用の警告信号を精度高く検出することができる信頼性の高い疾病モデルがまだ開発されていない。特に、同じ疾病でも、個人によって、疾病悪化の進行プロセスが異なるため、モデルベースの診断方法は、成功する確率が低い。

・第三に、疾病前状態の検出対象は患者であり、通常、一人の患者から得られるサンプルの数が限られているため、長期間にわたって、予測に必要な十分なサンプルを採取することが困難である。





それに対して、本願発明者らは、正常状態から疾病状態へ遷移する前の疾病前状態を示す警告信号となるバイオマーカーの候補を検出する方法を提案した(非特許文献7)。当該手法によれば、疾病状態に遷移する直前に現れる動的ネットワークバイオマーカー(DNB)を検出することによって、病気の早期診断を実現することができる。

産業上の利用分野



本発明は、生体に関する測定により得られた複数の因子項目の測定データに基づいて、測定対象である生体の状態遷移の予兆の検出を支援する検出装置、検出方法及び検出プログラムに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
生体に関する測定により得られた複数の因子項目の測定データに基づいて、測定対象である生体の状態遷移の予兆の検出を支援する検出装置であって、
前記各因子項目の測定データの時系列変化が所定の基準以上である因子項目を選出する選出手段と、
前記選出手段にて選出した因子項目の相関関係に基づき求まる各因子項目間の動的な結合関係を示すネットワークにおいて、因子項目毎に隣接する他の因子項目との間の統計力学的な微視的エントロピーを計算する微視的計算手段と、
前記微視的計算手段にて計算した微視的エントロピーの減少の程度が所定の検出基準を超える場合に、状態遷移の予兆として検出する検出手段と
を備えることを特徴とする検出装置。

【請求項2】
請求項1に記載の検出装置であって、
前記微視的計算手段にて計算した微視的エントロピーの減少の程度が所定の選択基準を超える場合に、当該微視的エントロピーに係る因子項目を生体の症状の指標となるバイオマーカーの候補として選択する選択手段を更に備え、
前記検出手段は、前記選択手段が選択した因子項目に係る微視的エントロピーの減少の程度が所定の検出基準を超える場合に、状態遷移の予兆として検出する
ことを特徴とする検出装置。

【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の検出装置であって、
前記微視的計算手段にて計算した因子項目毎の微視的エントロピーに基づいて、選出した因子項目全体の代表値となる巨視的エントロピーを統計的に計算する巨視的計算手段を更に備え、
前記検出手段は、前記巨視的計算手段により計算した巨視的エントロピーの減少の程度が第1の検出基準を超える場合であって、前記微視的計算手段にて計算した微視的エントロピーの減少の程度が第2の検出基準を超えるときに、状態遷移の予兆として検出する
ことを特徴とする検出装置。

【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の検出装置であって、
前記因子項目間の相互作用を記録したデータベースにアクセスする手段を更に備え、
前記微視的計算手段は、前記データベースに記録されている因子項目間の相互作用に基づいて、因子項目間の動的な結合関係を示すネットワークを導出する手段を含む
ことを特徴とする検出装置。

【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の検出装置であって、
前記微視的計算手段は、
各因子項目について、隣接する他の全ての因子項目に係る測定データの状態変化の分布を示す確率密度関数に基づく測定データの確率と該確率の対数との積の総和に基づいて、微視的エントロピーを計算する
ことを特徴とする検出装置。

【請求項6】
請求項5に記載の検出装置であって、
前記微視的計算手段は、
因子項目毎に、以前の摂動に基づいて決定される閾値に対する変化の大小により測定データを2値化し、
2値化した測定データが多変量正規分布に従うとして確率密度関数を計算し、
計算した確率密度関数を重積分した遷移確率に基づいて定常分布となる前記測定データの確率を計算する
ことを特徴とする検出装置。

【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の検出装置であって、
前記各因子項目のそれぞれの測定データが、有意性をもって経時的に変化しているか否かを検定する差次検定手段を更に備え、
前記選出手段は、経時的変化に有意性があると検定された因子項目を選出する
ことを特徴とする検出装置。

【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の検出装置であって、
前記因子項目は、遺伝子に関する測定項目、タンパク質に関する測定項目又は代謝物に関する測定項目である
ことを特徴とする検出装置。

【請求項9】
生体に関する測定により得られた複数の因子項目の測定データに基づいて、測定対象である生体の状態遷移の予兆の検出を支援する検出装置を用いた検出方法であって、
前記検出装置は、
前記各因子項目の測定データの時系列変化が所定の基準以上である因子項目を選出する選出ステップと、
前記選出手段にて選出した因子項目の相関関係に基づき求まる各因子項目間の動的な結合関係を示すネットワークにおいて、因子項目毎に隣接する他の因子項目との間の統計力学的な微視的エントロピーを計算する微視的計算ステップと、
前記微視的計算手段にて計算した微視的エントロピーの減少の程度が所定の検出基準を超える場合に、状態遷移の予兆として検出する検出ステップと
を実行することを特徴とする検出方法。

【請求項10】
コンピュータに、生体に関する測定により得られた複数の因子項目の測定データに基づいて、測定対象である生体の状態遷移の予兆の検出を支援させる検出プログラムであって、
コンピュータに、
前記各因子項目の測定データの時系列変化が所定の基準以上である因子項目を選出する選出ステップと、
前記選出手段にて選出した因子項目の相関関係に基づき求まる各因子項目間の動的な結合関係を示すネットワークにおいて、因子項目毎に隣接する他の因子項目との間の統計力学的な微視的エントロピーを計算する微視的計算ステップと、
前記微視的計算手段にて計算した微視的エントロピーの減少の程度が所定の検出基準を超える場合に、状態遷移の予兆として検出する検出ステップと
を実行させることを特徴とする検出プログラム。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2012233886thum.jpg
出願権利状態 公開
参考情報 (研究プロジェクト等) FIRST 複雑系数理モデル学の基礎理論構築とその分野横断的科学技術応用 領域
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