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微粒子分離用マイクロ流路チップ、移流集積ユニット、微粒子分離用システム及び微粒子分離方法

国内特許コード P150011474
整理番号 S2013-1004-N0
掲載日 2015年3月3日
出願番号 特願2013-106824
公開番号 特開2014-226065
出願日 平成25年5月21日(2013.5.21)
公開日 平成26年12月8日(2014.12.8)
発明者
  • 新井 史人
  • 益田 泰輔
  • 新美 京
  • 中西 速夫
  • 伊藤 誠二
  • 遊佐 亜希子
出願人
  • 国立大学法人名古屋大学
  • 愛知県
  • 公益財団法人科学技術交流財団
発明の名称 微粒子分離用マイクロ流路チップ、移流集積ユニット、微粒子分離用システム及び微粒子分離方法
発明の概要 【課題】粒径が異なる微粒子が混在している溶液から、抗体等を使用する必要が無く、また、目詰まりすることなく連続的に微粒子を分離することができる微粒子分離用マイクロ流路チップ、該チップを用いた微粒子分離用システム及び微粒子分離特に循環腫瘍細胞(CTC)を分離する方法を提供する。
【解決手段】基板、該基板上に形成された主流路、該主流路から分岐し再び主流路に接続する分岐流路、及び該分岐流路に形成され分岐流路の幅より大きな捕捉部位を含み、前記主流路が基板の中心から放射状に形成されていることを特徴とする微粒子分離用マイクロ流路チップ。流路の幅及び深さを補捉する微粒子の大きさにより、特定の値とする流路を形成し、微粒子を分離する。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要



CTCはがん患者の末梢血流を循環する腫瘍細胞と定義され、原発腫瘍又は転移腫瘍から血管中へ浸潤した腫瘍細胞である。このCTCの検出は、転移性悪性腫瘍の早期発見の方法の一つとして近年注目されている。その理由は、X線写真や血清中の腫瘍マーカー検出よりも低侵襲かつ正確に転移性悪性腫瘍の診断を行え、患者の予後予測や治療効果の指標として利用できる点にある。





CTCは非常に稀少な細胞であり、転移性がん患者の血液に含まれる108~109個の血液細胞の内、わずか1細胞程度しか存在しないことが知られている。そのため、末梢血から稀少なCTCを正確に検出するための技術開発に多大な努力が注がれている。これまでに開発されてきた主要な検出方法には、免疫組織化学法、PCR法、フローサイトメトリー法などがある。しかしながら、前述したようにCTCは非常に稀少な細胞であるため、血液をそのままこれらの検出方法に供することは出来ないので、通常は前処理として、CTCの濃縮操作が必須であり、検出法に則したレベルまでCTC存在比を濃縮させる必要がある。





CTCの濃縮方法として開発されてきた様々な手法の中で、最も広く利用されているのは、細胞表面の特異的抗原を標的とした腫瘍細胞の濃縮である。その多くは、上皮細胞接着分子(Epithelial cell adhesion molecule:EpCAM)に対するモノクローナル抗体を固定化した磁気微粒子を血液と混合した後、磁石を用いて腫瘍細胞を濃縮する方法をとっている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、EpCAMの発現量は腫瘍のタイプに依存し大きく変動することが知られている。





その他の濃縮方法としては、細胞のサイズなどの形態を基準として濃縮する手法がある。白血球に比べてサイズが大きな上皮性腫瘍細胞をフィルトレーションによって選別する方法は、ISET法(Isolation by Size of Epithelial Tumor cells)と呼ばれている。ISETは、孔径8μmのポリカーボネートメンブレンフィルターを用いて血液をフィルトレーションするという簡便な手法であり、安価かつユーザーフレンドリーな手法である。ここで用いられているポリカーボネートメンブレンフィルターは、重イオンを照射した後、エッチングを行うトラックエッチングという手法によって、孔が形成されている。しかし、孔が比較的低密度であり、二つ又はそれ以上の孔が重なりあったりする問題があるため、CTCの捕捉に利用した場合、その捕捉効率は50~60%とされており、濃縮法が簡便かつ効率も良い手法は未だ開発されていない。





CTCの検出を効率的かつ正確なものにするためには、濃縮と検出といった技術を首尾一貫して行うことが必要である。多段階のハンドリング操作、例えば細胞の染色、洗浄、分離、分注などの操作はCTCのロスを引き起こすため、可能な限りこれらの操作を避け、一体の検出装置中で分析が一貫して行える形が好ましい。Cellsearch(VeridexTM,Warren,PA)はCTC検出装置として唯一FDAの認可を受けた装置である。この装置では、全血に対し抗EpCAM抗体固定化磁気微粒子によるCTCの濃縮を行い、腫瘍細胞に対して免疫染色を行った後、自動化蛍光顕微鏡を用いて腫瘍細胞の計数が行われる(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、当該装置を用いる場合、一般的に大型の装置導入と訓練されたオペレーターの確保が必要であり、ベッドサイドで短時間且つ正確に検査をすることは困難である。





一方で、CTC検出のための小型のマイクロ流体デバイスも知られている。例えば、Tonerらが開発したCTC検出用マイクロ流体デバイスはCTC-chipと呼ばれ、フォトリソグラフィーによって形成されたシリコン製の流路内に、円筒状構造物(マイクロポスト)が78000個構成されている。このマイクロポストには、抗EpCAM抗体がコーティングされており、本流路に血液を送液すると、血液中のCTCがマイクロポスト上に捕捉される。捕捉されたCTCに対して、上皮細胞マーカー(cytokeratin)をターゲットとした蛍光免疫染色を行い、蛍光顕微鏡を用いて腫瘍細胞の計数が行われる。本装置は、手のひらに乗る小型デバイスでありながら、5mL以上の血液をそのまま分析に供することができるという大きな利点を持っている。実際に転移性がん患者血液からCTC検出を行っており、回収したCTCからチロシンキナーゼ阻害薬に対する耐性を生む変異を検出することが出来る。しかしながら、CellsearchやCTC-chipを用いたCTC検出は、転移性がん患者血液などの実サンプルを用いた実験が精力的に行われ実績を挙げているが、これらの手法は抗EpCAM抗体でCTCを濃縮するという原理になっている。そのため、EpCAM陰性又は弱陽性の腫瘍細胞は検出できないという問題点が挙げられる。





その他の方法としては、腫瘍細胞のサイズと形態を指標として、CTCを検出するマイクロ流体デバイスが開発されている。これらのデバイスでは、その流路構造内にメンブレンマイクロフィルター、三日月型の細胞捕捉ウェル(非特許文献3参照)、4段階の細さの流路(非特許文献4参照)を配して、血液中の血球細胞と腫瘍細胞をサイズによって選別し、腫瘍細胞を選択的に濃縮している。また、その流路を利用して、濃縮後の細胞に対して溶解などの操作を連続的に行うことが出来る。これらのデバイスを用いたモデル腫瘍細胞の回収効率の評価実験においては、80%以上のCTC回収効率を得ている。しかしながら、この評価はあくまでモデル細胞を用いた実験で行われており、実際にCTC検出時に必要となる細胞の染色操作や洗浄操作といった要素技術項目については検討されていない上、がん患者血液などの実サンプルを用いた実験は行われておらず、実際にCTC検出に利用できるかどうかは明らかにされていない。





更に、抗EpCAM抗体を使用しない小型のデバイスとしては、マイクロ流路内にマイクロキャビティアレイ(微細貫通孔)を設け、CTCを捕捉することができるマイクロ流体デバイスが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、前記マイクロ流体デバイスは、微細貫通孔にCTCを捕捉するタイプであるので、CTCの目詰まりによる作業効率の低下、更には分離したCTCの回収が困難であるという問題がある。





上記問題点を解決するため、本出願人らは、(1)主流路、及び該主流路の幅より大きな捕捉部位が形成された微粒子分離用マイクロ流路チップ、又は(2)主流路、該主流路から分岐し再び主流路に接続する分岐流路、及び該分岐流路に分岐流路の幅より大きな捕捉部位が形成されている微粒子分離用マイクロ流路チップ、を用いて気液界面のメニスカスで生じる力を利用して微粒子を沈降させ、目的とする微粒子のみを捕捉部位で捕捉することができ、特に、サンプルとして濃縮等の前処理をしていない全血を用いても、CTCのみを連続的に分離・回収ができることを新たに見出し、特許出願を行っている(特許文献2参照)。





前記特許文献2に記載されている微粒子の分離方法は、微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル用薄板の間にサンプルを注入し、微粒子分離用マイクロ流路チップとシース液用薄板の間にシース液を注入し、微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル用薄板及びシース液用薄板を相対移動させることで発生するメニスカスにより、目的とする微粒子を前記微粒子分離用マイクロ流路チップに形成された捕捉部位に捕捉している。ところで、上記特許出願に記載されている微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル用薄板の間に注入できるサンプル量は100μl程度である。しかしながら、特にがん転移が初期の患者、又はがん治療後の患者の経過観察等、血液細胞に含まれるCTC細胞が非常に少ない患者のサンプルからCTCが含まれているか否かを正確に判断するには、5ml程度の血液サンプルを分析することが好ましく、前記特許文献2に記載されている方法ではサンプルの再導入が必要で、微粒子の分離操作が非常に煩雑になり且つ時間がかかるという問題がある。





更に、分離した個々のCTC細胞を分析するためには、PCRで核酸増幅する必要があるが、血液サンプルからCTCを分離・回収し、自動分析を行えるシステムは知られていない。

産業上の利用分野



本発明は、液体中に混在するサイズの異なる微粒子を分離するための微粒子分離用マイクロ流路チップ、移流集積ユニット、微粒子分離用システム及び微粒子分離方法に関するもので、特に、血液中の循環腫瘍細胞(Circulating tumor cell、以下「CTC」と略記することもある。)を選択的に捕捉できるCTC分離用マイクロ流路チップ、該チップを用いたCTC分離用システム、該CTC分離システムに用いられる移流集積ユニット及びCTC分離方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
基板、該基板上に形成された主流路、該主流路から分岐し再び主流路に接続する分岐流路、及び該分岐流路に形成され分岐流路の幅より大きな微粒子の捕捉部位を含み、前記主流路が基板の中心から放射状に形成されていることを特徴とする微粒子分離用マイクロ流路チップ。

【請求項2】
前記捕捉部位で捕捉される微粒子の大きさをX、分離・除去される微粒子の大きさをYとした場合、前記主流路及び前記分岐流路の幅FはY<F<X、前記捕捉部位の幅Gは1X<G<10X、前記主流路、前記分岐流路及び前記捕捉部位の深さHは1X<H<10Xであることを特徴とする請求項1に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。

【請求項3】
前記幅Gが1X<G<2X、前記深さHが1X<H<2Xであることを特徴とする請求項2に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。

【請求項4】
前記幅FがY<F<0.8Xであることを特徴とする請求項2又は3に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。

【請求項5】
前記主流路、前記分岐流路及び前記捕捉部位の下方に、幅がF、深さJがY<Jの流路が更に形成されていることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。

【請求項6】
基板、該基板上に形成された主流路、及び該主流路の幅より大きく且つ主流路上に形成された捕捉部位を含み、前記主流路が基板の中心から放射状に形成されていることを特徴とする微粒子分離用マイクロ流路チップ。

【請求項7】
前記捕捉部位で捕捉される微粒子の大きさをX、分離・除去される微粒子の大きさをYとした場合、前記主流路の幅AはY<A<X、前記捕捉部位の幅Bは1X<B<10Xであり、前記捕捉部位の深さCは1X<C<10X、前記捕捉部位における主流路の深さDはY<Dであり、前記捕捉部位以外の主流路の深さEはE=C+Dであることを特徴とする請求項6に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。

【請求項8】
前記幅Bが1X<B<2X、前記深さCが1X<C<2Xであることを特徴とする請求項7に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。

【請求項9】
前記幅AがY<A<0.8Xであることを特徴とする請求項7又は8に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。

【請求項10】
前記基板上に、放射状に伸びた前記主流路の先端部分を連結する円状の溝部が形成されていることを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。

【請求項11】
前記捕捉部位で捕捉される微粒子がCTCで、除去される微粒子が血球細胞であることを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。

【請求項12】
シース液注入口、サンプル注入口、シース液移流集積用平面部及びサンプル移流集積用平面部を少なくとも含む移流集積ユニット。

【請求項13】
シース液吸引パッドを装着する孔及びシース液吸引口を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の移流集積ユニット。

【請求項14】
シース液を毛管力で吸引する孔及びシース液吸引口を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の移流集積ユニット。

【請求項15】
請求項1~11の何れか一項に記載されている微粒子分離用マイクロ流路チップ、
請求項12~14の何れか一項に記載されている移流集積ユニット、
前記微粒子分離用マイクロ流路チップを回転させる回転手段、及び
シース液吸引手段、
を少なくとも含む微粒子分離用システム。

【請求項16】
前記微粒子分離用マイクロ流路チップに形成されている捕捉部位に捕捉された微粒子を取り出す微粒子抽出手段及び微粒子を検出する検出手段を更に含むことを特徴とする請求項15に記載の微粒子分離用システム。

【請求項17】
核酸を増幅するPCR手段を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の微粒子分離用システム。

【請求項18】
前記微粒子分離用マイクロ流路チップの捕捉部位に磁場を発生させる磁場発生装置及び/又は電場を発生させる電場発生装置を更に含むことを特徴とする請求項15~17の何れか一項に記載の微粒子分離用システム。

【請求項19】
請求項1~11の何れか一項に記載されている微粒子分離用マイクロ流路チップを、該微粒子分離用マイクロ流路チップを回転させる回転手段上に載置し、
前記微粒子分離用マイクロ流路チップ上に、シース液注入口、サンプル注入口、シース液移流集積用平面部及びサンプル移流集積用平面部を少なくとも含む移流集積ユニットを配置し、
前記回転手段を回転させながら、前記シース液注入口からシース液を注入し、前記サンプル注入口からサンプルを注入することで前記微粒子分離用マイクロ流路チップとシース液移流集積用平面部及びサンプル移流集積用平面部を相対移動させ、相対移動により発生したメニスカスにより目的とする微粒子を前記微粒子分離用マイクロ流路チップに形成された捕捉部位に捕捉し、
シース液吸引手段によりシース液を吸引することで、除去される微粒子をシース液とともに微粒子分離用マイクロ流路チップから除去することを特徴とする微粒子分離方法。

【請求項20】
前記捕捉部位で捕捉される微粒子がCTCで、除去される微粒子が血球細胞であることを特徴とする請求項19に記載の微粒子分離方法。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 公開
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