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筋緊張亢進改善薬

国内特許コード P150011522
整理番号 S2013-1214-N0
掲載日 2015年3月11日
出願番号 特願2013-148475
公開番号 特開2015-020957
出願日 平成25年7月17日(2013.7.17)
公開日 平成27年2月2日(2015.2.2)
発明者
  • 梶 龍兒
  • 宮城 愛
出願人
  • 国立大学法人徳島大学
発明の名称 筋緊張亢進改善薬
発明の概要 【課題】効果的に筋緊張亢進を改善させること。
【解決手段】A型ボツリヌス毒素が、筋緊張亢進部位に投与され、投与後3時間以内に前記筋緊張亢進部位を運動させるように用いられることを特徴とする、A型ボツリヌス毒素を含有する筋緊張亢進改善薬。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要



嫌気性のグラム陽性菌であるクロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)が産生するボツリヌス毒素は地球上で最も致死性の高い神経毒素の一つであり、これまでに血清型A、B、C、D、E、FおよびGの7種のボツリヌス菌由来の神経毒素とその特性が明らかにされている。これらはそれぞれ血清型に特異的な中和抗体で識別される。ボツリヌス毒素の血清型の違いにより、それらが影響する動物類、誘発される麻痺の重症度および持続期間等が異なる。ボツリヌス毒素の活性中心蛋白質の分子量は、既知のボツリヌス毒素血清型の7つ全てにおいて約150kDa神経毒素(NTX)である。





全てのボツリヌス毒素はボツリヌス菌から産生される場合、関係する無毒蛋白質と結合した複合体の分子形態をとる。A型ボツリヌス毒素は、900kDa(LL毒素)、500kDa(L毒素)、または300kDa(M毒素)の分子形態として、ボツリヌス菌から産生される(図1;WO2008/050866の図より引用)。これらボツリヌス毒素は、アルカリ条件下(pH約7.2以上)でNTXとNTNHの部分(無毒非HAである蛋白質)が解離するため、この性質を利用することで、150kDaのNTX(神経毒素が活性を有する中心の蛋白質、S毒素とも呼ばれる。)のみを単離することができる。これら、LL毒素、L毒素、M毒素は、ボツリヌス毒素複合体、プロジェニター毒素などと呼ばれている。これらボツリヌス毒素は、小腸上部で吸収された場合には、リンパ管内で無毒蛋白質と神経毒素に解離する。解離した神経毒素は、その重鎖C末端側で神経終末の受容体に結合し、受容体を介して取り込まれる。その後、軽鎖のもつ亜鉛メタロエンドペプチダーゼ活性により神経シナプス前膜の蛋白質を特異的に切断し、カルシウム依存性のアセチルコリンの放出を阻害して、シナプスでの神経伝達を遮断する(非特許文献1)。





ボツリヌス毒素は、ボツリヌス中毒においては全身の神経伝達を遮断してヒトを死に至らしめる毒素ではあるが、逆にその活性を積極的に利用して、有用な神経筋伝達阻害剤として利用されている。特に、異常な筋緊張性亢進を来たす疾患、例えばジストニアの患者の筋肉内に直接投与することによって、局所の筋緊張を緩和する治療薬として用いられている(非特許文献2)。例えば、A型ボツリヌス毒素複合体(LL毒素)であるBOTOX(登録商標)(Allergan Inc.,)は、眼瞼痙攣、斜視および片側顔面痙攣、頚部ジストニアの治療用、並びに眉間のしわの治療用としてアメリカ食品薬品局(FDA)によって承認されている。また、B型ボツリヌス毒素であるMYOBLOC(登録商標)(Elan Pharmaceuticals,)も頚部ジストニア治療用薬としてFDAによって承認されている。非A型ボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素と比較して、やや低い効力およびやや短い活性期間を有するといわれている。





近年、ボツリヌス毒素の作用は、(1)神経筋接合部、(2)自律神経節、(3)神経節後の副交感神経末端、(4)神経節後の交感神経末端、(5)痛覚受容線維などの部位で確認されている。骨格筋の神経筋接合部では、ムスカリン性アセチルコリン作動性神経終末が主な作用部位である。自律神経節のうち、副交感神経節への直接作用は臨床作用と関連すると考えられている。また、末梢自律神経への作用には、ATP、VIP(vasoactive intestinal polypeptide)、substance Pの放出阻害やNO(nitric oxide)合成酵素の作用を阻害することが報告されている。また、ボツリヌス毒素が痛みの緩和に有用であることが知られるようになった。この作用において、ボツリヌス毒素は、グルタミン酸、substance P、CGRP(calcitonin gene-related peptide)の放出を阻害することが報告されている(非特許文献2)。このように、ボツリヌス毒素は様々な神経において、様々な神経伝達物質の放出を阻害する有用な神経筋伝達阻害剤である。





現在、治療用ボツリヌス毒素製剤の生物学的力価は、マウスLD50単位によって通常表されている。1LD50は、マウスへの腹腔内投与に基づくLD50として定義されている。これは試験に供したマウスの半数が死亡する量であり、マウスの呼吸筋が弛緩される結果として、マウスが死亡するときの神経毒素の濃度または量から力価単位を定量している。現在市販されているA型ボツリヌス毒素複合体(Allergan Inc., BOTOX(登録商標)、100単位含有)のマウスにおける1LD50(つまり1単位)は、約50ピコグラム(pg)である。





治療用ボツリヌス毒素製剤は、Allergan Inc. (米国)、Ipsen Limited (英国)、Elan Pharmaceuticals(アイルランド)から入手可能である。これらの治療用ボツリヌス製剤は、関係する無毒蛋白質と結合した分子形態を取った神経毒素複合体(LL毒素)を精製した製剤である。近年では、2005年に無毒蛋白を含まないA型NTX製剤(Merz Pharma, Xeomin(登録商標)、ドイツ)が発売され、また米国でも同様な別製剤の臨床試験も実施されており、次世代製剤の開発も積極的に行われている。





現在市販されているA型ボツリヌス毒素製剤である、Allergan Inc.のBOTOX(登録商標)とIpsen LimitedのDysport(登録商標)は、その毒素複合体の成分として、HA17、HA34、およびHA70のHaemagglutinin(HA)蛋白を持つ神経毒素複合体(LL毒素)である(HA陽性体)。





また、1990年に乳児ボツリヌス症の患者から単離されたタイプのボツリヌス毒素はA型ではあるものの、HA蛋白を含まないM毒素のみを産生する(HA陰性体)。HA蛋白を含まないボツリヌス毒素を産生するA型ボツリヌス菌は、1986年に日本で最初に乳児ボツリヌス症に関する患者から同定されている(非特許文献3)。この臨床分離株としては、Kyoto-F、Chiba-H、Y-8036、7I03-H、7I05-H、KZl828が挙げられる。





従来のA型ボツリヌス毒素に代表される多くのボツリヌス毒素は、複合体の成分として、Haemagglutinin(HA)タンパク質を持つ神経毒素複合体として見出されている。HA17、HA34、およびHA70などのHAタンパク質をコードする遺伝子は、A、B、C、DおよびG型ボツリヌス菌の神経毒素遺伝子群に含まれているが、乳児ボツリヌス症由来ボツリヌス菌群の遺伝子では欠損している。また、乳児ボツリヌス症由来ボツリヌス菌群の遺伝子は、p47などの調節遺伝子を含んでいる(非特許文献4)。さらに、乳児ボツリヌス症由来ボツリヌス菌の産生するボツリヌス毒素のNTNHタンパク質の配列は、C型菌の無毒非HA蛋白質NTNH遺伝子とA型菌の無毒非HA蛋白質NTNH遺伝子の寄せ集め、すなわちモザイク型である(非特許文献5)。





従来のA型ボツリヌス毒素はNTNH蛋白質、および少なくとも3個のHA蛋白質(HA17、HA34、およびHA70)を含むが、乳児ボツリヌス症原因ボツリヌス菌由来のボツリヌス毒素はNTNH蛋白質だけを含んでいて、HA蛋白質を欠く(非特許文献6)。





市販のA型ボツリヌス毒素製剤の製造に使用されている菌株については、BOTOX(登録商標)およびXeomin(登録商標)はHALL株であり、Dysport(登録商標)はNCTC2916株であることが報告されており(非特許文献7、8)、これらはHA蛋白質を含むA型ボツリヌス毒素、つまりA1型ボツリヌス毒素に分類される。一方で、乳児ボツリヌス症原因ボツリヌス菌由来のボツリヌス毒素は、A2型ボツリヌス毒素に分類される。





高度精製ボツリヌス毒素は、古くはTse CK., et al.らの文献(非特許文献9)に報告があり、さらに、WO1996/011699(特許文献2)で、精製方法の記載例(p6, line 9-p7, line 2)や薬剤組成(p11, Table 2)に関する報告がなされている。ボツリヌス毒素のうち、NTX(S毒素)のみを精製した高度精製ボツリヌス毒素を得ることも可能である。なお、例えばA型ボツリヌス毒素のNTXをA型NTXと記載することがある。また、例えばA1型ボツリヌス毒素のNTXをA1NTX、A2型ボツリヌス毒素のNTXをA2NTXと記載することがある。

産業上の利用分野



本発明は、筋緊張亢進改善薬に関し、より詳細にはA型ボツリヌス毒素を含有する筋緊張亢進改善薬に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
A型ボツリヌス毒素が、筋緊張亢進部位に投与され、投与後3時間以内に前記筋緊張亢進部位を運動させるように用いられることを特徴とする、A型ボツリヌス毒素を含有する筋緊張亢進改善薬。

【請求項2】
前記筋緊張亢進部位を少なくとも0.5~3時間運動させるように用いられることを特徴とする、請求項1に記載の筋緊張亢進改善薬。

【請求項3】
投与直後から0.5~3時間前記筋緊張亢進部位を運動させるように用いられることを特徴とする、請求項1に記載の筋緊張亢進改善薬。

【請求項4】
筋緊張亢進部位が、痙縮部位又は固縮部位である、請求項1~3のいずれかに記載の筋緊張亢進改善薬。

【請求項5】
A型ボツリヌス毒素がA2NTXである、請求項1~4のいずれかに記載の筋緊張亢進改善薬。

【請求項6】
(a)A型ボツリヌス毒素を筋緊張亢進部位に投与すること、及び
(b)投与後3時間以内に前記筋緊張亢進部位を運動させること
を含む、筋緊張亢進改善方法。

【請求項7】
(b)が、
投与後3時間以内に前記筋緊張亢進部位を少なくとも0.5~3時間運動させること
である、請求項6に記載の筋緊張亢進改善方法。

【請求項8】
(b)が、
投与直後から0.5~3時間前記筋緊張亢進部位を運動させること
である、請求項6に記載の筋緊張亢進改善方法。

【請求項9】
筋緊張亢進部位が、痙縮部位又は固縮部位である、請求項6~8のいずれかに記載の筋緊張亢進改善方法。

【請求項10】
A型ボツリヌス毒素がA2NTXである、請求項6~9のいずれかに記載の筋緊張亢進改善方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開
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