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熱応答試験および揚水試験の解析方法および解析プログラム コモンズ

国内特許コード P150011564
整理番号 N13109
掲載日 2015年3月24日
出願番号 特願2014-139050
公開番号 特開2016-017773
出願日 平成26年7月4日(2014.7.4)
公開日 平成28年2月1日(2016.2.1)
発明者
  • 藤縄 克之
出願人
  • 国立大学法人信州大学
発明の名称 熱応答試験および揚水試験の解析方法および解析プログラム コモンズ
発明の概要 【課題】移流・分散現象を考慮した熱応答試験の解析方法および揚水試験の解析方法を提案すること。
【解決手段】熱応答試験の解析を行うにあたって、地盤の温度上昇式として、地下水が流動している流動場での移流・分散現象を考慮した熱移動方程式の解析解を用いる。そして、この解析解の近似式を用いて求められる地盤の温度上昇値の計算値と、熱応答試験で得られる地盤の温度上昇値の実測値との誤差が最小となるように、解析解に含まれる未知のパラメータ(等価体積熱容量(ρc)、縦熱分散率κ、横熱分散率κ、真流速)を同定する逆解析を行う。逆解析には、パウエルの共役傾斜法に基づく非線形最適化法を用いる。揚水試験の解析においても同様の解析方法を適用し、未知のパラメータを同定し、透水量係数T、貯留係数S、Bを算出する。
【選択図】図5.1
従来技術、競合技術の概要


近年、原子力や火力に代わるクリーンなエネルギーとして、自然エネルギー(再生可能エネルギー)の利用が見直されてきている。その1つとして、地中熱の利用に関心が高まってきている。季節によって変動する外気温に対して、地中の温度は年間を通して約15℃で安定している。このような特性を持つ地中の熱を有効利用したものとして、地中熱ヒート・ポンプ(Geothermal Heat Pump、以下GeoHPと略す)システムがある。これは、地中熱を利用した冷暖房・給湯システムのことである。安定した熱の供給が行なえる地中熱の特性に着目し、夏場には冷房として地中に熱を放出し、冬場には暖房の熱源として利用する。



しかしながら、日本ではGeoHPシステムの普及は、欧米に比べ、遅れているのが実情である。その理由としては、認知度の低さ、井戸の掘削等における初期費用の問題、および、日本では欧米とは違い、その土地の風土によって熱物性値が異なるため、経済的なシステムづくりが依然として確立されていない、などが挙げられる。そのため、GeoHPシステムの普及には初期費用を抑えるためのシステムの効率化が必要不可欠である。



システムの効率化を図るための地盤調査試験として、熱応答試験が知られている。熱応答試験は主に地層の熱伝導率と熱交換井の熱抵抗を評価するための試験であり、地中熱交換井の熱交換挙動を予想する上で不可欠な情報である。熱応答試験を実施して、適正な井戸の本数・長さを決定することは、GeoHPシステムの初期費用の削減に極めて重要である。



地盤調査のための熱応答試験は、主にクローズド型方式における垂直型地中熱交換井を対象としている。このための熱応答試験装置は、地上部の水タンク内で電気ヒーターによって熱媒体を加熱し、循環ポンプにより配管内を循環させる。加熱された熱媒体は地中部を通過する際に放熱するため、U字管の入口・出口の温度差を測定し、その地層の熱交換特性を評価する。このような熱応答試験装置は、特許文献1に開示されており、熱応答試験装置を用いた熱応答試験方法は非特許文献1に開示されている。



熱応答試験の代表的な解析方法としては、地盤の温度上昇量を規定するKelvinの線源関数や円筒型熱源関数に基づく解析的手法、および有限差分法や有限要素法を用いた数値モデルによる解析方法がある。熱応答試験の解析的手法において最も一般的に用いられている手法としては、データ観測の簡便さや解析の容易さより、Kelvinの線源関数に基づいた作図法が挙げられる。作図法では循環時における熱媒体の温度データの経時変化を用いる方法と循環停止後の地中温度の回復データを用いる方法があるが、循環時のデータを用いる解析が一般的に行われている。



本発明者らは、循環時データを用いた作図法で熱応答試験の解析を行う場合に、解析を行うデータ区間の選定に明確な基準が無いため、解析結果が人によって異なること、地中熱交換器や充填剤の影響を排除するため、試験期間の初期段階のデータは捨てるので試験
期間を長くとる必要があること、などの問題点に着目し、地盤の温度上昇量を規定するKelvinの線源関数の近似解における未知のパラメータを同定して、地盤の熱伝導率を算出する解析方法および解析プログラムを提案している(特許文献2参照)。特許文献2で提案した解析方法では、熱応答試験の初期段階において得られる実測値に対して、パウエルの共役傾斜法に基づく非線形最適化手法を用いて、未知のパラメータを所定の値に設定した場合に得られる温度上昇量の計算値と、熱応答試験によって測定された温度上昇量の実測値との誤差が最小となるように、パラメータの逆解析を行い、未知のパラメータを同定して、地盤の熱伝導率を算出する。



また、本発明者らは、透水量係数や貯留係数といった地下水流動系パラメータを求めるための原位置試験として最も一般的に行われている揚水試験は、熱応答試験と同様に、熱伝導理論を基として解析解を導いていることに着目し、特許文献2において、熱応答試験の解析方法を揚水試験にも適用することを提案している。すなわち、地盤の地下水位低下量を規定するタイスの井戸関数の近似解(ヤコブの近似解)における未知のパラメータを同定して、地盤の透水量係数を算出するにあたって、揚水試験の初期段階において得られる実測値に対して、パウエルの共役傾斜法に基づく非線形最適化手法を用いて、未知のパラメータを所定の値に設定した場合に得られる地下水位低下量の計算値と、揚水試験によって測定された地下水位低下量の実測値との誤差が最小となるように、パラメータの逆解析を行い、未知のパラメータを同定して、地盤の透水量係数を算出している。

産業上の利用分野


本発明は熱応答試験および揚水試験の解析方法および解析プログラムに関する。さらに詳しくは、地下水流動による移流・分散の影響を考慮に入れた解析を行うことができ、パウエルの共役傾斜法に基づく非線形最適化手法を用いて未知のパラメータを同定することによって、短時間で精度良く地盤の熱交換特性および地下水流動特性を評価できる解析方法および解析プログラムに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
熱応答試験によって測定された調査対象の地盤における温度上昇量の経時変化に基づき前記地盤の熱交換特性を評価する熱応答試験の解析方法であって、
前記地盤の温度上昇式を、地下水が流動している流動場での移流・分散現象を考慮した熱移動方程式の解析解である式(A)で規定し、


パウエルの共役傾斜法に基づく非線形最適化法を用いて、前記式(A)で規定する解析解に含まれる未知のパラメータを所定の値に設定した場合に得られる温度上昇量の計算値と、前記熱応答試験によって測定された温度上昇量の実測値との誤差が最小となるように、前記パラメータを同定する逆解析を行い、
当該逆解析においては、同定対象の前記パラメータを、等価体積熱容量(ρc)、縦熱分散率κ、横熱分散率κ、真流速のうちの少なくとも1つとすることを特徴とする熱応答試験の解析方法。

【請求項2】
請求項1において、
前記逆解析に用いる目的関数として、前記計算値と前記実測値との2乗誤差の総和を1/2乗したユークリッドノルムに、係数Aおよび係数Aを乗じて重み付けした式(B)を使用し、


前記係数Aの値を、次式(C1)に示すように、前記縦熱分散率κと前記横熱分散率κから算出した値aに応じて決定し、

=(κ-κ)/κ≧0.0の場合、A=1.0+a
=(κ-κ)/κ<0.0の場合、A=1.0 (C1)

前記係数Aの値を、次式(C2)に示すように、前記横熱分散率κと前記地盤の等価熱伝導率λから算出した値aに応じて決定することを特徴とする熱応答試験の解析方法。

=10(1/κ(ρc)-1/λ)≧0.0のとき、A=1.0+a
=10(1/κ(ρc)-1/λ)<0.0のとき、A=1.0 (C2)

【請求項3】
請求項1または2において、
式(A)で規定する前記解析解において、次式(D)のように変数を置き換えた場合に前記解析解に含まれるハンタッシュ-ヤコブの井戸関数W(u、B)を、次式(E)で規定する近似式で近似し、


当該近似式に含まれる第1種変形ベッセル関数I(B)、第2種変形ベッセル関数K(B)、および、B=0とした場合に前記ハンタッシュ-ヤコブの井戸関数W(u、B)と一致する関数となるタイスの井戸関数W(u)について、それぞれのべき級数展開式を少なくとも第30項まで含む漸近解を使用して、前記地盤の温度上昇量を算出することを特徴とする熱応答試験の解析方法。

【請求項4】
請求項3において、
前記漸近解として、第1種変形ベッセル関数I(B)、第2種変形ベッセル関数K(B)のべき級数展開式を第50項まで含む漸近解を使用して、前記地盤の温度上昇量を算出することを特徴とする熱応答試験の解析方法。

【請求項5】
熱応答試験によって測定された調査対象の地盤における温度上昇量の経時変化に基づき前記地盤の熱交換特性を評価するために用いる熱応答試験の解析プログラムであって、
コンピュータを、地下水が流動している流動場での移流・分散現象を考慮した熱移動方程式の解析解である式(A)を用いて、地盤の温度上昇量を演算する演算手段として機能させ、


コンピュータを、パウエルの共役傾斜法に基づく非線形最適化法を用いて、前記解析解に含まれる未知のパラメータを所定の値に設定した場合に得られる温度上昇量の計算値と、前記熱応答試験によって測定された温度上昇量の実測値との誤差が最小となるように、前記パラメータの逆解析を行う逆解析手段として機能させ、
当該逆解析手段は、前記パラメータとして、等価体積熱容量(ρc)、縦熱分散率κ、横熱分散率κ、真流速のうちの少なくとも1つを同定する演算を行うことを特徴とする熱応答試験の解析プログラム。

【請求項6】
請求項5において、
前記逆解析手段は、前記逆解析に用いる目的関数として、前記計算値と前記実測値との2乗誤差の総和を1/2乗したユークリッドノルムに、係数Aおよび係数Aを乗じて重み付けした式(B)を使用し、


前記係数Aの値を、次式(C1)に示すように、前記縦熱分散率κと前記横熱分散率κから算出した値aに応じて決定し、

=(κ-κ)/κ≧0.0の場合、A=1.0+a
=(κ-κ)/κ<0.0の場合、A=1.0 (C1)

前記係数Aの値を、次式(C3)、(C4)に示すように、前記横熱分散率κと前記地盤の等価熱伝導率λから算出した値aに応じて決定することを特徴とする熱応答試験の解析プログラム。

=10(1/κ(ρc)-1/λ)≧0.0の場合、A=1.0+a
=10(1/κ(ρc)-1/λ)<0.0の場合、A=1.0 (C2)

【請求項7】
請求項5または6において、
式(A)で規定する前記解析解において、次式(D)のようにパラメータを置き換えた場合に前記解析解に含まれるハンタッシュ-ヤコブの井戸関数W(u、B)を、式(E)で規定する近似式で近似し、


前記演算手段は、当該近似式に含まれる第1種変形ベッセル関数I(B)、第2種変形ベッセル関数K(B)、および、B=0とした場合に前記ハンタッシュ-ヤコブの井戸関数W(u、B)と一致する関数となるタイスの井戸関数W(u)について、それぞれのべき級数展開式を少なくとも第30項まで含む漸近解を使用して、前記地盤の温度上昇量を演算することを特徴とする熱応答試験の解析プログラム。

【請求項8】
請求項7において、
前記演算手段は、前記漸近解として、第1種変形ベッセル関数I(B)、第2種変形ベッセル関数K(B)のべき級数展開式を第50項まで含む漸近解を使用して、前記地盤の温度上昇量を算出することを特徴とする熱応答試験の解析プログラム。

【請求項9】
揚水試験によって測定された調査対象の地盤における地下水位低下量の経時変化に基づき前記地盤の地下水流動特性を評価する揚水試験の解析方法であって、
前記地盤の地下水位低下量を、次式(F)で表されるハンタッシュ-ヤコブの式で規定し、


但し、
s:地下水位低下量
r:半径(m)
:揚水量(L/s)
:透水量係数(m/s)
:貯留係数

パウエルの共役傾斜法に基づく非線形最適化法を用いて、前記ハンタッシュ-ヤコブの式に含まれる未知のパラメータを所定の値に設定した場合に得られる地下水位低下量の計算値と、前記揚水試験によって測定された地下水位低下量の実測値との誤差が最小となるように、前記パラメータを同定する逆解析を行い、
当該逆解析においては、同定対象の前記パラメータを、前記ハンタッシュ-ヤコブの式における未知量を用いて、次式(G1)、(G2)、(G3)で表されるα1、α2、およびBとし、
α1=r (G1)
α2=T (G2)
B=r/p (G3)
但し、


K:加圧層の透水係数
:層厚

前記逆解析によって同定された前記パラメータα1、α2、およびBから、前記地盤の透水量係数T、貯留係数S、およびBのうち、少なくとも透水量係数Tを算出することを特徴とする揚水試験の解析方法。

【請求項10】
請求項9において、
前記式(G3)のようにパラメータを置き換えた場合に前記ハンタッシュ-ヤコブの式に含まれるハンタッシュ-ヤコブの井戸関数W(u、B)を、次式(E)で規定する近似式で近似し、


当該近似式に含まれる第1種変形ベッセル関数I(B)、第2種変形ベッセル関数K(B)、および、B=0とした場合に前記ハンタッシュ-ヤコブの井戸関数W(u、B)と一致する関数となるタイスの井戸関数W(u)について、それぞれのべき級数展開式を少なくとも第30項まで含む漸近解を使用して、前記地盤の地下水位低下量を算出することを特徴とする揚水試験の解析方法。

【請求項11】
揚水試験によって測定された調査対象の地盤における地下水位低下量の経時変化に基づき前記地盤の地下水流動特性を評価するために用いる揚水試験の解析プログラムであって、
コンピュータを、次式(F)で表されるハンタッシュ-ヤコブの式を用いて、地盤の地下水位低下量を演算する演算手段として機能させ、


但し、
s:地下水位低下量
r:半径(m)
:揚水量(L/s)
:透水量係数(m/s)
:貯留係数

コンピュータを、パウエルの共役傾斜法に基づく非線形最適化法を用いて、前記ハンタッシュ-ヤコブの式に含まれる未知のパラメータを所定の値にそれぞれ設定した場合に得られる地下水位低下量の計算値と、前記揚水試験によって測定された地下水位低下量の実測値との誤差が最小となるように、前記パラメータを同定する逆解析手段として機能させ、
当該逆解析手段は、同定対象の前記パラメータを、前記ハンタッシュ-ヤコブの式における未知量を用いて、次式(G1)、(G2)、(G3)で表されるα1、α2、およびBとし、
α1=r (G1)
α2=T (G2)
B=r/p (G3)
但し、


K:加圧層の透水係数
:層厚

さらに、コンピュータを、前記逆解析によって同定された前記パラメータα1、α2、およびBから、前記地盤の透水量係数T、貯留係数S、およびBのうち、少なくとも透水量係数Tを算出する算出手段として機能させることを特徴とする揚水試験の解析プログラム。

【請求項12】
請求項11において、
前記式(G3)のようにパラメータを置き換えた場合に前記ハンタッシュ-ヤコブの式に含まれるハンタッシュ-ヤコブの井戸関数W(u、B)を、次式(E)で規定する近似式で近似し、


前記演算手段は、当該近似式に含まれる第1種変形ベッセル関数I(B)、第2種変形ベッセル関数K(B)、および、B=0とした場合に前記ハンタッシュ-ヤコブの井戸関数W(u、B)と一致する関数となるタイスの井戸関数W(u)について、それぞれのべき級数展開式を少なくとも第30項まで含む漸近解を使用して、前記地盤の地下水位低下量を演算することを特徴とする熱応答試験の解析プログラム。
国際特許分類(IPC)
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