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可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼの発現システム コモンズ 新技術説明会

国内特許コード P150011580
整理番号 L14013
掲載日 2015年3月24日
出願番号 特願2014-248927
公開番号 特開2015-130855
出願日 平成26年12月9日(2014.12.9)
公開日 平成27年7月23日(2015.7.23)
優先権データ
  • 特願2013-255225 (2013.12.10) JP
発明者
  • 伊原 正喜
  • 河野 祐介
出願人
  • 国立大学法人信州大学
発明の名称 可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼの発現システム コモンズ 新技術説明会
発明の概要 【課題】 本発明の課題は、十分な比活性を有したNAD(H)やNADP(H)に依存しないで電子の授受を行う可溶型Mo/W-FDHの提供、および前記Mo/W-FDHの発現システムを提供することである。
【解決手段】 本発明は、ゲノム中のギ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を欠損した大腸菌、および、前記ギ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の膜貫通ドメインおよび膜サブユニットをコードする部分を欠損させた可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を有するベクターを含む、可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼの発現システムおよび該発現システムにより製造された可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼなどに関する。さらに前記可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼを利用した光駆動型ギ酸デヒドロゲナーゼおよび、その光駆動ギ酸生成システムに関する。
【選択図】 図3
従来技術、競合技術の概要


近年、ギ酸が次世代エネルギーキャリアとして期待されていることから、ギ酸生成・分解にかかわるギ酸デヒドロゲナーゼは、大きな注目を集めいている。さらにギ酸デヒドロゲナーゼは、二酸化炭素の還元を効率よく触媒し、副生成物を出さないことから、人工光合成や化学工業の分野からも大きな注目を集めている。例えば、遺伝子操作によりギ酸デヒドロゲナーゼおよびヒドロゲナーゼの酵素群を高発現させた微生物を用いて水素を供給する燃料電池などが検討されている(特許文献1:特許第3764862号公報)。



ギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)は、ギ酸の二酸化炭素への酸化反応(HCOO→CO+H+2e)と、二酸化炭素のギ酸への還元反応(CO+H+2e→HCOO)を触媒する酵素である。また、ギ酸デヒドロゲナーゼは、大きく2つのグループに分類できる(非特許文献1:Ferry G J(1990))。1つ目のグループは、NAD(H)のほかに、触媒活性に金属イオンなどの補酵素を持たないNADH依存的ギ酸デヒドロゲナーゼである(非特許文献2:Popov V Oら(1994))。2つ目のグループは、モリブデンもしくはタングステンを活性中心に持つギ酸デヒドロゲナーゼ(以下、Mo/W-FDHという)に分類できる。Mo/W-FDHにおける活性サブユニットは、プテリンと呼ばれる補酵素を2分子有し、その2分子にモリブデンもしくはタングステンが配位されている。モリブデンもしくはタングステンには、さらに、セレノシステインが配位している(非特許文献3:Richard A. Rotheryら(2008)、非特許文献4:Moura J Jら(2004))。



Mo/W-FDHは、活性サブユニットの他にさらにいくつかのサブユニットが会合することで、生体内において様々な役割を担っており、電子授受の方法やサブユニット構造に基づいて、さらに3つのグループに分けることができる。



第1のグループは、電子の授受をNAD(H)もしくはNADP(H)に依存する可溶性蛋白質のグループである。このグループのMo/W-FDHでは、モリブデンもしくはタングステンでギ酸から抜き取られた電子で、NADもしくはNADPを還元する。または、NADHもしくはNADPHから電子を抜き取り、二酸化炭素還元のためにモリブデンもしくはタングステンに電子が送られる。両者の電子伝達を触媒するために、フラビンを含むジアフォラーゼサブユニットなどを有する(非特許文献5:Laukel Mら(2003)、非特許文献6:Hartmann Tら(2013)、非特許文献7:Yamamoto Iら(1983))。



第2のグループは、NAD(H)やNADP(H)に依存しないで電子の授受を行う膜結合性蛋白質のグループである。このグループのMo/W-FDHにおける電子授受は、ヘムなどの補酵素を含んだ膜サブユニットとの間の電子移動によって行われる。そのために、活性サブユニットと膜サブユニットの間に、鉄硫黄クラスターを有する電子伝達サブユニットが存在し、3つのサブユニットからなる構造を基本としている。代表例として、大腸菌由来のFDH-NやFDH-Oなどがある(非特許文献8:Jormakka Mら (2002)、非特許文献9:Benoit Sら(1998))。



第3のグループは、NAD(H)やNADP(H)に依存しないで電子の授受を行う可溶性蛋白質のグループである。このグループのMo/W-FDHにおける電子授受は、ヘムを有する可溶性シトクロムや鉄硫黄クラスターを有する可溶性フェレドキシンなどの電子伝達蛋白質との間の電子移動によって行われると考えられている。活性サブユニットと鉄硫黄クラスターを有する電子伝達サブユニットとの2つのサブユニットから成り、電子伝達サブユニットは可溶性電子伝達蛋白質との会合と電子移動反応の場を提供している。例として、クロストリジウム属(Clostridium pasteurianum)由来のギ酸デヒドロゲナーゼ(非特許文献10:Liu C Lら(1984))や、硫酸還元菌(Syntrophobacter fumaroxidans)由来のギ酸デヒドロゲナーゼなどがある(非特許文献11:Torsten Rら(2008))。この第3のグループのMo/W-FDHは、電極や光触媒などとの直接電子伝達が可能であり、産業的に価値が特に高いとされている(非特許文献11)。



これまでギ酸デヒドロゲナーゼを産業的に利用する試みとして、例えば、上記の特許文献1のほかにも、メタノール資化性細菌であるハイモマイクロビウム属の微生物からギ酸デヒドロゲナーゼを採取すること(特許文献2:特開2000-78970号公報)、アカカビ由来のギ酸脱水素酵素に対して特定のアミノ酸置換を導入し、大腸菌から活性を有した変異型ギ酸脱水素酵素を得ること(特許文献3:国際公開第2011/016102号)、マイコバクテリウムバッカエ由来のβ-ニコンチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸依存型ギ酸脱水素酵素活性を有する、ギ酸脱水素酵素の変異体蛋白質を構築したこと(特許文献4:国際公開第2012/169341号)などが報告されているが、いずれもギ酸デヒドロゲナーゼの十分な発現量や活性量を得られたとはいえないものであった。また、産業への応用が期待できるMo/W-FDHについて発現系は報告されていない。

産業上の利用分野


本発明は、可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼおよびその発現システムに関し、特に、大腸菌(Escherichia coli)において大量発現可能であって、活性を有する可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼおよびその発現システムに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
ゲノム中のギ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を欠損した大腸菌、および、前記ギ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の膜貫通ドメインおよび膜サブユニットをコードする部分を欠損させた可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を有するベクターを含む、可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼの発現システム。

【請求項2】
ギ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が配列番号1に記載の塩基配列を有し、膜貫通ドメインをコードする部分が、該塩基配列の3964位~4128位の部分である、請求項1に記載の発現システム。

【請求項3】
ベクターが、pUc fdoGHst’(配列番号6)である、請求項1または2に記載の発現システム。

【請求項4】
ギ酸デヒドロゲナーゼが、Mo型またはW型ギ酸デヒドロゲナーゼである、請求項1~3のいずれか一項に記載の発現システム。

【請求項5】
pUc fdoGHst’(配列番号6)である可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼ発現ベクター。

【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の発現システムを用いた、可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼの製造方法。

【請求項7】
ゲノム中のギ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を欠損した大腸菌に、前記ギ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の膜貫通ドメインおよび膜サブユニットをコードする部分を欠損させた可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を有するベクターを挿入し、該ベクターが挿入された前記大腸菌を培養することを含む、可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼの製造方法。

【請求項8】
大腸菌を、容器高の7割~8割まで培養液を入れた培養フラスコで、80rpm~100rpmで、穏やかに振盪培養することを含む、請求項6または7に記載の製造方法。

【請求項9】
培養が、2日間培養した場合に、培養液のOD600の値が1.8~3.1を示す条件で行われる、請求項8に記載の製造方法。

【請求項10】
大腸菌由来の、膜貫通ドメインおよび膜サブユニットを欠損させた可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼ。

【請求項11】
Mo型またはW型ギ酸デヒドロゲナーゼである、請求項10に記載の可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼ。

【請求項12】
(1)配列番号7および8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(2)該アミノ酸配列において、1~30個のアミノ酸が、欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、ギ酸デヒドロゲナーゼ活性を有する、可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼ。

【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載の可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼに直接またはリンカーを介して光合成反応中心蛋白質複合体(Photosystem I,PSI)のPsaEサブユニットが連結されてなる、光駆動型ギ酸デヒドロゲナーゼ。

【請求項14】
リンカーを有する、請求項13に記載の光駆動型ギ酸デヒドロゲナーゼ。

【請求項15】
リンカーが、親水性アミノ酸を含むリンカーである、請求項14に記載の光駆動型ギ酸デヒドロゲナーゼ。

【請求項16】
リンカーが、グリシン、セリン、プロリンから選択される1種または2種以上の親水性アミノ酸を含む、請求項15に記載の光駆動型デヒドロゲナーゼ。

【請求項17】
リンカーが、6個~16個のアミノ酸からなる、請求項14~16のいずれか一項に記載の光駆動型ギ酸デヒドロゲナーゼ。

【請求項18】
可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼが、配列番号8に記載のポリペプチドにおいて、111位、114位、134位、138位、141位、150位および231位のアミノ酸の少なくとも1つが、親水性アミノ酸に置換されてなる、請求項13~17のいずれか一項に記載の光駆動型ギ酸デヒドロゲナーゼ。

【請求項19】
アミノ酸の置換が、A111T、A114S、I134E、I134Q、Y138S、A141S、L150EおよびL150Qからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項18に記載の光駆動型ギ酸デヒドロゲナーゼ。

【請求項20】
アミノ酸の置換が、(1)A111T、A114S、I134E、Y138S、A141SおよびL150E、(2)A111T、A114S、I134E、Y138S、A141SおよびL150Q、または、(3)A111T、A114S、I134Q、Y138S、A141SおよびL150Eである、請求項19に記載の光駆動型ギ酸デヒドロゲナーゼ。

【請求項21】
さらにタグを有する、請求項13~20のいずれか一項に記載の光駆動型ギ酸デヒドロゲナーゼ。

【請求項22】
タグが、Hisタグである、請求項21に記載の光駆動型ギ酸デヒドロゲナーゼ。

【請求項23】
請求項13~22のいずれか一項に記載の光駆動型ギ酸デヒドロゲナーゼとPsaEサブユニットの欠損したPSIとを含む、光駆動ギ酸生産システム。

【請求項24】
請求項23に記載の光駆動ギ酸生産システムを用いた、ギ酸の生産方法。

【請求項25】
ギ酸の生産に用いる、PsaEサブユニットの欠損したPSI。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 公開
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