TOP > 国内特許検索 > 耐水蒸気腐食性多層皮膜、およびその製造方法

耐水蒸気腐食性多層皮膜、およびその製造方法

国内特許コード P150011859
掲載日 2015年4月8日
出願番号 特願2014-200781
公開番号 特開2016-069229
出願日 平成26年9月30日(2014.9.30)
公開日 平成28年5月9日(2016.5.9)
発明者
  • 上野 俊吉
  • 瀬谷 恭佑
  • 古川 裕貴
出願人
  • 学校法人日本大学
発明の名称 耐水蒸気腐食性多層皮膜、およびその製造方法
発明の概要 【課題】1300℃を超える高温で水蒸気が存在する環境下においても水蒸気腐食による基材の酸化と腐食の原因となる粒界ガラス相を排除することが可能となるために粒界腐食により生じることが懸念される皮膜中のオープンポア生成を抑制することができる耐水蒸気腐食性多層皮膜を提供する。
【解決手段】共晶構造層12は、複数の金属酸化物の共晶構造体からなる。共晶構造体を成す金属酸化物としては、例えば、Al、HfO、CaZrO、ZrOなどが挙げられる。こうした複数の金属酸化物の共晶構造体として、Al-HfO共晶体、CaZrO-ZrO共晶体を例示することができる。共晶構造層12は、これら複数の金属酸化物の真の共晶組成を含む緻密な皮膜である。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


炭化ケイ素複合材料は、高温における耐熱性、耐熱衝撃性及び耐クリープ特性に優れ、このような優れた機械特性から、ガスタービン用部品などの構造部材への適用がなされている。しかし、これらの炭化ケイ素複合材料は、1300℃以上の温度になると、酸化の進行による劣化が問題となるため、高温での利用には支障が生じる。これに対し、酸化物セラミックスは、耐熱性、耐酸化性には優れているが、高温における強度、靭性等の機械的特性が低い。従って、炭化ケイ素複合材料も酸化物セラミックスも、単独では耐熱性及び耐酸化性と高温下での使用に耐える機械特性との双方を満足させることができなかった。



炭化ケイ素複合材料が高温域で劣化する機構は、1600℃までの高温で酸化して表面にシリカを生成し、更に高温になると、蒸気相のSiOを生成し、SiOが昇華するため減肉しながら損耗する。高温で水蒸気が存在する環境下では、酸化に加えて水蒸気による腐食が生じ、損耗が加速され、更にガスタービン燃焼場のような高速気流中ではエロージョン効果も加わり減肉が加速される。従って、炭化ケイ素複合材料をガスタービン部材として応用する際には高温における酸化、水蒸気腐食を防止する耐腐食層を形成させる必要がある。



炭化ケイ素複合材料が酸化して形成するシリカ層は、炭化ケイ素複合材料との密着性は良いものの、シリカ層と炭化ケイ素複合材料との熱膨張係数が大きく異なるため、シリカ層及び炭化ケイ素複合材料の表層に大きなクラックが生じ、炭化ケイ素複合材料の強度が低下することが知られている。従って、高温環境下における炭化ケイ素複合材料の酸化、水蒸気腐食を防止することができる耐腐食層としては、酸素分子或いは水蒸気分子を通さない緻密な皮膜であることが必要であり、高温に長時間晒されても構造変化を起こさず、高温耐水蒸気腐食性に優れる相を選択する必要がある。



高温環境下での耐水蒸気腐食性に優れるシリケート化合物としては、希土類シリケート及びムライトが広く知られている。しかし、PVD(Physical Vapor Deposition)法等により成膜されるムライト層は、成膜時には緻密な層を形成するものの、長時間ガスタービン実機相当の環境下に晒されると、ムライト層の下層にある炭化ケイ素複合材料が酸化し、大きなクラックが生じると報告されている。



また、希土類酸化物-シリカ系皮膜を成膜した非酸化物セラミックス構造体に関しては、文献(特許文献1、2、3参照)に記載されているように、希土類がY、Yb、Er及びDyに限り、その希土類シリケート被覆した窒化ケイ素セラミックス構造体が知られている。希土類がLuである、ルテチウムシリケートを、窒化ケイ素セラミックスへ成膜して、静的な環境下における水蒸気腐食を有効に抑制し得ることも知られている。また、ムライト相とイッテリビウムシリケート(YbSi)相の間には共晶が存在すること自体は知られている。



酸化物セラミックス、特にシリケート系化合物の水蒸気腐食では、結晶粒界相として存在するシリカ(以下、粒界ガラス相と称する場合がある)が最初に腐食されることが知られている。粒界ガラス相が腐食されると、結晶粒同士の結合が弱くなり高速気流中では結晶粒そのものが吹き飛ばされることは容易に予測されることである。更に、粒界ガラス相の腐食により、耐腐食層に酸素や水蒸気分子が容易に通過し、基材の非酸化物セラミックスまで達するオープンポアが形成されることは容易に予測される。

産業上の利用分野


本発明は、耐水蒸気腐食性多層皮膜に関するものであり、更に詳しくは、炭化ケイ素複合材料上にコーティングされる耐水蒸気腐食性多層皮膜、およびその製造方法に関するものである。本発明は、強度等の機械的性質に優れ、高温下での耐酸化性、耐食性が要求される、特に高温ガスタービン用部材又は自動車エンジン用部材あるいは超高速航空機用耐熱部材等の技術分野において、1000~1500℃の高温下で水蒸気が存在する環境においても、高温における水蒸気腐食に起因する腐食の促進を抑制することが可能な、炭化ケイ素複合材料の耐水蒸気腐食性多層皮膜を提供するものであり、特に、本発明は、化石燃料を燃焼することにより20%ほどの高い水蒸気成分が存在するとされる燃焼場に晒される、ガスタービンの部材に炭化ケイ素複合材料を応用する際に、高温での基材の腐食を抑制することができる耐水蒸気腐食性多層皮膜を提供するものとして有用である。

特許請求の範囲 【請求項1】
炭化ケイ素複合材料からなる基材上に形成される耐水蒸気腐食性多層皮膜であって、
粒界ガラス相を内在させずに形成した、複数の金属酸化物の共晶構造体からなる共晶構造層と、該共晶構造層と前記基材との間に形成され、前記金属酸化物と金属炭化物とを含み、前記基材に近づくほど前記金属炭化物の含有割合が高められた組成傾斜層と、を備えたことを特徴とする耐水蒸気腐食性多層皮膜。

【請求項2】
前記共晶構造層は、HfOまたはZrOを含むことを特徴とする請求項1記載の耐水蒸気腐食性多層皮膜。

【請求項3】
前記組成傾斜層は、前記共晶構造層に接する領域がHfOまたはZrOからなり、前記基材に接する領域がHfCまたはZrCからなることを特徴とする請求項2記載の耐水蒸気腐食性多層皮膜。

【請求項4】
前記共晶構造層は、HfOおよびAlとの共晶構造体、またはZrOおよびCaZrOとの共晶構造体であることを特徴とする請求項2または3記載の耐水蒸気腐食性多層皮膜。

【請求項5】
炭化ケイ素複合材料からなる基材上に共晶組成物を含む塗膜を形成する塗布工程と、
前記塗膜を加熱して前記共晶組成物のみを短時間溶融させて、複数の金属酸化物の共晶構造体からなる共晶構造層、および該共晶構造層と前記基材との間に形成され、前記金属酸化物と金属炭化物とを含み、前記基材に近づくほど前記金属炭化物の含有割合が高められた組成傾斜層からなる耐水蒸気腐食性多層皮膜を前記基材上に形成する加熱工程と、を備えたことを特徴とする耐水蒸気腐食性多層皮膜の製造方法。

【請求項6】
前記加熱工程は、集光加熱熱源によって前記塗膜の前記共晶組成物のみを溶融させ、その後、前記基材と前記集光加熱熱源とを相対移動させることを特徴とする請求項5記載の耐水蒸気腐食性多層皮膜の製造方法。

【請求項7】
前記共晶構造層はHfOまたはZrOを含み、
前記加熱工程は、加熱によって前記炭化ケイ素複合材料の一部を分解させ、分解によって生じた炭素で、溶融させた共晶組成物を還元雰囲気にして、HfOまたはZrO以外の酸化物の一部を蒸発させることにより、HfCまたはZrCを生じさせて、前記組成傾斜層を形成することを特徴とする請求項5または6記載の耐水蒸気腐食性多層皮膜の製造方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2014200781thum.jpg
出願権利状態 公開
日本大学産官学連携知財センター(通称NUBIC,ニュービック)は,技術移転機関と知的財産本部の機能を兼ね備えた日本大学の産学連携の窓口です。
NUBICは,日本大学全教職員や大学院生・学部学生の豊富なアイデアや研究成果を,知的財産として戦略的に創出・保護・管理し,産業界のニーズとのマッチングを図り,企業の研究開発,新製品開発,新規事業の立上げが円滑に行われるようサポートいたします。
お気軽にご相談ください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close