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光子出力装置、光子出力方法、及び光子出力装置に用いる半導体の製造方法

国内特許コード P150011955
掲載日 2015年4月28日
出願番号 特願2013-526825
出願日 平成24年7月24日(2012.7.24)
国際出願番号 JP2012068684
国際公開番号 WO2013018583
国際出願日 平成24年7月24日(2012.7.24)
国際公開日 平成25年2月7日(2013.2.7)
優先権データ
  • 特願2011-167423 (2011.7.29) JP
発明者
  • 水落 憲和
  • 山崎 聡
  • 牧野 俊晴
  • 加藤 宙光
  • 竹内 大輔
  • 小倉 政彦
出願人
  • 国立大学法人大阪大学
  • 国立研究開発法人産業技術総合研究所
発明の名称 光子出力装置、光子出力方法、及び光子出力装置に用いる半導体の製造方法
発明の概要
本発明による光子出力装置は、p型ダイヤモンド層11、n型ダイヤモンド層12、及びp型ダイヤモンド層11とn型ダイヤモンド層12との間に積層されたi型ダイヤモンド層13からなるPIN構造の半導体を含む発光素子10と、i型ダイヤモンド層内において発生した光子を通過させる光学素子20とを備える。光学素子20は、i型ダイヤモンド層13の所定の位置において発生した光子を通過させ、i型ダイヤモンド層13の別の位置、p型ダイヤモンド層11およびn型ダイヤモンド層12において発生した光子をカットすることが好ましい。
従来技術、競合技術の概要



近年、デジタル通信による送金や電子商取引等の普及に伴い、通信される重要な情報を第三者による盗聴や改竄から守る、安全性を向上させる為の技術への要求が高まっている。安全性を向上させる為の有効な技術の1つに暗号(cryptography)がある。暗号方式には、主に公開鍵暗号方式と秘密鍵暗号方式とがある。これらの詳細は、池野信一、小山謙二著「現代暗号理論」(電子情報通信学会)に記載がある。公開鍵暗号方式では、送信側が公開鍵を保持し、公開鍵を用いて機密情報を暗号化し、受信側が秘密鍵を保持し、秘密鍵を用いて機密情報を復号する。





公開鍵暗号方式の公開鍵と秘密鍵とを更新するには、通常、受信側のそれぞれが公開鍵と秘密鍵との鍵ペアを生成して、公開鍵を送信側へ普通に送る。秘密鍵は送る必要がないので伝達時に第三者に知られる心配はなく、公開鍵は第三者に知られても機密情報が復号される事はないと考えられているので、鍵伝達時の機密管理が不要である。また公開鍵は保存時においても機密に管理する必要がないので、配信側の負担が小さい。





公開暗号鍵方式の安全性は、暗号化鍵から復号化鍵を生成することが容易でないという数学的な理論に基づいて担保されている。一般的に用いられているRSA暗号方式において暗号化鍵から復号化鍵を求めるためには、暗号化鍵である非常に大きな整数を素因数分解するという非常に難解な演算を行わなければならない。例えば最新のスーパーコンピュータを用いてこの演算を行ったとしても、非現実的な時間を要するため、暗号化鍵から復号化鍵を生成することは実質的に不可能であると考えられている。





しかしながら、大きな整数の素因数分解を比較的短時間で行うことができるような高性能なコンピュータが今後登場すれば、暗号化鍵から復号化鍵を生成することが可能になるので、将来的に公開暗号鍵方式は使用できなくなってしまうかもしれない。





一方、秘密鍵暗号方式では、送信側と受信側とが同一の共通鍵を秘密に保持し、送信側が共通鍵を用いて機密情報を暗号化し、受信側が共通鍵を用いて機密情報を復号する。秘密鍵暗号方式の共通鍵を更新するには、例えば送信側か受信側かのいずれか一方で新しい共通鍵を生成して、他方に新しい共通鍵を秘密に伝達しなければならない。新しい共通鍵が第三者に知られると機密情報が復号されて第三者に知られてしまうので、鍵伝達時の機密管理を徹底しなければならない。





なお安全対策上、暗号化や復号に用いる鍵は、定期的、或いは必要に応じて頻繁に更新することが望ましい。また暗号化前の機密情報と長さが同じ秘密鍵を1回で使い捨てるVernam暗号という暗号方式は、理論的に絶対に安全であることが理論的に証明されている。





そこで、この共通鍵を秘密に伝達する手段として、量子暗号通信に対する期待が高まっている。量子暗号通信では、単一光子の量子状態の1つに情報を与え、単一光子を伝送媒体として伝送する。光子の量子状態には、光子の偏光(光の波の向き)、位相、スピンなどの様々な種類がある。





観測者が単一光子の量子状態の1つを測定すると必ず他の量子状態に影響を及ぼすという量子力学的な原理があるので、量子暗号通信において第三者によって盗聴が行われた場合には、盗聴が行われた可能性がある事を、正規の通信者達が知ることができると考えられている。よって盗聴が行われた可能性があるときには伝達された共通鍵を破棄し、盗聴が行われた可能性がないときに伝達された共通鍵のみを用いて暗号化通信を行えば、通信の安全性が確保される。





以下に量子暗号通信の原理の概要について説明する。





まず送信者は、1ビットの情報を送ろうとする度に、Aという種類の量子状態を用いて送信するかBという種類の量子状態を用いて送信するかをランダムに決め、選択した種類の量子状態が、送ろうとする1ビットの情報に対応する状態である単一光子を送信する。このとき同一の単一光子において、選択しなかった方の種類の量子状態は、量子力学的な原理により不確定であり、どういう状態なのかを量子状態を変えずに知ることができない。





受信者は、送られてきた単一光子について、Aという種類の量子状態を測定するかBという種類の量子状態を測定するかをランダムに決め、選択した種類の量子状態を測定して1ビットの情報を得る。このとき選択した種類の量子状態を測定すると、他の量子状態が変わってしまうので、選択しなかった方の種類の量子状態を正しく知ることはできない。





その後、送信者と受信者とが同じ選択をしたか否かの答え合わせを行い、同じ選択をした場合には得られた情報を有効な情報として保持し、同じ選択をしていなかった場合には得られた情報を破棄する。このような1ビット毎の通信を繰り返すことで、所定量の情報の通信を行うことができる。ここで、盗聴者がいない場合には情報は正しく通信される。





ところが、盗聴者がいる場合には、盗聴者が盗聴することにより単一光子の量子状態が変化して、一定確率で情報に間違いが生じる。





盗聴者は盗聴する時点で、送信者が選択した量子状態の種類を知ることができないので、受信者と同様にAという種類の量子状態を測定するかBという種類の量子状態を測定するかをランダムに決め、選択した種類の量子状態を測定して1ビットの情報を得ることになる。ここで、たまたま盗聴者が送信者と同じ選択をした場合には、盗聴者は正しい情報を得ることができ、かつ、選択した種類の量子状態を同じ状態にした単一光子を送信し直せば、盗聴していることを正規の通信者達に知られることはない。





ところが、偶然に送信者と同じ選択をし続けることは到底不可能であり、通常50%の確率で受信者と異なる選択をすることになる。盗聴者が受信者と異なる選択をした場合には、異なる選択をした50%のうちのさらに50%(合わせて25%)が間違った情報となる。ここで、単一光子を送信し直しても、50%の確率で、間違った情報に対応する状態である単一光子を送信してしまう。このような単一光子は、さらに受信者が送信者と同じ選択をした場合に間違った情報を受信者に与えることになる。従って、盗聴者は、送信者が送ろうとした情報を全部盗聴しても、そのうちの25%は間違った情報である上に、盗聴することによって、正規の受信者が受信する情報のうちの25%を間違った情報に変えてしまう。





よって、送信者と受信者とが、所定量の情報の通信を行った後に、ランダムにいくつかのビットを抜き出して、正しい情報が送信されているか否かを確認すれば、100%正しいと確認された場合には盗聴が行われた可能性がないとわかるので、安心してこのときに受信した情報を共通鍵として用いることができる。





ここで量子暗号通信には、単一光子を繰り返し出力することができる光子出力装置が不可欠である。例えば、従来の単一光子を生成させる方法としては、量子ドットに短波長の光を照射する光励起による第1の方法(例えば、特許文献1)や、半導体のp-n接合を利用して量子ドットに電気的に電荷を注入し、電子と正孔を再結合させることによって単一光子を発生させる第2の方法(例えば、特許文献2)等がある。また、本願の発明と関連が深い発光素子に関する技術が特許文献3に開示されている。

産業上の利用分野



本発明は、光子出力装置に関し、特に、量子暗号通信等において利用される単一光子を、効率良く生成し出力するための技術に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
p型ダイヤモンド層、n型ダイヤモンド層、及び、前記p型ダイヤモンド層と前記n型ダイヤモンド層との間に設けられたi型ダイヤモンド層からなるPIN構造の半導体を含む発光素子と、
前記i型ダイヤモンド層内において発生した光子を通過させる光学素子と
を備える、光子出力装置。

【請求項2】
前記光学素子は、前記i型ダイヤモンド層の所定の位置において発生した光子を通過させ、前記i型ダイヤモンド層の別の位置、前記p型ダイヤモンド層および前記n型ダイヤモンド層において発生した光子をカットする、請求項1に記載の光子出力装置。

【請求項3】
前記光子出力装置は、前記PIN構造の半導体に電圧を印加して、前記発光素子に電流を注入する電流注入部をさらに備える、請求項1または2に記載の光子出力装置。

【請求項4】
前記i型ダイヤモンド層内に、窒素と空孔とが隣接する窒素-空孔複合体欠陥中心が形成されている、請求項1から3のいずれかに記載の光子出力装置。

【請求項5】
前記i型ダイヤモンド層内に、窒素がイオン注入されている、請求項4に記載の光子出力装置。

【請求項6】
前記光学素子は、対物レンズと、当該対物レンズの焦点付近に配置されたピンホールとを含む、請求項1から5のいずれかに記載の光子出力装置。

【請求項7】
前記光学素子は、外部へ単一光子を出力する、請求項1から6のいずれかに記載の光子出力装置。

【請求項8】
前記i型ダイヤモンド層における不純物の濃度は0.1ppb以下である、請求項7に記載の光子出力装置。

【請求項9】
前記i型ダイヤモンド層の主面は、前記p型ダイヤモンド層、及び、前記n型ダイヤモンド層のうちの少なくとも一方の層の主面よりも小さく、
前記i型ダイヤモンド層の主面には、外気に対して露出している領域があり、
前記光学素子は、前記外気に対して露出している領域内を通過した光子を外部へ出力する、請求項1から8のいずれかに記載の光子出力装置。

【請求項10】
前記i型ダイヤモンド層の前記外気に対して露出している領域がクリーニングされている、請求項9に記載の光子出力装置。

【請求項11】
前記発光素子において、
前記p型ダイヤモンド層となる材料基板の表面に、前記i型ダイヤモンド層が積層され、
前記i型ダイヤモンド層の上の一部に前記n型ダイヤモンド層が積層され、
前記n型ダイヤモンド層の上に電極が形成されており、
前記外気に対して露出している領域は、前記i型ダイヤモンド層の上に前記n型ダイヤモンド層が積層されていない部分に相当し、当該外気に対して露出している領域が、前記電極の形成後に、異なる複数の方法で段階的にクリーニングされている、請求項10に記載の光子出力装置。

【請求項12】
前記光子出力装置は、室温において動作する請求項1から11のいずれかに記載の光子出力装置。

【請求項13】
p型ダイヤモンド層、n型ダイヤモンド層、及び、前記p型ダイヤモンド層と前記n型ダイヤモンド層との間に積層されたi型ダイヤモンド層からなるPIN構造の半導体を含む発光素子を用意する用意ステップと、
前記発光素子を発光させる発光ステップと、
前記発光ステップにて前記i型ダイヤモンド層内において発生した光子を光学素子に通過させる光子通過ステップと
を包含する、光子出力方法。

【請求項14】
前記発光ステップは、前記PIN構造の半導体に電圧を印加して、前記発光素子に電流を注入するステップを含む、請求項13に記載の光子出力方法。

【請求項15】
p型ダイヤモンド層、n型ダイヤモンド層、及び、前記p型ダイヤモンド層と前記n型ダイヤモンド層との間に積層されたi型ダイヤモンド層からなるPIN構造の半導体の製造方法であって、
前記i型ダイヤモンド層内に窒素をイオン注入する注入ステップを含む、半導体の製造方法。


国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2013526825thum.jpg
出願権利状態 公開


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