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新規ホスファチジルイノシトール3キナーゼ阻害剤及び医薬組成物

国内特許コード P150012028
掲載日 2015年6月15日
出願番号 特願2013-536294
出願日 平成24年9月25日(2012.9.25)
国際出願番号 JP2012074542
国際公開番号 WO2013047509
国際出願日 平成24年9月25日(2012.9.25)
国際公開日 平成25年4月4日(2013.4.4)
優先権データ
  • 特願2011-217378 (2011.9.30) JP
発明者
  • 西條 憲
  • 石岡 千加史
  • 加藤 正
出願人
  • 国立大学法人東北大学
発明の名称 新規ホスファチジルイノシトール3キナーゼ阻害剤及び医薬組成物
発明の概要 本発明は、新規のPI3K阻害剤を提供することを目的とする。さらに、本発明は、PI3K阻害作用とHDAC阻害作用とを併せ持つ物質を提供することを目的とする。最終的に、本発明は、これらの物質を含有する新規抗がん用医薬組成物、特に難治性がんに対しても有効な抗がん用医薬組成物を提供する。
本発明の一つの態様は、式1で示されるデプシペプチド類化合物又は生理学的に許容可能なその塩からなるホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害剤である。
従来技術、競合技術の概要



がんの薬物療法は、分子標的薬の登場により目覚ましい進歩を遂げているが、未だ克服できない難治性がんは数多く存在する。そのため、より治療効果の高い、新しいがん分子標的薬の開発が望まれている。





ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(Phosphatidyl inositol 3-kinase;以下「PI3K」という)は、細胞膜上に存在するリン脂質ホスファチジルイノシトール4,5-ビホスフェート(PIP2)のイノシトール環の3位リン酸基をリン酸化してホスファチジルイノシトール3,4,5-トリホスフェート(PIP3)を生成する酵素であり(非特許文献1:Fruman et al., Annual Rev Biochem 67, 481-507, doi:10.1146/annurev. biochem. 67.1.481 (1998))、様々な増殖因子受容体チロシンキナーゼにより活性化され、下流のAKTの活性化を介して、細胞の生存及び増殖を促進するように作用する(非特許文献2:Cantley, L. C. Science 296, 1655-1657, doi:10.1126/science. 296.5573.1655 (2002))。PI3Kは、がんに関連していることがわかっている。





PI3Kは、触媒サブユニット(catalytic subunit)と調節サブユニット(regulatory subunit)とからなるヘテロダイマーを形成している。PIK3CA遺伝子は、クラスIA PI3Kの触媒サブユニットであるp110αをコードする。このPIK3CA遺伝子については、乳がんや大腸がん等の様々ながん種において、高頻度の遺伝子増幅や機能獲得型の点突然変異が報告されている(非特許文献3:Samuels et al. Science 304, 554 (2004);非特許文献4:Ikenoue et al. Cancer Res 65, 4562 (2005);非特許文献5:Kang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102, 802 (2005))。

また、PI3Kとは逆反応を触媒する脱リン酸化酵素であるPTEN(Phosphatase and tensin homologue deleted on chromosome 10)は、シグナルメッセンジャーであるPIP3を減少させることによって細胞の増殖を抑制する(非特許文献6:Maehama et al., J. Biol. Chem. 273, 13375-13378 (1998))。PTEN遺伝子については、子宮内膜がんや悪性黒色腫など多くのがん種で欠失や点突然変異が見られ(非特許文献7:Salmena et al., Cell 133, 403-414 (2008))、その点突然変異のほとんどで脱リン酸化酵素活性が低下していることが報告されている(非特許文献8:Han et al. Cancer Res 60, 3147 (2000))。

これらの変異の結果、PI3K/AKT経路の異常な恒常的活性化が生じ、がん細胞の生存シグナルが伝達されると考えられている。





そのため、PI3Kは、がん治療における有力な標的分子として注目されており、近年、PI3K阻害剤の開発が盛んに行われている。いくつかの低分子PI3K阻害剤は臨床試験の段階に入っているが、未だ医薬品化されるに至ったものはない(非特許文献9:Kong & Yamori, Current Medicinal Chemistry 16, 2839-2854 (2009))。





一方、がんの発生にはエピジェネティックスの異常が深く関わっていることが明らかにされている。ヒストンアセチル化はエピジェネティックス制御の重要なメカニズムの一つであり(非特許文献10:Carew et al., Giles, Cancer Let 269, 7-17 (2008))、そのアセチル化を解除するヒストンデアセチラーゼ(以下「HDAC」という)の阻害により、遺伝子発現変化が生じ、それに伴って細胞分化やアポトーシスが引き起こされることがわかっている。このため、HDAC阻害剤は、新しいがん分子標的薬として注目を集めている。





デプシペプチド類化合物(特許文献1~4)は、1つ以上のアミド結合(-CONHR-)がエステル結合(-COOR)に置換されたペプチドの総称である。デプシペプチド類化合物の中でも、FK228(FR901228、ロミデプシンとも呼ばれている)は、クロモバクテリウム・ビオラセウムから発酵産物として単離された化合物であり(非特許文献11:Ueda et al. J. Antibiotics 47, 301 (1994))、クラスI HDACを選択的に阻害する強力なHDAC阻害剤である(非特許文献12:Furumai et al. Cancer Res 62, 4916 (2002))。FK228は、このHDAC阻害活性に基づいて抗がん剤として臨床試験が進められ、同じくHDAC阻害剤であるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)とともに、皮膚T細胞リンパ腫に対する治療薬として米国FDAの認可を受けている。

なお、用語「デプシペプチド」は、狭義ではFK228を指すが、本明細書においては上記の意義を有する用語として使用する。





ヒトがん細胞株において、PI3K阻害剤とHDAC阻害剤の併用は、殺細胞効果の増強や相乗作用をもたらすことが報告されている(非特許文献13:Wozniak et al. Haematologica 95, 613 (2010))。

HDAC阻害剤がそれ自体でPI3K/AKT経路に影響するか否かに関しては議論がある(非特許文献14:Hanker et al., J Molecular Signaling 4, 5 (2009);非特許文献15:Graham et al. Clinical Cancer Res 12, 223 (2006))。古典的なHDAC阻害剤であるトリコスタチンA(trichostatin A;TSA)は、プロテインホスファターゼ1(protein phosphatase 1)を介してリン酸化AKTを抑えることが報告されている(非特許文献16:Chen et al., J Biol Chem 280, 38879 (2005))。





FK228に関しても、細胞選択的にリン酸化AKTの発現を抑制するとした報告がある(非特許文献17:Kodani et al., Oncology Reports 13, 477-483 (2005))。しかし、その機序については明らかにされておらず、FK228のキナーゼ阻害活性を検討した文献もない。さらに、デプシペプチド類化合物がPI3K阻害活性を有することについては報告されていない。

産業上の利用分野



本発明は、新規のホスファチジルイノシトール3キナーゼ阻害剤及びこれを含有する医薬組成物に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の式1で示されるデプシペプチド類化合物又は生理学的に許容可能なその塩からなるホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害剤。
【化1】


式1

(式中、Aは、-CONH-又は-CH(OH)-を表し、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルキリデン基、置換もしくは無置換のアリール基又は置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。)

【請求項2】
式1において、R3が水素原子である、請求項1記載のPI3K阻害剤。

【請求項3】
式1において、R1が置換もしくは無置換のアラルキル基である、請求項1又は2記載のPI3K阻害剤。

【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載のPI3K阻害剤を有効成分として含有することを特徴とする、難治性がんの治療用医薬組成物。

【請求項5】
前記PI3K阻害剤が体重1kgあたり約1mg/日~10,000mg/日の投与用量で投与されることを特徴とする、請求項4記載の難治性がんの治療用医薬組成物。

【請求項6】
前記PI3K阻害剤が、以下の式2~20のいずれかで示されるデプシペプチド類化合物又は生理学的に許容可能なその塩である、請求項4又は5記載の難治性がんの治療用医薬組成物。

【化2】


式2

【化3】


式3

【化4】


式4

【化5】


式5

【化6】


式6

【化7】


式7

【化8】


式8

【化9】


式9

【化10】


式10

【化11】


式11

【化12】


式12

【化13】


式13

【化14】


式14

【化15】


式15

【化16】


式16

【化17】


式17

【化18】


式18

【化19】


式19

【化20】


式20

【請求項7】
以下の式1で示されるデプシペプチド類化合物又は生理学的に許容可能なその塩。
【化21】


式1

(式中、Aは、-CONH-又は-CH(OH)-を表し、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルキリデン基、置換もしくは無置換のアリール基又は置換もしくは無置換のアラルキル基を表す;但し、A、R1、R2及びR3の組合せが、A=-CONH-かつR1=エチリデン基かつR2=R3=イソプロピル基、A=-CH(OH)- かつR1=イソプロピル基かつR2=メチル基かつR3=水素原子、A=-CH(OH)- かつR1=sec-ブチル基かつR2=メチル基かつR3=水素原子、A=-CH(OH)- かつR1=R2=イソプロピル基かつR3=水素原子、A=-CONH- かつR1=エチリデン基かつR2=イソプロピル基かつR3=水素原子、A=-CONH- かつR1=R3=水素原子かつR2=イソプロピル基、A=-CONH- かつR1=メチル基かつR2=イソプロピル基かつR3=水素原子、及び、A=-CONH- かつR1=ベンジル基かつR2=イソプロピル基かつR3=水素原子、のいずれかである化合物を除く)
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 公開
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