TOP > 国内特許検索 > X線応力測定方法

X線応力測定方法

国内特許コード P150012239
整理番号 2012-004
掲載日 2015年9月1日
出願番号 特願2012-150939
公開番号 特開2014-013203
登録番号 特許第6011846号
出願日 平成24年7月4日(2012.7.4)
公開日 平成26年1月23日(2014.1.23)
登録日 平成28年9月30日(2016.9.30)
発明者
  • 佐々木 敏彦
出願人
  • 国立大学法人金沢大学
発明の名称 X線応力測定方法
発明の概要 【課題】より精度が高く、かつ、照射方向が限定された用途にも対応可能なX線応力測定方法を提供すること。
【解決手段】被検物にX線を照射して得られる回折環に基いて被検物内に存在する応力を測定するX線応力測定方法であって、垂直入射方向と1つの斜め入射方向にてX線を照射し、それぞれに回折環を得、垂直入射方向の回折環からは、剪断応力τxz、τyzを得、斜め入射方向の回折環からは、剪断応力τxyと、応力の関係式(σx-σz)、(σy-σz)を得、以上によって得られた剪断応力および応力の関係式からz軸方向の応力σzを求め
、これらをもって、6個の3軸応力成分σx、σy、σz、τxy、τyz、τxzを得る。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


X線応力測定法は、材料(特に、金属などの結晶性材料)にX線を照射したときの回折の情報から、材料中の応力の状態を求める方法である。X線応力測定法では、応力によって格子面間隔が変化することが利用され、その変化を、回折X線の角度と強さの関係を測定することで求め、歪や応力が算出される。



X線応力測定は、軟X線による背面反射回折を利用するため吸収の影響を受けやすく、サンプリング領域は深さ数10μm程度以下の極表層となる。表面の応力測定のため、平面応力状態を仮定した測定原理が用いられている。
一方、X線回折現象を利用してひずみ測定が行われるため、多相材料においては測定に関与する構成相が1つに限定される性質もある。その結果、X線応力測定には微視的な応力状態(ミクロ応力)の影響が現れることも知られている。研削加工後の鋼材や、鉄道レール等のX線応力測定においては3軸応力が測定され、これらのsin2Ψ線図は、いわゆるΨスプリットと称される楕円状の分布を示す場合がしばしばある。
3軸応力は、被検物の表面(x-y平面)に沿った成分(x軸、y軸方向の成分)と、該表面の法線に沿った方向(垂直方向、z軸方向)の成分とを持った、3次元方向の応力を同時に含む応力状態である。



変形挙動が異なる微細な第二相が分布する材料においては、単軸応力の負荷においても、微視的スケールでは構成相間に3軸応力が発生して平衡しているとの報告もある。このため、様々な外力にさらされる機械部品中の各構成相においては3軸応力状態が出現し、部品の材料強度に大なり小なり関わっていることが想像される。
このようなミクロレベルの3軸応力状態を解明する上では、結晶格子レベルの現象を利用することと、構成相ごとに回折線が別々に分離する性質を利用できることからX線応力測定技術が最適であり、しかも実用的な利用も期待できるという利点がある。



X線照射によって3軸応力を測定する方法(X線3軸応力測定法)の別方式の技術は、デール(Dolle("o"はウムラウト付き))らによって提案されている。しかしながら、デールらの測定法は、合計
6方向の格子ひずみ分布(sin2Ψ線図)を用いるために、測定と解析に、複雑な装置と多大な測定時間とを要するという問題がある。このような方法では、実験室での実施では特に問題は生じないが、建設現場、被検物が敷設された現場、生産ラインなど、比較的迅速な測定作業が求められる現場などでは適用が困難である。



上記のような従来のX線応力測定方法の問題に対し、本発明者は、X線を照射して得られる回折環の全体の情報を、イメージングプレート(IP)やCCDなどのエリアディテクタによって解析に利用するX線平面応力測定法(特許文献1、2)、X線3軸応力測定法(非特許文献1~3)を提案しており、測定と解析の無駄を軽減している。以下、非特許文献1に記載された基本的なX線3軸応力測定法を、「基本的なエリアディテクタ方式のX線3軸応力測定法」と呼んで説明する。
基本的なエリアディテクタ方式の3軸応力測定法では、例えば、回折環の中心角を1度間隔に解析すると、回折環全体からは合計360個の格子ひずみが得られるので、6個の3軸応力成分の決定に対して十分なデータが得られる。



次に、基本的なエリアディテクタ方式のX線3軸応力測定法について、その測定の原理を説明する。
尚、現場での測定や実用性を考慮すると、試料の設定の影響を受けやすくなる回折データの絶対値の使用をなるべく避け、相対的な変化を利用することが望ましい。この点から、以下の説明では、平面応力測定法(sin2Ψ法)のような、回折データの相対的変化を通した3軸応力測定法について述べる。



実使用される金属材料の多くは、微細な結晶粒の集合体であり、X線を照射すると、次式(1)のブラッグの条件に従って回折X線が発生する。
〔式(1)〕



ここで、dは格子面間隔、θはブラッグ角、λはX線の波長、nは回折次数である。以下、n=1を用いる。
回折X線は、照射点(X線照射の標的となる測定点)を頂点とする円錐の側面を形成するように発生するため、入射X線に対して垂直にエリアディテクタを置くと、ほぼ円形の回折環が測定される。
デールらの測定方法では、回折環の一端の回折強度分布測定を通してθを決定し、応力計算に用いる。
これに対して、基本的なエリアディテクタ方式の3軸応力測定法では、図8のように最初に回折環半径Rが得られ、次いで次式(2)を用いてブラッグ角θ(単位:ラジアン)を得る。
〔式(2)〕



ここで、CLは、X線照射点と検出器との距離である。



上記のようにして得られるブラッグ角θの値は、回折に寄与した一群の格子面に対する平均値である。上記式(1)の微分から、格子面の法線方向の縦ひずみεとブラッグ角θとの関係が次式(3)のように導かれる。
〔式(3)〕



ここで、Δdは、格子面間隔dの変化量、即ち、無ひずみ時のdの値をd0としたとき
に、Δd=d-d0である。
また、Δθは、ブラッグ角θの変化量、即ち、無ひずみ時のθの値をθ0としたときに
、Δθ=θ-θ0である。



次に、図9に示すように、被検物表面の照射点(測定点)において直交するxy座標を該表面に規定し、かつ、該表面の法線をz軸と規定し、原点(=照射点)における3軸方向の各応力(即ち、x軸方向の応力σx、y軸方向の応力σy、z軸方向の応力σz)と、
各剪断応力(τxy、τxz、τyz)とを次式(4)のように表記する。尚、τxyは、xy面のずれを生じさせる応力を表し、同様に、τxzは、xz面のずれを生じさせる応力を表し、τyzは、yz面のずれを生じさせる応力を表している。
〔式(4)〕




回折環の中心角がαの位置から上記式(3)を用いて得られるひずみをεαと書くと、上記式(4)の応力に対して、次式(5)が成立する。
〔式(5)〕



ここで、Eは縦弾性定数、vはポアソン比である(いずれも回折弾性定数)。



上記式(5)は、基本的なエリアディテクタ方式の3軸応力測定法の基礎式である。該式中のn1~n3は、試料座標系に対するεαの方向余弦であり、それぞれ次式(6)で表される。
〔式(6)〕



ここで、
ηは、ブラッグ角θの補角〔(π/2)-θ〕であり、
Ψ0は、測定点における被検物表面に対する法線と入射ビームとのなす角であり、
φ0は、被検物表面への入射ビームの投影とx軸とのなす角である。



図8に示すように、任意のφ0に対する回折環において、
εα:中心角α方向のひずみ、
επ+α:εαに対して中心角がπだけ異なる方向のひずみ、
ε:中心角-α方向のひずみ、
επ-α:εに対して中心角がπだけ異なる方向のひずみ
について考え、これらを用いて次式(7)で表されるa1~a3を求める。
〔式(7)〕




上記式(7)に上記式(5)を代入すると、φ0=0°のとき、次式(8)が得られる

〔式(8)〕



ここで、ΦおよびΨは、それぞれ、次式(9)のとおりである。
〔式(9)〕










上記式(8)より、a1およびa2は、それぞれ、cosα、sinαに関して直線的であることが判明する。また各直線の傾きは次式(10)で表される。
〔式(10)〕







次に、上記式(10)のそれぞれについて、Ψ0>0(即ち、φ0=0°側に傾いた方向からの入射)と、Ψ0<0(即ち、前者とは逆方向の、φ0=180°側に傾いた方向からの入射)とに関する平均および偏差を求め、次式(11)のように、b1~b4と表す。
〔式(11)〕











上記式(10)を上記式(11)へ代入して整理すると、φ0=0°のとき次式(12
)が得られる。
〔式(12)〕



上記式(12)から、全ての剪断応力成分(τxy、τxz、τyz)と、x軸z軸の応力関係式(σx-σz)とが得られる。



一方、上記式(8)、上記式(9)のΦより、y軸方向、z軸方向の応力の関係式(σy-σz)に関する次式(13)の関係が得られる。
〔式(13)〕



ここで、Φは、εαによって求められた上記式(7)のa3を、cos2αに対して直線近
似したときの傾きであり、測定により得ることができる。
既に、上記式(12)によって、上記式(13)の右辺の(σx-σz)とτxzが判明しているので、上記式(13)とΦとから、(σy-σz)が決定できる。



垂直応力成分σzを明らかにするためには、上記式(5)から導出される次式(14)
の関係を用いる。
〔式(14)〕



ここで、Xは、次式(15)のように表される。
〔式(15)〕



上記式(15)のとおり、Xは、ここまでに判明した応力成分と既知数だけからなり、計算により値が確定する。従って、得られたXを上記式(14)に代入すると、Eおよびvは既知であるから、σzが判明する。
このようなσzは、回折環全体から得られる360個のデータの1つ1つからσzが得られるが、ばらつきの影響を考慮して、それらの平均値を採用することが好ましい。
σzと、既に得られている応力関係式(σx-σz)と(σy-σz)とから、σxとσy
判明し、その結果、6個の3軸応力成分(σx、σy、σz、τxy、τyz、τxz)がすべて
判明する。



以上が、基本的なエリアディテクタ方式の3軸応力測定法における3軸応力成分決定の原理である。しかし、このような基本的な方法では、ポアソン効果のために、φ0=0°
および180°方向だけから測定した回折環の半径変化にσyの作用が反映され難く、結
果、σy成分についての測定精度が低くなる。
一方、上記したデール(Dolle)らの方法は、X線3軸応力測定法の標準法とも言える
ものであるが、上記したとおり6方向に対する〔2θとsin2Ψとの関係〕を必要とするため、計測時間を要するという問題があり、また、スラストベアリングなどの溝部や狭いスペースを有する機械部品等においては必要な〔2θとsin2Ψとの関係〕についての計測データが得られないケースも起こり得る。

産業上の利用分野


本発明は、被検物にX線を照射することで、該被検物内に存在する応力(とりわけ3軸応力)を測定するX線応力測定方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
被検物にX線を照射して得られる回折環に基いて被検物内に存在する応力を測定するX線応力測定方法であって、
前記被検物は、溝の底面であり、
被検物表面の測定点において直交するxy座標を被検物表面に規定し、かつ、該xy座標のx軸の方向を、前記溝の長手方向に一致するように規定し、かつ該測定点における該被検物表面の法線をz軸と規定して、該測定点に対して、下記(I)で規定される垂直入射方向と1つの斜め入射方向にてX線を照射し、それぞれに回折環を得、
垂直入射方向の回折環からは、剪断応力τxz、τyzを得、
斜め入射方向の回折環からは、剪断応力τxy、および、〔x軸方向、z軸方向の応力の関係式(σx-σz)〕、および、〔y軸方向、z軸方向の応力の関係式(σy-σz)〕を得、
以上によって得られた剪断応力および応力の関係式からz軸方向の応力σzを求め、これらをもって、6個の3軸応力成分σx、σy、σz、τxy、τyz、τxzを得ることを特徴とする、X線応力測定方法。
(I)測定点における被検物表面の法線に沿って測定点へ向かう垂直入射方向と、該法線から所定の入射角度Ψ0だけ傾いて測定点へ向かう1つの斜め入射方向であって、該斜め入射方向は、被検物表面に投影したときに、その投影がxy座標のx軸に一致する方向である、前記垂直入射方向と斜め入射方向。

【請求項2】
z軸方向の応力σzを、垂直入射方向および斜め入射方向の回折環から複数得られる応力σzの平均値とする、請求項1記載のX線応力測定方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2012150939thum.jpg
出願権利状態 登録
(有)金沢大学ティ・エル・オーは、金沢大学の研究者の出願特許を産業界へ技術移転することを主目的として、金沢大学の教官の出資により設立された技術移転機関です。
ご興味のある方は、下記「問合せ先」へ整理番号と共にご連絡願います。
なお、既に活用のお申し込み・お打合わせ等の段階に入っている場合もございますので、予めご承知おきください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close