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ハロゲン-リチウム交換反応を用いる有機化合物の製造法

国内特許コード P150012382
整理番号 908
掲載日 2015年10月16日
出願番号 特願2005-058851
公開番号 特開2006-241065
登録番号 特許第4794873号
出願日 平成17年3月3日(2005.3.3)
公開日 平成18年9月14日(2006.9.14)
登録日 平成23年8月5日(2011.8.5)
発明者
  • 日景 繁樹
  • 吉田 潤一
  • 川口 達也
出願人
  • 富士フイルムファインケミカルズ株式会社
  • 宇部興産株式会社
  • 国立大学法人京都大学
発明の名称 ハロゲン-リチウム交換反応を用いる有機化合物の製造法
発明の概要 【課題】医薬品、農薬、液晶、電子写真や染料等の分野で有用な化合物のハロゲン-リチウム交換反応による有機化合物の製造法を、マイクロリアクターを用いることにより、特別な冷却装置が不要な、安価で安全、かつ公害の問題を生じない製造方法を提供する。
【解決手段】ハロゲン化合物とリチウム試薬とを、反応温度が-10~40℃かつ滞留時間が0.001~10秒の条件下でマイクロリアクターを用いて反応させて下記一般式(I)で表されるリチウム化合物(式中、Aで表される環は、芳香環、飽和環、部分飽和環又はヘテロ環を表す)を製造し、引き続きマイクロリアクターを用いて連続して求電子化合物と反応させて、Li基を求電子基に交換する。



【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


ハロゲン置換有機化合物のハロゲン原子を他の求電子基に変換する合成手法の一つとして、ハロゲン-金属交換反応が知られている(非特許文献1、2参照)。ここで用いられるメタル化試薬には、グリニヤール試薬、リチウムマグネシウムアート錯体やリチウム銅アート錯体、及び有機リチウム試薬等が挙げられる。



グリニヤール試薬は一般に反応性が低く、例えばアリールクロリドやアリールブロミドを用いる場合には反応可能な基質が限定されたり、試薬を過剰量使用したり、長い反応時間を必要とする等の問題がある(非特許文献3参照)。アリールヨージドを使用する場合は反応性が高いが、原料へのヨード基の導入はコストが高く、工業的には好ましくない。
有機リチウムマグネシウムアート錯体(特許文献1参照)や有機リチウム銅アート錯体(非特許文献4参照)は、適度な反応性と安定性を有する試薬として知られている。これらは、反応活性の異なる反応基質に対して、アート錯体の置換基のアルキル鎖の種類や反応温度を工夫することで反応性を調節することができ、極低温条件を必要としないため工業的に有用である。しかし、反応の度にアート錯体を調整する必要があり、製造工程が1工程増えるため製造が煩雑になる。



これに対して、有機リチウム試薬は反応性が高く、基質の適用範囲が広いので有用性が高い。しかし、この方法で生成するリチウム中間体もまた反応性が高く且つ熱安定性が低いことから、副反応を避ける為に超低温下で反応を行う必要があり、また結晶状態にして反応性を低下させる等の対策を取らなければならない。また、ハロゲン-リチウム交換反応及び生成したリチウム中間体と求電子試薬との反応はどちらも発熱反応であり、仕込み時に長時間の滴下を必要とする。特に工業的規模では、禁水性危険物である有機金属化合物の大量使用や発熱反応の暴走といった安全性リスクの面や、設備建設やその維持にかかるコストの面で問題が多い(非特許文献5参照)。
更に、上記リチウム中間体の中でもリチオピリジンに代表されるヘテロ芳香族リチウム化合物は特に不安定であり、リチオ化反応並びに求電子化合物との反応を-80℃で行った場合でも目的物の収率が極めて低い。不安定なリチウム化合物を用いる方法として、イン・サイト・クエンチ法が報告されている(非特許文献6、7参照)。これは、予めハロゲン化合物と求電子化合物を共存させた溶液にリチウム試薬を滴下し、リチウム中間体を発生させると同時に反応系中で求電子化合物との捕捉反応を行う方法である。しかし、この方法は求電子化合物とリチウム中間体との反応速度よりリチオ化反応の反応速度が大きい場合に限られ、原料基質の種類と反応温度設定によって反応が大きく影響するという欠点がある。



このような種々の課題があるにも関わらず、上記のハロゲン-リチウム交換反応で得られる化合物は、医薬品、農薬、液晶、電子写真や染料等の分野で合成中間体として有用性が高い。一例を挙げると、2-ブロモピリジンを原料とする2-リチオピリジンは、ファルマコアとして有用な2,4'-ビピリジン誘導体の合成中間体である。この2,4'-ビピリジン誘導体は、例えばtetrabenazine antagonist(非特許文献8参照)、α1A receptor antagonist(特許文献2参照)、5-HT1A receptor antagonist(特許文献3参照)、α1A receptor antagonist(特許文献4参照)等の合成中間体に用いられている。



有機リチウム試薬を用いた反応の種々の問題を解決する手段として、連続流通反応装置を使用した製造方法が報告されている(特許文献5、6参照)。連続流通反応器は器内の容積が小さく、数千リットルの大容量反応釜と比較して反応器内の原料の濃度分布や温度分布を均一にできる。また、熱に不安定なリチウム中間体を大量に保管することなく連続して次工程に進めるので、収率低下のリスクが低減され、この方法のメリットは大きい。しかし、特許文献5では攪拌機に徐熱能力が十分ではないスタティックミキサーを使用しており、リチウム中間体の熱劣化の問題は解決されていない。また、この方法ではバッチ反応と同様に-70~-35℃の極低温条件下で行なわれており、特殊な冷却装置が必要であるため、製造コストは高い。特許文献6では連続流通反応装置の具体的な構成は記載されていないが、-35℃の低温条件下で行なわれており、工業的規模で行なうにはコスト的に問題がある。



最近、マイクロリアクターを用いた合成反応に関する研究が盛んに行われている(非特許文献9、10参照)。マイクロリアクターは正確な流れの制御、温度制御や迅速な混合が可能と考えられ、従来実施されているバッチ反応と比較して収率の向上や選択性の拡大が期待できるので、高効率な生産方法として注目されている。
マイクロリアクターによるリチオ化反応の実験例も幾つか報告されており、例えば、脱プロトン化によるリチウム中間体およびそれを経由するホウ素化合物の合成法(特許文献7参照)、ハロゲン-リチウム交換反応を用いたTramadolの合成(非特許文献11参照)3-リチオアニソールの合成およびそれとN,N-ジメチルホルムアミド(以下DMFと略記する)との反応(非特許文献12参照)等が挙げられる。これらの例では、マイクロリアクターを使用しない従来のバッチ反応に比べていずれも収率が向上しているが、しかし、特許文献7や非特許文献11では実際には、やはり-30℃や-14℃といった低温条件下で反応が行われている。非特許文献12では、マイクロリアクターを2個直列に接続した装置を用い、第一反応のリチオ化を0℃、滞留時間0.19分の条件で行い、次いで第二反応のDMFとの反応を0℃、滞留時間0.15分の条件で行っている。この方法は、これまでの方法に比べて取扱いの容易な反応温度で目的物が88%の高収率で得られており、画期的な方法である。しかし、この条件では、特に不安定なヘテロ芳香族リチウム化合物に適しているとはいえず、更なる方法が模索されている。
【特許文献1】
国際公開第01/57046号公報
【特許文献2】
国際公開第99/07695号公報
【特許文献3】
国際公開第99/03847号公報
【特許文献4】
米国特許第6159990号公報
【特許文献5】
特開2000-229981号公報
【特許文献6】
特開2000-239282号公報
【特許文献7】
特開2003-113185号公報
【非特許文献1】
“ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)"、 1982年 47巻 p.331
【非特許文献2】
“ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)"、 1986年 52巻 p.473
【非特許文献3】
“アンゲバンテ ヘミィ インターナショナル イングリッシュ エディション(Angewante Chemie International English Ed.)"、 2000年 39巻 p.4414
【非特許文献4】
“アンゲバンテ ヘミィ インターナショナル イングリッシュ エディション(Angewante Chemie International English Ed.)"、 2002年 41巻 p.3263
【非特許文献5】
“ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(The Journal of Medicinal Chemistry)" 、 1999年 42巻 p.1088
【非特許文献6】
“ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)"、 2002年 67巻 p.5394
【非特許文献7】
“ジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサエティ(Journal of the American Chemical Society)"、 1983年 105巻 p.1983
【非特許文献8】
“ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(The Journal of Medicinal Chemistry)" 、 1984年 27巻 p.1182
【非特許文献9】
“チミア(Chimia)" 、 2002年 56巻 p.636
【非特許文献10】
“テトラヘドロン(Tetrahedron)" 、 2002年 58巻 p.4735
【非特許文献11】
“オーガニック プロセス リサーチ アンド デベロップメント(Organic Process Research and Development)"、 2004年 8巻 p.455
【非特許文献12】
“オーガニック プロセス リサーチ アンド デベロップメント(Organic Process Research and Development)"、 2004年 8巻 p.440

産業上の利用分野


本発明は、マイクロリアクターを用いたハロゲン-リチウム交換反応により、医薬品、農薬、液晶、電子写真や染料等の分野で有用な化合物を製造する方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
ハロゲン化合物とリチウム試薬とを、反応温度が-10~40℃かつ滞留時間が0.001~0.3秒の条件下でマイクロリアクターを用いて反応させることを特徴とする下記一般式(I)で表されるリチウム化合物の製造方法。
【化1】



式(I)中、Aで表される環は、芳香環、飽和環、部分飽和環又はヘテロ環を表す

【請求項2】
Aで表される環がヘテロ環である請求項1記載のリチウム化合物の製造方法。

【請求項3】
請求項1の方法により製造したリチウム化合物を、引き続きマイクロリアクターを用いて連続して求電子化合物と反応させることを特徴とする下記一般式(II)で表される化合物の製造方法。
【化2】



式(II)中、Aで表される環は、前記と同じ意味を有する。Yは求電子基を表す。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録
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