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移植後の生着能を有する神経細胞と固体3次元マトリックスとの複合体

国内特許コード P150012438
整理番号 4280
掲載日 2015年10月16日
出願番号 特願2013-182472
公開番号 特開2015-047140
出願日 平成25年9月3日(2013.9.3)
公開日 平成27年3月16日(2015.3.16)
発明者
  • 大西 弘恵
  • 中川 隆之
  • 伊藤 壽一
出願人
  • 国立大学法人京都大学
発明の名称 移植後の生着能を有する神経細胞と固体3次元マトリックスとの複合体
発明の概要 【課題】本発明は、神経損傷部位への細胞移植療法において、術者の技量に依らず再現性に富む方法で細胞を移植でき、細胞移植後にガン化の危険性がなく、移植細胞の拡散を抑制し、万が一移植細胞の悪性化が生じた場合であっても、すぐにこれを除去することができる、新たな細胞移植療法を確立することを目的とする。
【解決手段】本発明は、移植後の生着能を有する神経細胞と固体3次元マトリックスとの複合体及びその製造方法、並びに神経幹細胞又は神経前駆細胞と固体3次元マトリックスとを組み合わせてなる神経細胞移植用キット製剤を提供する。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


神経系は、脳・脊髄の中枢神経系と、運動神経・感覚神経・自律神経などの末梢神経系に大別され、シグナルを伝えるネットワークとして重要な役割を果たしている。神経系は主に神経細胞(ニューロン)から構成されており、神経細胞は、加齢や外因性・内因性ストレスなど様々な要因によって変性・脱落する。その一方、神経細胞自体の再生については、成体脳の一部領域に存在する内在性神経幹細胞又は神経前駆細胞から神経細胞の新生が起こることが報告されているものの、この内在性神経幹細胞又は神経前駆細胞はごく限られた再生能力しか有さない。従って、大規模な神経細胞の変性・脱落を伴う疾患、例えば神経変性疾患や神経損傷などの治療には、移植により外部から神経細胞を補充することが最も現実的であると考えられている。この目的のために、近年、胚性幹細胞(以下、ES細胞とも称する)、人工多能性幹細胞(以下、iPS細胞とも称する)、骨髄由来間葉系細胞などの幹細胞を用いた細胞移植療法が注目されている。



感音難聴は、音を電気信号に変換する蝸牛から、音を分析・認知する大脳までの間に障害がある場合に起こる難聴であり、高頻度(例えば、60歳以上の人口の約60%)に見られる先天性又は後天性の身体障害である。現在のところ、高度の感音難聴者にとって唯一の聴覚獲得手段は人工内耳である。しかし、人工内耳は、蝸牛の一次神経細胞であるラセン神経節細胞(聴神経)を直接電気刺激することにより聴覚を得る方法であるため、ラセン神経節細胞自体が障害を受けている場合には、その有効性は損なわれる。そのため、外部から幹細胞を移植し、障害を受けたラセン神経節細胞を補充する試みがなされている。



これまで、ラセン神経節細胞を補充するための細胞ソースとして、ES細胞、骨髄由来間葉系幹細胞、神経幹細胞が数多く研究されている(非特許文献1)。例えば、ラセン神経節変性モルモットの蝸牛にマウスES細胞由来神経前駆細胞を移植するとeABR(電気誘発性聴性脳幹反応)が改善したこと(非特許文献2)、ラセン神経節変性スナネズミの蝸牛軸にヒトES細胞由来神経前駆細胞を移植すると神経前駆細胞が生着、分化し、ABR(聴性脳幹反応)が改善したことが報告されている(非特許文献3)。さらに、in vitroでマウスES細胞を神経前駆細胞に分化誘導し、これをニューロスフェアの形態でペプチドヒドロゲルに包埋した後、ラセン神経節変性モルモットのローゼンタール管に移植する方法も報告されている(非特許文献4)。
また、マウスiPS細胞由来神経前駆細胞をマウス蝸牛に移植すると、マウスES細胞由来神経前駆細胞と同様に神経細胞に分化したことも報告されている(非特許文献5)。



これらの研究から多能性幹細胞由来の神経幹細胞又は神経前駆細胞を移植することによるラセン神経節細胞の補充が人工内耳の有効性を高めることが示唆されている。しかしながら、この移植方法は高度な手術手技を要し、細胞移植成功率に大きなばらつきが生じている。臨床応用に際しては、より再現性に富む方法での機能改善が望ましい。



また臨床応用に際しては安全性の担保も非常に重要である。上記の従来の移植研究では、ラセン神経節細胞の補充のために神経幹細胞又は神経前駆細胞の移植が行われているが、臨床に際しては増殖能を保持した神経幹細胞又は神経前駆細胞ではなく分化した神経細胞の移植が望まれる。しかしながら、神経細胞を培養容器から剥離して細胞懸濁液を調製すると、細胞の性質上生存率が悪く移植には不向きである。さらに、これまでの多くの報告に有るように、神経幹細胞又は神経前駆細胞を蝸牛軸に直接注入する方法では万一移植細胞がガン化等の悪性化を生じた場合に除去することが極めて困難である。

産業上の利用分野


本発明は、移植後の生着能を有する神経細胞と固体3次元マトリックスとの複合体及びその製造方法、並びに神経幹細胞又は神経前駆細胞と固体3次元マトリックスとを組み合わせてなる神経細胞移植用キット製剤に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
移植後の生着能を有する神経細胞と固体3次元マトリックスとの複合体。

【請求項2】
神経細胞が固体3次元マトリックス上で神経幹細胞又は神経前駆細胞から分化したものである、請求項1記載の複合体。

【請求項3】
固体3次元マトリックスが、コラーゲン、ラミニン及びフィブロネクチンからなる群より選択される少なくとも1種により形成される、請求項1又は2記載の複合体。

【請求項4】
固体3次元マトリックスがスポンジ状である、請求項1~3のいずれか一項記載の複合体。

【請求項5】
神経細胞が内耳神経細胞である、請求項1~4のいずれか一項記載の複合体。

【請求項6】
神経幹細胞又は神経前駆細胞を固体3次元マトリックスに播種し、該細胞を増殖させた後、固体3次元マトリックス上で神経細胞に分化させることを特徴とする、移植後の生着能を有する神経細胞と固体3次元マトリックスとの複合体の製造方法。

【請求項7】
神経幹細胞又は神経前駆細胞が多能性幹細胞に由来する、請求項6記載の方法。

【請求項8】
神経細胞が内耳神経細胞である、請求項6又は7記載の方法。

【請求項9】
神経幹細胞又は神経前駆細胞と固体3次元マトリックスとを組み合わせてなる神経細胞移植用キット製剤であって、該神経幹細胞又は神経前駆細胞が該固体3次元マトリックス上で神経細胞に分化した状態で神経細胞損傷部位に留置される、キット製剤。

【請求項10】
神経幹細胞又は神経前駆細胞が多能性幹細胞に由来する、請求項9記載のキット製剤。

【請求項11】
固体3次元マトリックスが、コラーゲン、ラミニン及びフィブロネクチンからなる群より選択される少なくとも1種により形成される、請求項9又は10記載のキット製剤。

【請求項12】
固体3次元マトリックスがスポンジ状である、請求項9~11のいずれか一項記載のキット製剤。

【請求項13】
神経細胞が内耳神経細胞である、請求項9~12のいずれか一項記載のキット製剤。

【請求項14】
神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を未分化のまま増殖させるための神経幹細胞維持培地、並びに/或いは該増殖した細胞を神経細胞に分化させるための神経分化誘導培地をさらに含む、請求項9~13のいずれか一項記載のキット製剤。

【請求項15】
神経幹細胞又は神経前駆細胞を固体3次元マトリックスに播種し、該細胞を増殖させた後、固体3次元マトリックス上で神経細胞に分化させて得られる、移植後の生着能を有する神経細胞と固体3次元マトリックスとの複合体。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開
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