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放射線線量測定用のゲル線量計およびその製造方法 新技術説明会

国内特許コード P150012445
掲載日 2015年10月21日
出願番号 特願2014-017201
公開番号 特開2014-209093
出願日 平成26年1月31日(2014.1.31)
公開日 平成26年11月6日(2014.11.6)
優先権データ
  • 特願2013-069797 (2013.3.28) JP
発明者
  • 前山 拓哉
  • 姫野 龍太郎
  • 高木 周
  • 福西 暢尚
  • 野田 茂穂
  • 古田 琢哉
  • 深作 和明
  • 石川 顕一
出願人
  • 国立研究開発法人理化学研究所
発明の名称 放射線線量測定用のゲル線量計およびその製造方法 新技術説明会
発明の概要 【課題】 ゲル線量計などの線量計により3次元線量分布を測定する。
【解決手段】 本発明のある実施形態のゲル線量計においては、溶媒または分散媒である水と、水により膨潤する粘土微粒子と、記録物質前駆体と互いに溶解または分散させて含んでいる放射線線量測定用のゲル線量計が提供される。記録物質前駆体は、放射線が照射されると水から電離して生成されるいずれかのラジカル、およびラジカルが互いに結合して生成される分子である分子状ラジカル誘導物の双方と反応して価数を変化させることとなる原子またはイオンを含んでいる。上記ゲル線量計においては、放射線が照射される前には分子状ラジカル誘導物と同種の物質が残存しておらず流動性が消失している。
【選択図】図5
従来技術、競合技術の概要


陽子線や重粒子線(炭素線、ネオン線等)といった線量集中性の高い荷電粒子線を利用する粒子線治療が実施されている。粒子線治療は、従来のX線治療に比べ放射線照射の照
射位置および線量をより高精度に制御して腫瘍を治療することができる利点を有している。粒子線治療において求められるのは、生体組織中の病巣などの標的位置にて粒子線からのエネルギーを適正に放出させること、および、標的周囲の正常組織に対しては可能な限り影響を与えないこと、の両立である。これらを目的に、粒子線ビームの径方向の広がりや粒子線ビームのブラッグピークの位置が被照射体中の標的位置に対し位置合わせされる。また、IMPT(Intensity Modulated Particle Therapy: 強度変調粒子線治療)といった高精度な治療も導入されつつあり、その治療法では標的の3次元的な各位置に対する微視的エネルギー付与量の積算値(すなわち線量分布)が精密に調整される。なお、一つの粒子が物質中の分子の電離(励起も含む。以下同様)を生じさせる際の微視的エネルギー付与量は、線エネルギー付与(Linear Energy Transfer:LET)と呼ばれる一粒子が物質に与える単位長さあたりのエネルギー値であり、プラッグピークとは、飛程末端に位置するLETのピークである。詳細には、入射粒子の速度の二乗に反比例して物質との相互作用、つまり電離する量が増えるため、陽子線や重粒子線などの粒子線では、粒子の飛程末端付近の位置において多くのエネルギーが粒子線から物質に付与される。また、各位置における微視的エネルギー付与量を各粒子について積算すると各位置における線量となる。



実際の粒子線治療における治療計画では、生体組織中における3次元での各位置における線量の分布が最適化される。典型的な治療計画では、放射線の影響が強い範囲を実際の標的組織の形状に合わせ、その標的組織における線量分布(各位置への放射線による線量)も治療目的に合わせて変形される。それと同時に、周辺の正常組織への放射線の影響も抑えられ、リスク臓器(organ at risk)に対する影響も可能な限り小さくされる。なお、粒子線治療に通常用いられる線量集中性の高い粒子線により幅および深さに広がりのある複雑な形状の領域に目的とする効果を与えるために、ビームが精密に制御され、多重に照射されることもある。この制御は、ペンシルビームを拡げたり、ブラッグピークを拡大することに加え、その領域に合わせてブラッグピークを整形したりするものである。このために、粒子照射装置には、各種の付属機器(ウォブラー、リッジフィルタ)や、被照射体に合わせて調整されるフィルター・コリメータ類(レンジシフター、マルチリーフコリメーター、ボーラス等)が装備される。そして、高度に制御された放射線治療を実現するためには、粒子照射装置や付属機器およびフィルター・コリメータ類等を含めた装置全体、ならびにそれら装置による照射処理において、高度な品質保証・品質管理(quality assurance and quality control, 以下「QA/QC」と略記する)が必要となる。



このような治療計画および各種装置のQA/QCのためには、様々な方向から様々な加速エネルギーで入射する多数の粒子によるエネルギー付与量を適切に積算して実測できる技術が必要である。エネルギー付与量を積算して線量を各位置において精密に測定することができれば、上記QA/QCの裏付けとなる3次元でのエネルギー付与量の分布(線量分布)を測定する事が可能となるためである。この目的では従来、電離箱線量計、半導体検出器、フィルムといった1次元または2次元での線量計が用いられている。これらの線量計では、粒子線を標的位置に位置合わせする領域のうち、1次元または2次元の座標に対する上記線量分布が実測される。近年はこれらの線量計に加え、化学線量計の測定原理を利用したゲルにより3次元の線量分布を測定することが可能なゲル線量計が注目されている。ゲル線量計を利用すれば、さらに、生体と等価とみなしうる材質である水の各位置において放射線により付与されるエネルギー量を正確に測定すること、つまり、生体等価物質や水等価物質における放射線の影響が測定できる、という利点もある。ゲル線量計では、それ自体を固体ファントムとして利用しつつ、3次元での線量分布を取得できるのである。



ゲル線量計には、大別すると、ポリマー・ゲル線量計、フリッケ・ゲル線量計、二クロム酸・ゲル線量計=重クロム酸・ゲル線量計(DCG線量計、dichromate gel dosimeter)が知られている。これらのうち、プレポリマーの架橋反応を記録するポリマー・ゲル線量計(例えば特許文献1)では拡散の問題を解決している。他方、アンモニウム鉄(II)や硫酸第一鉄(II)の水溶液をゲル化したフリッケ・ゲル線量計、および二酸化クロム(酸化クロム(IV))の水溶液をゲル化したDCG線量計は、放射線照射後の拡散に起因して記録された像が経時的に不明瞭になりやすいという課題がある。このため、本願の発明者らは、フリッケ・ゲル線量計の一種であるフリッケ・キシレノール・ゲル(FXG)線量計やDCG線量計を被照射体にして、ナノクレイと呼ばれる粘土微粒子を混合して拡散を抑制することを試行し、記録の経時的な保持性に関し一定の成果を得ている(非特許文献1)。

産業上の利用分野


本発明は放射線線量測定用のゲル線量計およびその製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、3次元線量分布を測定するための放射線線量測定用のゲル線量計およびその製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
溶媒または分散媒である水と、
粘土微粒子と、
放射線が照射されると水から電離して生成されるいずれかのラジカル、および該ラジカルが互いに結合して生成される分子である分子状ラジカル誘導物の双方と反応して価数を変化させることとなる原子またはイオンを含む記録物質前駆体と
を互いに溶解または分散させて含んでおり、
放射線が照射される前には前記分子状ラジカル誘導物と同種の物質が残存しておらず、
放射線が照射される時点において流動性が消失している
放射線線量測定用のゲル線量計。

【請求項2】
前記分子状ラジカル誘導物と同種の物質が残存することを妨げるラジカル誘導物阻害物質をさらに含む請求項1に記載のゲル線量計。

【請求項3】
前記分子状ラジカル誘導物が酸素であり、
前記ラジカル誘導物阻害物質が酸素を含まない気体である、請求項2に記載のゲル線量計。

【請求項4】
前記ラジカル誘導物阻害物質は、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガスからなる群から選択される少なくとも1種の気体である、請求項3に記載のゲル線量計。

【請求項5】
前記ラジカル誘導物阻害物質が亜酸化窒素ガスである、請求項3に記載のゲル線量計。

【請求項6】
前記分子状ラジカル誘導物が酸素であり、
前記原子またはイオンは、前記ラジカルと前記分子状ラジカル誘導物との双方と反応して酸化されるものである、請求項1に記載のゲル線量計。

【請求項7】
前記記録物質前駆体がアンモニウム鉄(II)および硫酸第一鉄(II)の少なくともいずれかを含むものであり、
前記原子またはイオンが鉄(II)イオンである、請求項6に記載のゲル線量計。

【請求項8】
前記粘土微粒子は、前記分子状ラジカル誘導物により前記記録物質前駆体に含まれる原子またはイオンが価数を変化させる前記反応を促進する作用を有するものである、請求項1に記載のゲル線量計。

【請求項9】
前記粘土微粒子が、水膨潤性合成ヘクトライト、水膨潤性スメクタイト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、および水膨潤性合成雲母からなる群から選択される少なくとも1種の粘土微粒子である、請求項1~8のいずれか1項に記載のゲル線量計。

【請求項10】
湿潤状態にある前記粘土微粒子に対し前記原子またはイオンである鉄(II)イオンが作用して溶液または分散液が流動性を失うことにより前記線量計の流動性が消失している、請求項7に記載のゲル線量計。

【請求項11】
ゲル化するためのゲル化剤をさらに含む、請求項1に記載の放射線線量測定用のゲル線量計。

【請求項12】
溶媒または分散媒である水と、粘土微粒子と、放射線が照射されると水から電離して生成されるいずれかのラジカル、および該ラジカルが互いに結合して生成される分子である分子状ラジカル誘導物の双方と反応して価数を変化させることとなる原子またはイオンを含む記録物質前駆体とを、互いに溶解または分散させることによってゲル線量計を形成する工程
を含み、該線量計を形成する工程は、該線量計の流動性を消失させる工程を放射線が照射される時点までに含んでおり、
形成されるべき前記ゲル線量計において前記分子状ラジカル誘導物と同種の物質を残存させなくする分子状ラジカル誘導物除去工程を、前記ゲル線量計が形成されるまでのいずれかの段階にさらに含む放射線線量測定用のゲル線量計の製造方法。

【請求項13】
前記粘土微粒子が、膨潤しゲル化する作用または粘度を増大させる作用を示すものであり、
前記線量計の流動性を消失させる工程が、前記水と、前記粘土微粒子と、前記記録物質前駆体とを含む溶液または分散液を前記粘土微粒子によってゲル化するかその粘度を増大させる工程を含むものである、請求項12に記載のゲル線量計の製造方法。

【請求項14】
前記分子状ラジカル誘導物除去工程が、流動性が消失する前のいずれかの段階において、減圧または加圧による置換脱気法、凍結置換脱気法、加熱置換脱気法のいずれかの脱気法により、前記溶媒または分散媒である水から酸素を除去する工程である、請求項12に記載のゲル線量計の製造方法。

【請求項15】
前記分子状ラジカル誘導物除去工程が、形成されるべき前記ゲル線量計において前記分子状ラジカル誘導物と同種の物質が残存することを妨げるラジカル誘導物阻害物質を前記ゲル線量計の組成の一部となるように混入する混入工程である、請求項12に記載のゲル線量計の製造方法。

【請求項16】
前記分子状ラジカル誘導物が酸素であり、
前記原子またはイオンは、前記ラジカルと前記分子状ラジカル誘導物との双方と反応して酸化されるものである、請求項12~14のいずれか1項に記載のゲル線量計の製造方法。

【請求項17】
前記記録物質前駆体がアンモニウム鉄(II)および硫酸第一鉄(II)の少なくともいずれかを含むものであり、
前記原子またはイオンが鉄(II)イオンである、請求項16に記載のゲル線量計の製造方法。

【請求項18】
前記粘土微粒子が、水膨潤性合成ヘクトライト、水膨潤性スメクタイト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、および水膨潤性合成雲母からなる群から選択される少なくとも1種の粘土微粒子である、請求項12~14のいずれか1項に記載のゲル線量計の製造方法。

【請求項19】
前記粘土微粒子は、前記分子状ラジカル誘導物により前記記録物質前駆体に含まれる原子またはイオンが価数を変化させる前記反応を促進する作用を有するものである、請求項12~14のいずれか1項に記載のゲル線量計の製造方法。

【請求項20】
前記分子状ラジカル誘導物除去工程は、粘土微粒子を添加するより前のいずれかの段階で実行される、請求項19に記載のゲル線量計の製造方法。

【請求項21】
前記線量計の流動性を消失させる工程が、湿潤状態にある前記粘土微粒子に対し前記原子またはイオンである鉄(II)イオンが作用して溶液または分散液が流動性を失う工程である、請求項17に記載のゲル線量計の製造方法。

【請求項22】
前記線量計の流動性を消失させる工程が、前記水と、前記粘土微粒子と、前記記録物質前駆体とを含む溶液または分散液を、ゲル化剤によってゲル化する工程を含むものである、請求項12に記載のゲル線量計の製造方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 公開
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