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抑制性補助刺激分子に対する抗体をマーカーとする慢性炎症性疾患の検査方法

国内特許コード P150012455
掲載日 2015年10月21日
出願番号 特願2012-549690
登録番号 特許第5996438号
出願日 平成23年11月17日(2011.11.17)
登録日 平成28年9月2日(2016.9.2)
国際出願番号 JP2011076507
国際公開番号 WO2012086346
国際出願日 平成23年11月17日(2011.11.17)
国際公開日 平成24年6月28日(2012.6.28)
優先権データ
  • 特願2010-286456 (2010.12.22) JP
発明者
  • 三宅 康広
  • 山本 和秀
  • 松本 和幸
出願人
  • 国立大学法人 岡山大学
発明の名称 抑制性補助刺激分子に対する抗体をマーカーとする慢性炎症性疾患の検査方法
発明の概要 リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患の検査方法を提供する。具体的には、従来の炎症マーカーでは鑑別不可能であったリンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患と急性炎症やリンパ球浸潤を病態の中心としない炎症性疾患を鑑別しうる検査方法を提供する。T細及び/又はB細胞に発現している抑制性補助刺激分子(例えばPD-1、BTLA及びCTLA-4)に対する抗体を測定することによる。かかる検査方法によれば、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患と急性炎症やリンパ球浸潤を病態の中心としない炎症性疾患を鑑別することができる。これらの抗体の測定により、臨床症状がよく似ている疾患についても顕著な違いを認め、鑑別することができた。
従来技術、競合技術の概要


実地臨床では、炎症の存在や程度を評価する血清中マーカーとしてC反応性蛋白(CRP)やアミロイドA蛋白(SAA)が汎用されているが、これらは慢性炎症と急性炎症の双方において炎症の程度に応じて上昇が認められる。このため、CRPやSAAの上昇の程度によって、慢性炎症と急性炎症を鑑別することはできない。A型急性肝炎やB型急性肝炎、ノロウイルスやロタウイルス感染などによる嘔吐下痢症に代表される急性炎症に基づく疾患の多くでは、一過性に臓器障害が発生するものの数日から数週間の経過で治癒に至る。しかし、慢性炎症に基づく疾患では、長期間にわたる炎症の持続により臓器機能不全の出現や発癌などがおこる。急性炎症性疾患と慢性炎症性疾患を鑑別することは、患者に対する治療法の選択や予後予測に重要であるが、急性炎症性疾患と慢性炎症性疾患を鑑別するためのバイオマーカーは存在していない。



慢性炎症性疾患には、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、混合性結合組織疾患、多発性筋炎、皮膚筋炎、橋本病、自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)に代表される自己免疫性疾患、B型慢性肝炎やC型慢性肝炎に代表される慢性ウイルス感染症などが含まれる。自己免疫性疾患では、疾患特異的各種マーカー(自己抗体)が同定されているものもある。しかし、自己免疫性疾患患者の多くが全身倦怠感、発熱、関節痛などの非特異的な症状で発症することが多いため、各疾患毎に特異的な自己抗体をすべて測定することは費用効果の点において問題がある。また、自己免疫性疾患のスクリーニング検査として抗核抗体の測定が汎用されているが、健常人においても約26%が陽性を示すと報告されており(非特許文献1)、特異度に問題がある。慢性ウイルス性感染症では、B型慢性肝炎におけるHBs抗原、C型慢性肝炎におけるHCV抗体、慢性活動性EBウイルス感染症における血中EBウイルスDNA定量のようにスクリーニング検査方法が確立されているものもある。一方、自己免疫性疾患のスクリーニング検査方法としてのバイオマーカーは確立されておらず、より効率的に検査可能なバイオマーカーの開発が必要である。



自己免疫性疾患のなかでも自己免疫性肝炎 (Autoimmune hepatitis:AIH) については疾患特異的なバイオマーカーが特定されておらず、各種診断基準によって診断が行われている(非特許分文献2、3)。自己免疫性肝炎は中年以降の女性に好発するが、発症時に何等かの薬剤や健康食品を摂取している患者も多い。このため、健康食品や薬剤による肝障害(総じて薬物性肝障害)との鑑別を要する症例が増加している。しかしながら、両者の鑑別に有用なバイオマーカーは存在していない。従って、自己免疫性肝炎と薬物性肝障害の鑑別に有用なバイオマーカーの開発は重要である。



自己免疫性疾患を含む多くの慢性炎症性疾患では、T細胞の活性化が病態の中心的役割を担っている。T細胞の抗原特異的な活性化には、抗原提示細胞上の主要組織適合抗原複合体(MHC)により提示される抗原を、T細胞が抗原特異的に発現するT細胞レセプター(TCR)によって認識するのみでは不十分であり、T細胞表面に発現する補助刺激分子の一種であるCD28が、抗原提示細胞上のリガンドであるB7(CD80及びCD86)と反応することが必要である(図1、左図参照)。T細胞がTCRによって抗原を認識してもCD28からの補助刺激シグナルが入らないとT細胞の活性化が起こらないだけでなく、2度目以降の同一抗原による再刺激に対しても反応しない抗原特異的不応答(clonal anergy)と呼ばれる状態になる。活性化されたT細胞表面には、CTLA-4(Cytotoxic T lymphocyte antigen 4)やPD-1といった抑制性の補助刺激分子の発現がみられるようになる。



最近では、慢性関節リウマチ患者において活性化したT細胞の不活化を目的とする、B7抗原に対するCTLA-4分子について、開示がある(特許文献1、2)。また、CTLA-4の部分とヒトIgG1に由来する改変型Fc領域を含む遺伝子組み換えによるT細胞選択的共刺激調整剤(一般名:アバタセプト)が、関節リウマチについて、既存治療で効果不十分な場合に限ることを条件として、日本国で医薬品として承認された。また、悪性腫瘍において癌抗原特異的なT細胞活性化を目的として、抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体投与による治療が検討されている(特許文献3~5、非特許文献4)。PD-1をノックアウトしたマウスでは、血中に抗核抗体が出現し、自己免疫性肝炎や自己免疫性胃炎、ループス腎炎に類似した自己免疫性疾患を自然発症することが報告されている(特許文献6、非特許文献5)。



しかしながら、補助刺激分子の抗体をマーカーとする検査方法についての報告はない。

産業上の利用分野


本発明は、慢性炎症性疾患の検査方法に関する。具体的には、抑制性補助刺激分子に対する抗体をマーカーとする慢性炎症性疾患の検査方法に関し、さらに具体的には抗PD-1 (Programmed Cell Death protein 1)抗体、抗BTLA(B and T lymphocyte attenuator)抗体及び抗CTLA-4(Cytotoxic T lymphocyte antigen 4)抗体をマーカーとする慢性炎症性疾患の検査方法に関する。



本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願、特願2010-286456号優先権を請求する。

特許請求の範囲 【請求項1】
採取した生体検体中の抑制性補助刺激分子に対する抗体をマーカーとして測定する慢性炎症性疾患の検査方法であって、マーカーとして測定する抗体が抗PD-1抗体であり、慢性炎症性疾患が、自己免疫性肝炎、クローン病、ウイルス性慢性肝炎から選択されるいずれかであることを特徴とする、慢性炎症性疾患の検査方法。

【請求項2】
クローン病の検査が、潰瘍性大腸炎との識別のための検査である、請求項1に記載の検査方法。

【請求項3】
自己免疫性肝炎の検査が、薬物性肝障害、原発性硬化性胆管炎及び/又はウイルス性急性肝炎との識別のための検査である、請求項1に記載の検査方法。

【請求項4】
ウイルス性慢性肝炎の検査が、ウイルス性急性肝炎、薬物性肝障害及び/又は原発性硬化性胆管炎との識別のための検査である、請求項1に記載の検査方法。

【請求項5】
抑制性補助刺激分子に対する抗体として、抗PD-1抗体及び抗BTLA抗体を各々マーカーとして測定することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。

【請求項6】
抑制性補助刺激分子に対する抗体として、さらに抗CTLA-4抗体を各々マーカーとして測定することを特徴とする、請求項5に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。

【請求項7】
PD-1抗原を少なくとも含み、抗PD-1抗体検出用デバイスとして、抗PD-1抗体検出用のために抗原を固定しうる固相を含む、請求項1~6のいずれか一に記載の慢性炎症性疾患の検査方法に使用する検査用キット。

【請求項8】
さらに、BTLA抗原及び/又はCTLA-4抗原と、各抗原に対する抗体検出用デバイスとして、各抗原を固定しうる固相を含む、請求項7に記載の慢性炎症性疾患の検査方法に使用する検査用キット。

【請求項9】
抗原を固定しうる固相が、チューブ又はプレートである、請求項7又は8に記載の検査用キット。
国際特許分類(IPC)
出願権利状態 登録
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