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水共存下での重質炭化水素の接触分解方法

国内特許コード P150012560
整理番号 S2013-1189-N0
掲載日 2015年11月20日
出願番号 特願2014-003311
公開番号 特開2015-131892
出願日 平成26年1月10日(2014.1.10)
公開日 平成27年7月23日(2015.7.23)
発明者
  • 阿尻 雅文
出願人
  • 国立大学法人東北大学
発明の名称 水共存下での重質炭化水素の接触分解方法
発明の概要 【課題】水共存条件下、触媒を用いて重質炭化水素を接触分解する新規な方法の提供。
【解決手段】水熱条件下、金属酸化物触媒を用い、重質炭化水素を含む有機化合物を接触分解反応させるための方法であって、接触分解反応が、金属酸化物触媒の金属イオンの酸化還元を通じて行われ、同時に進行する(i)還元状態の金属酸化物触媒を水によって酸化して、酸化状態の金属酸化物触媒及び水素を生成すること、(ii)有機化合物を酸化状態の金属酸化物触媒によって酸化して、酸化分解生成物及び還元状態の金属酸化物触媒を生成すること、並びに(iii)酸化分解生成物を水素により水素化して、水素化生成物を形成することを含み、(i)~(iii)全体では水素、酸化分解生成物及び水素化生成物が得られ、金属酸化物触媒が250~500℃で1μmol-O/g-cat以上である酸素吸蔵放出能:OSCを有する方法。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


カナダのオイルサンドビチュメンに代表される重質油は、代替的な石油資源である。しかし、これらの重質油は、しばしば、高い密度、低い水素/炭素比を有し、高い炭素残留物、大量のアスファルテン、大量のヘテロ原子(硫黄と窒素)及びかなりの重金属含量(V、Ni、Crなど)を含有する。このような重質油は、コーキング又は接触水素転化のいずれかの手段で一次的に改質することによって、後続の蒸留工程に供される液体製品へ転化することが可能であるが、いずれの手段もコークスの形成を伴うため実施が困難である。水素化分解から得られる水素ガスを反応系内に導入し、好ましくは水素化触媒の存在下で製造物を軽質化することによって、コークス形成を減じることができる。しかし、多くの水素がメタンのスチームクラッキング(炭化水素と水とのガス化反応)に由来するため、水素製造は割高な費用を要する。従って、水素ガス形成の新しいプロセスが必要とされる。



そこで、炭化水素(C)と水(HO)とを反応させることで、重質化及びコークス化を避けつつ、同時に、軽質な炭化水素生成物を得ることが可能であるとのスキームが提案されている。この望ましい反応スキームでは、炭化水素及び水の反応による水素生成と、この水素による生成物の軽質化とがin-situで同時に進行することが期待される。



しかし、そのような反応スキームを有効に機能させるための触媒は開発されていない。例えば、特開2010-144094号公報には、褐炭からタールを得て、このタールを水蒸気雰囲気下で鉄系触媒存在下にて接触分解して炭化水素油を得る方法が開示されている。しかし、この方法に用いられる触媒は、金属酸化物の酸化還元を介して機能するものではない。さらに、この方法では、原料が褐炭に特定されているうえに、二段階法であるゆえに効率が劣っており、しかも水蒸気雰囲気下での反応に限定されていることから、工業的な活用は現実的ではない。



一方、超臨界水(Supercritical Water:SCW)中でのビチュメンの改質について、いくつかの報告がされている。超臨界水中でも、ビチュメンが温度及び圧力に依存する2つ以上の相を形成することを明らかにされている(Kishita, A. et al., Upgrading of bitumen by hydrothermal visbreaking in supercritical water with alkali, J. Jpn. Pet. Inst. 2003, 46, 215-221)。また、超臨界水の存在下でのビチュメンの改質が、超臨界水の非存在下での反応よりも高いオレフィン収率で進行したことが報告されている(Morimoto, M. et al., Effect of supercritical water on upgrading reaction of oil sand bitumen, J. Supercrit. Fluids 2010, 55, 223-231)。この場合、重質分は、超臨界水中に高度に分散し、分子内脱水素を経てオレフィンに転化されたと考えられる。しかし、これらの文献では、上記の望ましい反応スキームにおける水素源として水を用いることは、示唆されていない。



また、大気圧下、スチーム中の重質油の酸化的分解のために酸化鉄触媒を適用することで、コークス形成が抑制され、スチームから活性酸素種が生成することが報告されている(Fumoto,E. et al., Production of light oil by oxidative cracking of oil sand bitumen using iron oxide catalysts in steam atmosphere, Energy Fuels 2011, 25, 524-7)。ここでは、連続的な酸化を引き起こすための酸素供給源として水が機能していると考えられる。しかし、この報告でも水素化の証拠は得られていない。

産業上の利用分野


本発明は、水の共存下、金属酸化物触媒を用いて、重質炭化水素を含む有機化合物を接触分解反応させるための方法に関する。より詳細には、本発明は、水熱条件下にて、金属酸化物の酸化還元反応を利用して、重質炭化水素を含む有機化合物を接触分解反応させる方法、及びそのための装置に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
水熱条件下にて、金属酸化物触媒を用いて、重質炭化水素を含む有機化合物を接触分解反応させるための方法であって、
この接触分解反応が、前記金属酸化物触媒の金属イオンの酸化還元を通じて行われ、
(i)還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を水によって酸化して、酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒及び水素を生成すること、
(ii)前記有機化合物を酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒によって酸化して、酸化分解生成物及び還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を生成すること、並びに
(iii)前記酸化分解生成物を、前記(i)によって生じた水素により水素化して、水素化生成物を形成することを含み、
これら(i)~(iii)の諸工程が、同一反応系内にて同時に進行し、全体としては水及び前記有機化合物から水素、前記酸化分解生成物及び前記水素化生成物が得られ、
前記金属酸化物触媒が、250~500℃にて1μmol-O/g-cat以上である酸素吸蔵放出能(OSC)を有する上記方法。

【請求項2】
前記接触分解反応が超臨界水中にて行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【請求項3】
前記重質炭化水素が、マルテン及びアルファルテンを含むビチュメンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。

【請求項4】
前記金属酸化物触媒が、酸化セリウム(CeO)、酸化インジウム(In)、酸化鉄(Fe)、イットリウム安定化酸化ジルコニウム(YSZ)、酸化バナジウム(V)、酸化コバルト(CoO)、Scドープ酸化ジルコニウム(ScSZ)、酸化ランタンガリウム(LaGaO)、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、ガドリニウムドープ酸化セリウム(GDC)及びセリア・ジルコニア固溶体からなる群から選択されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。

【請求項5】
前記金属酸化物触媒が、CeO触媒を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。

【請求項6】
前記CeO触媒が、八面体CeO触媒及び立方体CeO触媒から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の方法。

【請求項7】
前記立方体CeO触媒が、Ce(OH)及び有機改質剤を超臨界水と接触させ、次いでこれをか焼することによって製造されるものであることを特徴とする請求項6に記載の方法。

【請求項8】
飽和炭化水素のモル収量の不飽和炭化水素モル収量に対する比が、無触媒下での分解反応におけるそれより大きいことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。

【請求項9】
アルカン(メタンを除く)のモル収量のアルケンのモル収量に対する比が無触媒下での分解反応におけるそれより大きいことを特徴とする請求項8に記載の方法。

【請求項10】
水熱条件下にて、金属酸化物触媒を用いて、重質炭化水素を含む有機化合物を接触分解反応させるため装置であって、
この接触分解反応装置は、反応原料である有機化合物及び水の各導入口、金属酸化物触媒を含む反応触媒層を有する接触反応器、並びに、反応生成物である酸化分解生成物、この酸化分解生成物から生じた水素化生成物及び水素の各排出口を含み、
前記接触反応器では、接触分解反応が、前記金属酸化物触媒の金属イオンの酸化還元を通じて行われ、
この接触分解反応が、(i)還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を水によって酸化して、酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒及び水素を生成すること、(ii)前記有機化合物を酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒によって酸化して、酸化分解生成物及び還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を生成すること、並びに(iii)前記酸化分解生成物を、前記(i)によって生じた水素により水素化して、水素化生成物を形成することを含み、
これら(i)~(iii)の諸工程が、同一反応系内にて同時に進行し、全体としては水及び前記有機化合物から水素、前記酸化分解生成物及び前記水素化生成物が得られ、
前記金属酸化物触媒が、250~500℃にて1μmol-O/g-cat以上である酸素吸蔵放出能(OSC)を有する、
接触分解反応装置。

【請求項11】
請求項10に記載の装置を含むシステムであって、
前記接触反応器の出口において、冷却後、水素ガスを含むガス状生成物と生成物混合溶液とを分離するための分離槽を備え、さらにこのガス状生成物の回収槽とこの生成物混合溶液の回収槽をそれぞれ備え、かつ、前記ガス状生成物及び前記生成物混合溶液のうち多い方の生成流通量に基づいて、前記分離槽から前記回収槽への生成物取り出しのための圧力制御を行うシステム。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開
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