TOP > 国内特許検索 > 飼育魚類の脂質含量の低減方法及びそのための飼料

飼育魚類の脂質含量の低減方法及びそのための飼料

国内特許コード P150012577
整理番号 S2014-0548-N0
掲載日 2015年11月20日
出願番号 特願2014-033630
公開番号 特開2015-156835
出願日 平成26年2月25日(2014.2.25)
公開日 平成27年9月3日(2015.9.3)
発明者
  • 吉永 葉月
  • 大場 萌未
  • 潮 秀樹
  • 金子 元
  • 高橋 伸一郎
  • 佐藤 秀一
  • 芳賀 穣
出願人
  • 国立大学法人東京海洋大学
  • 国立大学法人 東京大学
発明の名称 飼育魚類の脂質含量の低減方法及びそのための飼料
発明の概要 【課題】養殖魚又は漁獲した天然魚の飼育において、養殖によって増大した脂肪含有率や、魚種によって増大した脂肪含有率を低下させ、魚体重に影響を及ぼすことなく、過剰な脂質含量を減少させて、食味及び食感の良好な飼育魚類を提供すること。
【解決手段】養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間において、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料の必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料を用いて魚類を飼育することにより、飼育魚類の脂質含量を低減する。本発明の飼育魚類の脂質含量を低減する方法は、養殖魚又は漁獲した天然魚の飼育において、養殖によって増大した脂肪含有率や、魚種によって増大した脂肪含有率を低下する方法に適用して、出荷前の飼育期間の短期間、該魚類脂質低減化用飼料を用いて魚類を飼育することにより、過剰な脂質含量を減少させて、食味及び食感の良好な飼育魚類を提供することができる。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


近年わが国においては魚類の養殖が盛んに行われ、その飼料の研究も数多くなされている。魚類の養殖用飼料の配合に際しては、各種飼料成分において、魚類における必須アミノ酸の供給が重要となる。必須アミノ酸は、魚体内で生合成により供給することができないため、魚の生育には、飼料として外部から供給することが必要となる。魚類の必須アミノ酸としては、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His)、アルギニン(Arg)が挙げられる。



魚類の養殖において、各種海産重要魚類の生育に必要な必須アミノ酸要求量については、飼育試験により調査され報告がなされている(Robert P. Wilson PROTEIN AND AMINO ACID REQUIRMENTS OF FISHES:Ann. Rev. Nutr. 6:225-244, 1986)。また、「魚類飼料中の必須アミノ酸のバランスが魚類の成長や、生化学的指標に対する影響」についても報告されている(Mar. Biotechnol., Vol. 14, No.5 p643-654, 2012; Fisheries Sci. JST Vol. 68 ,No.3, p509-516, 2002)。該報告では、例えば、試料中のアルギニン(Arg)やリジン(Lys)の欠乏は、魚の生残率、日間成長率、飼料効率及びタンパク蓄積に悪影響を与えることが報告されている。また、飼料中の必須アミノ酸の量が魚の成長に及ぼす影響についても報告されている。例えば、飼料中のリジン量を、7段階にかえてマスに与え、12週間の成長を観察したところ、19g/kgでマスの成長増はプラトーに達したことが報告されている。



更に、「飼料中のアルギニン(Arg)とリジン(Lys)の不均衡がヒラメ稚魚の成長と生化学的指標に及ぼす影響」についての研究報告もある(Fisheries Sci. JST, Vol.68, No.3, Page. 509-516, 2002)。該報告には、飼料中のArg又はLysの欠乏が、生残率、日間成長率、飼料効率、及び、蛋白蓄積に悪影響を与えること等が報告されている。なお、高リジンであるコーン(46~51%)、コーングルテンミール(20%)を加えたフィッシュミール添加、無添加の試験飼料を用いた飼育試験において、体重増加、飼料要求率、蛋白効率については、対照群との間で有意差が無かったことの報告もなされている(J. Aquat. Food Prod. Technol., Vol.9, No.2, Page 19-27, 2000)。以上のとおり、リジンをはじめとして、必須アミノ酸の魚類の養殖における役割の研究については各種報告がなされており、魚類の養殖用飼料の配合に際しては、各種養殖魚類に対して、これら必須アミノ酸要求量の充足についての配慮がなされている。



魚類の養殖において、飼料中に必須アミノ酸を添加、補強して、養殖魚の成長等を促進する方法も開示されている。例えば、特開平7-31380号公報には、フェザーミールと魚粉をタンパク質源とした魚類用配合飼料において、メチオニンや、リジン、及び、ヒスチジンのような必須アミノ酸を添加、補強して、魚の成長度の良好な配合飼料を調製する方法が開示されている。また、特開平6-70694号公報には、大豆タンパク質を主タンパク質源とした植物タンパク質配合ヒラメ用飼料において、不足する必須アミノ酸成分であるメチオニン及びリジンを添加して、飼料効率の良い、ヒラメ養殖用飼料を製造することについて開示されている。これらはいずれも、魚類の養殖用飼料の配合に際して、魚類の成長に必要な必須アミノ酸の量を補完或いは強化して、養殖魚類の成長の促進を図ったものである。



一方で、近年、魚類の養殖が盛んに行われる中で、各種飼料の研究がなされ、養殖魚類の成長を促進するための飼料の開発も行われている。魚類の養殖において、養殖魚の成長を早めるために、従来より、養魚飼料へ脂質の添加が行われており、また、そのような飼料として、高脂肪含量の魚類の飼料の開示も種々なされている(特開平8-38066号公報、特開2005-27613号公報、特開2008-220180号公報、特開2011-200260号公報、特表2003-501106号公報)。しかしながら、養殖魚類の飼育において、飼料として脂質高含量の飼料を与えると、脂質がそのまま魚類体内に取り込まれるため、天然魚に比較して、高品質の油脂を含有する養殖魚とならない問題がある。天然魚のような場合は、ある程度脂質含量が高い方が「脂が乗った」状態になって食味が良くなるという評価になるが、養殖において、脂質含量の高い飼料等により、脂肪分を付与すると、体脂肪が必要以上に高くなり、天然魚に比べ、その食味において著しく劣るようになる。天然魚と養殖魚を比較すると、一般に養殖魚はその生育環境の相違から、脂肪含有率が高く、肉質が軟らか過ぎる傾向があり、これが養殖魚の味が天然魚の味より劣る原因であると考えられている。



このような養殖魚の食味を改善するために、従来は、養殖魚の出荷7~10日前から餌止めし、脂肪含有率を低減させる方法が採られている。しかし、この方法では餌止めにより体重が減少し、商品価格が低下する問題がある。そこで、これらの魚類の脂質蓄積等に対する肉質の改善の方法が検討され、開示されている。例えば、特公昭61-22936号公報には、ゼオライトの一種であるモルデナイト及びクリノプチライトを養魚用飼料に添加して、該ゼオライトの吸着力を利用して消化器官内のアンモニアと脂肪を捕捉し、その過剰摂取を防止する方法が、特開平7-87901号公報には、ケイ酸の可溶化率が25%以上であり、かつ吸油量が150ml/100g以上の多孔質ケイ酸カルシウムを主成分とする魚介類の肉質改善剤を養殖魚介類用飼料に添加し、魚介類の成長を抑制せずに筋肉への体脂肪の蓄積を防止する方法が開示されている。



また、特開2001-69923号公報には、緑茶、緑茶抽出物、茶殻を養殖魚用飼料に添加して、養殖魚の脂質を改善して、養殖魚特有の脂ぽさを軽減し或いは除去する方法が開示されている。しかし、これらの方法は、魚の脂肪含有率を脂質の吸収によって、魚類への摂取を制限したりして、低減させるものであるから、天然魚の「脂が乗った」状態とは相違するものであり、また、少なからず養魚飼料からの栄養分の摂取にも影響して、魚体への影響が避けられず、天然魚のような食味の養殖魚を提供するという観点からは、必ずしも満足のいくものとはなっていない。



以上のように、近年、魚類の養殖が盛んに行われる中で、養殖技術やそのための養殖魚用飼料の改良が種々なされているが、天然魚に匹敵する味覚の養殖魚を提供するという観点からは、その養殖技術及びそのための飼料の更なる改良が望まれるところである。

産業上の利用分野


本発明は、飼育魚類の脂質含量の低減方法及びそのための飼料に関し、特に、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料を用いて、養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の短期期間飼育することにより、魚体重に影響を及ぼすことなく、過剰な脂質含量を減少させて、食味及び食感の良好な飼育魚類を提供することに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間において、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料の必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料を用いて、魚類を飼育することを特徴とする飼育魚類の脂質含量の低減方法。

【請求項2】
魚類脂質低減化用飼料が、魚種によって生育に必要とされるリジンの必須アミノ酸としての要求量に対して、650%以上を過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料であることを特徴とする請求項1に記載の飼育魚類の脂質含量の低減方法。

【請求項3】
魚類脂質低減化用飼料を用いて飼育する養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間が、出荷前の2~6日の飼育期間であることを特徴とする請求項1又は2に記載の飼育魚類の脂質含量の低減方法。

【請求項4】
飼育魚類の脂質含量の低減が、魚類の筋肉内の脂質含量を、20%以上低下するものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の飼育魚類の脂質含量の低減方法。

【請求項5】
養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間において、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料の必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料を用いて魚類を飼育することにより飼育魚類の脂質含量を低減させることを特徴とする、過剰な脂質含量を低減させた魚類の飼育方法。

【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の飼育魚類の脂質含量の低減方法、或いは、請求項5に記載の魚類の飼育方法において用いるための、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料の必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close