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Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素、該酵素の製造方法、及び、該酵素を用いた不飽和脂肪酸の製造

国内特許コード P150012579
整理番号 S2014-0734-N0
掲載日 2015年11月20日
出願番号 特願2014-064168
公開番号 特開2015-181477
出願日 平成26年3月26日(2014.3.26)
公開日 平成27年10月22日(2015.10.22)
発明者
  • 吉崎 悟朗
  • 矢澤 良輔
  • 千葉 瑞萌
  • 壁谷 尚樹
  • 竹内 裕
出願人
  • 国立大学法人東京海洋大学
発明の名称 Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素、該酵素の製造方法、及び、該酵素を用いた不飽和脂肪酸の製造
発明の概要 【課題】魚類から、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を取得し、該遺伝子を改変して、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素活性を併せ持つ脂肪酸不飽和化酵素を調製すると共に、該脂肪酸不飽和化酵素を用いて、植物由来の脂肪酸からエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)のような不飽和脂肪酸を合成する方法の提供。
【解決手段】アイゴのΔ4脂肪酸不飽和化酵素活性を持つアミノ酸配列をコードする遺伝子のΔ4脂肪酸不飽和化酵素活性を示すアミノ酸配列をコードする塩基配列を特定し、該配列を、Δ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素活性を併せ持つ脂肪酸不飽和化酵素のアミノ酸配列の特定部位をコードする塩基配列と置換し、導入することで、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素活性を持つ脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子を取得した。該遺伝子を細胞に導入して、該酵素を取得し、該酵素を用いて、植物由来の不飽和脂肪酸を合成する方法。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


脂肪は、エネルギー源として重要な栄養成分であるとともに、同時に動物にとって正常な発育と機能維持に欠くことができない成分である。近年、エイコペンタエン酸(EPA、20:5n-3)や、ドコサヘキサエン酸(DHA、22:6n-3)のようなn-3系多価不飽和脂肪酸が、乳児における脳の成長及び発達、成人における正常な脳機能の維持に不可欠であること(J. Pediatr. 120:S129-S138, 1992)や、アトピー性皮膚炎、血栓性疾患、癌、冠動脈疾患などに低減効果のあること(Am. J. Clin. Nutr. 71, 171S-175S,2000;77, p. 532-5543, 2003)等が報告され、ヒトが健康を維持するための成分として、注目を浴びている。



生体中における脂肪酸の合成では、Δ12脂肪酸不飽和化酵素により、オレイン酸(18:1)からリノール酸(18:2n-6)が合成され、更に、ω3脂肪酸不飽和化酵素により、リノール酸(18:2n-6)からα-リノレン酸(18:3n-3)が合成される。しかし、哺乳動物などの高等動物では、上記酵素を有さないため、食物からこれらの脂肪酸を摂取することが要求される。ヒトにおいては、このような必須脂肪酸として、リノール酸(18:2)、α-リノレン酸(18:3)、及び、アラキドン酸(C20:4)がある。α-リノレン酸(18:3n-3)からは、エイコペンタエン酸(EPA、20:5n-3)が、EPAからは、ドコサヘキサエン酸(DHA、22:6n-3)が合成される。これらの合成に関与する酵素として、Δ4不飽和化酵素(Fad4)、Δ5不飽和化酵素(Fad5)、及び、Δ6不飽和化酵素(Fad6)酵素がある。



近年、不飽和脂肪酸の合成に関与する脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子が取得され、該遺伝子を細胞に導入して、発現させることにより、細胞を改変したり、酵素蛋白質を製造する技術が開示されている。例えば、特表2004-516017号公報、特開2006-314321号公報、特開2009-148297号公報には、多価不飽和脂肪酸を産生するヤブレツボカビ(Thraustochytrium)、ピティウム・イレギュラレ(Pythium irregulare)、スキゾキトリウム(Schizochytrium)及びクリテコジニウム(Crythecodinium)から、Δ4不飽和化酵素(Fad4)、Δ5不飽和化酵素(Fad5)、及び、Δ6不飽和化酵素(Fad6)をコードする遺伝子を取得し、該不飽和化酵素遺伝子からなる発現ベクター構築して、該ベクターを、植物細胞、微生物細胞、或いは動物細胞に導入して、該不飽和化酵素ペプチドを取得する方法が開示されている。



また、特開2003-245070号公報には、ホウレンソウの根部に由来するΔ12脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を、ブタ等の動物で発現させることにより、不飽和脂肪酸の含量を増加させる方法が、特開2010-279387号公報には、ゼニゴケ由来のΔ5脂肪酸不飽和化酵素遺伝子、Δ6脂肪酸不飽和化酵素遺伝子及びΔ6脂肪酸鎖長延長酵素遺伝子を取得し、これを高等植物に導入して発現させることにより、アラキドン酸や、エイコペンタエン酸を生産し得る形質転換植物体を取得する方法が開示されている。



魚類においても、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を用いて、魚体の不飽和脂肪酸含量を変える方法が開示されている。例えば、ヤマメ由来の脂肪酸代謝酵素遺伝子をニベに導入することで、ドコサペンタエン酸(DPA)等の割合を増加する方法が(Kabeya, N., Takeuchi, Y., Yamamoto, Y., Yazawa, R., Haga, Y., Satoh, S., Yoshizaki, G. Modification of the n-3 HUFA biosynthetic pathway by transgenesis in a marine teleost, nibe croaker. J. Biotechnol. 172, 46-54(2014).「日本水産学会大会講演要旨集」Vol. 2013 春季 p.133,2013.)、微細藻類由来のΔ4脂肪酸不飽和化酵素遺伝子(Tonon, T., Harvey, D., Larson, T. R., and Graham, I. A. Identification of a very long chain polyunsaturated fatty acidΔ4-desaturase from the microalga Pavlova lutheri.FEBS Lett.553,440-444(2003).)、大西洋産サケ由来のΔ5脂肪酸不飽和化酵素遺伝子(ジーンバンク:AF478472)、ヤマメ由来のΔ6脂肪酸不飽和化酵素遺伝子(ジーンバンク:AB074149,AB070444)等の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子魚類に導入して、魚類のエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)のような不飽和脂肪酸含量を増加させる方法(特開2005―287424号公報)が開示されている。



多くの海産魚は、Δ6脂肪酸不飽和化酵素(Fad6)を保持しているが、Δ5及びΔ4脂肪酸不飽和化酵素(Fad5及びFad4)を保持していない。したがって、該脂肪酸不飽和化酵素を単離して、植物由来の脂肪酸からドコサヘキサエン酸(DHA)のような不飽和脂肪酸を合成しようとしても、合成することができない。最近になって、アイゴ(シモフリアイゴ:Siganus canaliculatus)が、Δ5脂肪酸不飽和化酵素活性とΔ6脂肪酸不飽和化酵素活性を併せ持つ、Δ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素とΔ4脂肪酸不飽和化酵素を持っていることが分かったことが報告されている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA,Vol. 107 No. 39,Page. 16840-16845, 2010.)。しかしながら、該脂肪酸不飽和化酵素を用いて、植物由来の脂肪酸からドコサヘキサエン酸(DHA)のような不飽和脂肪酸を合成することについては、今までに報告はない。

産業上の利用分野


本発明は、魚類に由来する脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子を用いて構築した、キメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子、該遺伝子を組み換えた発現ベクター、該発現ベクターを導入した宿主細胞、該細胞を用いたキメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素の製造方法、及び、該キメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素を用いたΔ4、Δ5及びΔ6不飽和脂肪酸の製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化活性を有するポリペプチドであって、
(a)配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列;又は、
(b)配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1個若しくは複数個のアミノ酸が、欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなることを特徴とするポリペプチド。

【請求項2】
配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化活性を有するポリペプチドが、配列表の配列番号5に示されるΔ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドの322-325位の配列であるIle-Val-Phe-Thrのペプチド配列を、配列表の配列番号4に示されるΔ4脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドの324-327位の配列であるMet-Met-Phe-Alaのペプチド配列で、置換したキメラ脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドであることを特徴とする請求項1に記載のポリペプチド。

【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリペプチドをコードすることを特徴とするポリヌクレオチド。

【請求項4】
下記(a)又は(b)の塩基配列からなる請求項2に記載のポリヌクレオチド:
(a)配列表の配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;又は、
(b)以下の(i)若しくは(ii)のいずれかとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド:
(i)配列表の配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;若しくは、
(ii)配列表の配列番号3に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド。

【請求項5】
配列表の配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドが、配列表の配列番号2に示されるΔ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの964-975位の配列であるatt gta ttt acaの塩基配列を、配列表の配列番号1に示されるΔ4脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの970-981位の配列であるatg atg ttt gccの塩基配列で、置換したキメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドをコードする請求項4に記載のポリヌクレオチド。

【請求項6】
請求項3~5のいずれかに記載のΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクター。

【請求項7】
発現ベクターが、酵母発現ベクターであることを特徴とする請求項6に記載の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクター。

【請求項8】
請求項6又は7に記載の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入した植物、動物又は微生物細胞。

【請求項9】
微生物細胞が、酵母細胞であることを特徴とする請求項8に記載の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入した微生物細胞。

【請求項10】
特許微生物寄託センターに、受託受領番号NITE AP-01837として寄託された、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入したサッカロマイセス・spに属する酵母細胞株。

【請求項11】
請求項8~10のいずれかに記載の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入した植物、動物又は微生物細胞を培養し、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドを発現、取得することを特徴とするΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素の製造方法。

【請求項12】
請求項11に記載のΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素、又は、該酵素を生成する請求項8~10のいずれかに記載の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入した植物、動物又は微生物細胞、又は、該細胞の培養ブロスを、脂肪酸基質に作用させて、Δ4、Δ5及びΔ6部位が不飽和化された脂肪酸を製造することを特徴とするΔ4、Δ5及びΔ6部位が不飽和化された不飽和脂肪酸の製造方法。

【請求項13】
脂肪酸基質が、α-リノレン酸、ドコサペンタエン酸、エイコサテトラエン酸、又は、エイコサトリエン酸であることを特徴とする請求項12に記載のΔ4、Δ5及びΔ6不飽和脂肪酸の製造方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2014064168thum.jpg
出願権利状態 公開


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