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ボトリオコッカス・ブラウニー(Botryococcusbraunii)細胞への核酸導入方法

国内特許コード P150012633
整理番号 S2014-0744-N0
掲載日 2015年11月26日
出願番号 特願2014-060872
公開番号 特開2015-181402
出願日 平成26年3月24日(2014.3.24)
公開日 平成27年10月22日(2015.10.22)
発明者
  • 五百城 幹英
  • 中嶋 信美
  • 早川 靖彦
  • 松本 光二朗
  • 渡邉 信
出願人
  • 国立大学法人 筑波大学
発明の名称 ボトリオコッカス・ブラウニー(Botryococcusbraunii)細胞への核酸導入方法
発明の概要 【課題】本発明は、ボトリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)細胞への核酸の導入方法、当該方法により核酸が導入されたボトリオコッカス・ブラウニー細胞、当該核酸がゲノム内に保持されたボトリオコッカス・ブラウニー細胞の生産方法、及び当該細胞株により炭化水素を生産する方法を提供する。
【解決手段】本発明者らは、ボトリオコッカス・ブラウニーが細胞周囲に形成する外殻の障壁を排除して核酸を細胞内に導入する技術について鋭意研究を行い、試行錯誤の結果、培養の過程で低頻度で生じる外殻を欠損した集団を単離し、その集団に対してエレクトロポレーションを行うことで、良好な効率で核酸導入が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


近年、地球温暖化対策として大気中の二酸化炭素削減技術の開発が盛んに進められている。また、化石燃料枯渇に対する危機感から、再生可能なエネルギーの開発も進められている。再生可能エネルギーには太陽光発電、風力発電が実用化されているが、光エネルギーにより水と二酸化炭素を炭化水素に変換する光合成生物の利用も、いわゆるカーボンニュートラルなエネルギー技術として関心が集まっている。



エネルギー資源として注目されている光合成生物として藻類が挙げられ、中でも緑藻類及び珪藻類が注目されている。通常の緑藻類は、その構成成分中の15~17%が脂質であり、この脂質は、中性脂質(30%)、糖脂質(37%)、リン脂質(26%)及び脂肪酸を含まない脂質(7%)等である。



近年、油生産緑藻として注目を集めているのが、群体性単細胞緑藻ボトリオコッカス・ブラウニーである。ボトリオコッカス・ブラウニーは淡水から汽水の湖沼に生息する緑藻類の一種であり、細胞内及び細胞外に直鎖アルケンやトリテルペン等の炭化水素を主成分とする油を蓄積することが知られている。上記のように一般的な藻類が生産する油がトリグリセリド(油脂)を主成分としていることと比較して、特異な性質である(Banerjee他、2002年;MetzgerとLargeau、2005年)。



ボトリオコッカス・ブラウニーは、工業的利用価値の高い炭化水素を安定供給する技術に繋がるものとして注目されており、事業化を見据えた高効率の培養技術の開発が進められている。例えば、特開2010-252700において、新規アスティカカウリス・エキセントリカス菌株とボトリオコッカス藻類を共培養することにより、混入細菌による増殖阻害を軽減しつつ、ボトリオコッカスを高効率で培養できることが示されている。また、特開2012-85540において、ボトリオコッカス・ブラウニーに定常的に炭化水素を合成させ、炭化水素抽出に繰り返し利用する炭化水素生産系が開示されている。



ボトリオコッカス・ブラウニーの増殖は遅く、油含有量はさまざまであるため、ボトリオコッカス・ブラウニーを用いたコスト効率のよい油生産を実現するには、改良された株の開発も必要である。炭化水素の生産に適した性質を有するボトリオコッカス・ブラウニー株の単離が試みられている。例えば、特開2013-243943において、直鎖飽和型の炭化水素を生産するボトリオコッカス・ブラウニーの新規株が樹立されており、当該株は、不安定で酸化され易い飽和型炭化水素を生産する通常のボトリオコッカス・ブラウニーと比較して、工業的利用価値が高い。



所望の形質を有する株を樹立する簡便な方法として、遺伝子組み換え技術を利用した品種改良が想定される。例えば、特開2004-33070において、抗酸化剤アスタキサンチンを生合成する緑藻ヘマトコッカスの遺伝子操作による改良を可能とするため、外来遺伝子を導入する方法が検討されている。また、クラミドモナス・ラインハルドテイ(Chlamydomonas reinhardtii)、クロレラ類(Chlorella spp.)、ドゥナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)やヘマトコッカス・プルヴィアリス(Haematococcus pluvialis)などの工業的に重要な藻種の株において、遺伝子組み換えによる改良が行われたことも報告されている((Gong他、2011年;Bai他、2013年;Geng他、2003年;Kobayashi他、2011年;SteinbrennerとSandmann、2006年;Saei他、2012年)。



しかしながら、ボトリオコッカス・ブラウニーにおいて、細胞内への核酸導入が従来極めて困難であったため、遺伝子組み換え技術を利用することが出来なかった。そのため、ボトリオコッカス・ブラウニーにおける炭化水素の生産に適した性質を有する株の樹立は、従来、特定の形質を有する株の自然発生、あるいは変異原処理による誘導等の、非効率かつ柔軟性を欠く手段に頼らざるを得なかった。したがって、斯かる障壁を克服して同種への遺伝子導入を達成する技術を開発することは、同種の遺伝子改変技術の足掛かりとなり、炭化水素生産に有利な性質を有する変異株の樹立に大いに貢献するものとして強く望まれていた(Beer他、2009年;Ioki他、2013年;Radakovits他、2010年)。



また、ボトリオコッカス・ブラウニーにおいて外来遺伝子を少なくとも一過的に強制発現する技術が開発されれば、同藻類において生理的及び発生的事象に関与する細胞内シグナル伝達系の分子メカニズムを解明する試験に直接利用され得る(Yoo他、2007年)。斯かる一過的遺伝子発現系の用途は、近年の同藻類の遺伝学研究者によりなされた、同藻類において油の生合成に関与する重要な遺伝子及び基礎的な遺伝的特徴の解明や、トランスクリプトーム配列のデータベース作成等の成果(Niehaus他、2011年;Baba他、2012年;Ioki他、2012a、2012b、2012c、2013年;Molnar他、2012年;Okada他、2010年)に基づき、顕著に拡張され得る。

産業上の利用分野


本発明は、ボトリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)細胞への核酸の導入方法、当該方法により核酸が導入されたボトリオコッカス・ブラウニー細胞、当該核酸がゲノム内に保持されたボトリオコッカス・ブラウニー細胞の生産方法、及び当該細胞株により炭化水素を生産する方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
ボトリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)細胞に核酸を導入する方法であって、以下の工程:
前記細胞の外殻を欠損した集団を取得する工程;
前記集団を核酸導入手段に供する工程;及び
核酸が導入された細胞をスクリーニングする工程;
を含む方法。

【請求項2】
前記核酸導入手段がエレクトロポレーション法である、請求項1に記載の方法。

【請求項3】
前記細胞の外殻を欠損した集団が、ボトリオコッカス・ブラウニー細胞を培養維持する過程で自然発生的に出現するものである、請求項1に記載の方法。

【請求項4】
前記細胞の外殻を欠損した集団が、外殻の完全性に基づく任意の分画手段を利用して取得される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。

【請求項5】
前記分画手段が遠心分離である、請求項4に記載の方法。

【請求項6】
前記分画手段において、完全な外殻を有する集団と欠損した集団が混在するボトリオコッカス・ブラウニー細胞培養物を、0.7~1.0Mのショ糖溶液に懸濁し、当該懸濁物を遠心分離して、優先して沈降した分画として外殻を欠損した集団が回収される、請求項4又は5のいずれかに記載の方法。

【請求項7】
前記エレクトロポレーション法が、以下の工程;
前記外殻を欠損した細胞を、エレクトロポレーション用緩衝液に懸濁する工程;
当該懸濁物に導入すべき核酸を添加する工程;
当該懸濁物をエレクトロポレーション用キュベットの中に配置する工程;及び
当該キュベットをエレクトロポレーション装置に設置し、エレクトロポレーションを実行する工程;
を含む、請求項2~6のいずれか1項に記載の方法。

【請求項8】
前記エレクトロポレーション用緩衝液が、マンニトール、CaCl及びMgClを添加したフェノールレッド不含Opti-MEM(登録商標)Reduced Serum Medium(Life Technologies社、カールズバッド、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)である、請求項7に記載の方法。

【請求項9】
前記エレクトロポレーション装置が、NEPA21エレクトロポレーション装置(ネッパジーン株式会社、市川市、千葉、日本)である、請求項7又は8のいずれかに記載の方法。

【請求項10】
前記核酸が、導入されたボトリオコッカス・ブラウニーの炭化水素生産効率に影響を及ぼすものである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。

【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を用いて取得された、核酸が導入されたボトリオコッカス・ブラウニー細胞。

【請求項12】
以下の工程:
請求項11に記載の細胞から、導入された核酸がゲノム内に保持されている細胞クローンを単離する工程;
を含む、形質転換ボトリオコッカス・ブラウニー細胞株を生産する方法。

【請求項13】
請求項11に記載の核酸が導入されたボトリオコッカス・ブラウニー細胞、又は請求項12に記載の方法により生産された形質転換ボトリオコッカス・ブラウニー細胞株を用いて、炭化水素を生産する方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2014060872thum.jpg
出願権利状態 公開
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